式場の辞退連絡には、引き止めず理由を3択で聞く
見学のあと、二人から「他の式場に決めました」と連絡が来ることがあります。多くの会場では、この連絡に「承知しました、ありがとうございました」と返して終わりです。あるいは、返信しないまま流れていきます。
僕の結論は、引き止めない、そのかわり理由を3択で1問だけ聞く、です。引き止めても決まった話は戻りません。一方で、辞退の連絡は、見学した二人が自分から理由を言ってくれる数少ない場面です。ここを聞かずに終えるのは、もったいないと思っています。
この記事に出典はありません。数字は僕が置いた仮のもので、業界の平均値ではありません。判断の条件と段取りが中心なので、数字は自分の会場のものに置き換えて読んでください。
辞退連絡は、理由が手に入る数少ない場面です
見学したのに契約に至らなかった二人が、なぜ決めなかったのか。会場側が知る方法は、実はあまりありません。
見学のときの反応は、二人が気を遣って言わないことを含みます。「検討します」と言われたとき、本当の理由は金額かもしれないし、日程かもしれないし、担当者との相性かもしれません。見学後アンケートでも、決めなかった理由を正直に書く人は多くないはずです。まだ決めていない段階では、会場に気を遣う気持ちが残っているからです。
辞退の連絡は違います。二人はすでに他の会場を決めていて、会場に気を遣う理由が薄い。ここで届く理由は、見学中の反応より、ずっと正直なことが多いと僕は見ています。ただし、これは僕の見立てで、調査で確かめた数字ではありません。
もう一つ大事なのは、二人が自分から連絡してくれたという事実です。連絡しないまま消える二人も多いなかで、わざわざ書いてくれた。そこには、少なくとも一定の好印象があるはずです。その好意に、引き止めの営業で応えるのは、順番が違うと思います。
引き止めない理由は3つあります
辞退の連絡に、割引や特典を出して引き止める会場もあります。僕は、基本的にはおすすめしません。理由は3つあります。
1つ目は、決まった話は戻りにくいことです。 連絡をくれた時点で、二人は他の会場と契約を済ませている場合が多い。契約済みなら、内金も払っています。会場側の条件が少し良くなったくらいで、内金を放棄して戻る理由はありません。まだ契約前で迷っている二人なら、その連絡は辞退ではなく、相談として届くはずです。
2つ目は、値引きの前例が残ることです。 辞退のときに出した条件は、その二人にだけ出したつもりでも、契約済みの二人や、これから見学する二人との公平さの問題になります。「辞退を言うと条件が良くなる」という話が広まると、見学のときに「いったん持ち帰って、辞退連絡のふりをする」二人が出てくるかもしれません。
3つ目は、二人の気持ちが重くなることです。 他の会場に決めたと伝えるのは、二人にとって気まずい作業です。そこに引き止めが返ってくると、二度と連絡したくなくなります。口コミの投稿や、友人への紹介の場面でも、その気まずさは残ります。
ただし、例外はあります。連絡の文面が「迷っているのですが」「他の会場も気になっていて」のように、まだ決め切っていない書き方のときです。これは辞退ではなく、決める前の相談なので、通常の追客として扱います。見分け方は一つで、「決めました」と過去形で書いてあるかどうかです。
返信は3文で足ります
引き止めない返信は、短くて足ります。僕なら次の3文にします。
ご連絡ありがとうございます。他の会場に決められたとのこと、承知しました。当日はお二人の希望を丁寧に聞かせていただいたので、素敵な式になることを願っています。 差し支えなければ、決め手になったことを1つだけ教えてください。今後の案内の参考にします。下の3つから選ぶだけで構いません。
この文面には、狙いが3つあります。
1つ目は、先に感謝と祝意を置くことです。理由を聞くのは、そのあとです。順番が逆だと、アンケートに誘導するための返信に見えます。
