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ゲストのアレルギー申告を、人数確定の14日前でなく招待状の返信で集めると、仮の式場では年44万円の手戻りが減る。事務が1組1.5時間までなら得

披露宴の料理で、ゲストのアレルギーや苦手な食材を、いつ集めるか。多くの式場は、最終人数の確定と一緒に聞いていると思います。新郎新婦が招待状の返信を集め、人数がほぼ固まった頃に、担当者へまとめて渡す流れです。

先に結論を書きます。この集め方を、招待状の返信はがき(またはWebの出欠フォーム)に欄を作って、挙式の2か月前ごろに集める形へ前倒しすると、直前の手戻りが減ります。年120組、1組70人、アレルギーなどの申告者が3%という仮の式場では、手戻りの費用が年約60万円から約16万円になり、差し引き年約44万円です。前倒しで増える事務が1組あたり1.5時間までなら、差し引きは黒字に残ります。

この記事の数字のうち、出典があるのは特定原材料の義務表示の変更だけです。ほかはすべて僕が置いた仮の数字なので、式場ごとに違います。どこを自分の会場の数字に替えれば答えが変わるのか、それが分かるように前提から並べます。

先に置く前提

仮の式場は、挙式が年120組、1組の披露宴は70人とします。ゲストのうち、アレルギーや宗教上の理由、妊娠中の制限などで、通常の料理から外してほしい人の割合を3%と置きます。70人なら1組に2.1人、年間では252人です。

この3%は仮置きです。成人の食物アレルギーの有病率は、厚生労働省の研究班の資料に、2011年のネット調査で12%という自己申告の数字が出てきます。ただ、これは「食べて症状が出たことがある」という広い聞き方で、料理を替えてほしい人の割合とは別物です。実際に式場が受ける申告は、会場の実感では1組に1〜3人くらいだと思いますが、これも僕の想像の域を出ません。自分の会場の過去の披露宴を10組ほど遡って、申告の人数を数えるのが、最初の一歩になります。

次に、集める時期を2つ置きます。

  • いまのやり方(後ろ倒し):最終人数の確定と一緒に、挙式の14日前までに新郎新婦から担当者へ渡してもらう
  • 前倒しの形:招待状の返信に欄を作り、挙式の約2か月前(返信期限)に新郎新婦が集めて、担当者へ渡してもらう

どちらの形でも、集めるのは新郎新婦で、式場が直接ゲストに聞くわけではない、と置きます。式場が直接聞く運用は、個人情報の扱いが変わるので、ここでは扱いません。

直前に分かると、何が起きるか

14日前に申告が出ると、式場の側で起きることは、おおむね次の3つです。

仕入れの手配が間に合うか、確認が要ります。アレルギー対応の食材は、通常のメニューと別に手配することがあり、取引先によっては前の週に発注が締まります。

調理場の段取りが変わります。対応食を作る担当、盛り付けの順、サービスで運ぶ人の指示まで、当日の動きを一つずつ決め直すことになります。

新郎新婦に確認の連絡が返ります。「その方は卵だけですか、乳もですか」といった聞き直しを、人数確定で忙しい時期に繰り返すことになります。

この手戻り1件のコストを、仮に8,000円と置きます。担当者と調理場で合わせて2時間(時給2,500円で5,000円)と、食材のロスや別手配の割増で3,000円、という内訳です。この8,000円も仮置きです。

食品表示の義務品目が増えたことも、じわじわ効く事情です。消費者庁の食品表示基準の改正で、2023年3月9日から、特定原材料にくるみが加わり、義務表示は8品目になりました。以前は7品目だったので、くるみを使うデザートやパンが多い式場は、原材料の確認が1品目ぶん増えています。申告が来たときに確認する範囲が広がるほど、直前に聞くコストは重くなります。

直前に分かる割合を、仮に置く

では、14日前に集める形だと、申告者のうち何割が直前に判明するのか。これが、この計算でいちばん大きな仮置きです。

僕は、後ろ倒しの形では3割、前倒しの形では8%と置きます。理由は次のとおりです。

後ろ倒しの形では、新郎新婦がゲスト全員の状況を把握するのが、返信のあとになります。返信期限は挙式の2か月前ごろで、そこから14日前までの間に、家族づてや当日に近い会話で「実は」が出てきます。招待状の返信にアレルギー欄がなければ、ゲストが自分から書く機会がそもそもありません。

前倒しの形でも、ゼロにはなりません。返信のあとで体調や妊娠が分かった人、返信に書き忘れた人、欄を見落とした人が残るからです。8%は「ゼロにはならない」という意味で置いた数字です。

この3割と8%は実測値ではありません。式場の過去の披露宴で、申告が挙式の何日前に担当者へ届いたかを記録すれば、自分の会場の数字に替えられます。

手戻りの年間費用

仮置きをそのまま掛け算します。年間の申告者は252人です。

  • 後ろ倒し:252人 × 30% × 8,000円 = 約60万円
  • 前倒し:252人 × 8% × 8,000円 = 約16万円
  • 差し引き:約44万円

前倒しの形のほうが、年44万円ぶん手戻りの費用が小さい、という計算です。1組あたりに直すと約3,700円です。

数字の大きさを、粗利と並べてみます。1組の粗利が140万円なら、年120組で1億6,800万円です。44万円は0.26%に当たります。大きな数字ではありません。ただ、この44万円は仕入れや調理場の手戻りという現場の負担に出る話で、粗利の数字にはそのまま現れません。数字の小ささよりも、月に3〜4回、直前に現場が組み直す場面が減るかどうか、という見方のほうが近いと思います。

