集客

式場が役所の窓口にパンフを置く前に、入籍済みの来館者を数える

役所の婚姻届の窓口にパンフレットを置いたら、結婚する二人にまとめて会えるのではないか。式場の集客を考えるとき、この発想はときどき出てきます。窓口に来る二人は、全員が結婚する人だからです。

僕は、置く前に一つだけ数えておくことをおすすめします。自社の来館者のうち、見学した時点で入籍を済ませていた二人が、どれくらいいるか。この数字が小さいなら、窓口は的外れの場所になります。逆に、ある程度いるなら、置く価値があるかもしれません。

この記事では外部の統計は使いません。入籍後に式場を探す二人の割合は、地域でも式場のタイプでも違うはずで、全国の平均を当てはめても自社の判断には役に立たないと考えるからです。代わりに、仮の前提を置いたモデル計算と、数え方の手順で進めます。

窓口で会える二人は、式を探している二人とは限らない

婚姻届を出す二人の全員が、結婚式を挙げるわけではありません。挙げる二人の中でも、式場を探すタイミングはばらばらです。

式場を決めてから入籍する二人もいれば、入籍を先に済ませて、あとからゆっくり式場を探す二人もいます。窓口で会えるのは、後者のうち、まだ式場が決まっていない二人だけです。すでに式場を決めている二人にパンフを渡しても、見学予約にはなりません。式をしない二人に渡しても同じです。

つまり、窓口に置いたパンフが効くかどうかは、次の三つの掛け算で決まります。

  • 窓口に来る二人のうち、式をする二人の割合
  • そのうち、入籍の時点でまだ式場が決まっていない二人の割合
  • 手に取ったパンフから、実際に見学予約まで進む二人の割合

どれも自社の外にある数字で、パンフを置く前には分かりません。ここで自社の中にある数字を使います。それが、冒頭に書いた「見学した時点で入籍済みだった二人」の割合です。

自社の来館者で、入籍済みの割合を数える

数え方は簡単です。直近半年ぶんの見学アンケートか、予約フォームか、担当者の見学メモを見て、次の二つを拾います。

一つ目は、見学した日に入籍が済んでいたかどうか。二つ目は、済んでいた二人について、入籍から見学までに何か月たっていたかです。

アンケートに入籍の項目が無ければ、担当者が見学の冒頭で自然に聞ける範囲で十分です。「もう入籍はされていますか」という質問は、予算や日取りよりずっと答えやすいので、聞いても嫌がられにくいと思います。ただ、これは見学の場で聞くことで、予約フォームに必須項目として足すのはおすすめしません。項目を増やすと予約の途中で離れる二人が出るので、予約フォームは短いままにします。

半年ぶんを集めると、おおまかな割合が出ます。月の見学が40組なら、半年で240組です。そのうち入籍済みの二人が何組いたかを数えます。

数字を三つの帯に分けて、動き方を決める

割合が出たら、僕は次のように分けて考えます。この線引きは僕の判断で、統計に基づいたものではありません。自社の事情に合わせて動かしてください。

5%を切るとき

半年で240組のうち、12組未満です。入籍済みの二人は、自社の見学ではごく少数派ということになります。この状態で窓口にパンフを置いても、会いたい二人がそもそもあまり来ないので、置かなくていいと思います。他の手段、たとえば口コミや公式サイトの整備に手間をかけたほうが、同じ時間で届く二人が多いはずです。

5%から10%のとき

12組から24組のあいだです。少数ですが、無視はできません。この帯では、置くかどうかよりも、既に来ている入籍済みの二人に何が決め手だったかを聞くほうが先です。どの媒体で知ったのか、窓口でパンフを見た記憶があるのか。この答えが集まらないと、窓口に置いた効果も測れません。

10%を超えるとき

24組以上です。入籍後に式場を探す二人が、はっきり一定数いる式場です。このときは、窓口にパンフを置く実験をする価値があります。ただし、いきなり広げず、次に書く手順で小さく始めます。

置けるかどうかを先に確かめる

ここまでの計算が合っても、窓口にパンフを置けるかどうかは別の問題です。役所の窓口は公共の場所なので、営利目的のチラシを置けるかどうかは、自治体や窓口ごとに扱いが違うと考えておいたほうがいいです。

置けないところに無断で置くと、その場で撤去されるだけでなく、役所との関係も悪くします。式場は地域の中で長く商売をしているので、役所との関係を悪くするのは割に合いません。

先に電話で窓口に聞きます。聞くことは三つで十分です。民間の事業者のパンフを置けるのか。置けるなら、申請が要るのか。置けないなら、掲示や配布ができる別の場所があるのか。

ここで断られたら、窓口に置く案はそこで終わりです。置けない自治体の分を無理に工夫するより、次の自治体に聞くか、別の手段に移ります。

費用は小さい。見るべきは手間と測れるかどうか

仮の前提で、費用を計算してみます。数字はすべて想定です。

  • パンフレット:1枚20円、月に300枚
  • 補充の訪問:3か所を月1回、1回あたり2,000円ぶんの手間(時給換算)