2つ目は、「差し支えなければ」と「1つだけ」を入れることです。答えなくても問題ないことと、負担が小さいことを、最初に伝えます。
3つ目は、「今後の案内の参考にします」と、使い道を言うことです。何のために聞くのかが分からないと、二人は答えにくい。ただし、「改善します」「サービス向上のために」のような大きな言葉は避けます。会場側が実際にできるのは、案内の仕方を直すことくらいだからです。
返信の最後に、売り込みの文言や、また検討してほしいという誘いは入れません。ここは最後まで、辞退を受け止める連絡に徹します。
聞くのは3択と、自由記入1つです
理由の聞き方で、いちばん大事なのは選択肢の作り方です。僕は、次の3択に自由記入の欄を1つ足す形をすすめます。
- 金額や条件(見積もりの総額、特典、支払い方法)
- 日程や立地(希望の日が取れた、行きやすさ)
- 会場の雰囲気や担当者との相性(見学で感じたこと)
- その他(自由に)
3択といいながら4つ書いているのは、「その他」を逃げ道として置くためです。選択肢は3つに絞り、その他を足す。このくらいの数が、スマホで1タップで答えられる限度だと思います。
3つの分け方には理由があります。会場側の打ち手が、それぞれ違うからです。
- 金額や条件が理由なら、直すのは見積もりの見せ方か、特典の設計です
- 日程や立地が理由なら、直すのは空き日程の見せ方か、アクセス案内です
- 雰囲気や相性が理由なら、直すのは見学の進め方か、担当者の割り当てです
打ち手が同じになる理由は、同じ選択肢にまとめます。たとえば、「料理が合わなかった」と「会場が狭く感じた」を別々に並べると、集計が割れて、どこから手をつければよいか分からなくなります。細かい理由は、自由記入に任せます。
逆に、聞いてはいけない質問もあります。「どこの会場に決めましたか」は、聞かないほうがいいと思います。他の会場の名前を聞くと、比較の話に寄っていきます。他社との機能比較は、このメディアでも避けている話です。会場側が知りたいのは、相手が何を良いと言ったかではなく、自分の会場の何が決め手にならなかったか、です。
回答の集め方は、返信の仕組みに合わせます
選択肢を作っても、答える手間が大きいと集まりません。手段は、二人が連絡してきた経路に合わせます。
- メールで来た場合は、返信メールの末尾に、1タップで答えられるリンクを3つ置く方法が手軽です。リンクをクリックした時点で回答が記録される形にしておけば、フォームを開く手間もかかりません
- LINEで来た場合は、返信に選択肢のボタンを付けます。ボタンを押すだけで答えられるようにします
- 電話や口頭で来た場合は、その場で聞くのが自然です。ただし、メモには必ず3択のどれかに分類して残します
回答欄に、氏名や連絡先の入力は求めません。必要なのは理由であって、個人の特定ではないからです。見学のときの記録とひも付けたい場合は、会場側のシステムで、返信のあった二人のIDと回答を結びつければ足ります。
毎月どれくらい集まるのか、仮に計算してみます
ここで、数字を置いて、規模を見積もってみます。以下はすべて仮の前提です。
- 月に40組が見学に来る
- そのうち30%、12組が契約する
- 契約しなかった28組のうち、「他に決めた」と連絡をくれるのは3割として、約8組
- 連絡をくれた8組のうち、理由に答えてくれるのは半分として、約4組
この前提だと、理由は月に約4件、年に約48件集まります。
多いとはいえません。1か月分だけを見て、「金額が理由の二人が3組いたから、見積もりを直そう」とするのは危険です。3組は、偶然でも出る数字だからです。
僕なら、3か月分をまとめて見ます。約12件です。たとえば、金額が5件、日程や立地が4件、雰囲気や相性が2件、その他が1件、のようにばらついたとします。この場合、偏りは弱く、「金額が決め手になる傾向がありそうだ」という程度の見方にとどまります。
