見学に親がついてきたら、説明は二人に向けて親には役割を渡す
見学の予約を受けた時点では二人の名前しか入っていないのに、当日、受付に三人、四人と並ぶことがあります。新郎新婦のどちらかの母親、ときには両家の親が揃って来る。こういう日に、説明を誰に向けて話すか。担当者の判断に任せている式場は多いと思います。
僕の考えは、説明の宛先は最後まで二人にして、親には「確認してほしいこと」という役割を渡す、です。親を脇に置くのでも、親に合わせて話すのでもありません。この記事は、その段取りを整理する話です。
先に断っておくと、親の同席率や、同席時の成約率を示す調査は、探しましたが見つかっていません。数字はすべて僕が置いた仮の前提で、実在の式場の数字ではありません。断定は「仕組みとしてこうなる」と言える範囲に留めます。
親が同席すると何が起きるか
親が見学に来る理由は、だいたい三つに分かれます。費用を出す、または出すかもしれない。自分の親族をどう招くか気になる。単純に心配で、会場を自分の目で見ておきたい。どれも自然な動機で、来てくれること自体は悪くありません。
困るのは、説明の流れが静かに親のほうへ寄っていくことです。年上の相手には丁寧に説明したくなるので、担当者の目線も、うなずきの多い親の側に向きます。親も、聞かれていなくても質問します。「バスの手配はできるんですか」「年寄りが多いんですが」。二人はその横で、聞き役に回ります。
そうなると、二人の中で何が起きるか。式場を選ぶのは二人なのに、説明を受けていないので、帰りの電車で「どうだった?」と聞かれても、料理と会場の雰囲気しか答えられません。親のほうが詳しくなっています。この状態で出す見積もりは、二人の見積もりではなく、親が理解した見積もりになります。親の印象が良ければ後押しになりますが、親が一つでも引っかかると、二人には覆す材料がありません。
仕組みとしての問題はここです。決めるのは二人でも、説明を受けた量は親のほうが多い。意思決定の主体と情報の量がずれると、見学の後の保留が増えます。
親の同席を三つに分ける
担当者が見学の最初の数分で見分けたいのは、親がどの立場で来ているかです。細かく分けると運用できないので、僕は三つで足りると思っています。
一つ目は、費用を出す親。援助の話が出ているか、出る見込みがある。二つ目は、招待する側として見に来た親。親族の人数や顔ぶれ、席の並びが気がかり。三つ目は、見守りで来た親。口は出さないが、二人の様子を見ている。
見分け方は簡単で、聞けば済みます。「今日は、お二人とご一緒に回られる形でよろしいですか」と宛先を二人に置いたまま確認し、その後に親へ「ご両親様は、気になるところはありますか」と、一度だけ個別に聞く。この二言で、たいてい立場が出てきます。聞かないまま三十分進めて、終盤の見積もりの場面で「実は主人が出す予定で」と分かるのが、いちばん損です。
費用を出す親の場合、見積もりの金額を最初に見るのは親です。ここだけは、二人の前で隠すのも、親だけに見せるのも避けたほうがよいです。金額は二人と親の三者に同時に見せ、読み上げる相手は二人にする。この順番を決めておくだけで、場の空気はかなり変わります。
説明の宛先は二人に置く
具体的な動き方を、見学の順に並べます。
最初の挨拶では、二人の名前を呼んで、その後に親へ挨拶します。順番が逆だと、その日の主役が最初から決まってしまいます。座席も、二人が中央、親は両脇か一歩後ろに案内するのが自然です。
会場の説明では、「お二人は、どんな雰囲気がお好きですか」と最初の質問を二人に向けます。親が先に答えてしまったら、「お母様はそう思われるんですね。お二人はいかがですか」と、親の答えを受けてから二人に戻す。遮らず、否定せず、順番だけ戻します。
料理の試食では、二人の感想を先に聞きます。親の感想は、そのあとで聞く。ここで逆になると、二人は親の意見に合わせて答えるようになります。
見積もりの場面は、特に気をつけます。金額を示した後、最初に「お二人の感覚では、いかがですか」と聞きます。親が費用を出す場合でも、まず二人の感覚を聞く。それから親に「ご両親様のご意見もうかがえますか」と渡す。順番を守ると、二人が「自分たちで選んだ」という感覚を持ったまま、親の了承も取れます。
親に渡す役割
宛先を二人に置いたままだと、親が手持ちぶさたになります。そこで、親に役割を渡します。ここがこの記事でいちばん言いたいことで、親は「口を挟む人」ではなく「確認する人」として場にいてもらう、ということです。
渡せる役割は、たとえば次のようなものです。
- 招待客の動線を見る人:高齢の親族が多い場合に、段差、エレベーター、控室から会場までの距離を確認してもらう
- 席次の案を見る人:両家の人数と、親族の座る位置を一緒に眺めてもらう
- 費用の確認役:見積もりの内訳で、気になる行に印を付けてもらう
「親に確認してほしい項目」を、見学の資料に最初から一枚入れておく方法もあります。チェック項目が書いてあれば、親は質問を考える代わりに、項目を埋めていけばよく、的外れな質問が減ります。質問が減るのではなく、質問の向きが「この会場は大丈夫か」から「ここを確認しました」に変わります。
役割を渡された親は、帰りの電車で二人に「あそこの段差、大丈夫そうだったね」と話せます。二人の保留理由が減るのは、こういう会話が増えるときです。
親の同席時間を短くする判断
もう一つ、判断が分かれるところがあります。親の同席を、見学の全部に認めるのか、一部に絞るのか。
