見学の帰り際に「友達に話すなら何と言いますか」と聞き、その言葉を使う
見学が終わって、二人が玄関で靴を履いている。式場のスタッフが「本日はありがとうございました」と頭を下げる。この数十秒は、ほとんどの会場で何にも使われていません。
僕は、この数十秒に1問だけ質問を置くことを勧めたいと思っています。「今日見たことを、お友達に話すとしたら、この会場のことを何と言いますか」という質問です。
結論から書きます。二人が友人に話す言葉は、会場ページの見出し、口コミ依頼の文面、見学予約ページの一文を書くときの、いちばん確かな材料になります。会場の側が考えた売り文句より、二人の口から出た言葉のほうが、次に探している二人に届きやすいはずです。
先に断っておくと、この記事の数字は出典のある統計ではありません。この1問で予約や成約がどれだけ増えるかを示す調査を、僕は見つけられていません。数字はすべて僕が置いた前提です。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。
会場の言葉と、二人の言葉はずれている
会場が自分たちを説明するときの言葉は、だいたい決まっています。「ゲストとの距離が近いアットホームな空間」「五感で味わうおもてなし」「世界に一つだけのウエディング」。社内で何度も議論して選んだ言葉なので、スタッフには違和感がありません。
一方で、見学を終えた二人が友人に話すときの言葉は、もっと別のところにあります。たとえば「駅から送迎バスがあって、親が楽そうだった」「庭が思ったより広かった」「担当の人が、うちの親の話をちゃんと聞いてくれた」「試食のお肉がやわらかかった」。
この二つのあいだにはずれがあります。ずれがあること自体は問題ではありません。問題は、会場のサイトも広告も媒体の掲載文も、前者の言葉だけで書かれていることです。これから探す二人は、後者の言葉で検索し、後者の言葉で友人に相談し、後者の言葉で口コミを読みます。
「アットホーム」と検索する二人は、あまりいません。「送迎バスあり」「親が来やすい」「庭がある」で探します。会場の文章がその言葉を持っていなければ、同じ会場でも候補に入りにくくなります。
なぜ「友達に話すなら」と聞くのか
聞き方には工夫がいります。「会場の印象はいかがでしたか」と聞くと、二人は礼儀として「素敵でした」と答えます。これは使えません。感想を聞くと、評価の言葉が返ってきます。評価の言葉は、どの会場にも通じるので材料になりません。
「友達に話すなら」と聞くと、答える側の頭の中で、相手が変わります。目の前のスタッフではなく、友人の顔が浮かびます。友人に話すときは、お世辞が要りません。相手が知りたいことを、短く、自分の言葉で言います。
もう一つ、この聞き方には良いところがあります。答えが「何を良かったと思ったか」ではなく、「何を人に伝えたいと思ったか」になることです。伝えたいと思うことは、二人が最初に覚えたことです。覚えたことは、次の会場を見るときの比較の物差しにもなります。
聞くタイミングと、記録の仕方
聞くのは帰り際、アンケート用紙ではなく口頭で
見学後アンケートに同じ質問を載せる手もありますが、僕は口頭を勧めます。用紙に書くと、二人は「ちゃんとした文章」にしようとして、言葉が硬くなるからです。玄関で靴を履きながら、スタッフが一言で聞く。答えも一言で返ってくる。このくらいの軽さがちょうどいいです。
見学の最後に、すでに「決める条件」を聞く会場もあると思います。それとは別の質問として扱ってください。決める条件は、成約を前に進めるための質問です。こちらは、会場の言葉を作るための質問です。目的が違うので、同じ場面で一緒に聞かないほうが、二人も答えやすくなります。
記録は1行、二人の言葉のまま
答えを聞いたら、スタッフは見学カルテの端か、スマホのメモに1行だけ書きます。ルールは3つです。
- 二人の言葉のまま書く。要約しない、言い換えない
- 「素敵でした」「よかったです」のような評価だけの返事は、書かずに空欄にする
- 名前や個人が特定できる情報は書かない。「彼女は〜」ではなく、答えの中身だけを書く
要約しないのが大事です。スタッフが書き直すと、会場の言葉に戻ってしまいます。「送迎バスが助かりそう」と言われたら、そのまま「送迎バスが助かりそう」と書きます。「アクセスの利便性」と直した時点で、材料の価値はなくなります。
答えを誘導しない
「お料理はいかがでしたか」のような聞き方で、答えを会場側の売りに寄せないでください。聞くのは1問だけ、選択肢も出さない。答えが出なくて沈黙する二人もいます。そのときは「思いつかなければ大丈夫です」と流して終わります。無理に引き出すと、今日の見学の最後の印象が悪くなります。
月1回、三つに分けて数える
1か月分の記録がたまったら、まとめて読みます。方法は簡単で、答えを次の三つに分けて、数えるだけです。
- 場所・設備の言葉(庭、バス、駐車場、トイレ、段差など)
- 人の言葉(担当者、スタッフの対応、親の扱いなど)
- 体験の言葉(料理、チャペルの光、試食、模擬挙式など)
三つに入らない答えは「その他」にします。「その他」が3割を超えたら、分け方を見直します。
