来館・成約

式場の見学後の追客は、何通目で止めるかを材料で決める

見学のあと、二人からの返事が止まる。どの会場にもある場面です。このとき、追客の連絡を何通まで送るか。「3通まで」「2週間に1回」と、担当者ごと、会場ごとに感覚で決まっていることが多いと思います。

結論から書きます。止め時を決めるのは、手間でも回数でもありません。その通で、二人に新しく渡せる材料があるかどうかです。材料のある通は何通目でも送る価値があり、材料の無い通は1通目でも送らないほうがいいです。

この記事に出てくる数字は、手間の計算も含めてすべて僕が置いた仮のものです。業界の平均値ではありません。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

手間で見ると、何通送っても元は取れる

まず、追客の通数を増やすと損か、を計算で確かめます。置く前提は次のとおりです。

  • 追客1通を作って送る手間を5分とする
  • 担当者の時間を、時給3,000円として換算する
  • 1成約の粗利を80万円とする
  • 追客の対象は、見学したが返事が止まっている100組とする

1通あたりの手間は、3,000円 × 5分 ÷ 60分 = 250円です。100組に1通ずつ送ると25,000円。6通まで送っても、100組あたり15万円です。

では、25,000円を取り戻すには、何組が追加で契約すればいいか。25,000円 ÷ 80万円 = 0.03125組です。100組に1通送って、追加の成約が0.03組。言い換えると、約3,200組に1組が契約に動けば、その1通は元が取れます。

この前提が正しいかどうかは、会場ごとに違います。ただ、粗利が数十万円、1通の手間が数百円という桁の差は、どの会場でもほぼ変わらないはずです。手間だけを見るなら、追客は何通送っても赤字になりにくい。ここまでは、おそらく多くの人が感覚で知っていることです。

だから「手間がかかるから3通まで」という止め方は、計算の上では根拠がありません。止めるなら、別の理由が要ります。

本当のコストは、二人が受け取る側で起きる

追客の本当のコストは、送る側の手間ではなく、受け取る側の気持ちに出ます。

返事が止まっている二人の状況は、大きく3つに分かれます。

  1. 他の会場に決めた。連絡するのが気まずくて、返事をしていない
  2. まだ迷っている。比べる材料が足りず、動けていない
  3. 忙しいだけで、検討は続いている

1の二人にとって、追客は「まだ連絡が来る」という負担になります。気まずさがある分、断りの返事もしにくくなります。2の二人には、材料が届けば助けになります。3の二人には、タイミング次第で助けにも邪魔にもなります。

つまり、追客が効くのは2と3の一部だけです。1の二人に送り続けると、会場の印象は少しずつ悪くなります。この印象は、口コミや、家族への「あの式場はしつこかった」という話にも残ります。

ここで、仮に置いてみます。返事が止まっている100組のうち、実は他に決めている組が60組いるとします。この60組に4通目、5通目を送ると、60組に5分ずつかかり、さらに負担をかけます。手間の面では25,000円の何倍もかかりませんが、印象の面は計算できません。計算できないものが、止め時を決める本当の理由になります。

ここは大事なので言い直します。手間は止める理由になりません。受け取る二人の負担が、止める理由になります。そして負担の大きさは、通数ではなく、中身で決まります。

材料のある通は、受け取る側にとって情報です

同じ1通でも、受け取る側の受け止め方は中身で変わります。

  • 「その後いかがですか?」だけの連絡は、受け取る側にとって何も増えません。返事の義務だけが増えます
  • 「見学のときに迷っていると話されていた、○○について調べました」は、受け取る側の手元の情報が増えます

前者は、1通目でも負担になります。後者は、5通目でも負担になりません。通数の上限を決めるより、1通ずつ「これは何を渡す連絡か」を言えるかどうかを見るほうが、現場では実用的です。

では、どんな材料があるか。渡せるものを棚卸しします。

追客で渡せる材料を、通ごとに並べる

僕が整理するなら、次の順で材料を並べます。順番は、二人が悩む順番に合わせています。

1通目:見学で聞いた迷いへの回答

見学のとき、二人が口にした迷いや質問に、その場で答えきれなかったものがあるはずです。人数の変更はどこまで可能か、持ち込みはできるか、費用の内訳はどうなっているか。その回答を、見学の翌日から数日のうちに送ります。

これは追客というより、見学の続きです。二人が覚えているうちに送れば、受け取る側の負担もありません。見学中にメモを取っておく担当者と、取っていない担当者で、この1通の質が変わります。

2通目:比べるときに必ず聞かれる質問への答え

迷っている二人は、他の会場と比べます。比べるとき、見積もりの内訳、キャンセルの規定、追加費用が出やすい項目は、必ず確認されます。担当者のほうから、先にそれを整理して送ります。

