会場を決めた二人の挙式は、平均8.5か月先。成約が落ちても、挙式の月次には1か月あたり0.3組未満ずつしか出てこない
今月の挙式の売り上げは、今月の営業が作ったものではありません。たいていは8か月以上前の成約の結果です。逆に、今月の成約が落ちても、その影響は1年近くかけて薄く広がるので、挙式組数の月次を眺めているだけでは気づけません。
この「契約から挙式までの遅れ」を、リクルートブライダル総研の調査で確かめます。そのうえで、仮の式場に当てはめて、成約の増減が挙式の月次にどう出てくるかを計算します。最後に、挙式まであと何か月かで、手を打つ場所が変わることを整理します。
調査が示す、会場を決めた時期
リクルートブライダル総研の「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」の首都圏版報告書には、披露宴・ウエディングパーティー会場を探し始めた時期と、決めた時期が載っています。披露宴・ウエディングパーティー実施者の数値回答で、首都圏の2024年調査は n=394 です。
決めた時期の平均は、挙式の8.5か月前でした。年ごとの平均は次のとおりです。
- 2018年調査:8.3か月前
- 2019年調査:8.1か月前
- 2020年調査:8.1か月前
- 2021年調査:10.6か月前
- 2022年調査:10.5か月前
- 2023年調査:8.8か月前
- 2024年調査:8.5か月前
2021年と2022年は10か月を超えていて、延期や日程の取り直しが多かった時期と重なります。僕はそう読んでいますが、報告書にその説明はありません。それ以外の年は8か月台に収まっています。
平均だけでは、どの時期にどれだけ決まるのかが分かりません。決めた時期の分布は、挙式から数えて次のように並びます(2024年調査・首都圏、無回答1.3%)。
| 決めた時期(挙式の何か月前) | 割合 |
|---|---|
| 16か月以上前 | 3.8% |
| 15か月前 | 0.8% |
| 14か月前 | 0.8% |
| 13か月前 | 2.5% |
| 12か月前 | 14.0% |
| 11か月前 | 6.1% |
| 10か月前 | 9.9% |
| 9か月前 | 7.9% |
| 8か月前 | 10.9% |
| 7か月前 | 9.4% |
| 6か月前 | 12.9% |
| 5か月前 | 8.6% |
| 4か月前 | 5.1% |
| 3か月前 | 4.3% |
| 2か月前 | 1.3% |
| 1か月前以内 | 0.5% |
12か月前に14.0%の山があり、6か月前に12.9%の山があります。半年から1年前にかけて、広く散らばっているのが分かります。
ここから累積を取ると、挙式の何か月前までに会場が決まっているかが見えます。
- 12か月以上前に決まっている:21.9%
- 9か月以上前に決まっている:45.8%
- 6か月以上前に決まっている:79.0%
- 3か月以上前に決まっている:97.0%
つまり、半年先の挙式は8割がすでに決まっています。3か月先の挙式なら、ほぼ全部です。
注意点が3つあります。
- 「会場を決めた時期」は二人の回答で、式場の契約日や内金を入れた日と同じとは限りません
- 回答者は挙式をした、または予定している二人です。契約したあとにやめた二人は含まれません
- 首都圏の数字です。地域で山の位置は違いえます
仮の式場で、成約の落ち込みを挙式月に割り振る
ここからは、数字の出どころが調査ではなく仮置きになります。式場の実数ではありません。
- 年間の挙式は120組、成約は毎月10組で一定とする
- ある1か月だけ、成約が2割落ちて8組になったとする(2組減)
- 落ちた2組が本来挙式していたはずの月は、上の分布どおりに散るとする
計算すると、2組の減少は次のように挙式月へ割り振られます。
| 成約の何か月後の挙式だったか | 割り振られる組数 |
|---|---|
| 12か月後 | 0.28組 |
| 6か月後 | 0.26組 |