僕は、基本は全部同席で、例外を持つのがよいと考えています。理由は単純で、親を外すと、その場にいない親が後から「聞いていない」と言い出す余地を残すからです。ただし、次の二つの場面は、親の同席が必須ではないことを、事前に二人へ伝えておく価値があります。
一つ目は、ドレスの試着や衣装の相談です。二人の好みが出る場面で、親が横から意見を重ねると、二人が本音を言えなくなることがあります。「衣装はお二人のお時間にして、ご両親様はラウンジでお茶をどうぞ」と案内する。これで、親が不快になるかどうかは言い方次第で、「お二人のお時間を」と二人の側に理由を置くと通りやすいです。
二つ目は、契約の判断の場面です。親が費用を出す場合は同席が望ましいのですが、出さない場合は、二人だけで考える時間を取ってもよい。「ご両親様、少しお時間をいただいて、お二人で話す時間をお取りしますね」と言って、五分ほど席を外す。二人が親の目を気にせずに話せる時間は、保留を減らす方向に効くと考えています。
どちらの場面も、親を遠ざけているようには見せない工夫が要ります。お茶を出す、見積もりの控えを先に渡す、戻ってきたときに親にも一言聞く。形としては配慮を重ねるだけで、話の主導権が二人に戻ります。
モデル計算で見る、効き方
どのくらい効くのかを、仮の前提で計算します。実在の式場の数字ではなく、考え方を確かめるための数字です。
前提を置きます。月に40組が見学に来て、そのうち親が同席するのが12組(3割)。親が同席しない28組の成約率が30%。親が同席して説明が親に寄った場合の成約率が25%。説明の宛先を二人に戻して、親に役割を渡す運用で、親同席の成約率が30%に戻ったとします。
親同席の12組が25%から30%になると、月に増える成約は12組×5ポイント=0.6組。年にすると7.2組です。1組あたり売上が300万円だと仮定すると、年間で約2,160万円になります。
この計算の弱いところも書いておきます。まず、「親同席で成約率が5ポイント下がる」という前提は、僕が置いたものです。実際には、親が同席するほうが成約率が高い式場もあるはずです。親が費用を出す場合は、親の了承を得ないと決まらないので、同席のほうが決まりやすい可能性は十分にあります。
だから、計算の使い方としては「自分の会場の親同席の成約率を、同席なしと並べて測る」のが先です。測って差が無ければ、この記事の段取りは要りません。差があって、同席のほうが低いなら、段取りを入れる価値がある。逆に、同席のほうが高いなら、親が同席しやすい案内を増やすほうに舵を切ったほうがよいです。
親が否定的なことを言ったとき
宛先の置き方が試されるのは、親が見学の途中で否定的なことを口にした場面です。「ちょっと高いわね」「うちの親戚は遠いから大変よ」。担当者は反射的に、親に向けて弁明したくなります。
ここで親を説得しにいくと、二人は第三者になります。僕がよいと思う動きは、親の発言を二人の問いに変換して返すことです。
たとえば「高い」と言われたとき。「お母様は金額が気になるんですね。お二人は、どこにお金をかけたいですか」と返します。親の懸念は受け止めたうえで、費用の配分を決めるのは二人だと、場の中で確認します。ここで二人が「料理は削りたくない」と答えれば、見積もりの調整は、その線から始められます。
「遠方の親戚が大変」と言われたとき。送迎バスや宿泊の案内を示すのは、担当者の仕事です。ただ、人数の調整や、遠方の方を招くかどうかは、二人が決めることです。「遠方の方の分は、お二人で人数を考えておく必要がありますね」と、宿題を二人側に置いて、親には資料を渡します。
親が二人の代わりに答えてしまう場面もあります。「この子たちは、こういうのが好きなんです」。これも否定せず、「お母様から見るとそう見えるんですね。ご本人たちはどうですか」と返します。親が二人をよく見ていることを認めたうえで、本人の言葉を引き出す。言い方一つで、親は気を悪くしません。
この三つに共通するのは、親の発言を一度受け止めてから、二人に戻していることです。受け止めずに戻すと、親は無視されたと感じます。戻さずに受け止めるだけだと、親の意見で場が決まります。
親同席の見学を測る
最後に、測り方を一つだけ書いておきます。親同席の成約率が、同席なしと比べて高いのか低いのかは、記録していないと分かりません。見学の記録に、同席者の欄を一つ作ります。親、きょうだい、友人、なし、で足ります。記録の取り方は、予約時に聞く方法でも、受付で担当者が書く方法でも構いません。
分母に同席ありの組数、分子にそのうちの成約数を置き、同席なしと並べます。一か月では組数が少なく、揺れが大きいので、三か月ほど溜めて見るのが無難です。差が小さければ、この記事の段取りに時間をかける必要はありません。
まとめ
- 見学に親が同席すると、説明が親の側に寄り、二人が聞き役に回ることがある。意思決定の主体と情報の量がずれると、保留が増える
- 親の立場は、費用を出す、招待する側として見る、見守りの三つで足りる。最初の挨拶の後で一度だけ聞けば分かる
- 説明の宛先は最後まで二人に置く。親の答えを受けたら、順番だけ二人に戻す
- 親には「確認する人」の役割を渡す。動線、席次、費用の確認項目を一枚にしておくと、的外れな質問が減る
- 衣装と契約判断の場面は、二人の時間を取る。親を遠ざけて見せない言い方を決めておく
- 親の否定的な発言は、受け止めてから二人の問いに変えて返す。説得にいくと二人が第三者になる
- 親同席が成約率を下げるのか上げるのかは、会場ごとに違う。同席者を記録して、自社で測るのが先
