式場のフェア予約枠は何週先まで開けるか|約束できる期間で決める
ブライダルフェアの予約カレンダーを、何週先まで開けておくか。これは、担当者がなんとなく決めている会場が多い項目です。2週先までの会場もあれば、半年先まで全部開けている会場もあります。
結論から書きます。開ける期間を決めるのは、変更が出たときの手間ではありません。その日の中身を二人に約束できるかどうかです。手間のほうは、仮の数字で計算してもほとんど差が出ません。差が出るのは、約束を守れなかったときの二人の側の損です。
この記事に出てくる数字は、探している期間の1つを除いて、すべて僕が置いた仮のものです。業界の平均ではありません。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
短く切る理由と、長く開ける理由
予約枠を短く切る会場には、理由があります。先の日のことは、まだ分からないからです。
- 担当者のシフトが、まだ出ていない
- 季節のメニューや、試食の内容が決まっていない
- 模擬挙式の演出や、装花の見せ方が変わるかもしれない
- 他の予約(貸切、撮影、前の組の延長)と重なるかもしれない
先の日を開けて予約が入ったあとに、会場の都合で内容が変わる。二人に「当日の内容が変わります」と連絡する。これが嫌で、確実に約束できる2週先くらいまでしか開けない。これは筋の通った考え方です。
一方、長く開ける会場にも理由があります。二人の側から見ると、予定は先に決まっていくからです。仕事の休みを取る、両親の都合を合わせる、遠方から来るなら交通機関を取る。こうした都合のある二人は、2週先では動けません。見たい日がカレンダーに無ければ、その会場の予約は取れないまま、別の会場の予約を先に取ります。
つまり、短く切る理由は会場の側の管理で、長く開ける理由は二人の側の予定です。どちらが大きいかは、数字で見ないと分かりません。
二人は、いつ予約を取りたいのか
二人が会場を探している期間は、ゼクシィ結婚トレンド調査2024(首都圏版の報告書、全国推計値の行)で、探し始めが挙式の平均9.9か月前、決めたのが平均8.3か月前です。差し引くと、探している期間は1.6か月です。
この1.6か月の中で、二人は何軒かの会場を見て回ります。何軒かを見て回るなら、フェアの予約は、1か月半のあいだに複数回、少しずつずらしながら入ります。週末は1日に1軒か2軒しか回れないので、見たい会場の予約が、週末ごとに競争になります。
ここで、二人が「見たい日」の何週前に予約を取りたいかを考えます。この分布は、会場ごとに違うはずです。自分の会場の予約データで、予約を取った日と見学の日の差を数えると出ます。ここでは、仮に次の分布だとします。
| 見学の何週前に予約を取りたいか | 割合(仮) |
|---|---|
| 2週前以内 | 55% |
| 3〜4週前 | 25% |
| 5〜8週前 | 15% |
| 9週前以上 | 5% |
月に60組の予約希望があるとします。この仮定のもとで、「カレンダーを何週先まで開けるか」を変えると、取れる予約がどう変わるかを見ます。
計算の前提
置いた前提を、先にすべて書きます。
- 月の予約希望は60組
- 希望の分布は上の表のとおり
- 開けている期間より先の日を希望した二人のうち、25%は枠が見えずに他の会場へ流れ、戻ってこない。残りの75%は、枠が開いた時点で予約を取り直す
- フェアに来た二人のうち、契約する割合は25%
- 1契約あたりの粗利は60万円
- 予約が入ったあとに、会場の都合で内容が変わる割合は、予約が遠いほど増える。2週先は3%、4週先は6%、8週先は12%、12週先は18%
- 内容が変わったときの1件あたりの損(連絡の手間と、離脱の損)は8,000円
このうち、粗利とフェアの成約率は会場ごとに大きく違うはずなので、自分の数字に置き換えてください。変更1件の損の8,000円は、特に低く置いた数字です。この点は、あとで取り上げます。
2・4・8・12週で計算する
計算は、Pythonで行いました。結果は次のとおりです。
| 開ける期間 | 取れる予約(月) | 契約(月) | 粗利(月) | 変更の件数 | 変更の損 | 差し引き |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2週先まで | 53.2組 | 13.3組 | 約799万円 | 1.6件 | 約1.3万円 | 約797万円 |
| 4週先まで | 57.0組 | 14.3組 | 約855万円 | 2.4件 | 約1.9万円 | 約853万円 |
| 8週先まで | 59.2組 | 14.8組 | 約889万円 | 3.2件 | 約2.6万円 | 約886万円 |
| 12週先まで | 60.0組 | 15.0組 | 約900万円 | 3.5件 | 約2.8万円 | 約897万円 |
見てほしいのは、変更の損の列です。いちばん長い12週先でも、月に3.5件、約2.8万円にしかなりません。2週先と12週先の差は、月に約1.5万円です。一方、粗利の列は、2週先と12週先で月に約100万円違います。
この仮定のもとでは、長く開けるほうが得になります。変更が出る手間は、取りこぼしに比べると、小さく見えるからです。
変更1件がいくらかかれば、短く切るべきか
ただ、この計算は変更1件を8,000円と置いたから、こうなっています。変更1件の損が大きい会場では、答えが変わります。
