集客

式場の法人提携は、割引率より社員の問い合わせ窓口で決める

地元の企業から「うちの社員向けに、結婚式の割引を出してもらえませんか」と声がかかることがあります。福利厚生のサービスに載せませんか、という誘いが来ることもあります。式場としては、地元の企業に名前を知ってもらえて、社員の結婚という見込み客に届くので、断る理由は見つけにくい話です。

僕は、この手の法人提携は、割引率から話し始めると失敗しやすいと考えています。先に決めたいのは、社員が最初に連絡する窓口です。窓口が決まっていない提携は、割引だけが出ていって、誰が来たのかが後から追えません。追えない提携は、続けるか止めるかを判断する材料が残りません。

この記事では、法人提携を受ける前に決めておく3つのこと、割引の実質コストの出し方、窓口の置き方、続けるか止めるかの見方を、判断の条件として整理します。なお、出てくる数字は説明のために僕が置いた仮の前提です。調査から引いた数字ではないので、自社の数字に置き換えて読んでください。

法人提携で式場に入ってくるものと出ていくもの

まず、何が入って何が出ていくのかを分けておきます。

入ってくるのは、その企業の社員という見込み客への接点です。媒体に掲載費を払って得る接点と違って、社員は社内の掲示や案内で結婚式場の情報に触れます。同僚の結婚式に呼ばれた経験がある人も多く、式場の名前が候補に入りやすい面はあります。

出ていくものは、大きく3つあります。

1つめは割引です。総額の何%かを引く、特典を付ける、といった形が多いと思います。

2つめは窓口の手間です。企業の担当者との連絡、社員への案内文の作成、利用時の確認作業が発生します。

3つめは、ほかの客との公平感です。同じ時期に同じ会場を見に来た二人のうち、片方だけが割引を受けられると、受けられなかった側の印象が悪くなります。

この3つのうち、いちばん見落とされるのが1つめの割引の使われ方です。割引は、提携がなければ来なかった二人だけでなく、提携がなくても来た二人にも出ていきます。次の節で数字にします。

もともと来た二人にも割引が出る

仮の前提を置きます。式場の平均成約総額を350万円とし、法人提携の割引を総額の5%、つまり17.5万円とします。

この割引を受ける二人のうち、提携がなくてもその式場に来ていた二人の割合を「もともと来た割合」とします。たとえば、地元で働く社員の多くが、その式場の名前を知っていて、もともと見学に来る予定だった場合です。

提携があって増えた成約は、全体からもともと来た分を引いた残りです。割引は全員に出るので、増えた成約1組あたりの実質コストは次の式になります。

実質コスト = 割引額 ÷ (1 − もともと来た割合)

仮の前提で計算すると、次のとおりです。

  • もともと来た割合が2割なら、約21.9万円
  • 5割なら、35万円
  • 7割なら、約58.3万円

割引額は17.5万円で変わっていないのに、もともと来た割合が7割だと、増えた1組あたりのコストは58万円を超えます。同じ5%引きでも、地元の知名度が高い式場ほど、法人提携の割引は割高になるということです。

ここで比べる相手は、媒体で1組を増やすときの費用です。その費用が仮に40万円だとすると、もともと来た割合が5割までは提携のほうが安く、7割になると媒体のほうが安くなります。この40万円も仮の数字なので、自社の媒体費と成約数から出し直してください。

要点は、割引率の大小ではなく、割引が誰に出ていくかで実質コストが決まるという点です。そして、誰に出ていくかを知るには、提携を通した問い合わせと、そうでない問い合わせを区別できる必要があります。そこで窓口の話になります。

窓口が無い提携は、続けるか止めるかを決められない

窓口とは、提携先の社員が最初に連絡する先のことです。専用の電話番号でも、専用の予約フォームでも、専用のLINEの案内でも、形は何でも構いません。条件は、その入口から来た人が提携経由だと、式場側で記録できることです。

窓口が無いと、よくある運用は次のようになります。

  • 企業の担当者が社内に「○○会場なら割引があります」と周知する
  • 社員が通常の予約フォームから見学を申し込む
  • 見学当日に「会社の提携で」と口頭で言われて、初めて割引の対象だと分かる
  • 契約のときに割引を適用する

この形では、提携経由の人数は「見学当日に言ってくれた人」だけになります。言い忘れた人、契約のときに初めて思い出した人は数えられません。逆に、割引があると聞いたので提携経由だと名乗る人が、実際には別の媒体から来ていた場合も区別できません。

その結果、1年たって「この提携は続けるべきか」を聞かれたときに、手元にあるのは割引を出した組数だけです。割引を出した組数は分かっても、増えた組数が分かりません。さきほどの式の「もともと来た割合」が、永遠に分からないままになります。

窓口があれば、少なくとも次の2つが数えられます。

  • 窓口経由の問い合わせ数、来館数、成約数
  • 窓口を通さずに「提携で」と名乗った組数

この2つを並べると、割引を受けたが窓口は使わなかった組が見えてきます。その組は、割引の案内を知る前から式場を決めていた可能性が高い組です。これが、もともと来た割合を推し量る手がかりになります。

窓口の置き方は3つから選ぶ

窓口の置き方は、式場の手間と記録のしやすさで3つに分かれます。

専用の予約ページを作る。 提携先の企業専用に、通常の予約フォームと同じ項目で入口を分ける形です。企業名か提携の名前をURLに入れるか、フォームの流入元に自動で記録されるようにします。記録の精度は高く、企業ごとに数字を出せます。手間は、ページの作成と、企業が増えるたびの管理です。

