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披露宴で二人が料理を食べる時間は、進行表に先に書いておく

披露宴で、新郎新婦が料理をほとんど食べられない。結婚式の体験談では、昔からよく聞く話です。ゲストには6皿も8皿も出しているのに、高砂の二人の前には、手つかずの皿が下げられていく。

この記事では、その原因を「歓談の時間が短いから」とは考えません。歓談の時間はあっても、そこにゲスト卓への写真撮影が入って、二人が座っていられる時間が消えているからです。式場にできるのは、料理を早く出すことより、二人が食べる時間を進行表に先に書いておくことだと僕は考えています。

数字は、僕が置いた仮のものです。卓数も、歓談の長さも、撮影の長さも、調査の数字ではありません。自分の会場の進行表に置き換えると結論が動くので、「どこで時間が消えるのか」を読み取るための計算として読んでください。

二人が座っていられる時間を数える

仮の進行表を置きます。披露宴は150分、ゲスト卓は8卓です。

  • 0〜25分:入場、主賓挨拶、乾杯
  • 25〜40分:ケーキ入刀と撮影
  • 40〜65分:歓談1(前菜、スープ)
  • 65〜95分:二人が中座してお色直し
  • 95〜110分:再入場、キャンドルの演出
  • 110〜130分:歓談2(メイン、デザート)
  • 130〜150分:両親への手紙、謝辞、退場

二人が料理を食べられそうな枠は、歓談1の25分と、歓談2の20分です。足すと45分あるので、一見、足ります。

ところが、歓談の時間には、二人がゲスト卓を回って写真を撮る時間が入ります。1卓あたり2分で8卓なら16分です。歓談1の25分から引くと、二人が座っていられるのは9分になります。歓談2も同じ回り方をすれば、20分から16分を引いて4分です。合わせて13分。

13分で食べられる量は、コースの前菜とスープの半分ほどでしょう。メインの肉料理は、ほぼ手つかずで下がります。アニヴェルセル総研の2014年の調査では、ゲストが披露宴で一番楽しみにしている料理は肉料理で、2位が海老料理でした。ゲストが楽しみにしている皿ほど、二人の前では冷めていくことになります。

卓数が10卓に増えて、1卓3分かけると、回るだけで30分です。歓談1の25分を、撮影だけで使い切ります。

つまり、二人が食べられるかどうかは、歓談の長さより、卓数と撮影の1卓あたりの時間で決まります。進行表の上では「歓談25分」と書いてあるので、プランナーも厨房も、二人が食べる時間があると思ったまま当日を迎えます。

食べられない原因は、同じ時間に3つの用事が重なること

歓談の時間に入ってくる用事は、撮影だけではありません。

1つ目は、ゲスト卓への撮影。上の計算のとおりです。

2つ目は、ゲストからの挨拶です。親族や上司が、高砂まで酒を注ぎに来ます。断れないので、グラスを持って立ち、少し話します。1人1分でも、5人来れば5分です。

3つ目は、司会や演出の打合せです。次の演出の前に、二人に最終確認を耳打ちします。プランナーが近づく場面は、ゲストの目には見えませんが、二人の手は止まります。

3つとも、誰かが悪いわけではありません。二人はゲストに会うために披露宴を開いているので、卓回りも挨拶も、やめたくありません。ただ、全部を歓談の枠の中で受けようとすると、食事の時間が最後に削られます。

式場が決める3つの型

食べる時間を作る方法は、僕の見るかぎり、3つの型に分かれます。

型1:二人の皿を前倒しで出す

ケーキ入刀の前、乾杯の直後に、二人だけ前菜を先に出します。ゲストと同じ皿ではなく、二人用に小さく組んだ一皿です。

食べる時間は、歓談の枠の外に作ります。乾杯から入刀までの間、二人は席で待っているので、ここは手が空きます。10分あれば、小さな皿は食べ終わります。

厨房の負担は、二人分の前菜を1皿、早く出すだけです。ほかの料理の出し方は変わりません。一番軽く始められる型で、最初の1組目から試せます。

ただし、メインの肉料理は前倒しできません。温度が命の皿なので、乾杯の直後に出すと、入刀のころには冷めています。この型で救えるのは前菜とスープまでです。

型2:食事の枠を、歓談から切り離して進行表に書く

歓談1の25分のうち、最初の10分を「二人の食事」と進行表に書きます。この10分は、写真撮影も挨拶回りも入れません。司会が「ここで新郎新婦は少しお食事をいただきます」と、ゲストに案内します。

ゲストは、二人が食べているところには来ません。むしろ、案内があると、安心して自分の料理を食べ始めます。ゲストの歓談も、この10分は静かに進みます。

この型の難しさは、司会と進行が、10分間を守る役割になることです。守るのは、ゲスト卓の側から来る人です。親族が酒を注ぎに来たとき、「あと3分お待ちください」と、プランナーかスタッフが止める必要があります。止める役を誰が担うかを、前もって決めておかないと、型が崩れます。

