キャンドルや花火の演出は、受ける前に消防署へ5つ聞く
キャンドルサービス、スパークラー(手持ち花火)、卓上のキャンドル、ケーキ入刀のときの炎の演出。二人から「やりたい」と言われて、その場で「できます」とも「できません」とも答えにくい演出の代表が、火を使うものです。担当プランナーが個人の感覚で答えると、同じ会場なのに、担当によって返事が違うことになります。
結論から書きます。火気の演出を受けるかどうかは、プランナーの経験ではなく、所轄の消防署に5つの項目を確かめて、その答えを社内の一枚にしておくことで決まります。受ける、条件つきで受ける、断る。この3つの線を先に引いておけば、見学や打合せの場で迷わなくなります。
この記事の中で、僕が出典を確かめられたのは、消防法の防火管理の大きな枠組みだけです。結婚式場の建物が消防法施行令のどの用途区分に当たるか、火気の使用に届出がいるかどうかは、自治体の火災予防条例や建物ごとの届出内容で変わります。僕は個別の条例まで確かめていません。具体的な可否は、必ず会場を管轄する消防署で確認してください。ここで書くのは、確認の順番と、決め方の型です。
なぜ「担当の感覚」で答えるとずれるのか
火気の演出が難しいのは、安全の話と商売の話が、同じ場面で起きるからです。
二人の側から見ると、キャンドルの炎は、挙式や披露宴でいちばん写真映えする演出のひとつです。断られると「他の式場ではできたのに」という不満になりやすい。一方で式場の側は、火事になれば人命と建物と信用を一度に失います。損害の大きさが非対称なので、迷ったときは断る方向に傾きます。
その結果、次のことが起きます。
- ベテランのプランナーは「前に問題なくできた」と受ける
- 新人のプランナーは「念のため」と断る
- 二人は、見学のときと打合せのときで言われることが違うと感じる
契約前に「できます」と言ったものを、契約後に取り消すのが、いちばん揉めます。キャンセル料や返金の話になるからです。だから、受けるか断るかは、契約前に誰が聞いても同じ答えになる状態にしておくのが先です。
消防法の枠組みで、式場が押さえておくこと
火気の可否そのものは、細かい条例に左右されます。ただ、その手前の枠組みは、経営者が知っておいてよい内容です。
消防法第8条は、一定の建物に防火管理者を置いて、消防計画を作り、避難訓練や設備の点検を行うことを求めています。自治体の案内では、不特定の人が出入りする特定防火対象物は、収容人員が30人以上になると防火管理者の選任が必要とされています。収容人員は従業員と客席の数などから数えます。披露宴会場は、スタッフとゲストを合わせて数えれば、30人を超える規模の会場がほとんどでしょう。
また、自治体によっては、劇場などでない建物でディナーショーのような催しを開くときに、届出を求めています。関係者だけで行い、不特定多数が参加しないものは除かれるという書き方の案内もあります。披露宴がこれに当たるかどうかは、自治体の判断次第です。僕には言い切れません。
ここで大事なのは、「うちの会場に防火管理者はいるか」「消防計画に火気の演出が書いてあるか」を、経営者が答えられるかどうかです。防火管理者は式場の名簿に名前があっても、現場の婚礼の演出までは把握していないことがよくあります。婚礼の担当と防火の担当が、別々に動いている会場ほど、火気の返事がぶれます。
消防署に聞く5つの項目
所轄の消防署には、予防課などの窓口があります。聞きに行くときは、「キャンドルはできますか」とは聞かないほうがいいです。答えが「場合によります」で終わるからです。次の5つを、紙にして持っていきます。
1. 使う炎の種類と大きさ
キャンドルサービスの手持ちのろうそく、卓上のキャンドル、スパークラー、ケーキの炎。炎の大きさと燃える時間が違うので、種類ごとに聞きます。屋内でスパークラーを使う前提が、そもそも認められるかどうかも、ここで確かめます。
2. 場所:屋内か、屋外か、どの部屋か
同じ演出でも、屋内のチャペル、披露宴会場、屋外のテラスで答えが変わります。天井の高さ、カーテンや装花などの燃えやすいものとの距離、スプリンクラーや煙感知器の位置が、判断の材料になります。会場の図面を持っていって、部屋ごとに聞きます。
3. 届出や申請が必要か
火気の使用や、催しの開催に、事前の届出がいるかどうかです。いるなら、いつまでに、誰が、何を出すのか。二人の挙式日の何日前までに出すのかが決まれば、そのまま打合せの日程表に入ります。
4. 消火の備え:誰が、何を持って待機するか
消火器の種類と数、水を張ったバケツ、濡れタオル。演出の間、スタッフの誰が火のそばに立つか。ここは、消防署の答えに加えて、社内の人員の配置の話になります。繁忙日にスタッフが足りないと、待機要員を出せません。人が足りないなら、その日は断る、という線もここで決まります。
5. ゲストの人数と席の間隔
