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式場の来館特典は、ギフトを付けると成約が増えるのか

来館特典を付けると見学の予約は増えます。ここまでは多くの会場で実感があると思います。ただ、増えた来館が成約まで増やしているかは、別の話です。僕は「来館特典は、成約が増えたかで続けるか決める」のが筋だと考えています。この記事では、仮の数字を置いて、特典を付けたときに損得がどこで入れ替わるかを計算します。

先に断っておくと、特典の効果を示す統計は、今回の調査では見つけられませんでした。ゼクシィに載っているブライダルフェアの一覧を見ると、来館すると数万円分のギフトが付くもの、初めての来館に限ってギフト券と試食が付くものなどが並んでいます。つまり特典が広く使われていることは確かめられます。一方で、それが成約を増やすかを調べた数字は、僕の手元にはありません。だから以下の数字はすべて「仮に〜とすると」の置き方で、実在の会場の実績ではありません。

来館特典で見るべきなのは「来館数」ではない

特典を付けたあとの会議で、よく出る報告があります。「特典を付けたら来館が増えました」。これは本当だと思います。ギフトがもらえるなら見に行ってみよう、という二人は確実にいるからです。

ただ、会場にとっての成果は来館ではなく成約です。来館が増えても、増えた分の二人が契約しないなら、特典の費用と案内の時間だけが積み上がります。見るべきは次の3つです。

  • 来館数がどれだけ増えたか
  • 来館した二人のうち、契約する割合がどう動いたか
  • 特典の費用を、成約の数で割るといくらになるか

この3つのうち、特典を付けた直後に動くのは1つ目だけです。2つ目と3つ目は、契約まで1〜2か月かかる二人もいるので、数か月たってからでないと分かりません。ここに判断の難しさがあります。

仮の数字で、損得の分かれ目を計算する

ここから先は想定の計算です。前提を置きます。

  • 特典なしのとき、月の来館は40組、来館から成約までの割合は25%(成約10組)
  • 特典は来館した全組に1万円分のギフトを渡す
  • 特典を付けると、来館は30%増えて52組になる

最初に押さえたいのは、特典の費用です。52組に1万円なので、月52万円です。来館が増えた分の12組だけでなく、もともと来るはずだった40組にも渡すところが、特典の費用を重くします。

ここで、特典を付けたあとの成約率が何%になるかで、結果が変わります。

特典後の成約率 来館 成約 特典費用 成約1組あたりの特典費用
25%(変わらない) 52組 13.0組 52万円 約4.0万円
20% 52組 10.4組 52万円 約5.0万円
18% 52組 9.4組 52万円 約5.6万円

成約率が25%のまま保たれるなら、成約は10組から13組に増えます。52万円で3組増えるので、増えた1組あたりの費用は約17万円です。

成約率が20%まで下がると、成約は10.4組です。52万円をかけて、増えた成約は0.4組。増えた1組あたりの費用は、計算上130万円になります。

さらに、成約率が約19.2%(5分の1より少し低い値)まで下がると、成約は10組のままで、特典の費用だけが残ります。この前提では、成約率が約19%を割った時点で、特典は成約を1組も増やしていないことになります。

大事なのは、損得を分けるのが来館の増え方だけではなく、成約率の下がり方との組み合わせだという点です。来館が30%増えても、成約率が25%から19%に落ちたら、成約は増えません。

成約率が下がるのは、どんな二人が増えるときか

特典で成約率が下がるのは、特典を目当てに来る二人が混ざるからです。ここでいう「目当て」は悪い意味ではなく、動機が「その会場を見たい」ではなく「ギフトをもらえるついでに見る」に寄る、という意味です。

こういう二人は、見学の時間の使い方が違います。

  • 複数の会場を、特典の多い順に回る
  • 来館時点で挙式の時期が決まっておらず、検討の始まりが浅い
  • 見学は1件目でも、契約は何件も見たあとにするつもりでいる

この傾向は、会場ごとの数字を取って初めて分かります。特典を付けた月と付けなかった月で、来館した二人に次の2つを聞いておくと、動機の混ざり方が見えます。

  • 見学した会場は、この会場が何件目か
  • 会場を知ったきっかけは、特典の告知か、それ以外か

これは来館時のアンケート1〜2問で足ります。回収の手間を増やす前に、既に取っている予約フォームの項目に足すのが現実的です。

続けるかやめるかを決める3つの線

数字を見る順番を決めておくと、判断がぶれにくくなります。僕なら次の3つを先に決めます。

1. 見る期間を決める

来館から成約までに日数がかかるので、特典を付けた月の成約率は、その月の終わりでは確定しません。たとえば契約までに平均1〜2か月かかる会場なら、特典を始めた月の来館が確定するのは2〜3か月後です。評価の時期を最初に決めておかないと、来館が増えた最初の月に「効いている」と判断してしまいます。