ここで気をつけるのは、他社との比較にしないことです。他の会場の悪口や、他社との優劣は書きません。自分の会場の条件を、二人が比べやすい形に整えるだけです。

3通目:空き日程の事実

二人が希望していた時期の空きが、見学時点から変わったかどうか。変わっていれば、事実として伝えます。ただし、「残りわずかです」と煽る書き方や、期限を切って決断を迫る書き方はしません。「○月○日は、見学時点では空いていましたが、現在は△時間帯のみになっています」のように、事実だけを書きます。

空きに変化が無ければ、この通は送りません。材料が無いからです。これが、通数ではなく材料で決めるということの実際の使い方です。

4通目:別の見方ができる機会

次回のフェアやイベント、試食の機会、見学では見られなかった時間帯の様子など、二人がもう一度来館する理由になるものです。これも、新しい機会があるときだけ送ります。同じフェアを2回案内するのは、材料の使い回しなので避けます。

この4つが尽きたときが、追客の止め時の目安です。送れる材料があるのに送らないのは機会損失ですし、材料が無いのに送るのは負担になります。

最後の一通は、閉じる連絡にする

材料が尽きたら、追客を止めます。止めるときは、黙って連絡をやめるのではなく、閉じる連絡を1通送ることを勧めます。

閉じる連絡の目的は2つあります。ひとつは、返事をしていない二人に、断りやすい出口を渡すことです。もうひとつは、まだ迷っている二人に、いつでも戻れる入口を渡すことです。

書く内容は短くて十分です。

  • これまでの連絡のお礼
  • 今後、こちらからの連絡は控えること
  • 気持ちが変わったとき、相談できる窓口が残っていること(予約ページへのリンクなど)

ここで、窓口は「いつでも戻ってきてください」と呼びかけるのではなく、予約ページの案内として置くのがよいです。呼びかけにすると、二人に返信の義務が生まれてしまいます。リンクが置いてあるだけなら、二人は義務を感じません。

閉じる連絡を送ると、一部の二人から「実は他に決めました」という返事が来ることがあります。これは悪いことではありません。他の式場に決めた理由を1問だけ聞く、という次の打ち手につながります。返事が止まったままだと、この情報は永遠に得られません。

間隔は、材料が溜まるまでの日数で決める

「何日おきに送るか」も、よく決められる項目です。僕は、材料が溜まる日数で決めるのがいいと考えています。

1通目は見学の翌日から数日以内。2通目は、1通目から数日あけて。3通目と4通目は、事実が変わったときです。間隔は固定せず、「材料ができた日」が送る日になります。

固定の間隔(たとえば「7日おき」)にすると、材料が無い週にも送ることになります。材料が無い通を送るくらいなら、その週は送らないほうが、受け取る二人にとって自然です。

ただし、材料が溜まるのを待ちすぎても困ります。見学から長く連絡が空くと、二人の記憶から会場が薄れます。1通目と2通目の間は、長くても1〜2週間程度で次の材料を用意できるよう、見学の時点で「次に何を送るか」を決めておくと動きやすいです。

探している期間がどれくらいかは、別の記事で整理しています。この記事で扱うのは、期間ではなく、その期間の中で何を送るかです。

自社で止め時を決める手順

最後に、自分の会場で止め時を決める手順を書きます。難しいことはありません。

  1. 過去に契約した組の追客履歴を見る。契約に動いた連絡が、何通目で、どんな中身だったかを一覧にする
  2. 契約に動いた連絡の中身を、「迷いへの回答」「比べる質問への答え」「空き日程の事実」「再来館の機会」に分ける
  3. 中身が分類できない連絡(「いかがですか?」だけ)が、契約に動いた連絡の中にどれだけあるかを数える
  4. 分類できる材料のうち、いま会場に用意できていないものを洗い出す
  5. 用意できる材料の数が、その会場の追客の通数になる

3で、中身の無い連絡が契約に動いたケースが多ければ、僕の整理は当てはまりません。その会場では、軽い連絡が効いている可能性があります。逆に、中身のある連絡が動かしているなら、通数は材料の数で決めていいはずです。

担当者ごとに通数がばらばらな会場なら、まず担当者の追客履歴を並べて見るだけでも、気づくことがあります。通数の多い担当者が成約しているのか、中身のある担当者が成約しているのか。数字が取れるなら、それが最も確かな判断材料です。

まとめ

  • 追客1通の手間は数百円で、粗利との桁の差が大きい。手間だけを見ると、何通送っても元は取れる
  • 止め時を決めるのは手間ではなく、受け取る二人の負担。負担は、通数ではなく中身で決まる
  • 「その後いかがですか?」だけの連絡は、受け取る側に何も増えない。1通目でも負担になる
  • 渡せる材料は、迷いへの回答、比べる質問への答え、空き日程の事実、再来館の機会の4つが目安
  • 材料が尽きたら追客を止める。止めるときは、断りやすい出口と戻りやすい入口を持つ、閉じる連絡を1通送る
  • 間隔は固定せず、材料ができた日を送る日にする。ただし長く空けすぎないよう、次の材料を見学時点で決めておく
  • 自社の止め時は、契約に動いた連絡の中身を分類して決める

追客は、回数の競争ではなく、渡せる材料の数で決まります。