経営・組織

成約率は分母の取り方で19%から36%まで動く。同じ式場でも、月次の「同月比」では27%から45%に揺れる

「うちの成約率は40%です」と言われたとき、僕はまず「何で割った40%ですか」と聞きます。問い合わせで割ったのか、フェア予約で割ったのか、実際に来館した組で割ったのか。分母が違えば、同じ式場の同じ1年でも、成約率は2倍近く開きます。

結論を先に書きます。成約率という数字は、分母を決めてから初めて意味を持ちます。仮の式場で計算すると、同じ116組の成約が、問い合わせで割れば19.3%、フェア予約で割れば27.6%、初回来館で割れば36.0%になります。さらに、月ごとに「その月の成約÷その月の来館」で見ると、実力は36%で一定なのに、27%から45%の間を行き来します。

この揺れは、成約が来館より遅れて出るから起きます。分母を決めるだけでなく、分子と分母の月を揃えるかどうかも決めておかないと、月次会議で「先月は悪かった」の原因探しに時間を使うことになります。

この記事の数字は、成約率40%と平均単価350万円という業界紙の試算前提を除いて、すべて僕が置いた仮のものです。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

先に押さえる。業界で見る「40%」は、来館を分母にした試算の前提

ブライダル産業新聞の連載(第17回)は、来館キャンセルの機会損失を説明する試算で、平均単価350万円、成約率40%という前提を置いています。1来館あたりの売上期待値は約140万円という計算です。この連載の40%は市場の平均値ではなく、試算を回すための仮の置き方だと読めます。

ここで大事なのは、この40%が「来館した組」を分母にしている点です。来館を分母にした試算だから、「来館が1組減ると140万円」と言えます。もしこの40%が問い合わせ数で割った数字なら、来館1組あたりの期待値は計算できません。

成約率という言葉は、会議の中で分母を省略したまま使われがちです。担当者は来館ベースで話し、経営者は問い合わせベースの感覚で聞き、広告の担当は資料請求ベースで見ている。そういう会議では、同じ「成約率」で話がかみ合いません。

仮の式場を置く。年間の問い合わせ600件、成約116組

仮の式場の1年を置きます。

  • 問い合わせ(電話、フォーム、資料請求の合計):年600件
  • フェア・見学の予約:年420組
  • 予約のうち実際に来館した組:年322組(予約の約23%が来ない)
  • 来館した組のうち、あとで契約した組:年116組
  • 契約まで2回来館する組が多く、再来館が年60組。のべ来館は382組

来館322組という数字は、初回の来館だけを数えています。2回目に来た60組を足すと、のべ382組です。ここまでが分母の候補です。

なお、ここでの契約は「初回来館の二人が、いつかの時点で契約した」件数です。来館せずにオンラインだけで決める二人や、問い合わせから直接契約する二人は、この仮の式場ではいないものとします。実際の会場では、ここも決めておく必要があります。

分母を4通りに並べる。同じ116組が19%から36%になる

同じ116組を、4つの分母で割ります。

分母 件数 成約率
問い合わせ 600 19.3%
フェア・見学の予約 420 27.6%
初回に来館した組 322 36.0%
のべ来館(再来館を含む) 382 30.4%

どれも間違いではありません。ただ、答えている問いが違います。

問い合わせで割った19.3%は、「入口に入った人のうち、何人が契約したか」です。広告や媒体の担当が、問い合わせ1件あたりの価値を決めるときに使います。

フェア予約で割った27.6%は、「予約を取った人のうち、何人が契約したか」です。来館しない23%が分母に入るので、予約の取り方や、前日のリマインドの出来が効きます。接客の担当者の評価には向きません。来ていない人の分まで担当者の責任になってしまうからです。

初回来館で割った36.0%は、接客の力を見る数字です。来館した二人を、どれだけ契約に持っていけたかを、担当者別、フェアの種類別に比べられます。業界紙の試算前提の40%も、この分母に近い読み方です。

のべ来館で割った30.4%は、1回の来館にかかる手間あたりの成果を見るときに使います。再来館の予約を積極的に取る式場ほど、この数字は下がります。ただ、それで接客が悪化したとは言えません。2回目の来館は、1回目で決まらなかった人が戻ってくる回数だからです。再来館を増やす施策(次回予約を取る、など)の効果を、のべ来館ベースの成約率で見ると、悪化して見えてしまいます。

目標の置き方で、年間の組数が変わる

分母の取り違えは、目標の置き方で金額になります。

業界紙の試算に合わせて「成約率40%」を目標に置くとします。この40%を初回来館ベースで置くと、来館322組なら年129組。のべ来館ベースで置いてしまうと、382組×40%で年153組です。同じ「40%」でも、目標の組数が24組違います。

1組の売上を、業界紙の試算前提の350万円に置くと、24組分は年8.4億円の差です。のべ来館ベースの40%を目標にすると、現場は届きにくくなります。目標が届かない理由が、接客の弱さではなく分母の取り違えだったとしたら、現場の評価も、次の施策の選び方もずれていきます。

