式場見学で「検討します」と言われたら、帰り際に「決める条件」を聞く
見学の帰り際に二人から「いったん検討します」と言われたとき、式場の側がよくやる返しは二つあります。「いつ頃までにお返事をいただけそうですか」と期限を聞くか、「ぜひご検討ください」と笑顔で見送るかです。
僕は、どちらも情報が残らないと考えています。期限を聞いても、二人は「来週中には」と当たり障りなく答えるだけです。見送れば、その後の連絡は「その後いかがですか」という、何も新しいことが言えない連絡になります。代わりに聞くのは、「何が揃えば決められそうですか」という1つの質問です。
この記事では、なぜ期限より「決める条件」なのか、どう聞くのか、聞けなかったときにどうするのかを整理します。出典のある調査の数字は使いません。数字はすべて、仕組みを見るための想定です。
「検討します」は、断りでも保留でもなく、宿題の宣言です
「検討します」という言葉は、式場側から見ると、買わないのか、迷っているのかが分かりません。だから、期限を聞いたり、特典の締め切りを伝えたりして、どちらなのかを探りたくなります。
ただ、二人の側から見ると、意味はもう少し具体的です。たいていは次のどれかです。
- 他の式場も見てから決めたい(比較の宿題)
- 親やパートナーに話してから決めたい(相談の宿題)
- 見積もりの総額が、思っていたより上だった(予算の宿題)
- 日取りや人数がまだ固まっていない(前提の宿題)
- 正直、ここに決めきれない何かがある(言いにくい宿題)
どれも「検討」という一語に収まります。違うのは、次に何が起きれば決まるかです。比較の宿題なら、他の式場を見終わること。相談の宿題なら、親が話を聞くこと。予算の宿題なら、金額が動くこと。条件が違えば、式場が次にできる連絡も違います。
つまり、帰り際の目的は「いつ返事が来るか」を知ることではなく、どの宿題を持ち帰ったのかを知ることです。期限は宿題の種類が分かってから、自然に決まります。
期限を聞くと、なぜ情報が残らないのか
期限を聞かれた二人は、考えます。「決めていないのに、日付を答えるのは気まずい」。そこで、無難に答えます。「今週末に相談してみます」「来週には」。
この答えには、二つの問題があります。
- 日付が守られる保証がない。二人にとっても、本当にその日に決まるかは分からない
- 日付が過ぎたときに、式場が連絡する理由がその日付しかない。「ご返事の期限が過ぎましたので」という連絡になりやすく、催促に聞こえる
しかも、期限を聞かれたことで、二人は「急かされている」と感じることがあります。他の式場の見学を予定している二人ほど、その印象は強くなります。
「決める条件」を聞くと、この二つが入れ替わります。条件は二人が自分で口に出すものなので、守られるかどうかの問題ではなく、事実として残ります。そして、条件が動いたとき、あるいは動くはずの日に連絡する理由ができます。「先日、お母様にも見ていただいてから、とおっしゃっていたので、お母様のご都合が合う日をお出ししますね」という連絡は、催促ではなく、宿題を手伝う連絡になります。
聞き方:質問は1つ、答えを遮らない
聞き方は難しくありません。帰り際、玄関や見送りの場所で、次のように聞きます。
「今日の時点で、決めるために揃っていたら嬉しいものって、何かありますか」
ポイントは三つあります。
1. 質問は1つだけにする。 「予算は? 日取りは? ご家族は?」と3つ聞くと、アンケートになります。二人が最初に口にしたものが、いちばん重い宿題です。
2. 選択肢を渡さない。 「他の式場との比較ですか? ご両親のご相談ですか?」と先に挙げると、二人はその中から無難なものを選びます。本当の宿題が選択肢の外にあっても、出てきません。
3. 答えを聞いたら、評価も反論もせず、受け取る。 「他も見てからです」と言われて、「うちは◯◯が強みで」と返すと、せっかく出た条件が閉じます。「そうですよね、他も見るのが自然ですよね」と受けて、次の一言に進みます。
次の一言は、条件によって変わります。
| 二人が口にした条件 | 受けたあとの一言 | その後の連絡の材料 |
|---|---|---|
| 他の式場を見てから | 「何軒くらい、いつ頃までに回られる予定ですか」 | 回り終える頃に、比較で聞かれそうな点の資料を送る |
| 親に相談してから | 「ご両親に見ていただく機会はありそうですか」 | 親向けの見学枠や、持ち帰り用の紙を案内する |
| 予算が思ったより上 | 「どの部分が気になりましたか」 | 総額の内訳の見直しを、次の連絡で出す |
| 日取り・人数が未定 | 「いつ頃決まりそうですか」 | 決まる時期に合わせて空き状況を連絡する |
| 言葉にならない、はっきりしない | 無理に聞かない(後述) | 感想を一言もらう連絡にとどめる |
この表は、聞き取りのメモのひな形にもなります。記録は「検討中」ではなく、「親に相談してから(お母様の都合待ち)」のように、宿題の中身で残します。
聞けなかったときは、「聞けなかった」と記録する
どれだけ丁寧に聞いても、答えが出ないことはあります。二人が急いでいる、次の予定がある、子どもが泣いている。そんなときに食い下がると、見学の印象そのものが悪くなります。