型3:食べ損ねた分を、二人用に包んで渡す

当日に食べる時間を作るのは諦めて、食べ損ねた料理を折り詰めにして、控室か帰りに渡す型です。

メインの肉料理も、デザートも、渡せます。温め直しの工夫は要りますが、冷たいままでも食べられる形に詰めれば、問題ありません。

一方で、この型は「披露宴の場で食べる」という体験は取り戻せません。ゲストの前で一緒に食事をする時間は、二人にとって、大事な場面かもしれません。型3は、型1か型2の補強として使うと、収まりがいいと思います。

型を選ぶ条件

3つの型のうち、どれを標準にするかは、会場の条件で決まります。

卓数が少ない会場、つまり6卓以下で、歓談の時間にゆとりがあるなら、型2で足ります。仮の計算では、6卓で1卓2分なら、撮影は12分。歓談1の25分から引いて、13分が座っていられる時間です。ここに「二人の食事10分」を進行表に書き込んでも、ゲスト卓への撮影を後ろにずらせば入ります。

卓数が多い会場、10卓以上は、型1を標準にして、型3を足すのが現実的です。卓回りだけで30分かかる進行表の中に、さらに10分を切り出すと、全体が押します。押した進行は、お色直しの時間や、手紙の演出から削られます。二人にとっても、ゲストにとっても、削られたくない場面です。

司会が外部で、会場の進行に慣れていない場合は、型2は避けます。10分間の案内と守りは、会場の流れを知らないと、うまく回りません。型1のほうが、司会の腕に依存しません。

厨房に余裕がない繁忙日、つまり同日に複数組を回す日も、型1は避けます。二人用の小さな皿を別に出すと、厨房の1品が増えます。この日は型3で、折り詰めを事前に用意しておくほうが安全です。

二人が食べられないとき、起きること

食べられないことで、式場が失うものはあります。

1つは、二人の体力です。仮の進行表では、披露宴は150分です。朝から支度をして、何も食べていない二人は、後半に体力が持たなくなることがあります。再入場や手紙の演出は、立って話す場面です。空腹だと、そこが一番きつくなります。

もう1つは、後から出る不満です。料理を食べられなかったことを、結婚式の後に思い出して、残念に思う二人はいるはずです。そうなったとき、不満が向くのは料理の質ではなく、進行の組み方です。式場は、料理を褒めてもらうために原価をかけているのに、評価が料理に届きません。

反対に、食べる時間を作った場合の見返りは、数字では測れません。ここで、確認していない数字を作ることは避けます。測れるのは、自社のアンケートで「二人は食事ができましたか」を1問足して、型を入れる前後で比べることです。1組目から変化は出ないので、10組程度ためてから、見るのがよいと思います。

打合せで二人に聞くこと

型を決めたあと、打合せで二人に聞くことは3つだけです。

  • 乾杯のあと、座って食べる10分と、すぐ卓回りに行く時間の、どちらを優先したいか
  • 親族や友人から挨拶が多くなりそうか、少なそうか
  • 食べられなかった料理を折り詰めにして、持ち帰りたいか

優先順位は、二人によって違います。ゲストと話す時間を最優先にして、食事は諦める二人もいます。それは二人の選択なので、式場が型を押し付ける必要はありません。大事なのは、二人が「食べられないかもしれない」ことを知らないまま当日を迎えないことです。

打合せの時点で、仮の進行表を見せて、「卓回りで歓談の半分以上が消えます」と、数字で示すと伝わりやすいです。二人は、進行表の上で「歓談25分」と書かれているのを見て、その時間は食べられると思っています。実際の座っていられる時間は、卓数と撮影の時間で変わる、と説明するだけで、型の選び方が変わります。

進行表に、食事の枠を1行足す

式場がすぐ変えられるのは、進行表の書式です。

今の進行表に、「歓談」としか書いていない場合は、歓談の下に「新郎新婦の食事(○分)」の行を足します。枠の長さは、会場の卓数で決めます。決めた枠の中は、撮影も挨拶も入れないと、スタッフ全員が共有します。

この1行を足すだけで、プランナーも、司会も、厨房も、二人が食べる時間を前提に動き始めます。厨房は、二人の皿を出すタイミングを逆算できます。司会は、案内の言葉を準備できます。プランナーは、止める役を事前に決められます。

進行表に書かれていないものは、当日、誰も守りません。逆に、書いてあれば、守る人が決まります。

まとめ

  • 二人が料理を食べられない原因は、歓談の短さより、歓談の時間にゲスト卓への撮影と挨拶が入ることにある
  • 仮に8卓、1卓2分なら、歓談25分のうち撮影が16分を占め、二人が座っていられるのは9分になる
  • 型は3つ。二人の皿の前倒し(型1)、歓談から切り離した食事の枠(型2)、折り詰め(型3)
  • 卓数が少なく司会が慣れているなら型2、卓数が多い会場や繁忙日なら型1に型3を足す
  • 二人の優先順位はそれぞれ違うので、打合せで仮の進行表を見せ、食べられないかもしれないことを先に伝える
  • 進行表に「新郎新婦の食事」の行を1つ足すだけで、守る人が決まる