だから、目標に成約率を置くときは、数字より先に分母を書きます。「初回来館ベースで38%」のように、分母を数字の横に置きます。僕が考える最低限の約束は、これだけです。

月次の同月比は、実力が同じでも27%から45%に揺れる

分母が決まっても、もう一つ揺れる原因があります。成約が出るのは、来館した月とは限りません。

二人は複数の会場を見て回るので、契約は来館より後に出ます。仮の式場では、初回来館から契約までの日数を次のように置きます。

  • 来館した月に契約:30%
  • 翌月:40%
  • 翌々月:20%
  • 3か月後:10%

初回来館に対する最終的な成約率は、どの月に来た二人も36%で一定とします。月ごとの来館数は、繁閑を入れて次のように置きます(単位は組)。

1月20、2月22、3月30、4月34、5月28、6月24、7月22、8月20、9月32、10月36、11月30、12月24。合計で322組です。

この来館が毎年同じ形で繰り返すとして、各月に出る契約を計算します。1月の契約は、1月の来館の30%に加えて、前月(12月)の来館の40%、前々月(11月)の20%、3か月前(10月)の10%が入ってきます。計算すると、月ごとの成約は次のようになります。

1月9.1組、2月8.1組、3月8.7組、4月10.3組、5月10.9組、6月10.2組、7月9.1組、8月8.1組、9月8.8組、10月10.7組、11月11.4組、12月10.7組。合計で約116組です。

これを「その月の成約÷その月の来館」で割ると、次のようになります。

1月45.4%、2月36.7%、3月29.0%、4月30.3%、5月38.8%、6月42.3%、7月41.2%、8月40.3%、9月27.5%、10月29.8%、11月38.2%、12月44.4%。

実力は全期間で36%に固定しているのに、同月比は27.5%から45.4%まで動きます。来館が増え始める3月、9月は、成約が来館に追いつかず低く出ます。来館が減り始める1月、6月、12月は、前の月の来館が成約として入ってくるので、高く出ます。

月次会議で「9月の成約率が27.5%に落ちた。何があった」と問うと、接客の問題を探し始めます。ところが実際には、8月から9月にかけて来館が増えたことの影響が出ているだけです。これは、僕の置いた仮の計算での話です。実際の会場で、契約までの期間の配分がどうなっているかは、自分の契約台帳から出せます。

揺れを避ける3つの決め方

ここまでをふまえて、成約率を扱う前に決めておくことを3つ書きます。

1つ目は、分母を何にするか。接客の評価なら初回来館、広告の評価なら問い合わせ、予約の取り方なら予約数。用途ごとに分母を変えてよいですが、数字の横には必ず分母を書きます。

2つ目は、分子と分母の月を揃えるか。月次の同月比は、現場に報告するのが簡単な反面、来館の増減に引きずられます。揃えるなら、「4月の来館組のうち、いまの時点で契約した組」を追いかける方法(来館月ごとの追跡)を使います。契約台帳に初回来館日の列が1つあれば作れます。直近の月はまだ契約が出きっていないので、「来館後60日時点の成約率」のように期間を区切って比べると、月どうしを並べられます。

3つ目は、再来館をどう数えるか。のべで数えるか、組で数えるか。次回予約を取る施策や、二度目の来館を促す施策を評価するなら、組で数えるほうが、施策の効果を悪化に見せません。

この3つは、新しい施策を入れるときほど大事です。たとえば試食の内容を変えたとして、その効果を測る期間に、来館数が増えたとします。同月比の成約率は一時的に下がって見えます。そのときに「施策が失敗した」と判断して戻してしまうのは、数字の読み違いです。

自分の会場で作るときの手順

自分の会場の数字で確かめる手順を書きます。

  1. 契約台帳から、契約した組の初回来館日と契約日を並べる
  2. 初回来館月ごとに「何組来て、何組が契約したか」の表を作る
  3. 来館月から契約月までの月数の配分を出す。仮の式場の「30%、40%、20%、10%」に当たる部分
  4. 同月比の成約率と、来館月ごとの成約率を、月ごとに並べる
  5. 両者の差が大きい月を探す。差が大きいのは、来館が大きく増減した月の前後になる

台帳が紙に近い形でも、1年分なら半日で作れます。この表ができると、月次会議で「今月の成約率が低いのは、先月までの来館が少なかったからか、接客の問題か」を切り分けられます。

まとめ

  • 成約率は、分母を決めないと意味がない。仮の式場では同じ116組が、問い合わせ分母で19.3%、フェア予約で27.6%、初回来館で36.0%、のべ来館で30.4%になる
  • 業界紙の試算前提の40%は、来館を分母にした置き方。市場の平均値として読まない
  • 目標に成約率を置くときは、数字の横に分母を書く。分母の取り違えは、仮の式場では年24組分の目標の差になる
  • 月次の同月比は、成約が来館より遅れて出るため、実力が36%で一定でも27.5%から45.4%に揺れる
  • 来館月ごとに追う表を契約台帳から作ると、接客の問題と来館数の増減を切り分けられる
  • 再来館を促す施策は、のべ来館ベースの成約率では悪化して見える。組で数える