月の費用は、300枚×20円=6,000円に、3か所の手間6,000円を足して、12,000円です。

では、これが元を取れる見学予約の数を計算します。仮に、見学が成約になる確率を30%、1組あたりの粗利を80万円とします。1組の見学予約が生む粗利の期待値は、0.3×80万円=24万円です。月の費用12,000円を取り返すには、24万円分のうち5%、つまり月に0.05組の成約があれば足ります。見学予約に直すと、約0.17組です。300枚に対して0.06%を切る水準なので、予約率の低さで赤字になる心配はほとんどありません。

予約率ごとの結果も並べておきます。

パンフ→見学予約の率 月の予約数 月の成約数 月の粗利
0.1% 0.3組 0.09組 約7.2万円
0.3% 0.9組 0.27組 約21.6万円
0.5% 1.5組 0.45組 約36万円

費用が小さいので、損益の計算はあまり悩みどころになりません。悩むのは別のところです。

一つ目は、手間です。毎月の補充を誰がやるのか。担当者が替わると止まりやすい仕事です。二つ目は、測れるかどうかです。パンフに専用のQRコードか合言葉を付けておかないと、見学予約が窓口経由かどうか分かりません。分からなければ、続けるか止めるかを決められません。

折込チラシの回で書いたとおり、数えられない手段は、続ける理由も止める理由も作れません。窓口のパンフも同じです。

小さく始める手順

置けると分かって、入籍済みの割合も十分なときの手順です。

  1. 窓口に聞いて、置ける自治体を1〜3か所に絞る
  2. パンフに専用のQRコードを付ける。予約ページの地図リンクのように、窓口経由だけの入口を作る
  3. 3か月は置き続ける。月ごとの予約数が1組未満でも、3か月続けて初めて見える数字がある
  4. 3か月たったら、予約数だけでなく、そのうち成約に進んだ組を数える

3か月で成約が0組でも、止めるかどうかはその時点の予約数を見て決めます。予約は入っているのに成約しないのであれば、窓口の二人は入籍後にゆっくり探したい層で、見学の次の連絡を長めに取る必要があるのかもしれません。予約自体が0組なら、その自治体は止めます。

パンフの中身は、入籍済みの二人に向ける

窓口でパンフを手に取る二人は、入籍の手続きをしに来ています。式場を探しに来た二人ではありません。だから、いつもの見学予約のチラシをそのまま置いても、読まれにくいです。

僕なら、書くことを絞ります。入籍のあとから式場を探す二人にも、見学を受けていること。食事会だけの小さなプランがあるなら、その案内。見学の所要時間と、予約のしかた。この三つです。

「結婚おめでとうございます」の一言から始めるのは悪くないと思います。ただし、フェア特典で釣るような書き方は避けます。窓口は役所の場所で、あまり商売っ気の強い紙は、置いてもらえなくなる原因にもなります。

半年後に、また数える

入籍済みの割合は、固定の数字ではありません。式場の料金や、近隣の競合の動きでも変わります。実験を始めたら、半年後にもう一度同じ数え方で割合を出します。窓口を始めて割合が上がったなら、窓口が効いている一つの証拠になります。変わらないなら、効いていない可能性が高いと考えます。

どちらの場合も、数えるのは見学アンケートと見学メモだけで、新しい仕組みは要りません。

入籍済みの二人が来たとき、見学での聞き方

数えるためには、見学の場で入籍の話が自然に出る必要があります。僕は、見学の最初の雑談で「結婚のご報告は、もうされたんですか」くらいの軽さで聞くのがちょうどいいと思っています。入籍済みと答えた二人には、続けて「式場を探し始めたのは、入籍の前でしたか、後でしたか」と聞きます。

この二つ目の質問が、実は一番の収穫です。入籍の後に探し始めた二人は、日取りを急いでいないことが多く、決める速さも、選ぶ条件も、入籍前に探す二人とは違うはずです。違いが見えれば、窓口のパンフだけでなく、見学後の連絡の間隔や、見積もりの有効期限の伝え方まで見直せます。

聞いた答えは、先に書いた見学メモの一行に残します。担当者が替わっても、数え直せる形にしておくことが、半年後の見直しを楽にします。

まとめ

  • 役所の窓口にパンフを置く前に、自社の来館者のうち、見学した時点で入籍済みだった二人の割合を数える
  • 半年で5%を切るなら置かない。5%から10%なら先に聞き取り。10%を超えるなら小さく試す(この線引きは僕の判断で、統計ではない)
  • 置けるかどうかは自治体と窓口ごとに違う。無断で置かず、先に電話で聞く
  • 費用は月12,000円程度の仮計算。予約率が低くても赤字になりにくく、悩むのは手間と測れるかどうか
  • 専用のQRコードで窓口経由の予約を数え、3か月続けてから、成約まで見て判断する
  • パンフは入籍済みの二人に向けた中身にする。半年後にもう一度、入籍済みの割合を数え直す