見積もりが予算を超えた二人には、式場が削る順番を先に出す
見学のあと、出した見積もりが二人の予算を超えていた。式場の営業なら、一度は経験している場面だと思います。このときに何を言うかで、その後の流れはかなり変わります。
僕の考えは、予算を超えたと言われたら、式場の側から「削る順番」を先に出す、です。値引きを出す前に、どの項目をどの順で見直せるかを紙に書いて見せる。人数や式場そのものを変える話は、順番の最後に置く。この記事は、その理由と、順番の決め方の話です。
先に断っておくと、数字は二種類あります。ゼクシィの調査から拾った数字は、出典を書きます。そうでない金額はすべて、僕が置いた仮の前提です。実在の式場の数字ではありません。
予算オーバーは、特別な出来事ではない
ゼクシィの記事によると、見積もりを具体的に詰めていく段階で当初の予算を超えたかどうかを聞いたところ、「超えた」と答えた人が74.8%でした。「超えていない」は13.6%、「特に予算を決めていなかった」は11.6%です。調査は2019年11月のゼクシィ花嫁1000人委員会82人へのアンケートと、同年12月の20〜30代の既婚女性100人へのマクロミル調査で、記事は2020年1月時点のものです。母数は小さく、時期も古いので、「七割強がこうだ」と全国の数字として言い切るのは避けます。ただ、予算を超える二人のほうが多数派だった、という方向は押さえておいていいと思います。
つまり、予算オーバーを言い出した二人は、問題のある客ではなく、ごく普通の客です。式場がここで身構えて「それは無理です」とも「ご予算に合わせます」とも言えなくなるのは、もったいない場面です。
同じ記事に、超えたあとの対処も載っています。複数回答で、上位は次のとおりです。
- 不要な項目や演出をカットした:64.9%
- DIYや自前手配に替えた:53.2%
- アイテムや演出のランクを下げた:28.6%
- 親からの援助やご祝儀を予算に充てた:27.3%
- 自分たちで工面して予算を足した:22.1%
ここで見てほしいのは、上位がすべて「項目を削る」「手配を替える」「ランクを下げる」で、人数を減らす、式場を変える、は上位に出てきていないことです。二人は、人数を減らす前に、項目のほうを触っています。
言い換えると、二人の頭の中には、すでに削る順番があります。式場がそれを知らずに、自分の側の都合で値引きの額だけを出すと、二人の順番とずれます。ずれたまま話を進めると、二人は「ちょっと考えます」と言って帰ります。
二人は「何を削れるか」を知らない
二人が項目を削るといっても、何が削れて、何が削れないのかは、見積書を見ただけでは分かりません。見積書の項目は「装花一式」「演出一式」のように束ねられていて、どこまでが必須で、どこからが選べるのかが書かれていないからです。
ここで起きるのは、二人が自分で調べる、という動きです。ネットで「結婚式 見積もり 削る」と検索すると、ペーパーアイテムの手作り、持ち込み、撮影の最小化といった一般論が並びます。その一般論を持って、次の式場の見学に行く。持ち込みが禁止の式場で、持ち込み前提の予算を組んでいた二人は、ここで予算が合わなくなります。
式場の側で「うちの場合はこうです」と先に出しておけば、二人は自分で検索しなくて済みます。検索の結果をもとに、他の式場と比べる動きが一つ減ります。これが、順番を先に出す、いちばん大きな意味だと考えています。
削る順番は、三つの質問で決める
順番は、式場ごと、二人ごとに違います。ただ、決め方の型は一つにできます。項目ごとに、次の三つを見ます。
- 金額が大きいか。 削る価値のある額でなければ、二人の手間だけが増えます
- 人数に連動するか。 連動する項目は、人数を変えるまで動かせません。連動しない項目は、今すぐ動かせます
- 二人が惜しむか。 金額が大きくても、二人が「ここは譲れない」と言うなら、順番は後ろに回します
この三つのうち、式場が見積書から読めるのは一つ目と二つ目だけです。三つ目は、聞かないと分かりません。だから、順番を出す前に、二人に一つだけ聞きます。「このなかで、ここだけは残したいものはどれですか」。見学の冒頭で「譲れない1つ」を聞いている式場なら、その答えを使えます。聞いていなければ、ここで聞きます。
聞く順番にも注意があります。先に「削れるのはここです」と並べてしまうと、二人は削る前提で見積書を見ます。先に「残したいもの」を聞いてから、それ以外を並べる。同じ内容でも、後者のほうが、削られている感じが少ないです。
モデル計算:人数を減らしても、自己負担は思ったほど減らない
ここからは、僕が置いた仮の前提での計算です。
総額は、ゼクシィ結婚トレンド調査2024の平均(挙式・披露宴の総額343.9万円)に近い、340万円とします。内訳は次のとおりです。
| 項目 | 金額 | 人数に連動するか |
|---|---|---|
| 会場・挙式 | 60万円 | しない |
| 衣裳 | 60万円 | しない |
| 装花 | 25万円 | しない |
| 写真・映像 | 25万円 | しない |
| ペーパー・演出 | 20万円 | しない |
| 料理・飲料(1人2.0万円×60人) | 120万円 | する |