2. 成約率の下限を決める

さきほどの計算で、成約率がいくつまで下がると成約が増えなくなるかは、割り算で出ます。特典なしの成約数を、特典ありの来館数で割った値です。

  • 特典なしの成約数 ÷ 特典ありの来館数 = 成約率の下限

この下限を割ったら、特典は成約を増やしていません。下限を割らなくても、下限に近いなら、費用に見合う成約が増えていないことになります。下限と実際の成約率のあいだに、特典の費用を成約の増加分で割った額が見合う余裕があるかが、続ける条件です。

3. 増えた成約1組に払える額を決める

増えた成約1組に払える上限は、その会場の成約1組から残る利益から決めます。ここは会場ごとに違うので、数字は書きません。ただ、特典を始める前に「増えた1組に、これ以上は払わない」という額を決めておくと、さきほどの17万円や130万円が出たときに、続けるかどうかを機械的に判断できます。

特典の形を変えるという手もある

やめるかどうかの二択ではなく、特典の渡し方を変える方法もあります。計算上の違いだけ整理します。

形 費用がかかる相手 起きやすいこと
来館した全員にギフト 来館した全員 来館は増えやすいが、費用が重い
初めての来館だけにギフト 初回の二人 費用は抑えられるが、2件目以降の二人には届かない
試食を無料にする 試食を申し込んだ二人 食事を見たい二人が集まり、会場の強みと噛み合えば成約率を保ちやすい
成約時に特典を渡す 契約した二人 費用は成約した分だけ。来館を増やす力は弱い

全員に渡す形は、さきほどの計算のとおり、もともと来る二人にも費用が出ます。費用の重さが気になるなら、渡す対象を絞るか、渡すタイミングを成約側に寄せる形が選択肢になります。試食を特典にする場合は、食事が強みの会場なら、見学の中身と特典が重なるので、動機が会場に向きやすいと考えられます。これは仕組みから考えた推測で、効果を示す数字はありません。

特典をやめるときに見ておくこと

やめると決めたときも、手順があります。特典を急にやめると、来館が一気に戻って、月の来館が特典前より減って見えることがあります。予約が入っている二人には、予約時に案内した特典を渡さないと信頼を損ねます。やめる日を決めて、予約時に案内していた分は渡し切り、新しい予約の案内からやめるのが安全です。

また、特典をやめた月の数字は、特典を付けていた月との比較に使えます。続けるかやめるかを決めるデータは、やめた月にも取れます。特典ありとなしを交互に数か月続け、成約の数を並べて見るのは、小さな会場でもできる比べ方です。ただし月ごとの来館数に季節の差があるので、同じ月の前年と比べるなど、時期をそろえて読む必要があります。

ギフトの額を変えると、何が動くか

もう一つ、額の問題があります。特典の額を変えても、成約率の下限(約19%)は動きません。下限は「特典なしの成約数 ÷ 特典ありの来館数」で決まり、特典の額は入っていないからです。動くのは、増えた成約1組あたりの費用です。

同じ前提(来館52組、特典後の成約率22%、成約11.4組で1.4組増)で、額だけを変えて計算するとこうなります。

ギフトの額 特典費用(52組) 増えた成約1組あたり
5,000円 26万円 約18万円
10,000円 52万円 約36万円
20,000円 104万円 約72万円

額を倍にすると、増えた1組あたりの費用も倍になります。一方で、額を倍にしても、来館が倍に増えるとは限りません。ここも仮の数字ですが、額を上げて来館がもう1割増えたとしても、成約率が下がる方向に働くなら、増えた1組あたりの費用はむしろ重くなります。額を上げる前に、いまの額で成約率がどう動いたかを先に読むほうが安全です。

特典を付けるかどうかが決まらないうちに額の議論をすると、「他の会場が3万円なのでうちも」という競り合いになりがちです。他の会場の額は、成約率の下限にも、増えた1組あたりの費用にも入りません。額は、自分の会場の成約1組に払える上限から決めるものです。

まとめ

  • 来館特典は、来館数が増えたかではなく、成約が増えたかで続けるか決める
  • 仮の計算では、来館が3割増えても、成約率が約19%を割ると成約は増えない
  • 特典は来る予定だった二人にも出るので、費用は増えた来館の分より重い
  • 評価の期間、成約率の下限、増えた1組に払える額の3つを、始める前に決める
  • 全員に渡す形は費用が重いので、対象を初回に絞る、試食に変える、成約時に渡すといった形も比べる
  • やめるときは、予約時に案内した分を渡し切り、新しい案内からやめる

来館が増えたという報告を、成約が増えたという報告に読み替えられるかどうかが、特典の続け方を決めます。