来館・成約

フェア予約の2割が来ない仮の式場で、リマインドを入れると月に約1組の成約が増える。効くのは「無断」を「連絡あり」に変えることだ

ブライダルフェアの予約が入ったのに、当日に来ない。この「来ない」をどう数えているかで、リマインドを入れる意味はまったく変わってきます。

結論から書きます。リマインドの主な仕事は、来ない人を来させることではありません。来られなくなった人に、前日までに一言連絡してもらうことです。連絡があれば枠が空き、別の日に再予約してもらえます。連絡がなければ、枠も接客の準備も広告費も、そのまま消えます。

この記事では、ブライダルフェアの予約を月100件受ける仮の式場を置いて、無断で来ない人が2割いる場合にいくら消えているのか、リマインドでどこまで戻るのかを計算します。数字はすべて僕が置いた前提で、実在の式場の実績ではありません。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。

「来ない」を3つに分けて数える

予約したのに来なかった人を、まとめて「キャンセル」と数えている会場は多いと思います。ここを分けるところから始めます。

  • 来館した人
  • 前日までに連絡があって、来なかった人
  • 連絡がなくて、来なかった人

この3つは、式場にとっての意味がまったく違います。2つ目は、枠を空けて別の日の予約に回せるし、再予約の相談もできます。3つ目は、何も残りません。

予約サービスの事業者が書いているノーショー対策のガイドでも、無断キャンセルと事前連絡ありのキャンセルは分けて記録するよう勧められています。理由は、通知を入れるとキャンセルの件数が増えたように見えることがあるからです。実際には、無断だったものが連絡ありに変わっただけ、ということが起きます。キャンセル総数だけを見ていると、リマインドを入れた直後に「キャンセルが増えた、失敗だ」と判断して、やめてしまいます。

なお、このガイドは医療・美容・専門サービスの調査として、SMSのリマインダーだけで無断キャンセル率が29%から39%下がると紹介しています。ブライダルフェアの数字ではないので、僕は効果の見積もりには使いません。この記事の計算は、もっと低めの前提を自分で置いています。

仮の式場の前提

次の前提で計算します。

  • ブライダルフェアの予約は月100件
  • 1件の予約を取るのにかかる広告費と手間は、平均で6,000円
  • 予約した人の2割にあたる20件は、連絡なしで来ない
  • 来館した人の成約率は25%

来館は80件、成約は20件です。広告費と手間は月60万円なので、1成約あたり3万円になります。

無断で来なかった20件にかかった費用は、20件×6,000円で月12万円です。年にすると144万円。この12万円は、成約に結びつかなかったうえに、その枠を使えたはずの他の人にも届いていません。

ここで一つ、注意があります。月12万円が丸ごと損失になるわけではありません。見学の枠が余っている日に来なかっただけなら、枠そのものの損失はゼロです。枠が埋まっていて、同じ日時を希望して断った人がいた場合にだけ、枠の損失が足されます。広告費の12万円と、枠の損失は別に数えます。後者は、断った件数を記録していないと数字になりません。

リマインドで戻る分を、前提つきで計算する

無断で来なかった20件のうち、リマインドを入れると何件が動くのか。ここは実績がないので、前提を置きます。

前日に1回送る場合、20件のうち次のように動くと仮定します。

  • 25%の5件は、思い出して来館する
  • 15%の3件は、連絡をくれる。うち4割の1.2件は、別の日に再予約して来館する
  • 残りの60%、12件は、変わらず無断のまま

来館した5件は、もともと来ない気だった人が一定数いるはずなので、成約率は平均より低く、平均の6割(15%)とします。再予約した1.2件は、行く意思があったが都合がつかなかった人が多いので、平均の8割(20%)とします。

計算すると、成約の増分は次のようになります。

  • 5件×15%=0.75組
  • 1.2件×20%=0.24組
  • 合計で月約1組

無断の割合は20%から12%に下がります。来館は80件から86.2件に増え、成約は20組から約21組に増えます。1成約あたりの費用は3万円から約2万8,600円で、4.7%の改善です。

前日と当日の2回にして、来館に戻る割合が35%、連絡をくれる割合が20%、再予約が5割に上がるとすると、成約の増分は月約1.45組、無断の割合は9%になります。

数字を見て「たった1組か」と感じた方もいると思います。僕もそう思います。リマインドは成約を大きく動かす施策ではありません。ただ、送る手間は予約システムの設定で済みます。人が毎回電話をかけるのと違って、件数が増えても手間が増えません。月に1組増えれば、仮に客単価が300万円の会場なら、売上で月300万円です。

無断欠席の割合で、増える組数は変わる

最初に置いた2割という数字は、自分の会場の数字ではありません。無断欠席の割合が違えば、増える組数も違います。前日1回の前提のまま、割合だけを変えて計算します。

  • 無断が10%の会場:月約0.5組
  • 無断が20%の会場:月約1.0組
  • 無断が30%の会場:月約1.5組

増分は、ほぼ割合に比例します。つまり、いまの無断の割合が1割を切っている会場では、リマインドを入れても月0.5組以下です。この場合、リマインドに時間をかけるより、別のところに手を入れたほうがいいかもしれません。逆に、3割近い会場は、先に手を付ける価値があります。

