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式場名で出す検索広告は止める前に1か月比べる

自社の式場名で検索した人に出している広告を、止めるべきかどうか。検索結果の1位には、広告の下にすでに公式サイトが出ています。同じ人に同じ式場を2回見せているだけなら、広告費は無駄に見えます。

結論から書きます。止めるべきかどうかは、広告費の大きさでは決まりません。広告を止めたときに、クリックが自然検索の公式サイトへ移るのか、それとも他の誰かに取られるのか。その移り方の割合で決まります。割合は式場ごとに違うので、1か月だけ止めて比べるのが、いちばん安く確かめられる方法です。

この記事は、出典のある統計を使いません。式場名での広告について、ブライダル業界の公開データを僕は見つけていないからです。数字はすべて僕が置いた仮定で、実在の式場の実績ではありません。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。

式場名の広告が「無駄に見える」理由

まず、何の話かをはっきりさせます。ここでいう式場名の広告は、「〇〇ガーデン 結婚式」「〇〇ホテル ウエディング」のように、自社の名前を含む検索語に出す検索広告です。一般的には、ブランドキーワードの広告と呼ばれます。

無駄に見える理由は3つあります。

  • 自社名で検索する人は、すでに自社を知っている。新しく見つけてもらう広告ではない
  • 自然検索でも、公式サイトは1位に出ることが多い。広告を止めても、同じ人が同じサイトに着く気がする
  • 自社名の検索はクリック単価が安く、成果も良く見える。だから「効いている」と数字が言ってしまう

3つ目が厄介です。広告の管理画面で見ると、式場名の広告は予約が出やすく、1件あたりの費用も安く出ます。理由は単純で、もともと来館する気の高い人が検索しているからです。広告があったから予約したのか、広告がなくても予約したのかは、管理画面の数字だけでは分かりません。

一方で、止める側にも見落としがあります。式場名で検索したとき、広告の枠には自社だけが出るとは限りません。結婚情報の媒体が、他社の式場名を使って広告を出していることがあります。広告を止めると、その枠が空き、媒体のページが先に表示される。そこから予約すれば、媒体への成果報酬が発生します。広告費は減っても、媒体に払う費用が増えるなら、全体では得とは限りません。

損益の分かれ目を、仮の数字で計算する

仮の式場を置きます。以下はすべて想定です。

  • 式場名を含む検索が月に400回ある
  • そのうち、広告が60%の確率でクリックされ、月240クリックになる
  • クリック単価は40円。月の広告費は 240 × 40 = 9,600円
  • クリックした人の4%が見学を予約する。広告経由の予約は 240 × 0.04 = 9.6件

月9,600円で見学予約が9.6件入っているなら、1件あたり1,000円です。ここだけを見ると、止める理由はありません。

でも、見るべきは「広告があったから増えた予約」だけです。広告を止めたとき、240クリックのうち、一定の割合は自然検索の公式サイトへ流れます。その割合を移行率と呼ぶことにします。

移行率が90%なら、減る予約は 9.6 × 0.1 = 0.96件。節約できる9,600円に対して、失う予約は1件弱です。つまり、広告で増えた予約の1件あたり費用は 9,600 ÷ 0.96 = 1万円になります。

移行率が違えば、この1万円も変わります。同じ計算を移行率ごとに並べると次のようになります。

移行率 失う予約(月) 増えた予約1件あたりの広告費
95% 0.48件 2万円
90% 0.96件 1万円
70% 2.88件 約3,300円
50% 4.8件 2,000円

この表の読み方は一つです。右端の数字を、自社でほかの手段から見学予約を1件取るときの費用と比べます。

たとえば、媒体や別の広告で見学予約を1件取るのに、自社の実績で1万5,000円かかっているとします。右端が2万円(移行率95%)なら、式場名の広告は他の手段より割高です。止めて、その9,600円を別の入口に回したほうがよいでしょう。右端が3,300円(移行率70%)なら、広告は他の手段より安く予約を取っています。止めない理由になります。

なお、この計算は、広告を止めたぶんの9,600円を、別の入口に回したときに同じ効率で使えることが前提です。月1万円弱の金額を、別の手段にきれいに移せるかどうかは、そもそも怪しい。実務では、数千円の差のために手を動かす価値があるかどうかも、判断に入ります。

移行率は、1か月だけ止めて測る

移行率は、考えても出ません。測るしかありません。測り方は簡単で、広告を1か月止めて、予約の数と入口を比べます。

手順は次のとおりです。

  1. 止める前の3か月分について、式場名の検索回数、広告のクリック数、自然検索のクリック数、見学予約の件数を記録する。検索回数とクリック数は、広告の管理画面と、検索の流入を見るツールで確認できる
  2. 同じ曜日の並びで、1か月(4週間)だけ広告を止める。4週間にすると、週末の数が揃えやすい
  3. 止めた期間の、自然検索のクリック数と、見学予約の件数を記録する
  4. 止める前の月平均と比べる

