経営・組織

結婚式場の倒産は年5件。減っているのは、静かに畳む休廃業のほうです

2025年に倒産した結婚式場業の会社は、全国で5件でした。ところが同じ年に、休廃業・解散を選んだ会社は13件あります。倒産の2.6倍です。

東京商工リサーチ(TSR)が公表した「2025年『結婚式場業』の業績動向調査」の数字です。倒産5件と休廃業・解散13件を合わせて18社。前年の19社から1社減りました。倒産だけを見れば、前年より16.6%減っています。ニュースの見出しだけ追っていると「式場の倒産は落ち着いてきた」と読めてしまう数字です。

でも実際には、同じ調査で新設法人は14件、閉じた18社を下回っています。しかもこの「閉じる数が新設を上回る」状態は、2019年から7年続いています。倒産が減っても、市場から式場が減り続ける流れは止まっていません。

今回は、この数字を材料に、倒産件数だけでは見えない縮み方と、黒字の式場が撤退を考える損益分岐の話を書きます。数字は東京商工リサーチと帝国データバンクの調査にそろえ、集計の範囲が違うものは混ぜないようにします。

倒産5件、休廃業13件、新設14件

最初に、2025年の数字を並べます。

  • 倒産:5件(前年比16.6%減)
  • 休廃業・解散:13件(前年と同数)
  • 倒産と休廃業・解散の合計:18社(前年は19社)
  • 新設法人:14件(前年は10件、2年ぶりの増加)
  • 閉じた数が新設を上回った年数:2019年から7年連続

ここで見たいのは、閉じた18社の内訳です。7割強にあたる13社は、倒産ではなく自分たちで閉じる判断をしています。休廃業や解散は、負債を抱えて続けられなくなったケースだけではありません。事業の先行きを見て、傷が浅いうちに畳む判断も含まれます。

つまり式場業の縮み方は、「潰れる」より「やめる」が主流になっています。外から見える倒産のニュースは年に数件でも、静かに営業をやめる式場は、その2.6倍あります。

新設が14件あることも、書いておきます。前年の10件から増えました。式場業から人がいなくなっているわけではなく、新しく始める人もいる。ただ、入ってくる数より出ていく数が多い年が7回続いている、というのが事実です。

一年前の数字と並べると、倒産は減っても構造は変わっていない

前の年のTSR調査を見ると、2024年は倒産・休廃業の合計が19件で、このときも6年連続で新設を上回っていました。2024年の新設は10件ですから、差し引きでは9社減。2025年は18社に対して新設14件で、差し引き4社減です。

差は縮みました。ただ、縮んだ理由は閉じる数が大きく減ったからではなく、新設が増えたからです。閉じる18社という水準は、ほぼ変わっていません。

もう一つ、年度の数字も見ておきます。TSRは別の調査で、ブライダル産業(結婚式場だけでなく、式場紹介業や関連事業も含む)の2024年度の倒産を13件と発表しています。前年度の18件から27.7%減ですが、過去10年で2番目に多い水準でした。同じ調査では、休廃業・解散が4〜12月の9か月だけで37件に達し、年度最多だった2023年度の35件をすでに超えています。

こちらは「結婚式場業」ではなく「ブライダル産業」で、期間も暦年ではなく年度です。2025年の13件と直接は足せません。ただ、向きは同じです。倒産が減る一方で、休廃業が高い水準にある。業界全体で見ても、畳む動きのほうが大きいということです。

売上が戻っても、利益が戻るとは限らない

では、残っている式場の業績はどうなのか。TSRが追っている業績調査を、年ごとに並べます。調査の対象社数が毎年違うので、比べるのは「向き」だけにします。

調査年 対象 売上高 最終利益
2023年 112社 3,477億円(前年比13.2%増) 149億円(前年比56.6%増)
2024年 46社 2,757億円(前年比3.9%増) 120億円(前年比17.6%減)
2025年 48社 3,040億円(前年比1.8%増) 258億円(前年比80.8%増)