前倒しで増える事務

前倒しにも、費用がかかります。招待状の返信はがきに欄を作る、Webの出欠フォームに項目を足す、新郎新婦に「回収をお願いします」と伝える、集まった申告を担当者が料理の担当に渡す、という仕事です。

この増える事務を、1組あたり0.5時間、1時間、1.5時間の3通りで計算します。時給は2,500円です。

  • 0.5時間なら、年120組で15万円
  • 1時間なら30万円
  • 1.5時間なら45万円

手戻りの減少が年44万円なので、前倒しで増える事務が1組あたり約1.5時間(年45万円)までなら、差し引きはほぼ黒字に残ります。損益分岐は、44万円 ÷ 120組 ÷ 2,500円 = 約1.5時間です。

1組に1.5時間は、実感としては重い数字だと思います。返信はがきの様式を一度作り直せば、そのあとの手間は「集まった結果を見る」だけです。実際の増え方は、0.5時間より小さい式場も多いはずです。逆に、紙の返信はがきを担当者が一枚ずつ転記している式場では、1.5時間を超えることもあります。

分かれ目は、直前に分かる割合の差

ここまでの結論は、仮置きの3割と8%が正しい限りの話です。この差が小さいと、前倒しの意味はなくなります。差を変えて、もう一度計算します。

  • 3割と8%(差22ポイント):差し引き44万円
  • 2割と8%(差12ポイント):252人 × 12% × 8,000円 = 約24万円
  • 4割と10%(差30ポイント):252人 × 30% × 8,000円 = 約60万円

差が12ポイントだと、損益分岐は1組あたり約0.8時間に下がります。前倒しの事務が1時間かかる式場では、赤字に変わります。

つまり、判断の分かれ目は2つです。1つ目は、いまの運用で、14日前になって初めて申告が出る件が全体の何割あるか。2つ目は、前倒しの事務に1組何時間かかるか。この2つを実測すれば、答えが出ます。

1件あたりの費用が高い式場と、低い式場

手戻り1件の費用を8,000円と置きましたが、ここは式場の条件で大きく違います。

3,000円なら、手戻りの年間費用の差は約17万円に縮み、損益分岐は0.55時間です。前倒しの事務を0.5時間以下に収められなければ、前倒しは割に合いません。

15,000円なら、差は約83万円に広がり、損益分岐は2.8時間まで上がります。これは、アレルギー対応食を外部の業者から取り寄せていて、発注の締めが早い会場や、調理場が小さく、対応食の段取りを組むのに時間がかかる会場に近い想定です。

つまり、手戻りが重い会場ほど、前倒しの価値が大きくなります。逆に、料理を自社の調理場で柔軟に組み替えられて、直前でも1件の対応が軽い会場は、前倒しの優先度は低くなります。

数字に出ない部分

ここまでの計算には、入れていないものが2つあります。

1つ目は、対応の質です。直前に申告が出ると、確認の時間が限られるので、調理場が「念のため抜く」判断に寄ることがあります。それ自体は安全側の判断ですが、ゲストに出る料理の中身が当初の予定より少なくなる、ということもありえます。逆に、前倒しで早く分かれば、同じ食材を別の形で使って、見た目の華やかさを保つ余裕が生まれます。ただ、これが満足度にどれだけ効くかは、数字にできていません。

2つ目は、万一の事故です。アレルギーの申告の見落としが事故につながれば、費用は計算の外です。この記事の損益の計算は、事故の確率が前倒しで下がるかどうかには踏み込んでいません。確率を僕が置くことはできないからです。ただ、早く分かるほど確認の回数を増やせる、という構造は、そのまま残ります。

この2つは数字に入れていませんが、前倒しの形に有利に働く方向の要素です。損益の分岐点でぎりぎり黒字という会場では、これを理由に前倒しを選ぶ判断もありえます。

前倒しの運用で、迷いやすい点

前倒しにするとき、実務で迷う点が3つあります。

欄の書き方です。「アレルギー」とだけ書くと、「苦手な食材」まで書く人と書かない人が出ます。「食べられないもの(アレルギー、宗教、妊娠中などの理由)」と広めに聞いて、あとで担当者が分けるほうが、拾い漏れは減ります。

返信のあとに分かった分の受け皿です。前倒しにしても、期限後の申告は必ず出ます。「期限後も、○日前まではこの窓口で受けます」と先に書いておくと、新郎新婦が個別に抱え込まずに済みます。この受け皿を作らないと、前倒しにした意味が半分になります。

新郎新婦への依頼の仕方です。回収するのは新郎新婦で、ゲスト一人ひとりに聞くのは負担になります。欄を返信はがきに作っておけば、新郎新婦は集まったものを転記するだけです。式場側で用意する雛形があるかどうかで、新郎新婦の負担は大きく変わります。

まとめ

  • アレルギー申告を、人数確定の14日前から招待状の返信(約2か月前)へ前倒しすると、仮の式場(年120組、1組70人、申告者3%)で、手戻りが年約60万円から約16万円になる
  • 差し引きは年約44万円。前倒しで増える事務が1組あたり約1.5時間までなら黒字
  • 分かれ目は、直前に分かる件の割合の差(仮置きは3割と8%)と、手戻り1件の費用、前倒しの事務時間の3つ
  • 手戻りが重い会場(対応食を外部から取り寄せる、調理場が小さい)ほど前倒しの価値が大きい
  • 出典があるのは特定原材料の義務表示が8品目になったことだけ。他の数字はすべて仮置きなので、自分の会場の過去10組で、申告が何日前に届いたかを数えれば置き換えられる