比較で見るのは、広告のクリックが減った分に対して、自然検索のクリックがどれだけ増えたかです。広告が240クリック減って、自然検索が200クリック増えたなら、移行率は約83%。増えたのが100クリックなら約42%です。

見学予約の件数も見ますが、こちらは注意が要ります。予約は月に10件前後しかないので、増減が数件でも、偶然の揺れの範囲に入ります。予約件数だけで判断せず、クリックの移り方を主にして、予約はその裏づけとして見ます。

結果が混ざる条件

1か月の比較は簡単ですが、何でも測れるわけではありません。結果を歪める条件を、先に書いておきます。

繁忙期と閑散期をまたぐ。 比較の前後で、検索回数そのものが大きく変わると、広告の有無の影響が読めなくなります。春や秋の予約が増える時期を挟む場合は、検索回数に対するクリックの割合で比べます。

媒体が同じ時期に広告を強めた。 止めた月に、結婚情報の媒体が自社の式場名に広告を出し始めたら、自然検索のクリックは下がります。これは広告を止めた影響ではなく、媒体の動きです。止めた月の検索結果を、週に1度、自分の目で見て記録しておくと、原因が切り分けられます。

フェアの告知や広告の出稿が重なった。 検索回数が増えて、広告の効果が読めなくなります。止める月は、新しい告知や出稿をなるべく入れないほうが、結果がきれいに読めます。

止めた月に、公式サイトを直した。 自然検索の順位やクリックされやすさが変わると、移行率に影響します。測る月は、サイトの大きな変更を避けます。

全部を避けるのは現実的ではありません。避けられなかった条件は、結果と一緒にメモに残しておけば、数字を読むときの割引に使えます。

止めない判断も、正しい判断になる

1か月比べた結果、移行率が低く、広告を止めない判断になることがあります。これは、測ったのに何も変わらなかった、という話ではありません。

測らずに続けているのと、測って続けているのとでは、意味が違います。測って続けると決めた場合は、次の2点が手に入ります。

  • 式場名の広告は、他の手段と比べてもこの費用で予約を取れている、という根拠
  • 媒体が式場名に広告を出してきたときに、自社の広告で守る効果がどのくらいかという目安

特に2点目は、媒体との契約の話し合いで使えます。媒体が自社の式場名で広告を出し、そこで予約が発生しているなら、その予約に払っている費用は、もともと自社で取れていたはずの予約に払っているかもしれません。自社の広告で守ると、どのくらい違うのか。この数字があれば、感覚ではなく数字で相談ができます。

反対に、移行率が高く、止める判断になった場合は、浮いた予算の行き先を先に決めておきます。決めずに止めると、数千円の予算は、いつの間にか別の費目に溶けます。

式場名の広告を扱う側の注意

最後に、運用で気をつけたい点を書きます。

他社の名前を、自社の広告の検索語に入れない。 他の式場名で検索した人に自社の広告を出すのは、商標や広告の媒体規定に触れることがあります。自社名の広告の話と、他社名の話は、分けて考えます。

広告の文面は、検索した人が探しているものに合わせる。 式場名で検索する人は、住所、アクセス、見学予約、料金のどれかを探していることが多い。広告から飛ばす先を、トップページだけにせず、見学予約のページにしておくと、予約までの距離が縮まります。ただし、これも自社のデータで確かめます。

予算は上限を決めておく。 式場名の検索は回数が限られているので、予算が無限に使われることはありませんが、他社が入札を競ってきたときに、クリック単価が上がることがあります。月の上限と、1クリックの上限を決めておけば、思わぬ増額を防げます。

まとめ

  • 式場名で出す検索広告は、無駄に見えても、止めてよいかどうかは移行率で決まる
  • 移行率は、広告を止めたときに、クリックが自然検索の公式サイトに移る割合。考えても出ないので、1か月止めて測る
  • 仮の計算では、移行率が90%以上なら、増えた予約1件あたりの広告費は1万円を超える。これを、自社で他の手段から予約を取る費用と比べる
  • 予約件数は月に数件の揺れがあるので、クリックの移り方を主にして、予約を裏づけとして見る
  • 繁忙期をまたぐ、媒体が広告を強める、サイトを直す、といった条件は結果を歪める。避けられなければ、結果と一緒にメモを残す
  • 止めない判断も、測ったうえなら、媒体との相談で使える根拠になる。止める判断なら、浮いた予算の行き先を先に決めておく