見学の席で低評価の口コミを聞かれたら、式場はこの順で答える
見学の途中で、二人のどちらかが少し言いにくそうに切り出します。「口コミサイトで、担当の対応が強引だったという書き込みを見たのですが」。この質問に、その場で何と答えるか。式場ごとに決まっているところは、意外と少ないと思います。
僕は、この質問への答えを、見学の中でいちばん成約に近い場面のひとつだと考えています。口コミを持ち出す二人は、すでにその式場を候補に入れて、最後の不安を確かめにきているからです。興味のない式場の口コミを、わざわざ見学の席で聞く人はいません。
この記事は、低評価の口コミを聞かれたときの答えの順番を整理する話です。数字はすべて僕が置いた仮の前提で、実在の式場の数字ではありません。出典になる調査も探しましたが、見学の席での口コミの質問と成約の関係を示すものは見つかっていません。そのため、断定は「仕組みとしてこうなる」と言える範囲に留めます。
先に結論を書きます。
- 答えは、書き込みの内容が事実に当たるか、当たらないか、確認できないかで分けます。この3つの分岐を事前に決めておきます
- どの分岐でも、最初にやることは同じです。書き込みの内容を、聞かれた側が言い直して確かめます
- 否定から入ると、二人は「口コミを疑った自分」を責められたように感じます。謝って流すと、不安が残ったまま持ち帰られます
- 答え方を決めておくだけで、口コミを話題に出した二人の成約率が数ポイント動きます。その差は年間で数組から十数組になります
口コミを聞く二人は、何を確かめたいのか
低評価の書き込みを見て、それでも見学に来た二人には、確かめたいことが2つあります。
1つ目は、書いてあったことは本当か、です。本当に強引なのか、見積もりが後から増えるのか。書き込みは1人の体験にすぎませんが、同じ内容を何件か読むと、二人の中で「この式場の特徴」になっていきます。
2つ目は、この式場は指摘を受け止める会社か、です。実はこちらのほうが大きいと僕は見ています。結婚式は契約から挙式まで半年から1年以上かかります。その間に何か行き違いが起きたとき、式場がどう向き合うかは、二人にとって契約前に知りたい最大の情報です。口コミへの答え方は、その予告編として受け取られます。
つまり、質問に対する答えの中身と同じくらい、答えるときの態度が評価されます。内容が正しくても、態度が防御的だと、2つ目の不安は消えません。
やってはいけない3つの答え方
先に、避けたい形を挙げます。どれも、担当者が悪意なくやってしまうものです。
否定する
「それは誤解です」「そんなことはありません」と、すぐに打ち消す形です。書き込みが実際に事実と違っていたとしても、聞いた二人には「聞いた自分が間違っていた」と響きます。
さらに、否定は検証できません。二人は書き込みを読んでいて、式場側の言い分は今聞いたばかりです。どちらを信じるかを迫られると、ネットに残っている文章のほうが重く感じられます。
謝って流す
「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」で終える形です。丁寧ですが、何についての謝罪か分からないまま終わります。書き込みの何が事実で、何を直したのかが伝わらないので、不安は残ります。
謝罪そのものは悪くありません。事実に当たるなら、謝るべきです。ただ、謝罪だけで答えを閉じると、「結局どうなったのか」という二人の疑問は置き去りになります。
話をそらす
「それより、こちらのお料理を見てください」と、別の魅力に話を移す形です。口コミを聞かれて黙った、と受け取られます。これがいちばん悪い結果になりやすい形です。聞いた側は、聞かなければよかったと思い、同時に、この式場は都合の悪いことを避けると学習します。
答えの順番は3つの分岐で決める
では、どう答えるか。僕は、次の順番を決めておくのがよいと考えています。
手順1:聞かれた内容を、言い直して確かめます。 「担当の対応が強引だった、という書き込みですね。いつ頃の投稿か、覚えていらっしゃいますか」。この一言で、3つのことが起きます。話を聞く姿勢が伝わること、書き込みのどこを気にしているかが分かること、そして答えを考える数秒が取れることです。
手順2:その書き込みについて、式場が把握している事実を3つの分岐に分けます。
- 事実に当たる場合: 起きたこと、その後に変えたこと、今の運用を順に話します。「その時期は、見学の最後に契約の案内を必ず入れる運用でした。今はお二人の希望を聞いて、契約の話を出すかどうかを担当が決める形に変えています」。変えた中身が具体的であるほど、受け止める会社だという印象になります
- 事実に当たらない場合: 否定せず、式場側で確認できる事実を話します。「当時の記録を見ると、見積もりの変更は契約前にお渡ししていました」と、確認した結果を述べます。誤解を責めず、事実だけを置きます。投稿した本人を特定できる情報は出しません
- 確認できない場合: 分からない、と正直に言います。「その件は、僕が今この場で確認できる情報がありません。お時間をいただければ、確認して明日までにご連絡します」。確認できないものを、あったことにもなかったことにもしません