専用の合言葉か、予約時の1項目にする。 通常のフォームに「勤務先の提携を利用する」のチェックと、企業名の選択欄を足す形です。ページを分けるより手間が小さく、企業が増えても欄の選択肢を足すだけで済みます。弱点は、チェックを入れ忘れる人がいることです。ただ、チェックを入れないと割引が適用されない、と先に案内しておけば、入れ忘れは減ります。

企業の担当者に取りまとめてもらう。 社員が直接式場に連絡せず、企業の担当者を通して申し込む形です。数字はいちばん正確に取れますが、社員にとっては手間が増えるので、利用者が減りやすくなります。小さな企業で、担当者が総務を兼ねているような場合には合います。

どれを選ぶかは、提携先の数と、式場の予約システムでできることで決まります。提携先が1〜2社なら、予約時のチェック項目で十分だと思います。5社を超えそうなら、専用ページか流入元の自動記録を検討する時期です。

いずれの形でも、割引の適用条件は、窓口を通したことにします。口頭で「提携で」と言われた分は、一度は受けても構いませんが、次回以降は窓口を通すようお願いする、と企業にも伝えておきます。条件を後から変えるのは難しいので、最初の案内文に書いておくことが大事です。

割引の前に決める3つのこと

窓口が決まったら、割引の中身を決めます。ここでも、割引率から始めません。

1つめは、1組に使える上限額です。媒体で1組を増やすときの費用を基準に、提携で出せる割引の上限を決めます。仮に媒体の費用が40万円なら、割引の上限をその範囲に置く、といった具合です。総額の%で決めると、高額なプランを選ぶ二人ほど割引額が大きくなります。金額の上限か、特典の現物(写真の追加、試食の追加など)にしておくと、実質コストが読みやすくなります。

2つめは、割引の対象になる期間です。期間を決めないと、提携を結んだ年に契約した組だけでなく、数年後の挙式日に向けた契約までずっと対象になります。提携の契約期間と、割引を受けられる契約日の期間を揃えておきます。

3つめは、企業ごとの数字を見る日です。たとえば半年後と1年後に、窓口経由の問い合わせ、来館、成約の数を出す日を、提携を結ぶ時点でカレンダーに入れておきます。見る日が決まっていない提携は、惰性で続きます。

続けるか止めるかの見方

見る日が来たら、次の順で数字を並べます。

まず、窓口経由の問い合わせ数と来館数、成約数です。ここが数組しかなければ、提携先の企業の規模か、社内への周知の仕方に問題があります。企業の担当者に、周知の方法と時期を聞きます。案内が一度きりで終わっているなら、結婚の節目(ボーナス後、年度末、社内報が出る時期など)に合わせて再案内してもらうよう頼みます。

次に、窓口を通さずに「提携で」と名乗った組の数です。窓口経由より多いなら、割引の存在が口づてに広がっているのに、入口が使われていません。窓口の案内が見つけにくい可能性があります。

最後に、成約した組のうち、見学の前から式場を知っていた組の割合です。見学時のアンケートで「この式場を知ったきっかけ」を聞いていれば、そこから推し量れます。もともと来た割合が高いなら、割引を下げるか、特典の現物に替えるか、提携を止めることを検討します。

止めるときの伝え方も、先に決めておきます。提携期間の終了を契約書に書いておけば、更新しないという連絡だけで済みます。契約済みの二人は、割引を約束した内容のまま扱います。ここを曖昧にすると、地元の企業との関係に傷がつきます。

受けないほうがいい提携もあります

窓口を置いても、受けないほうがいい提携の形があります。

ひとつは、企業側が「全社員に必ず案内するので、割引は大きめに」と求めてくる場合です。案内の約束は、実際に社員が来る保証ではありません。割引の大きさを、案内の約束と交換するのは避けます。

もうひとつは、窓口を通さない運用を企業が望む場合です。社内で完結させたい、個人情報を式場に渡したくないといった事情は分かりますが、数字が取れない提携は、判断ができない提携です。専用ページを企業が案内する形にするなど、入口だけは分けてもらうよう交渉します。それが通らなければ、見送るほうが安全です。

3つめは、同じ地域の複数の企業から同時に、同じ割引を求められる場合です。ここは公平に扱うために、割引の上限と期間を同じ条件にして、どの企業にも同じ案内を出します。1社だけ条件を変えると、後から知った企業との関係がこじれます。

まとめ

  • 法人提携は、割引率から決めずに、社員が最初に連絡する窓口を先に決める
  • 割引は、提携がなくても来た二人にも出る。増えた1組あたりの実質コストは「割引額 ÷ (1 − もともと来た割合)」で出る
  • 仮の前提(総額350万円、割引5%)では、もともと来た割合が2割で約21.9万円、5割で35万円、7割で約58.3万円になる
  • 窓口は、専用ページ、予約時の選択項目、企業担当者の取りまとめの3つから、提携先の数と予約システムで選ぶ
  • 割引は%でなく、1組の上限額、対象期間、数字を見る日を決めてから出す
  • 続けるか止めるかは、窓口経由の数、窓口を通さず名乗った組、見学前から式場を知っていた組の3つで見る
  • 窓口を通さない運用を望む提携は、数字が取れない限り見送る