来館・成約

ボーナス後に決めると言われた二人への追客は、支給日から数える

式場見学の終わりに、二人から「ボーナスが入ってから決めます」と言われることがあります。担当者としては、断られたわけではないので「ではご連絡をお待ちしています」と返して、そのまま見積もりを渡して帰す。ここで多くの式場が、次の連絡の時期を決めないまま、通常の追客の流れに戻してしまいます。

僕は、保留の理由が「ボーナス」だと分かったときは、追客の日を通常の間隔ではなく、支給日から数えて置くほうがいいと考えています。理由は、二人が決めるのを待っている条件が、式場の側ではなく二人の勤め先のカレンダーの上にあるからです。この記事では、その言葉が出たときに何を聞くか、連絡をいつ入れるか、見積もりの有効期限をどう置くかを、判断の条件として整理します。

なお、出てくる数字は説明のために僕が置いた仮の前提です。調査から引いた数字ではないので、自社の来館数や成約率に置き換えて読んでください。

「ボーナスが入ってから」は、断りの言葉ではありません

「ボーナス後に決めたい」は、見学の場でよく出る保留の言い方です。ただ、この一言には中身が3種類あります。

1つめは、本当に支給額で契約の可否を決める二人です。初期費用の見込みや、親からの援助とは別に、賞与を頭金や内金に回す計画があって、金額が確定するまで動けない。

2つめは、金額は関係なく、その場で決めたくないときの断り文句としてボーナスを使っている二人です。「検討します」の言い換えとして、角が立たない理由を出している。

3つめは、ボーナスの有無そのものを、まだ二人の間で話し合っていない二人です。片方が「入ったら考えよう」と言い、もう片方は初耳ということもあります。

この3つは、同じ言葉で出てくるのに、取るべき動きが違います。1つめには、支給のタイミングに合わせた連絡が効きます。2つめには、ボーナスの話を深追いしても効果が薄く、別の迷いを聞く必要があります。3つめには、見積もりの渡し方を二人で話し合える形に変えることが先です。だから、言葉が出た時点で、どれなのかを見分ける質問を1つだけ入れておきます。

見分ける質問は「どれくらいの時期に、何を決めたいか」の1つだけ

見学の最後に聞くのは、金額ではなく時期と用途です。たとえば次のような聞き方です。

「ボーナスは、いつごろ入る予定ですか。お急ぎでなければ、そのあとに内金のことも含めてご相談しましょう。」

ここで聞いているのは、賞与の額ではありません。支給の月と、二人がその賞与を結婚式のどの部分に充てるつもりかです。額は聞きにくく、答えにくい。時期と用途なら、二人は構えずに答えられます。

返ってくる答えで、先ほどの3つに分けられます。

  • 「6月の頭です。内金に回す予定です」のように具体的に出る → 1つめ。支給日が決まっていて用途もある
  • 「ちょっと分からないです」「まだ話してなくて」 → 3つめ。二人で話す材料が要る
  • 「いつ入るかはまだ…とにかく一度持ち帰って」 → 2つめの可能性が高い。ボーナスの話は閉じて、別の迷いを聞く

分かりやすいのは、3つめと2つめが同じ「分からない」で出てくることです。見分けにくいときは、無理に判定しないで、次の「連絡の置き方」を3つめに寄せておきます。二人で話し合う材料を渡す連絡なら、2つめの二人にも害がないからです。

追客は「見学から何日後」でなく「支給日から何日後」に置く

通常の追客は、見学日から数えて、翌日にお礼、3日後に確認、というように、見学日を起点に組みます。ボーナスが理由の保留では、この起点を替えます。

仮の前提で見てみます。見学日を5月20日、支給日を6月10日前後と聞いたとします。通常の追客のまま進めると、連絡の候補は5月21日、5月23日あたりに集まります。この時点で二人は、まだ賞与が入っていないので、決める条件が揃っていません。連絡を受けても「まだ入っていないので」としか返せない。回数を重ねると、催促されている印象だけが残ります。

起点を支給日に替えると、次のようになります。

  • 5月21日:お礼の連絡だけ。決めてほしいとは書かない
  • 6月上旬:支給日の1週間前に、見積もりの再送と、内金の支払い方法の案内を送る。額が確定したときにすぐ判断できる材料を渡す
  • 6月15日前後:支給日の数日後に、日程の空き状況を短く送る

間の3週間は、連絡しません。ここが大事なところで、通常の追客の考え方と一番違います。連絡を入れない期間を置くのは、放置するためではなく、二人が待っている条件が揃うまでは、式場から言えることが何もないからです。

連絡を入れない期間に、式場が先に整えておくこと

連絡しない3週間は、式場にとって何もしない期間ではありません。支給日の連絡で二人がすぐ判断できるように、次の3つを整えておきます。

1つめは、見積もりの総額と内金を、別の紙で示すことです。賞与で内金を払う二人にとって、知りたいのは総額より、契約したときに最初にいくら出ていくかです。見積書の中に埋もれていると、再送されても探す手間がかかります。1枚に「契約時にお支払いいただく額」と「その後の支払いの時期」だけを書いたものを用意しておきます。

2つめは、希望の日取りの仮押さえの期限を、支給日の後に置くことです。仮押さえの期限が支給日より前だと、二人は賞与が入る前に決めるか、日取りを手放すかの二択になります。期限が長いと人気日を他の組に渡せないので、式場には負担です。ここは次の節で扱います。

3つめは、二人の話し合いに使える一言を用意しておくことです。3つめのタイプの二人は、「ボーナスのことをまだ話していない」状態です。再送する見積もりに、「ボーナスが入る時期が決まったら、内金に回せそうか、お二人で話してみてください」と添えるだけで、二人の間で話題になります。

