経営・組織

式場の挙式前日の最終確認は、電話よりLINEで足りる条件

挙式の前日に、担当プランナーが新郎新婦へ電話する。集合時間、持ち物、天気、当日の連絡先を確かめる。丁寧な式場ほど、これを全組にやっています。

ただ、この電話を「LINEで送って、既読が付かない組にだけ電話する」に替えたとき、人件費と当日の確認漏れを合わせてどちらが得なのか、数えている式場は少ないはずです。この記事では、実際の統計ではなく、僕が前提を置いたモデル計算で、前日確認のやり方ごとの損得を見ます。使う数字はすべて仮定です。手元の数字に入れ替えて読んでください。

先に結論です

仮の式場(月30組)で、前日確認にかかる人件費と、確認漏れで当日に起きる対応の人件費を足すと、月の合計は次のようになります。

  • 前日確認をしない:約1.1万円(すべて当日の対応費)
  • LINEで送って、既読が付かない組にだけ電話する:約1.8万円
  • 全組に電話する:約2.5万円

人件費だけで見ると、何もしないのがいちばん安いです。それでも前日確認をする意味が出るのは、確認漏れが1件起きたときの損が、1件あたり約7,300円を超えるときです。そこから先、電話に上げる意味が出るのは、1件あたり約2.8万円を超えるときです。

決めるのは「電話かLINEか」より、「確認漏れ1件が、それぞれの式場でいくらにつくか」だと考えています。順に見ていきます。

前提を置きます

数字はすべて仮のものです。実在の調査から取ったものではありません。

  • 月の挙式は30組
  • プランナーの人件費は1時間2,500円(社会保険などを含めた仮の数字)
  • 全組に電話する場合、1組15分(新郎新婦に1本、必要なら親族の代表に1本)
  • 電話に出ない組は3割。折り返しも含めて、平均1.5回、1回5分の再コールが増える
  • LINEの場合、型の文面に当日の集合時間と個別の注意を足すのに1組6分。送ったあと、前日18時までに既読が付かない組が3割あり、その組には電話する(15分)
  • 前日確認をしなかった場合、集合時間の勘違い・持ち物の抜け・ゲスト人数の食い違いなど、何かしらの確認漏れが当日に出る割合を10%とする
  • 全組に電話した場合は3%、LINEと未読の組への電話なら4%に減るとする
  • 確認漏れ1件の当日の対応は、スタッフ1.5時間分(3,750円)とする。進行の遅れや二人の不安といった、お金に直しにくい損は、この時点では入れない

確認漏れの割合は、僕が置いた想定です。実際には、過去の当日トラブルの記録から数えてください。ここが計算の中でいちばん効く数字です。

月の人件費を計算します

前日確認にかかる手間は、方法ごとに次のとおりです。

全組に電話する

  • 1組15分に、不在の組の再コール(3割の組に、1.5回×5分)を足します
  • 30組で月に約8.6時間、人件費は約2.2万円です

LINEで送り、未読の組にだけ電話する

  • 全組に6分、未読の3割に15分の電話を足します
  • 30組で月に約5.3時間、人件費は約1.3万円です

前日確認をしない

  • 手間は0です

次に、確認漏れが起きる分の当日対応を足します。

方法 前日確認の人件費 確認漏れの件数 当日の対応費 合計(月)
しない 0円 3.0件 約1.1万円 約1.1万円
LINE+未読に電話 約1.3万円 1.2件 約0.5万円 約1.8万円
全組に電話 約2.2万円 0.9件 約0.3万円 約2.5万円

この前提では、前日確認は「やるほど安くなる」仕事ではありません。やるほど、人件費は増えます。増えた人件費を、確認漏れの減りで取り戻せるかどうかが、判断の中身です。