| 8か月後 | 0.22組 |
| 10か月後 | 0.20組 |
| 7か月後 | 0.19組 |
| 9か月後 | 0.16組 |
最大の山でも、1か月あたり0.28組です。ほかの月は0.1組前後で、16か月以上先まで細く伸びています。2組という減り方が、14か月ぐらいに薄まって届くわけです。
組数ではなく金額で見ても同じです。仮に1組あたりの粗利を150万円とすると、2組の減少は合計で300万円です。ただ、12か月後の月に出る分は42万円、6か月後は39万円、8か月後は33万円。月ごとの挙式組数は、季節や日取りで1組、2組と動くのがふつうです。1組が150万円なら、42万円の凹みは、その波の中に埋もれます。
次の2点が、ここから言えます。
- 成約が落ちた月に、挙式の月次を見ても分からない。分かるのは、その月の成約数を見たときだけ
- 成約が落ちて、挙式の月次の凹みに気づいたころには、落ちた月から半年から1年たっている
しかも、見るべき月は、凹んだ月ではありません。今月の挙式が少ないなら、原因は8か月前あたりの成約にあります。今月の営業を見直しても、今月の挙式は変わりません。
約8割が決まっている、という前提で売上の見通しを立てる
遅れの大きさは、売上の見通しにも効きます。累積の数字を、仮の120組の式場に当てはめます。
- 9か月以上先の挙式:成約済みは約46%。120組のうち約55組
- 6か月以上先の挙式:成約済みは約79%。120組のうち約95組
- 3か月以上先の挙式:成約済みは約97%。120組のうち約116組
ここで「成約済みの割合」は、挙式をした二人が何か月前に決めたかの分布から来ています。ある月の挙式の見通しを立てるとき、半年前の時点で、その月の挙式のおよそ8割がすでに決まっている、という読み方です。ただし先ほどの注意のとおり、契約後にやめた二人は含まれていないので、半年前の契約済みの組数は、実際にはこれより少し多かったはずです。自分の式場で確かめるなら、挙式月ごとに契約日を並べるのが早いです。
この読み方で、見通しの立て方が3つ変わります。
- 半年先までの売上は、新規の営業で動かせる幅が小さい。 残りの約2割に、集客と接客のすべてを注ぎ込んでも、取れるのは年に24組ほどです
- 3か月を切ってから決まる二人は、全体のごくわずか。 2か月前と1か月前以内を足して1.8%で、120組なら年に2組強です。空いた日を直前に埋める作戦は、量としてはこの程度しか見込めません
- 来期の売上は、今期の成約でほぼ決まる。 9か月以上先の挙式の約46%がすでに決まっているので、今期の後半の成約は、そのまま来期前半の売上の土台になります
2つ目は、直前の値引きで空き日を埋める話とつながります。直前に決める二人の絶対数が少ないなら、値引きの対象になる二人も少ない、ということになります。値引きが全体の単価を下げる影響のほうが、埋まる組数より大きくなりうるので、値引きの設計は別に考える必要があります。
挙式までの月数で、手を打つ場所が変わる
遅れの分布を、3つの帯に分けます。決めた時期の分布から、次のように分かれます。
| 帯 | 挙式の何か月前に決まったか | 割合 |
|---|---|---|
| 先の帯 | 10か月以上前 | 37.9% |
| 中の帯 | 9か月前から4か月前 | 54.8% |
| 手前の帯 | 3か月前から1か月前 | 6.1% |
合計は98.8%で、残りは無回答です。帯ごとに、見る数字と動かせるものが違います。
先の帯(10か月以上先の挙式)
この帯の挙式は、今まさに成約が積まれている最中です。見る数字は、ブライダルフェアの来館組数と成約数です。ここは来期の売上を作っている帯なので、今期の売上の話と混ぜないほうがいいです。今期の成約が伸びたかどうかは、今期の挙式の売上ではなく、来期の挙式の組数で確かめることになります。
中の帯(9から4か月先の挙式)