見積もりの有効期限と仮押さえは、支給日に合わせて延ばすかを決める

ここが式場にとって一番悩ましい点です。支給日が6月10日なら、そこまで見積もりの有効期限や日取りの仮押さえを延ばすのか。

判断の条件は2つです。

条件1:その日取りに、他の組から問い合わせが入りそうか。 人気の高い日取りなら、3週間の仮押さえは機会損失になりえます。仮に、その日取りに別の組が決める確率を毎週1割と置くと、3週間でその日取りが他の組に取られる確率は、1から0.9の3乗を引いて約27%です。つまり、仮押さえを延ばすと、4組に1組程度は、延ばしている間に他の組を断る計算になります。この数字は仮の前提なので、自社の日取りごとの問い合わせ数で置き換えてください。

条件2:二人が本当に賞与で決める二人か。 見分けた結果、1つめのタイプなら、延ばす価値があります。3つめや2つめの可能性が高いなら、延ばさず、通常の期限のまま、期限が来る前に連絡して延長の相談を受けるほうが安全です。

この2つを組み合わせると、次の表になります。

他の組の問い合わせが多い日取り 少ない日取り
賞与で決める二人(1つめ) 期限は延ばさず、日取りを変えられるか聞く 支給日の数日後まで延ばす
それ以外(2つめ・3つめ) 通常の期限のまま 通常の期限のまま、期限前に連絡

左上のマスだけは、延ばすか変えるかで迷います。人気日で、しかも賞与待ちの二人です。ここでは「日取りを守るために、先に内金の一部だけ入れる」という選択肢を示すのが、二人にとっても式場にとっても現実的です。ただし、これは二人から申し出がない限り、式場から押しつけると圧に感じられます。選択肢として並べて、決めるのは二人に任せます。

支給日の連絡は、催促でなく「準備ができています」にする

支給日が近づいたときの連絡で、一番避けたいのは「ボーナスはもう入りましたか」という聞き方です。質問の形が、二人から見ると催促に見えます。

代わりに、準備ができていることを伝える形にします。

「ご希望の日取りは、現在も空いています。内金のお支払いは、カードでも振込でもお選びいただけます。ご判断に必要な資料は、前回お渡ししたものに一枚足してあります。」

ここには、決めてほしいという言葉がありません。それでも、二人が賞与が入った時点で何をすればいいのかは全部書いてあります。決めるきっかけは、二人の側に残します。

もう1つ、この連絡には「返信は急ぎません」と書いておくほうがいいと僕は考えています。急かさないと書くと、反応が遅くなるのではと心配する人もいますが、二人は急かされていないと分かるほど、返信しやすくなります。期限を示したいときは、日取りの期限を事実として一度だけ書けば足ります。

数字で効果を見るなら、保留の種類を分けて数える

この動きが効いているかどうかは、保留のうち「ボーナス待ち」と記録した組だけで見ます。全体の成約率に混ぜると、効いたのか、他の要因で上下したのか分かりません。

記録するのは3つです。

  • 見学時に「ボーナス後に決めたい」と言われた組の数
  • そのうち、支給日の前後に連絡を入れた組の数
  • その中で、契約に進んだ組の数

仮の前提で、ボーナス待ちの保留が1シーズンに20組あったとします。見学日起点で追客していたシーズンは3組が契約に進み、支給日起点に替えたシーズンは5組が進んだとすると、成約率は15%から25%に上がった計算です。この差が2組分の売上になるかどうかは、客単価で決まります。ただ、20組という母数は小さいので、2組の差は偶然でも動きます。1シーズンで結論を出さず、夏と冬の2回、あるいは2年分を並べて見るのが現実的です。

効果が見えなかったときも、その理由を切り分けられます。支給日前後の連絡で返信が増えたのに契約が増えていなければ、金額の問題です。返信自体が増えていなければ、連絡の中身か、ボーナス待ちという理由が断り文句だった可能性です。

夏と冬で、聞くことを少し変える

ボーナスと一口に言っても、夏と冬では二人の計画が少し違うと考えられます。ここは調査で確かめたことではなく、二人の使い方の仮説です。

夏の賞与を待つ二人は、秋から翌春の挙式を考えている可能性があります。支給日から挙式まで半年以上あるので、内金のあとの積立も含めて、支払いの計画を見せると安心されやすい。

冬の賞与を待つ二人は、年末年始で式場探しが一度止まります。支給日の連絡が12月の半ばになると、年末の挨拶に紛れてしまうので、連絡は年内の早い時期に置き、年明けの連絡は短くして負担を減らします。

どちらも、自社の見学データで、見学日から契約日までの日数を月別に見れば、賞与に近い月に契約が寄るかどうかは確かめられます。寄っているなら、仮説が当たっている可能性が高く、寄っていないなら、この動きは優先度を下げてよいことになります。

まとめ

  • 「ボーナスが入ってから」は、金額待ち、断りの代わり、二人で未相談のどれかです。時期と用途を聞くと見分けやすくなります
  • 追客の起点は、見学日ではなく支給日に置きます。支給日までの間は、お礼の連絡以外、あえて入れません
  • 連絡しない期間に、契約時に出ていく額を1枚にまとめ、仮押さえの期限を決めておきます
  • 仮押さえを延ばすかは、日取りの人気と、賞与で決める二人かどうかの2つで決めます
  • 支給日の連絡は、催促でなく「準備ができています」の形で送ります
  • 効果は、ボーナス待ちと記録した組だけで、夏と冬の2回以上並べて見ます