確認漏れ1件がいくらなら元が取れるか

方法を1つ上げたときの追加の手間を、確認漏れが減る件数で割ると、「漏れ1件がこの額より重いなら、上げる意味がある」という線が出ます。

しない → LINE+未読に電話

  • 追加の人件費は約1.3万円
  • 確認漏れは月に3.0件から1.2件へ、1.8件減る
  • 1.3万円 ÷ 1.8件 で、約7,300円

当日の対応費の3,750円は、すでに差し引いて考えています。つまり、確認漏れ1件の損が、スタッフの1.5時間分を除いて、さらに約3,500円分以上ある(進行の遅れ、二人のやり直し、他の組の準備への影響など)と言えるなら、LINEの確認は元が取れます。

LINE → 全組に電話

  • 追加の人件費は約0.9万円(2.2万円と1.3万円の差)
  • 確認漏れは1.2件から0.9件へ、0.3件しか減らない
  • 0.9万円 ÷ 0.3件 で、約2.8万円

漏れ1件がスタッフの人件費1.5時間分より約7倍重いときにだけ、電話に上げる意味が出ます。普通の確認漏れでは、そこまでの重さにならないと考えています。

ここで、「電話のほうが丁寧だから」という理由だけで全組に電話しているなら、その手間の大半は、確認漏れの減りに見合っていません。丁寧さに価値がないと言いたいわけではなく、その価値を、漏れの件数とは別のところ(二人の安心感、最後の会話)で説明できるかが分かれ目です。

漏れ1件の重さは、確認する項目で決まります

仮の計算では、漏れ1件を一律にしました。実際には、項目によって重さがまるで違います。前日確認で拾うものを3つに分けて考えると、どこまで手間をかけるかが決まります。

重い項目:遅れると進行が止まるもの

  • 集合時間と集合場所(特に、新婦の支度の開始時間、親族の控室入り)
  • 当日の連絡が取れる人の番号
  • 搬入物が届いているか(席次表、ウェルカムグッズ、持ち込みの品)

これは当日の朝に取り返せません。LINEで送っても、既読と返信が付いた時点で確認できたことにしたいものです。返事がない組には、電話に上げます。

中くらいの項目:当日に直せるが、手が取られるもの

  • ゲスト人数の最終の食い違い
  • アレルギーや食の配慮の最終の確認
  • 親族の紹介や、挨拶の順番の変更

これは、前日までに決めた内容を確認する性質のものです。文面で型にして送り、「このまま進めてよいですか」と返事をもらう形で足ります。

軽い項目:言わなくても進むもの

  • 当日の天気の見通し
  • 持ち物の確認の念押し
  • 一般的な気遣いの言葉

ここは、電話に載せる必要がありません。LINEの一言で足ります。

この3つを、全組に同じ電話で済ませようとすると、軽い項目に15分を使うことになります。逆に、重い項目の中の「集合時間」だけは、電話でも確かめたいと考える式場もあるでしょう。その場合は、全組ではなく、集合が複雑な組(早朝の支度、遠方のゲスト、前撮りとの兼ね合いがある組)だけを電話にする、という絞り方もできます。

電話に上げる条件を先に決めておきます

LINE中心にする場合でも、どの組を電話に上げるかを、前日の朝に迷って決めるのは手間です。上げる条件は、あらかじめ決めておくほうが早いです。

  • 前日18時までにLINEの既読が付かない
  • 既読は付いたが、重い項目の返事がない
  • 集合時間が通常と違う(早朝、前撮りとの同日、遠方からの移動)
  • 直近の打合せで、確認の食い違いが出た組
  • 初めて式場に来る親族の代表が関わる組(連絡が親族のどなたかに回る場合)

条件に当てはまる組が3割いる、というのが仮の前提です。実際に数えてみて、たとえば1割なら、LINEの方法の月の人件費はもっと下がります。逆に5割を超えるなら、LINEで送る手間が、電話の手間を増やしているだけかもしれません。