そして、動くのは偏りが強いときだけにします。12件のうち8件以上が同じ理由、のように、はっきり偏ったときです。偏りが弱いときは、動かずに、もう3か月集めます。
数字が小さいので、1件ごとの自由記入の文章を読むことも大切です。選択肢は集計の入り口で、実際の中身は自由記入に出ます。「金額」を選んだ二人が、自由記入に「総額が最初の見積もりから大きく増えた」と書いているなら、直すのは金額そのものではなく、初回見積もりの出し方です。
見学の記録と突き合わせると、使えるデータになります
辞退の理由は、それだけで見るより、見学のときの記録と並べたほうが、価値が上がります。
見学の最初に二人の優先順位を聞いているなら、そのメモと辞退の理由を並べて見ます。たとえば、見学のとき「料理を最優先」と言っていた二人が、「金額」を理由に辞退したとします。この場合、料理の魅力は伝わっていて、金額で負けた可能性が高い。逆に、「雰囲気」を理由に辞退した二人が、見学のとき「アクセス最優先」だったなら、立地の強みを伝えきれなかった、と読めます。
この突き合わせで見たいのは、次の3点です。
- 二人が最優先と言ったことに、会場が応えられていたか
- 応えられていたのに負けたなら、何で負けたか
- 応えられていなかったなら、見学の進め方に原因がないか
最初の見学の記録が残っていない会場では、この突き合わせは難しくなります。その場合は、辞退連絡のときの3択だけでも、十分に使えます。
聞かないほうがいい場面もあります
辞退の連絡をもらったからといって、必ず理由を聞くわけではありません。聞かないほうがいい場面があります。
1つ目は、感情的な文面で届いたときです。見学の対応に怒って辞退した、という内容なら、理由の質問を返すのは逆効果です。まずは謝罪と事実確認を、担当者の上長が行います。
2つ目は、契約後の解約が絡むときです。契約したあとの辞退は、キャンセル料や返金の話と切り離せません。この記事で扱っているのは、契約前の辞退です。契約後の解約連絡に3択を送ると、料金の交渉に見えてしまいます。
3つ目は、二人が1回目の連絡で、すでに理由を書いてくれているときです。「日程が合わなくて」と書いてあるなら、同じ質問をもう一度するのは失礼です。書いてあった理由を、そのまま3択のどれかに分類して記録します。
集めた理由の使い方は、月次の会議で1つだけ決めます
集めた理由は、見るだけでは意味がありません。僕のおすすめは、月次の会議で、直すことを1つだけ決める運用です。
3か月分がたまった時点で、偏りが強い理由を1つ選びます。そして、それに対する打ち手を1つだけ決めます。「金額」が多いなら初回見積もりの見せ方、「日程や立地」が多いなら空き日程の案内、「雰囲気や相性」が多いなら見学の進め方、といった具合です。
1つだけに絞る理由は、効果が測れなくなるからです。同時に3つ直すと、どれが効いたのか分かりません。次の3か月でも同じ質問を続け、偏りが弱まったかを見ます。
もう一つ、辞退の理由で気をつけたいのは、直せないものを直そうとしないことです。「他の会場のほうが安かった」は、事実としては大事ですが、価格を下げれば解決するとは限りません。値下げは、客単価と粗利に直接響きます。直せるのは、見積もりの見せ方や、総額の説明の順番のように、価格そのものではない部分であることが多いと思います。
まとめ
- 「他の式場に決めました」という連絡には、割引や特典で引き止めず、感謝と祝意を返す
- 「決めました」と過去形で書かれているかが、辞退と相談の見分け方になる
- 理由は「金額や条件」「日程や立地」「雰囲気や相性」の3択と、自由記入1つで聞く
- 選択肢は、会場側の打ち手が違うものを分けて作る。他の会場の名前は聞かない
- 仮の前提では、理由は月に約4件、年に約48件。1か月で判断せず、3か月分で見る
- 偏りが強いときだけ動き、打ち手は月次の会議で1つに絞る
- 見学時の優先順位のメモと突き合わせると、見学の進め方の原因まで見える