2023年の112社では、売上高がコロナ前の2019年(4,007億円)の86.7%まで戻り、利益はコロナ前を上回りました。2024年は増収でも利益が減り、2025年は一転して利益が増えています。利益の動きがこれだけ大きく振れるのは、式場の費用が売上に連動しにくいからです。このあと計算で確かめます。

2025年の48社の中身も見ておきます。

  • 増収:26社(構成比54.1%)。前年は35社(72.9%)
  • 減収減益:12社(構成比25.0%)。前年は7社
  • 黒字:34社(構成比70.8%)。黒字率は前年より2.0ポイント低下

売上高の合計は伸びています。でも、増収の会社は72.9%から54.1%に減りました。約19ポイントの低下です。合計が伸びているのに増収企業が減るなら、伸びているのは一部の会社で、残りは横ばいか減っています。調査の解説でも、式場ごとの明暗が分かれていると整理されていました。

別の角度で、帝国データバンクの調査も確認しておきます。2024年度版の「結婚式場」業界動向調査では、2023年度に赤字だった結婚式場運営企業は35.6%で、減益を含む業績悪化は約6割でした。市場規模は2024年度で前年度比8%増の4,800億円前後の見込みですが、2018年度の6,163億円と比べると約8割にとどまります。

調査会社も対象企業も違うのに、TSRの2023年の112社では赤字が31%、帝国データバンクの2023年度では35.6%と、赤字の式場は3社に1社前後という見え方がそろっています。売上が戻っても、全体の3割ほどは赤字のまま、ということです。

黒字でも畳む理由を、数字で考える

ここからは、僕の計算です。調査の数字ではなく、前提を置いたモデルです。

先に断っておくと、休廃業した13社が実際にどんな理由で閉じたのかは、調査からは分かりません。後継者の問題、土地の事情、本業ではない事業の整理など、財務以外の理由もあるはずです。ここでやるのは「黒字でも、売上が少し落ちるだけで赤字に転ぶ構造なら、早めに畳む判断が合理的になりうる」ことを数字で見る作業です。

前提を置きます。

  • 売上を100とする
  • 売上に比例して動く費用(料理、飲料、衣装、装花など)は、売上の30%とする(仮の置き方です)
  • 売上に関係なくかかる費用(建物、設備、正社員の人件費など)は、利益率から逆算する
  • 利益率は、TSRの調査から2種類を使う。2025年の48社の最終利益÷売上高が8.5%、2023年の112社が4.3%

2024年の46社は、120億円÷2,757億円で4.4%です。つまり利益率は4%台の年と8%台の年があるわけです。この2つで、売上が落ちたときの利益を計算します。

利益率8.5%の場合、固定的にかかる費用は売上の61.5%です。売上が10%落ちて90になると、変動費が27に減り、利益は90−27−61.5で1.5。利益率は1.5%に下がります。20%落ちて80になると、利益は−5.5で赤字に転びます。

利益率4.3%の場合、固定的にかかる費用は65.7%です。売上が10%落ちると利益は−2.7、20%落ちると−9.7になります。

損益分岐になる売上の水準も出せます。固定費を、1から変動費率0.3を引いた0.7で割る計算です。利益率8.5%の式場は売上が元の87.9%まで、4.3%の式場は93.9%まで落ちると、利益がゼロになります。

数字にすると、こうなります。

  • 利益率8.5%の式場:売上が約12%落ちると利益ゼロ
  • 利益率4.3%の式場:売上が約6%落ちると利益ゼロ

利益率が半分になると、利益が消えるまでの余裕も、12%から6%に半分になります。式場の婚礼は1組あたりの金額が大きく、年間の組数が少ない会場なら、数組の差で売上は6%動きます。

もちろん、変動費率30%は仮の数字です。実際の式場では、料飲や衣装の原価の比率、人件費のうち変動する部分の置き方でここは変わります。ただ、変動費率を変えても結論の向きは変わりません。固定費が重い事業ほど、利益率が薄いときの売上の揺れに弱い。この構造は、式場に限らず設備型の事業に共通です。