分けるのは分析のためではありません。会場の売り文句がどこに偏っているかを見るためです。たとえば、記録の7割が「場所・設備」の言葉なのに、サイトの見出しは「体験」の言葉ばかり、ということが起きます。これが、会場の言葉と二人の言葉のずれです。
集めた言葉を、どこに使うか
使い道は3つあります。どれも、新しい制作物を増やす話ではなく、今ある文章の言葉を差し替える話です。
1. 会場ページの見出しと、検索結果の説明文
見出しや説明文に、二人の言葉をそのまま入れます。「送迎バスが助かりそう」と言った二人が複数いるなら、会場ページの見出しに「駅から送迎バスで、親も歩かずに着く会場」のような一文を置けます。二人の言葉を少し整えて、会場の約束にします。
ここで気をつけたいのは、約束できる事実だけを使うことです。言葉が良くても、実態と違うことは書けません。バスの本数が少ないなら、本数も一緒に書きます。
2. 口コミ依頼の文面
口コミの依頼文に「どんなところが良かったか教えてください」と書いても、書く側は何を書いていいか分かりません。ここに、集めた言葉から作った例を添えます。「例:送迎のこと、庭のこと、担当者のことなど」。ここでは、書く内容を指定するのではなく、書き出しのきっかけを渡すだけにします。
特典と引き換えに内容を指定すると、規制に触れるおそれがあります。例を示すのは、あくまで思い出す手がかりとしてです。
3. 見学予約ページの一文と、返信メールの書き出し
予約ページの「当日の流れ」や、見学前の案内メールに、二人の言葉を一言入れます。「ご来館いただいた方からは、『庭が思ったより広かった』という声を多くいただきます」のような書き方です。ただし「多くいただきます」と書けるのは、実際に記録がたまってからにしてください。数えていない件数を、感覚で書かないためです。
仮置きの数字で、手間を見積もる
手間が割に合うのかを、前提を置いて計算します。数字はすべて僕の仮置きです。
- 月の見学組数:24組
- 聞く時間:1組あたり30秒
- 記録の時間:1組あたり30秒
- 月の集計:読んで三つに分けるのに60分
- スタッフの時給換算:2,000円
月の聞き取りと記録は、24組×(30秒+30秒)で24分です。集計の60分を足すと、合計で84分、1.4時間になります。2,000円をかけて、月に約2,800円分の人件費です。年にすると約3万3,600円です。
この金額は、媒体の掲載費や広告費と比べれば小さな額です。ただし、損得はここでは決まりません。決まるのは、集めた言葉が実際に文章へ反映されるかどうかです。集めて読んだだけで、サイトの見出しが変わらないなら、手間だけが残ります。
だから、始める前に決めておくことがあります。「3か月分たまったら、会場ページの見出しを見直す」と、日付まで決めてしまいます。見直す担当者も決めます。担当者が決まらないなら、この取り組みは始めないほうがいいです。
判断の分かれ目
この1問が向くかどうかは、会場の状況で分かれます。
月の見学が10組を切る会場は、1か月分では答えが少なすぎます。三つに分けても、偏りが見えません。この場合は、集計を月1回ではなく3か月に1回にして、まとめて読みます。聞く手間は変わりません。
成約した二人だけを聞いている会場は、注意が要ります。成約しなかった二人にも聞いてください。成約した二人は会場を好きになっているので、言葉も好意的です。成約しなかった二人の言葉には、「他と比べて足りなかったこと」が混ざります。たとえば「きれいだったけど、駅から遠い」のような答えです。これは、見出しに使う言葉ではなく、会場ページの「不安に先回りして答える」部分の材料になります。成約した二人の言葉と、しなかった二人の言葉は、別々に集計します。
スタッフが聞くのをためらう会場は、聞く役を絞ります。全員に聞かせると、聞き方がばらばらになります。見学の担当者の中で、聞くのが苦にならない人を1人決めて、その人が帰り際に居合わせる運用にします。居合わせられない日は、聞かないと割り切ります。
やらないほうがいいこと
- 二人の言葉を、本人の許可なく名前入りで使うこと。言葉だけを使い、誰が言ったかは出しません
- 1人の強い言葉を、会場の総意のように使うこと。複数の二人から同じ言葉が出たものを選びます
- 集めた言葉に合わせて、実態と違う約束を書くこと。言葉は事実の範囲で使います
- 「友達に話すなら」を、スタッフの評価や接客の採点に使うこと。そうすると、スタッフが答えを誘導し始めます
まとめ
- 見学の帰り際に「お友達に話すなら、この会場を何と言いますか」と1問だけ聞く。感想を聞くと評価の言葉しか返らない
- 答えは1行、二人の言葉のまま記録する。要約すると会場の言葉に戻る。評価だけの返事は空欄にする
- 月1回、場所・設備、人、体験の三つに分けて数える。サイトの見出しと記録の偏りが、ずれの大きさになる
- 使い道は、会場ページの見出し、口コミ依頼の例、予約ページの一文。実態と合う言葉だけを使う
- 手間は、月24組で約1.4時間の仮置き。損得を分けるのは、3か月後に文章を直す担当者と日付を決めているか
- 成約しなかった二人の言葉は、見出しではなく不安に答える部分の材料にする。月10組を切る会場は、集計を3か月に1回にする