| 引出物・引菓子(1人0.5万円×60人) | 30万円 | する |
| 合計 | 340万円 |
人数に連動しない項目の合計は190万円、連動する項目は150万円です。
二人の予算が、この見積もりより25万円低かったとします。よくある流れは、「人数を10人減らしましょう」という提案です。10人減ると、料理と引出物で、1人2.5万円×10人=25万円下がります。見積書の総額は、ちょうど予算に収まります。
ただし、ここに落とし穴があります。人数を減らすと、そのぶんご祝儀も減ります。仮に1人あたり3万円のご祝儀を見込んでいたとすると、10人で30万円です。総額は25万円下がっても、ご祝儀は30万円下がる。二人の持ち出し(総額からご祝儀を引いた額)は、むしろ5万円増えます。
もちろん、ご祝儀が1人2万円なら、10人で20万円なので、持ち出しは5万円減ります。だから、一概に「人数を減らすと損」とは言えません。ここで言いたいのは、人数を減らしたときの効果は、料理と引出物の単価と、ご祝儀の見込みとの差でしか決まらない、ということです。差が小さい式場では、人数を減らす提案は、二人の持ち出しを減らす効果がほとんどありません。しかも、人数を減らすという判断は、誰を呼ばないかを決める、二人にとって重い話です。
別の削り方を見てみます。人数に連動しない項目から、装花を25万円から15万円に、ペーパー・演出を20万円から10万円にすれば、合計で20万円下がります。人数もご祝儀も動きません。持ち出しは、そのまま20万円減ります。残りの5万円は、料理のコースを1人2.0万円から1.9万円に下げれば、60人で6万円です。これで25万円の差が埋まります。
人数を減らす案は、総額を25万円下げて持ち出しが5万円増える可能性がある。装花・ペーパー・料理で削る案は、総額も持ち出しも25万円近く下がる。この二つを並べて見せるだけで、二人は人数の話をしなくて済みます。式場の側にとっても、60人のままで契約してもらえるので、売上も粗利も守れます。
この計算の限界は二つあります。一つは、ご祝儀の見込みが二人ごとにまったく違うことです。もう一つは、装花を下げると、写真の見栄えが変わり、二人の満足が下がるかもしれないことです。だから、僕は金額の順番だけで並べず、先ほどの「惜しむか」を必ず入れます。
順番を紙にするときの形
順番を口頭で言うと、二人は覚えられません。A4の紙に、三段で書きます。
- 一段目:今すぐ動かせて、見た目が変わりにくいもの。 例として、ペーパーアイテムの仕様、引出物の品数、控室の飲み物
- 二段目:動かせるが、二人が惜しむかどうかで変わるもの。 装花、演出、写真の枚数、料理のコース
- 三段目:契約の前提が変わるもの。 人数、日程、会場そのもの
一段目と二段目に、それぞれ削った場合の金額を書きます。三段目には金額を書かず、「ここを動かすときは、全体を組み直します」とだけ書きます。三段目の金額を先に見せると、二人はそこから触ろうとします。
もう一つ、一段目に入れるものは、式場の側で本当に外せるものだけにします。「お客様のご希望なら外せます」と書いておいて、実際には契約の条件で外せない項目があると、二人の信用を落とします。外せない項目は、最初から紙に載せない。載せたら必ず外す。この二つを守れないなら、紙を出さないほうがましです。
この順番を出すと、前に進まないとき
順番を出しても、二人が「それでもまだ足りない」と言う場面があります。このときは、三つの可能性を分けます。
- 金額が本当に足りない。 削れる額の合計が、超過額に届いていない場合です。このときは、日程の見直し(平日や仏滅の割引)や、支払い方法の相談に進みます。ここで初めて、値引きの話をします
- 二人の間で、意見が揃っていない。 一人は削りたい、もう一人は残したい。この場合は、紙を二人の前に置いて、それぞれ丸を付けてもらいます。式場が間に入って調整するより、二人が自分で選んだほうが、あとで揉めません
- 他の式場の見積もりと比べている。 この場合は、相見積もりの受け方の話になります。順番を出すことは、そのまま「うちの見積もりは、ここまで調整できます」という説明になるので、比較の材料にはなります
いずれの場合も、先に値引きを出すより、順番を出したほうが、話の進め方が見えます。
まとめ
- 予算を超えた二人は多数派で、ゼクシィの調査では74.8%でした(2019年、母数は小さい)
- 二人が超過に対してとる行動は、項目のカットとDIYが上位で、人数の削減や式場の変更ではない
- 見積書の「一式」では、何が削れるか二人には分からない。式場が先に示すと、二人が自分で検索して他の式場と比べる動きが一つ減る
- 順番は、金額・人数連動・二人が惜しむか、の三つで決める。三つ目は聞かないと分からないので、先に「残したいもの」を聞く
- 仮のモデルでは、人数を10人減らすと総額は25万円下がるが、ご祝儀の見込みが料理と引出物の単価を上回ると、持ち出しは減らない。人数に連動しない項目から削ると、持ち出しもほぼ同額で減る
- A4一枚に三段で書く。一段目と二段目には金額を書き、三段目は「全体を組み直す」とだけ書く
- 外せない項目は紙に載せず、載せた項目は必ず外す
