集客

式場のイベント出展は来館予約の組数で続けるか決める

商業施設の催事スペースや、地域の合同ブライダルイベントに、式場がブースを出す。担当者を二人出して、パンフレットとノベルティを並べて、半日から一日立つ。終わると手元には「アンケート用紙が○枚」「連絡先をもらえたのが○組」という数字が残ります。

この数字を見て「今回は盛況だった」と感じるのは自然です。ただ、僕は出展を続けるかどうかの判断を、連絡先の数でしないほうがいいと考えています。連絡先は、ブースの前に立った人が名前を書いたという事実しか示さないからです。その人たちが式場まで来てくれたのか、来た人が契約したのかは、別の数字になります。

この記事は調査データの紹介ではなく、出展の判断を組み立てる話です。数字はすべて「仮に〜とすると」と置いた想定で、実際の式場の実績ではありません。自分の会場に当てはめて使えるように、計算の形を中心に書きます。業界全体でこうなっている、とは言いません。仕組みとして、こうなりやすいという範囲に留めます。

連絡先の数は、続ける理由にも止める理由にもなってしまう

連絡先の数で判断すると、困ったことが起きます。多く集まれば「効果があった」、少なければ「この場所は合わなかった」と読めてしまうのです。どちらの結果が出ても、続ける理由と止める理由が両方作れます。判断の材料として役に立っていません。

理由は、連絡先が「入り口の数」だからです。出展から成約までは、次のように何段階かに分かれます。

  1. ブースの前を通った人
  2. 立ち止まって話した人
  3. 連絡先を書いた人
  4. 後日、来館を予約した人
  5. 実際に来館した人
  6. 契約した人

連絡先は3番目です。ここまでの段階は、ノベルティの内容や、担当者の声かけのうまさで増減します。たとえば、無料の試食券をつけて連絡先を集めれば、3番目の数は簡単に増えます。でもその人たちが4番目に進むかどうかは、また別の話です。

だから見るべき数字は、4番目の「来館を予約した人」にします。式場の営業としては、来館が入ってはじめて、ふだんの見学と同じ流れに乗せられます。ここから先の成約率は、すでに会場の中に持っている数字を使えます。出展のためだけに新しい指標を作らなくていいのも、この位置で切る利点です。

出展1回の費用は、出展料だけではない

次に、費用の側を整理します。出展料だけを見ていると、判断が甘くなります。出展には次のような費用がかかります。

  • 出展料(主催側に払う金額)
  • スタッフの人件費(拘束時間ぶん。休日出勤なら割増も)
  • 資材費(パネル、パンフレット、ノベルティ、試食を出すなら食材)
  • 準備と片付けの時間
  • 出展後のフォローの手間(連絡、来館予約の調整)

ここで仮に、次の前提を置きます。実際の金額は会場ごとに違うので、自分の数字に置き換えてください。

  • 出展料:20万円
  • スタッフ2人が8時間拘束、時給1,500円換算:2.4万円
  • 資材とノベルティ:3万円

合計は25.4万円です。休日出勤の割増や、準備の時間を入れれば、もう少し膨らみます。ここでは25.4万円のまま進めます。

「出展料は20万円だから高くない」と思っていても、人件費と資材まで足すと、25万円を超えます。この金額を、あとで割る側に使います。

1組あたりの費用を、3つの段階で割る

仮に、半日の出展で次の結果だったとします。

  • ブースで話した人:30組
  • 連絡先をもらえた:12組
  • そのうち、来館を予約した:4組
  • 来館後の成約率:30%(会場のふだんの数字を仮に使う)

25.4万円を、段階ごとに割ってみます。

割る相手 1組あたりの費用
連絡先を書いた12組 約2.1万円
来館を予約した4組 約6.4万円
契約になる見込みの1.2組(4組×30%) 約21万円

同じ25.4万円でも、割る数が変わると、見え方がまったく変わります。連絡先1組あたり2万円なら「安いもの」に見えます。ところが契約1組あたりで見ると、21万円かかっています。

これが高いかどうかは、1組が契約したときに会場に残る粗利と比べないと決まりません。仮に、1組の契約で残る粗利が100万円だとします。その場合、契約1組を得るのに21万円かけて、残りが約79万円です。続けてよい水準に見えます。粗利が40万円なら、残りは約19万円。ここは他の集客手段と並べて、見比べる段階に入ります。

大事なのは、この比較を「連絡先」ではなく「契約1組あたり」の土俵で行うことです。ほかの集客手段、たとえば媒体や広告の費用も、契約1組あたりに直せば同じ表に並べられます。

来館予約が2組だったら、判断は大きく変わる

同じ前提で、来館予約が4組ではなく2組だった場合も見ます。連絡先が12組であることは変わりません。

  • 来館予約2組、成約率30%で契約見込みは0.6組
  • 契約1組あたりの費用は、25.4万円÷0.6で約42万円

連絡先から見ると、前の回と同じ「12組」です。でも契約1組あたりの費用は2倍になります。連絡先の数を見ていると、この違いは気づけません。

逆に言えば、連絡先は少なくても、来館につながった回は良い出展です。たとえば連絡先は8組でも、来館予約が4組なら、先ほどと同じ6.4万円で来館1組を得ています。ブースの前で多くの人に声をかけるより、少ない人と深く話した結果かもしれません。この差は、連絡先の数では読めないところです。