そこで、結論が入れ替わる境目を計算します。2週先で切るか8週先まで開けるかを比べると、粗利の差が約90万円で、変更の件数の差が1.6件です。90万円を1.6件で割ると、約56万円になります。変更が1件出るたびに56万円の損が出る会場でなければ、2週先で切るほうが得にはなりません。
4週先と8週先を比べると、粗利の差が約34万円、変更の件数の差が0.8件で、約42万円です。
これだけ大きな数字になるのは、変更の手間が小さいからです。電話やLINEで内容の変更を伝える手間は、数分です。仮の粗利が1契約60万円なので、56万円は、変更の1件ごとに1契約を丸ごと失うのとほぼ同じ額です。
つまり、手間と離脱を合わせても、変更1件の損が数万円にとどまるなら、短く切る理由は数字からは出てきません。短く切る理由があるとすれば、数字に出てこない側にあります。
数字に出てこないのは、約束を破ったという記憶
数字に出てこない損は、約束を破ったという記憶です。
フェアの予約が入った二人は、その日の内容を前提に動いています。「試食がある」「模擬挙式が見られる」「ドレス試着ができる」。こうした内容を理由に、仕事を休み、両親を誘い、遠方から来る二人もいます。そこに「当日の内容が変わりました」と連絡が来る。内容が変わったこと自体は、仕方のないことです。ただ、二人はこの連絡を、会場の姿勢として受け取ります。
変更の連絡が来たあと、二人がその予約をどう扱うかは、変わった内容の重さで決まります。
- 試食のメニューが入れ替わる程度なら、ほとんど気にされない
- 担当者が替わる程度なら、一言あれば受け入れられる
- 模擬挙式が無くなる、試食が無くなる、といった目当ての中身が変わるときは、キャンセルされやすい
変更の損は、件数ではなく、変更の中身で決まります。先の枠に予約が入るのは構いません。その枠で約束する内容を、約束できる範囲に絞っておけばよいのです。
先の枠には、約束する範囲を絞って開ける
ここまでの考え方をまとめると、カレンダーは短く切るのでも、全部を同じように開けるのでもなく、遠い日ほど約束を絞るのが現実的です。具体的には、次の3つの運用です。
1. 見学と相談を、いつも約束の中心にする
何週先の日でも、確実に約束できるのは、会場の見学と、担当者との相談です。試食や模擬挙式は、その日の仕込みや演出に左右されます。
だから、先の枠には「会場見学と相談」だけを約束として書き、試食や模擬挙式は、2週前になった時点で確定を連絡する運用にします。予約ページには、はっきり書きます。
4週先以降の日程は、会場見学とご相談のみ確定です。試食・模擬挙式の内容は、2週間前までにご連絡します。
これなら、後から内容が確定しても、約束を破ったことにはなりません。
2. 先の枠は、日程だけ先に開け、確定は後にする
「4週先以降は仮予約」とする運用もあります。仮予約の二人には、確定の連絡を2週前に送ります。この確定の連絡で、二人に日程を保てるかを確認でき、無断欠席の予防にもなります。
仮予約を使うなら、仮のまま放置しないことが条件です。確定の連絡に返事が無い二人を、そのまま枠に残すと、空席が増えます。
3. 期間は「約束を守れる最長」で決める
最終的に、何週先まで開けるかは、シフトが出る日で決まります。
- シフトが4週先まで出ている会場は、4週先まで
- 季節のメニューが8週先まで決まっている会場は、8週先まで
- 繁忙期は貸切や他の予約が先に入るので、繁忙期の前に短く切る
シフトが出る日と、メニューが決まる日の、早いほうに合わせます。それより先は、開けていても約束できません。
空のカレンダーは、人気がないように見える
もうひとつ、長く開けるときに気にすることがあります。先の枠が空いたままだと、人気が無い会場に見えるかもしれない点です。
近い日の枠が埋まっていて、遠い日の枠だけが空いている状態は、通常のことです。ただ、二人の側から見ると、すべての枠が空いているカレンダーと、近い枠が埋まっているカレンダーでは、印象が違います。近い枠が空いたままだと、「予約が入っていない会場」に見えてしまいます。
だから、開け方は2段にします。近い日(2〜3週先まで)は、実際の空きをそのまま見せます。遠い日は、日付のリストとして表示し、残り枠の数は見せない。「残り2組」のような表示は、実際の空きがあるときだけ使います。実態に合わない表示は、不信感につながります。
自分の会場で決める手順
最後に、自分の会場で決める手順を3つにまとめます。
- 予約データから、予約を取った日と見学の日の差を数える。これで、二人が何週前に予約したいかの分布が出る
- シフトが出る日と、メニューが決まる日を確認する。この早いほうが、約束を守れる最長の期間になる
- 分布の上で、約束を守れる最長の期間より先に、どれだけの希望があるかを見る。ここが大きければ、約束を絞った枠(見学と相談だけ)で先まで開ける。小さければ、そのまま最長の期間で切る
変更1件の損が数万円の会場であれば、手間を理由に短く切る必要はありません。短く切るのは、約束できないときだけです。
まとめ
- フェア予約枠の長さは、変更の手間ではなく、その日の中身を約束できるかで決める
- 仮の式場で2〜12週を計算すると、長く開けるほど月の粗利が約100万円増え、変更の損は月に約1.5万円しか増えない
- 2週で切るほうが得になるのは、変更1件が約56万円の損になるときだけ。通常の変更では起きない
- 数字に出ない損は、目当ての中身が変わったときのキャンセルと、約束を破ったという記憶
- 先の枠は「見学と相談だけ確定」で開け、試食と模擬挙式は2週前に確定する運用にする
- 開ける長さは、シフトが出る日とメニューが決まる日の早いほうに合わせる
- 近い日は実際の空きを見せ、遠い日は日付だけを見せる