収容人員が多いときの通路の幅や、ゲストが席を立って炎に近づくときの動線です。キャンドルサービスは、新郎新婦が各テーブルを回る演出なので、ゲストの席と席の間を火を持って歩きます。ここは、見学時に会場を見たときの印象ではなく、消防署の見方で確かめておきます。
聞いた答えから、3つの線を引く
5つの答えが出たら、演出ごとに次の3つに分けます。
| 区分 | 意味 | 二人への返事 |
|---|---|---|
| 受ける | 条件なしで、どの日でも対応できる | 「できます」と言い切る |
| 条件つきで受ける | 届出、待機要員、場所の限定などが必要 | 条件を紙で渡し、「この条件がそろえばできます」 |
| 断る | 消防署の答えや社内の人員で、安全が保てない | 理由と、代わりの演出を一緒に出す |
「条件つき」がいちばん多くなります。条件は、人の話を聞いて覚えるものではなく、紙で渡すものにします。口頭で「届出が要るかもしれません」と言うと、二人が忘れて、直前になって「できない」と感じるからです。
断るときは、理由を消防署の見解や会場の設備に置くと、二人は納得しやすくなります。「うちの方針で」とだけ言うと、選ばれなかったという印象が残ります。
断ったときに代わりに出す演出
炎の演出が叶わないとき、二人が欲しいのは、あの雰囲気を持つ写真と、全員で灯りを囲む時間です。代わりになる候補を、先に用意しておきます。
- 電池式のキャンドルライト(炎の揺れを模したもの)を、テーブルや手元に使う
- 照明の演出で、会場の灯りを落として、キャンドルのように見せる
- 屋外で、会場の外の許可が取れる場所に限ってスパークラーを使う(ここも消防署の確認が先)
ここで数字の話をします。これは出典のない、仮の計算です。
仮に、年間150組を受ける会場で、見学に来た二人の1割にあたる15組が、火気の演出を希望するとします。その15組のうち、「できない」と言われたときに他の会場へ移る割合を、仮に2割と置くと、3組です。1組の粗利を仮に100万円とすれば、300万円の機会損失です。逆に、火気を安易に全部受けて、事故が一度起きたときの損害は、数字に置けないほど大きくなります。
この仮の計算が示すのは、断ることの損失は小さくない、ということです。だから、「全部断る」を安全策にするのは、実は安くありません。断る件数を減らすために、条件つきで受けられる範囲を広げる。そのための消防署との確認と、待機要員の用意に、手間をかける価値があります。自社の件数に置き換えて、同じ計算をしてみてください。
社内の一枚にまとめる
消防署で確認したら、次の内容を一枚にします。
- 演出の種類(キャンドルサービス、スパークラー、卓上の炎、ケーキの炎)
- 場所ごとの可否(チャペル、披露宴会場、屋外)
- 条件(届出の期限、待機要員の人数、消火器の位置)
- 断るときの返事と、代わりの演出
- 消防署に確認した日付と、担当者の名前
5つ目が大事です。法令や条例は変わります。会場の改装で、スプリンクラーや間仕切りが変わることもあります。確認した日付がない一枚は、いつの時点の答えか分からなくなります。年に一度、または改装のたびに、取り直す運用にします。
見学や打合せのトークスクリプトにも、この一枚から一文だけ抜き出して入れます。「火を使う演出は、条件つきで対応できます。条件はこの紙のとおりです」。担当が誰でも、この一文は同じになります。
契約書と見積もりへの反映
炎の演出を受けるときは、契約書や見積もりに、次の2つを書いておきます。
- 演出を行うための届出や備品の費用(消火器の追加、待機要員の人件費など)を、誰が持つか
- 当日の天候や、消防署の指導、安全上の判断で、演出を取りやめることがあること
取りやめの規定があるかどうかで、当日のトラブルは大きく変わります。「当日、会場の判断で中止する場合がある」と、契約の段階で二人に伝えておけば、中止になっても、約束違反にはなりません。免責条項は、消費者契約法の面で効力が制限されることがあるので、書き方は弁護士に見てもらうのが確実です。
まとめ
- 火気の演出は、プランナーの感覚で答えると、担当によって返事がぶれる。契約前に誰が聞いても同じ答えにする
- 出典を確かめられた範囲では、防火管理者の選任は、収容人員30人以上の特定防火対象物で必要とされる。個別の可否は条例と建物で変わるので、所轄の消防署で確認する
- 消防署には、炎の種類、場所、届出、消火の備え、ゲストの人数と間隔の5つを、紙にして聞く
- 答えは「受ける」「条件つきで受ける」「断る」の3つに分け、条件は紙で渡す
- 断るときは理由を消防署の見解や設備に置き、電池式のキャンドルや照明など、代わりの演出を先に用意する
- 全部断るのは安全策に見えて、機会損失がある。仮の計算でも、条件つきで受ける範囲を広げる価値がある
- 確認した日付と担当者を一枚に残し、改装や法令の変更のたびに取り直す