手順3:最後に、二人が確かめたい2つ目の点に戻します。 「もし契約後に同じような行き違いが起きたら、どうなるのか」を話します。窓口は誰か、いつまでに返事が来るか、上長にどう上がるか。口コミの話を、これからの約束に変えて閉じます。
準備しておくのは、回答集ではなく「事実の確認表」
ここまで読んで、想定問答集をつくればよいと考えた方もいると思います。ただ、僕は問答集より、事実の確認表をおすすめします。
低評価の口コミは、書き込みごとに内容が違います。想定問答にしてしまうと、似た書き込みに当てはめた模範回答を読み上げることになり、二人には「準備された返事」として伝わります。
確認表に書くのは、次の4列です。
- 低評価の書き込みの要点(直近1年のもの)
- 事実に当たるか、当たらないか、確認できないか
- 当たるなら、何を変えたか。変えていないなら、変えない理由
- 見学の席で話してよい範囲(個人が特定される情報は含めない)
これを月に1回、見直します。口コミ返信を書くときに同じ表を使えば、返信と見学での答えがそろいます。返信では「改善しました」と書いてあるのに、見学では担当者が知らない、という食い違いがいちばん信用を落とします。
事実に当たる書き込みが多い式場は、確認表がそのまま改善の一覧になります。答え方の問題として始めたことが、運営の見直しにつながります。
前提を置いて、成約への影響を計算する
どのくらいの差になるのかを、仮の数字で計算します。実在の式場の数字ではありません。
- 月の来館が40組
- そのうち、口コミを話題に出す二人が15%で、月に6組
- 来館全体の成約率が30%
口コミを話題に出した6組の成約率が、答え方によってどう変わるかを3通りで置きます。
| 答え方 | 6組の成約率 | 月の成約数 |
|---|---|---|
| 否定する、そらす | 15% | 0.9組 |
| 謝って流す | 25% | 1.5組 |
| 事実を確かめて答える | 35% | 2.1組 |
6組を全体と同じ30%で比べると、月の成約は1.8組です。「否定する、そらす」だと0.9組少なく、「事実を確かめて答える」だと0.3組多い計算になります。
大事なのは、否定する側に倒れたときの落ち込みのほうが大きい点です。この仮定では、悪い答え方から良い答え方に変えると、月に1.2組、年間で14組を超える差になります。成約単価を300万円と仮置きすると、年間で4,300万円を超える売上の差です。この数字は、成約率の仮定が変われば簡単に動きます。大きく見積もりすぎないでください。
見てほしいのは、一人の担当者の「聞かれたときの癖」が、年間の成約に数組の差をつくりうる、という構造のほうです。月6組という数は小さく見えますが、毎月かならず発生します。
先に自分から口コミに触れるべきか
もう一つ、よく出る質問です。聞かれる前に、見学の冒頭で口コミに触れておくほうがよいのか。
僕は、原則として触れなくてよいと考えています。理由は2つです。
- 口コミを見ていない二人に、わざわざ低評価の存在を知らせることになります
- 先回りの説明は、「気にしているから言っている」と受け取られやすいです
例外は、同じ内容の指摘が複数の口コミサイトで続いているときです。たとえば、見積もりが後から上がる、という趣旨の書き込みが続いているなら、見学の中で見積もりの説明をする場面に、変更が起きる条件を自分から入れます。口コミの話としてではなく、見積もりの説明の一部として話します。これなら、口コミを見た二人は「あの書き込みの件だ」と気づき、見ていない二人には通常の説明として伝わります。
見学の担当者全員で共有するときの注意
確認表ができたら、見学を担当する全員で共有します。このとき、次の3点を決めておくと運用が崩れにくいです。
- 答える人を決めすぎない。 新人でも聞かれる場面です。確認できない場合は「確認して連絡します」と言ってよい、と決めておくと、無理に答えて誤った説明をする事故が防げます
- 連絡の期限を決める。 「確認して連絡します」と言った場合の期限を、翌営業日と決めます。期限がないと、見学後の追客の連絡に埋もれます
- 聞かれたことを記録する。 どの書き込みについて聞かれたかを、見学記録に1行残します。同じ書き込みが何度も聞かれていれば、それは優先して手を入れるべき点です
まとめ
- 見学の席で低評価の口コミを聞く二人は、その式場を候補に入れていて、最後の不安を確かめにきています
- 二人が確かめたいのは、書き込みが本当かどうかと、指摘を受け止める会社かどうかの2点です
- 否定する、謝って流す、話をそらす、の3つは、どれも不安を残します
- 答えは、まず内容を言い直して確かめ、事実に当たる・当たらない・確認できないの3分岐で話し、最後に契約後の窓口の約束で閉じます
- 準備するのは想定問答ではなく、直近1年の低評価の口コミを事実に照らした確認表です。口コミ返信と同じ表を使うと、返信と見学の答えがそろいます
- 仮の前提で計算すると、答え方の違いは、月6組の成約を年間で数組から十数組動かします。数字は前提しだいなので、自社の見学記録で聞かれた回数を数えるところから始められます