自分の割合が分からないなら、先月の予約一覧から、来館・連絡あり・無断の3つに印を付けて数えてください。10分の作業です。

戻る割合を低く見積もると、どうなるか

上の計算は、無断の20件のうち4割(来館5件、連絡3件)が動く前提でした。これが甘い可能性もあるので、低い前提でも計算しておきます。

無断の20件のうち、来館に戻るのが10%の2件、連絡をくれるのが5%の1件、そのうち再予約が4割の0.4件だとします。成約率は先ほどと同じ前提で、増分は次のとおりです。

  • 2件×15%=0.3組
  • 0.4件×20%=0.08組
  • 合計で月約0.4組

月0.4組なら、2〜3か月に1組です。この場合の判断は、送る手間と見合うかどうかになります。予約システムの標準機能で自動送信できるなら、手間はほぼゼロなので、続ける価値は残ります。担当者が1件ずつ手で送るなら、月100件で100通になるので、先に枠が詰まりやすい日だけに絞ります。

この計算で言いたいのは、リマインドの効果は「1組」でも「0.4組」でも、自分の数字で確かめるまでは分からないということです。分からないものを、他業種の29%から39%という数字で埋めないほうがいいと僕は考えています。

送る時刻は、返信の来やすさで決める

リマインドの時刻は、ここまで触れてこなかった論点です。送る回数より、送る時刻のほうが結果を左右すると僕は考えています。

前日の夕方に送る場合、その日の夜か翌朝までに返信を見てもらえます。連絡を受けた式場は、当日の枠を別の予約に回す時間が残ります。一方、当日の朝に送ると、返信をもらっても、その枠に別の人を入れるのは難しいです。当日の朝のリマインドは、「来館してもらう」ほうに効く時刻と考えるのがよさそうです。

分かれ目を表にすると、こうなります。

  • 前日の夕方:連絡ありのキャンセルを増やし、再予約を取りやすい
  • 当日の朝:思い出して来館する人を増やす。枠は戻らない
  • 予約の直後:予約の確認が主な目的。リマインドにはならない

予約サービスの事業者のガイドが、予約直後に確認を1回送るだけでは数週間後には忘れられる、と指摘しているのも同じ理屈です。予約からフェアまで1か月近く空くことは珍しくありません。その場合は、1週間前にも送るかどうか、自分の会場の予約の取り方で決めます。

文面には、断りやすい出口を入れる

リマインドの文面は、来てほしいとお願いする文章に見えがちです。逆に、断りやすい出口をつけたほうが、連絡ありのキャンセルが増えます。

  • 日時と場所、所要時間を書く
  • 「ご都合が合わなくなった場合は、このメッセージに一言返信いただければ、別の日をご案内します」と書く
  • 返信の手間を減らす。電話をかけさせない。返信の一言、またはボタン1つにする

気をつけたいのは、キャンセル料を匂わせないことです。フェアの予約に費用はかからないのに、断ると不利になるような書き方をすると、連絡が来なくなります。無断の人は、連絡するのが気まずくて連絡しないことが多いと僕は想像しています。気まずさを減らす文面が、連絡ありを増やします。

滋賀県の消費生活相談の事例には、フェア当日に申込金を払ったあとでキャンセルを申し出たら返金を断られたというケースがあります。これは来館前のリマインドとは別の話ですが、キャンセルの連絡が式場にとって気まずい話題になっている会場では、来る側も連絡しづらくなります。連絡しやすさは、キャンセル対応の印象とつながっています。

数え方を決める

リマインドを入れる前に、効果を測る数字を決めておきます。決めずに入れると、前に書いたとおり、キャンセルの件数が増えて失敗に見えます。

  • 予約から来館までの来館率(来館÷予約)
  • 無断の割合(連絡なしで来なかった÷予約)
  • 連絡ありのキャンセルの件数と、そのうち再予約した件数
  • 空いた枠に、別の予約が入った件数

最初の2つは、リマインドを入れる前の2〜3か月分を遡って出しておきます。入れた後の同じ期間と比べます。1か月だけ比べると、予約の時期や天候で揺れて、効果が見えません。

見送ったほうがいい場合

リマインドを入れなくてよい会場もあります。

  • フェアの枠が常に余っていて、無断欠席が1割を切っている
  • 来館の前に必ず電話かメッセージで確認する運用がすでにあり、無断がほとんどない
  • 予約の受付が少なく、月に10件未満で、1件ずつ人が連絡できる

逆に、フェアの枠が埋まりやすい土日の午前や、繁忙期の人気時間帯は、1件の無断欠席が他の人の機会を奪います。全日程に一律で入れるより、先に枠が詰まりやすい時間帯に絞って入れるのも手です。

まとめ

  • 予約した人が来ない状態は、来館・連絡ありのキャンセル・無断の3つに分けて数える
  • 月100件予約で2割が無断なら、広告費と手間の月12万円(年144万円)が、成約に結びつかず消えている。ただし枠の損失は別に数える
  • 前日1回のリマインドで、仮の前提では成約が月約1組増える。前日と当日の2回なら約1.45組
  • 増える組数は無断の割合にほぼ比例する。1割未満の会場では月0.5組以下
  • 前日の夕方は枠を戻すため、当日の朝は来館を増やすため。時刻で役割が変わる
  • 文面には、断りやすい出口を入れる。目的は来てもらうことより、連絡をもらうこと
  • 入れる前に、来館率と無断の割合を2〜3か月分出しておく。キャンセル件数だけを見ない