挙式の半分強は、この帯で決まります。契約はすでに入っていて、打ち合わせが進んでいる最中です。ここで動かせるのは、組数ではなく中身です。打ち合わせ件数、プランの追加、人数の確定、キャンセルの兆し。成約済みの二人に、ここで何をするかが粗利を左右します。
手前の帯(3か月以内の挙式)
組数はほぼ確定していて、動かせるのは当日の運営と、直前の追加注文です。ここで新規の組数を足そうとしても、取れるのは6.1%、仮の120組で年7組ほどです。しかも3か月前に決める人が4.3%で、その大半を占めます。
帯を混ぜると、次のような食い違いが起きます。
- 今月の挙式組数が少ないので、今月の集客を強化する → 効くのは10か月以上先の帯。今月の組数は変わらない
- 今月の成約は好調なので、今期は安泰と見る → その成約は来期の売上。今期の後半の売上はすでに決まっている
- 直前の空き日を埋めるために広告を増やす → 取れる組数は全体の数%
どれも、遅れを頭に置いていないと起きる読み違いです。
広告や施策の効果をいつ測るか
遅れの話は、施策の効果判定にも関わってきます。
たとえば、ある月に広告の出稿先を変えたとします。その効果を、挙式の売上で測ろうとすると、結果が出るまで平均8.5か月かかります。もう少し手前の数字なら、早く見えます。
- 数日から数週間で見える:問い合わせ数、フェア予約数
- 1か月前後で見える:来館数
- 2か月前後で見える:成約数。調査では、探し始めが平均10.3か月前、決めたのが8.5か月前で、差は約1.8か月です。来館からの成約は、このくらいの遅れで出てきます
- 8か月以上たってから見える:挙式組数と売上
売上で測ると、施策を変えてから結果が見えるまでに1年近くかかります。その間に、広告以外の要因(料金改定、近隣の競合、景気)も動くので、売上の変化を広告の変化に結びつけるのは難しくなります。なので、効果の判定は成約数と来館数で行い、売上は「結果の確認」に回すほうが、判断が早くなります。
ただ、成約数にも限界はあります。1か月の成約は10組前後で、1組の増減が1割にあたります。数字が小さいので、1か月の増減だけで良し悪しは決められません。3か月分をまとめて見るなど、期間を広げるほうが誤差に引きずられません。
この数字の限界
最後に、この記事の数字の限界を整理します。
- 分布は首都圏のもので、地方の式場にそのまま当てはまるとは限りません。会場の種類(一般の結婚式場、ホテル、レストランなど)でも山の位置は違います
- 「決めた時期」は二人の回答です。式場の契約日や内金の日付と一致するかは、式場ごとのデータで確かめる必要があります
- 回答者は挙式済み、または挙式予定の二人なので、契約後にやめた二人は入っていません
- 仮の式場の計算は、成約が毎月10組で一定という置き方です。実際は季節で波があり、挙式月の山もずれます。割り振りの考え方だけを使ってください
- 1組あたり150万円という粗利は、金額のイメージのための仮置きで、実数ではありません
式場で確かめるなら、過去2年分の挙式について、契約日から挙式日までの月数を数えて、分布を作るのが早いです。山の位置が12か月前なのか、6か月前なのかで、帯の割合が変わります。
まとめ
- ゼクシィ結婚トレンド調査2024(首都圏、n=394)では、披露宴会場を決めた時期は挙式の平均8.5か月前。2021・2022年調査を除くと8か月台に収まっている
- 6か月以上前に決まっているのは79.0%、3か月以上前では97.0%。半年先の挙式は、約8割がすでに決まっている
- 仮の式場で、ある月の成約が2組減ると、挙式月には最大でも月0.28組(粗利150万円の仮置きで42万円)ずつ、14か月ほどに薄まって出る
- だから、挙式組数の月次では成約の落ち込みに気づけない。今月の挙式が少ない原因は、8か月前あたりの成約にある
- 帯で分けると、10か月以上先が37.9%、9から4か月先が54.8%、3か月以内が6.1%。先の帯は成約数、中の帯は中身、手前の帯は運営で見る
- 施策の効果は、売上より先に、問い合わせ・来館・成約で測る。成約は数が小さいので、3か月分をまとめて見る