出展の結果は、1回では判断しにくい

ここで一つ注意があります。来館予約の組数は、1回の出展ではぶれます。4組と2組の差は、偶然で生まれることもあるからです。

サンプルが少ないときに、1回の結果で続けるか止めるかを決めてしまうと、偶然に振り回されます。僕は次のような決め方が現実的だと考えています。

  • 同じ種類の出展は、最低でも3回やってから合計で見る
  • 3回の合計で、来館予約の組数と、1組あたりの費用を出す
  • 1回目の結果だけで、場所や形式を替えない(替えると比べられなくなる)

3回は目安で、根拠のある数字ではありません。会場の規模や、出展の頻度で変えてください。ただ「1回で判断しない」と決めておくだけで、だいぶ迷いが減ります。

3回やっても来館予約が合計で数組にとどまるなら、続ける理由は薄くなります。反対に、毎回2〜4組の来館予約が入るなら、その出展は「安定して来館を作る手段」として位置づけられます。

出展経由の来館を、ほかと見分ける方法

出展の効果を数字で見るには、来館した二人が「出展経由」だと分かる必要があります。ここが曖昧だと、せっかくの計算ができません。方法はむずかしくありません。

  • 出展専用の予約ページを用意する(URLを分ける)
  • ブースで渡すパンフレットの二次元コードを、出展専用のリンクにする
  • 来館予約のとき「どこで当会場を知りましたか」を聞く項目に、イベント名を入れる

一つだけに頼らず、二つ以上を重ねるのが現実的です。二次元コードだけにすると、コードを読まずに後日検索して予約した人が「公式サイト経由」に混ざってしまいます。そのため、予約時に直接聞く項目もあわせて置くと、取りこぼしが減ります。

また、出展で知った人が、そのあとに他の媒体でも情報を見て予約することは、よくあります。この場合、出展が最後のきっかけではなくても、最初の認知に役立っています。ここは厳密に切り分けようとしすぎないほうがいいです。出展後の一定期間(たとえば1か月)に、出展で連絡先を渡した二人が予約したかどうか、という名簿の突き合わせで見れば十分に実用的です。

続けると決めたあとに、見直すところ

出展を続ける場合でも、毎回同じやり方でいいとは限りません。結果が良い回と悪い回を比べると、見直す場所は次の3つに絞れます。

1. 連絡先を取るときに、来館のきっかけを一緒に置く

連絡先を書いてもらうだけで終わらせず、その場で「見学日を仮で決めますか」と聞きます。ブースでできるのは、ふだんの見学の入り口までです。ここで日程のカレンダーを見せられると、後日の連絡を待つ時間が減ります。

2. 声をかける相手を絞る

商業施設は、結婚と関係のない人も多く通ります。婚約中らしい二人に絞って声をかけるのは気が引けますが、パネルの内容や置き物で「今、式場を探している人向けです」と分かるようにするだけでも、話す相手の質は変わります。

3. フォローの速さを決めておく

連絡先をもらってから、最初の連絡までの日数は、来館予約の組数に影響しやすい部分です。出展後の連絡を、当日か翌日のうちに送る手順にしておくと、熱が冷める前に次の話に入れます。担当者が出展の疲れで後回しにしないように、送るメッセージを前日までに作っておくのが確実です。

やめる判断の線も、先に決めておく

続ける線と同時に、やめる線も出展の前に決めておきます。結果を見てから線を引くと、どうしても「次は良くなるかも」と引き延ばしたくなるからです。

たとえば次のような形です。

  • 3回出展して、来館予約が合計で○組に届かなければ、その場所からは撤退する
  • 契約1組あたりの費用が、ほかの集客手段の水準を2回続けて上回ったら、形式を替える
  • 担当者の負担が大きくて通常の見学対応に支障が出るなら、頻度を減らす

○組の数字は、会場の粗利や、他の手段の費用で決まります。この記事で数字を指定しないのは、会場ごとに違うからです。自分の会場の契約1組あたりの許容額を、先に1つ決めてください。そこから逆算して、来館予約が何組必要かが出ます。

まとめ

  • 出展の結果は、連絡先の数ではなく、来館予約の組数で見る
  • 費用は出展料だけでなく、人件費と資材まで足して、25万円前後になる想定で計算する
  • 同じ費用でも、連絡先で割る、来館予約で割る、契約見込みで割る、で見え方が大きく変わる。比較は契約1組あたりで揃える
  • 1回の結果は偶然でぶれる。同じ形式で3回ほど続けて、合計で判断する
  • 出展経由の来館は、専用の予約ページと二次元コード、予約時の質問を重ねて拾う
  • 続ける線とやめる線は、結果を見る前に、会場の粗利から逆算して決めておく