確認漏れの割合は、それぞれの式場の記録から数えます

計算の中で、もっとも手元の数字に置き換えたいのが、「前日確認をしなかった場合の確認漏れの割合」です。仮に10%と置きましたが、実際には式場ごとに違います。

数え方は難しくありません。過去の当日トラブルの記録(日報、引き継ぎメモ、担当者の記憶)を、半年分さかのぼって次の3つに分けます。

  1. 前日までに確認していれば防げたもの
  2. 前日に確認しても防げなかったもの(当日の急な体調不良や交通トラブルなど)
  3. 前日確認の有無に関係ないもの

使うのは、1の件数だけです。月30組で半年なら180組。そのうち1に当たるものが何件あるかを、180で割ります。10%なら18件、3%なら5件程度です。この数え方で、前日確認をしていた期間としていなかった期間の差が分かるなら、いちばん確かな数字になります。

記録がまったく残っていない式場もあると思います。その場合は、これから1か月だけ、当日のトラブルの原因を「前日に確認していれば防げたか」という欄を足してメモするところから始められます。1か月で30組分、割合の見当がつくところまでは行きます。

LINEで送る文面は、返事の形を決めておきます

LINEにするなら、文面の作り方で既読と返事の率が変わります。前日確認の文面は、読むだけで終わらず、返事が1つで済む形に整えておきます。

  • 最初に、明日の集合時間と場所を、1行ずつ書く
  • 次に、確認してほしい項目を、番号を付けて2〜3個に絞る
  • 最後に、「このまま進めてよければ、OKとだけ返信ください」と書く

項目を5個以上並べると、読み手は全部に答えるのが面倒になり、返事が止まります。重い項目に絞って、軽い項目は文面から外してしまうほうが、返事が来ます。

文面は、型を1つ作って、組ごとに集合時間などの数字だけを入れ替えます。1組6分という仮の前提は、この型を作った上での時間です。型がなく、毎回文章を考えるなら、6分では足りません。

電話を残す意味が出る場面

ここまで人件費で見てきましたが、電話には、人件費とは別の価値があるのも確かです。

  • 二人が不安を抱えているとき、声で話すと伝わるものが違う
  • 前日の夜に、プランナーと最後に話せたことが、当日の落ち着きにつながる
  • 打合せの内容に迷いが残っている組は、文面では聞き出せない

これらは、確認漏れの件数には出てきません。だからこそ、全組に一律で電話する理由にするのではなく、「この組は話したほうがよさそうだ」と担当が判断できる組に、電話を使うほうが意味が残ります。

担当が判断するには、判断の材料が要ります。打合せのメモに、「前日は電話にしたい」と書き足せる欄を作っておくと、判断を前日の朝に急がずに済みます。

試すときの順番

次の順番で進めると、数字が出ます。

  1. 過去半年の当日トラブルから、「前日確認で防げたもの」の割合を数える
  2. 今の前日確認に、1組あたり何分かかっているかを、1週間だけ記録する
  3. 確認する項目を、重い・中くらい・軽いの3つに分ける
  4. 重い項目だけをLINEで送り、返事がない組を電話に上げる形を1か月試す
  5. 試した月の確認漏れの件数を、前の月と比べる

5の比べ方で、確認漏れが増えていなければ、電話の手間を減らせます。増えていたら、LINEで拾えていなかった項目を探して、文面に足します。

まとめ

  • 前日確認は、やるほど安くなる仕事ではなく、人件費を使って確認漏れを減らす仕事です
  • 仮の式場(月30組)では、しない約1.1万円、LINE+未読に電話約1.8万円、全組に電話約2.5万円でした
  • しないからLINEに上げる意味が出るのは、確認漏れ1件の損が約7,300円を超えるとき、LINEから全組電話に上げる意味が出るのは約2.8万円を超えるときです
  • 漏れの重さは、集合時間・連絡先・搬入物のような「遅れると進行が止まる項目」で決まります
  • 電話に上げる組は、既読が付かない組、集合時間が複雑な組など、条件を先に決めておきます
  • 確認漏れの割合は、過去半年の当日トラブルの記録から数えた数字に置き換えます