3割が赤字という数字の意味

さきほどの赤字3割の話に戻ります。TSRの112社調査(2023年)で、利益が判明した41社のうち赤字は31%でした。帝国データバンクの2023年度が35.6%。ざっと3社に1社です。

この3社に1社が、翌年に持ち直せるかどうかは、調査からは分かりません。ただ、さきほどの計算を当てはめると、赤字に入っている式場は、組数がわずかに戻らないだけで赤字幅が広がります。逆に、少し戻れば黒字に抜けられる位置にもいます。

休廃業が年13件あるということは、こうした位置にいる式場の一部が、「戻る見込みに賭け続けるより、今の資産が残っているうちに閉じる」判断をしている可能性があります。倒産は債務を返せなくなってからの話ですが、休廃業は返せるうちに閉じる話です。数字に出ないのは当たり前で、ニュースにもなりません。

決算書の外に出る数字を見る

ここまでの話を、式場の経営の視点でまとめます。

1つ目は、見る数字の置き場所です。倒産件数は、世の中の式場がどれだけ苦しいかを測るには粗い指標です。TSRは倒産と休廃業・解散を分けて公表しているので、年に一度は両方を並べて見る価値があります。倒産が減ったと喜んで、休廃業が高止まりしている事実を見落とさないためです。

2つ目は、自分の損益分岐の位置です。さきほどの計算のとおり、利益率が薄いほど、売上が落ちたときの余裕は小さくなります。自社の損益分岐が売上の何%の位置にあるかは、固定費と変動費に分ければ出せます。出し方は難しくありません。月次の決算書で、料理・衣装・装花など売上に連動する費用と、連動しない費用を分けて足すだけです。

3つ目は、増収企業の割合です。業界の売上合計が伸びていても、増収の会社は72.9%から54.1%に減りました。合計だけを見て「市場は回復している」と判断すると、自社が伸びていない側の46%に入っているのに気づかないことがあります。業界の合計ではなく、自社の組数と単価を、前年の同じ月と並べて見るのが先です。

4つ目は、単価の見方です。帝国データバンクの調査では、人件費などの運営コストの上昇が、単価の改善を難しくしていると整理されています。売上が組数×単価で決まる以上、コストが上がるなら単価を上げるか、組数を増やすしかありません。ただ、披露宴の規模が小さくなる流れの中で単価を上げる難しさが、赤字3割の背景にあります。

休廃業は、市場の「見えない縮み」

最後に、休廃業という言葉のことです。

休廃業は、統計上は「事業をやめた」の一語に収まります。でも式場にとっては、そこで担当していた新郎新婦、働いていたスタッフ、取引していた仕入れ先の仕事が動く出来事です。閉じる式場が年に十数件あるということは、その会場の新郎新婦とスタッフが、別の場所へ動くということでもあります。

倒産のニュースは目立ちますが、市場の形を変えているのは、目立たない休廃業のほうかもしれません。倒産5件という数字だけでは、それは見えません。

まとめ

  • 2025年の結婚式場業は、倒産5件に対し休廃業・解散が13件(東京商工リサーチ)。畳む動きのほうが倒産の2.6倍あります
  • 閉じた18社は新設14件を上回り、この状態は2019年から7年連続です。倒産が減っても、式場の数は減り続けています
  • 主要48社の売上は伸びましたが、増収企業は72.9%から54.1%に減り、黒字は34社(70.8%)でした。合計の伸びと、各社の実感はずれます
  • 赤字の式場は、東京商工リサーチ(2023年、31%)と帝国データバンク(2023年度、35.6%)で3社に1社前後。調査会社が違ってもほぼ同じ姿が見えます
  • 変動費率30%と仮置きした計算では、利益率8.5%なら売上が約12%、4.3%なら約6%落ちた時点で利益がゼロです。固定費が重いと、利益率の薄さがそのまま撤退の近さになります
  • 見るべきは倒産件数ではなく、休廃業を含めた閉じる数と、自社の損益分岐、そして自社の組数と単価の前年同月比です