聞けなかった場合は、そのままにして、メモに「条件を聞けなかった」と書きます。ここで大事なのは、「検討中」という曖昧な状態に戻さないことです。
- 条件を聞けた二人:宿題の中身に合わせた連絡
- 条件を聞けなかった二人:宿題を聞くための、軽い連絡(見学の感想を一言うかがう、気になった点を1つ聞く、など)
後者の連絡の目的は、契約を迫ることではなく、聞けなかった宿題を聞き直すことです。ここで宿題が分かれば、前者と同じ流れに乗れます。
なお、聞くタイミングを帰り際にしているのには理由があります。見学の冒頭や途中で「何が決め手になりそうですか」と聞くと、二人が身構えます。帰り際なら、見学の体験を踏まえた答えが出ますし、見送りという場の空気が、答えやすさを作ります。
仮に、モデル計算をしてみる
効果がどのくらいになりうるのかを、仮の数字で見ます。以下はすべて想定で、実際の式場の実績ではありません。
前提
- 月の来館が40組
- その場で契約する二人が10組
- 帰り際に「検討します」と言って帰る二人が30組
- 検討する30組のうち、帰り際に「決める条件」を聞けた二人が15組、聞けなかった二人が15組
- 聞けた二人は、条件に合わせた連絡ができるので、最終的な契約率が30%
- 聞けなかった二人は、一般的な追客になるので、最終的な契約率が10%
計算
- いまの期待契約数:15組×30%+15組×10%=4.5+1.5=6.0組
- 聞ける二人を24組、聞けない二人を6組に増やすと:24組×30%+6組×10%=7.2+0.6=7.8組
- 差は 7.8−6.0=1.8組
月に1.8組の契約が増える計算です。来館40組に対する成約は、(10+6)÷40=40%から、(10+7.8)÷40=44.5%になります。
この計算で見てほしいのは、数字そのものではなく、効いている場所です。広告も、見学の中身も、特典も変えていません。変えたのは、帰り際の質問を1つ増やして、聞ける割合を上げたことだけです。そして、この計算は「聞けた二人の契約率が、聞けなかった二人より高い」という前提の上に成り立っています。この前提が成り立つかどうかは、式場ごとに違います。
この前提を、自分の式場で確かめる方法
前提が成り立つかは、数か月分の記録があれば確かめられます。必要なのは、見学のメモに次の2つを残すことだけです。
- 帰り際に決める条件を聞けたか(聞けた/聞けなかった)
- 聞けた場合は、その条件の種類(比較/相談/予算/前提/その他)
3か月ほど記録して、契約した二人と、しなかった二人を並べます。見るのは次の3点です。
- 「聞けた」二人の契約率と、「聞けなかった」二人の契約率に差があるか
- 差がないなら、聞き方が悪くて、本音が出ていない可能性がある(条件が「検討します」の言い換えになっている)
- 条件の種類ごとに契約率が違うか(「予算」と答えた二人だけ極端に低い、など)
差がなければ、この質問は効いていません。その場合は、やり方を変えるか、やめます。効くかどうかは、式場の見学の流れや客層で決まるので、前提を置いた計算より、自分の記録のほうが正しいです。
担当者ごとの差が出やすいところ
この質問は、担当者の癖で聞いたり聞かなかったりしやすいものです。ベテランは自然に聞けて、経験の浅い担当者は、聞くのが怖くて見送ってしまうことがあります。
そこで、次の2つを決めておくと、ばらつきが減ります。
- 聞く言葉を揃える。 「何か決め手になるものはありますか」「ご不安な点はありますか」のように言い方がバラバラだと、答えの質も揃いません。上の一文を、そのまま使えるようにしておく
- 聞くかどうかを担当者の判断にしない。 全員に聞く。聞けなかったときは、聞けなかったと記録する。聞くことを例外扱いにしない
見学の後の記録を見れば、誰が聞けていて、誰が聞けていないかが分かります。責めるためではなく、聞けなかった理由(時間がなかった、聞きにくい空気だった、など)を拾うために使います。
やらないほうがいいこと
最後に、この質問と一緒にやりがちで、逆効果になりやすいことを挙げます。
- 答えを聞いたその場で、解決策を出して決断を迫る。 「予算が気になる」と言われて、その場で値引きや特典を出すと、「言えば下がる」と学習されます
- 聞いた条件を、あとで責めの材料にする。 「前回、◯◯が揃えば決めるとおっしゃっていましたが」という言い方は、約束の履行を求める響きになります。条件は二人の宿題であって、二人の約束ではありません
- 全員に同じテンプレートの連絡を送る。 せっかく宿題の中身を聞いたのに、文面が同じなら、聞いた意味がなくなります
まとめ
- 「検討します」は断りでも保留でもなく、二人が持ち帰る宿題の宣言。中身は比較・相談・予算・前提・言いにくい何か、のどれか
- 期限を聞いても、無難な日付が返ってくるだけで、情報が残らない。催促の理由にもなりやすい
- 帰り際に「決めるために揃っていたら嬉しいものは何か」を1つ聞く。選択肢は渡さず、答えに反論しない
- 聞けなかったときは、聞けなかったと記録し、宿題を聞くための軽い連絡にとどめる
- 仮置きの計算では、聞ける割合を上げるだけで月1.8組の契約増。ただし前提は想定なので、自分の式場では「聞けた/聞けなかった」の契約率を3か月記録して確かめる
- 聞く言葉は全員で揃え、担当者の判断にしない
帰り際の一言は、広告費をかけずに変えられる数少ない場所です。
