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式場の配膳スタッフの無期転換は、出勤日数でなく契約期間で決まる

配膳スタッフは年に何十日かしか入らないのだから、無期転換とは関係がない。そう考えている式場は、けっこう多いのではないでしょうか。結論から言うと、関係があります。無期転換の5年は、出勤した日数ではなく、契約を結んでいた期間で数えます。土日だけ入る人でも、1年契約を更新し続ければ、6年目に申込権が生まれます。

この記事では、その数え方と、式場が5年目の前に決めておくことを整理します。法律の部分は厚生労働省の説明と弁護士事務所の解説に沿っています。人数や時給の数字は、構造を見るための僕の仮置きで、実在の式場の実績ではありません。個別の契約の判断は、社会保険労務士や労働局に確認してください。

無期転換ルールの中身

厚生労働省の説明では、同じ使用者との有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者が申し込めば、期間の定めのない労働契約に転換されます。申し込んだ時点の契約が終わる日の翌日から、無期の契約になります。使用者は、この申込みを断れません。労働者からの申込みがなければ、このルールは働きません。

押さえておきたい点が3つあります。

  • 数えるのは契約期間の合計です。実際に働いた日数や時間は関係ありません。3年契約を1回更新すれば、通算6年になります
  • 「同じ使用者」は事業主単位で見ます。会場が複数あっても、運営する会社が同じなら通算されます
  • 無期になっても、労働条件は自動では変わりません。変わるのは契約期間の定めがなくなる点で、時給や勤務日はそれまでの契約のままです。正社員になるわけではありません

もう一つ、あらかじめ申込権を放棄させることはできません。「更新の条件として、無期転換は申し込まないと約束してもらう」という運用は、無効とされます。

年60日でも、5年は5年

式場の配膳スタッフに当てはめます。仮に、ある人が毎年4月1日から翌年3月31日までの1年契約を、更新しながら働いているとします。出勤は繁忙期の土日が中心で、年に60日、1日6時間とします。

契約期間の通算は、1年目から5年目で5年ちょうどです。申込権が生まれるのは、5年を超える6年目の契約期間です。この人が働いた日数は、5年間で300日、時間にすると1,800時間です。フルタイムの人の1年分に届かない日数でも、契約期間としては5年たっています。

今の名簿に当てはめると、わかりやすくなります。2026年10月の時点で、2021年4月以前から切れ目なく1年契約を更新してきた人は、2026年4月の更新で5年を超えています。すでに申込権を持っている人が、名簿にいる可能性があります。

もう一つの前提として、無期転換ルールは2013年4月1日以降に始まった有期契約から数えます。2013年より前の契約は通算に入りません。ただ、今から数える式場にとっては、ほとんど関係のない話です。

空白期間を空ければ、数え直しになるのか

閑散期に契約を切れば、通算がリセットされるのではないか。そう考える人もいると思います。確かに、契約と契約のあいだに一定以上の空白期間があると、その前の契約期間は通算に入りません。基準は原則6か月以上です。直前の契約期間が1年未満のときは、その期間の2分の1が基準で、端数は切り上げます。たとえば、直前の契約が2か月以下なら1か月以上、10か月を超えていれば6か月以上の空白が必要です。

挙式の少ない1月と2月を空白にして、3月に契約し直す運用なら、空白は2か月です。直前の契約が10か月を超えていれば、6か月に届かないので、通算は途切れません。

僕は、数え直しを狙って契約を切る運用はおすすめしません。理由は2つあります。

1つ目は、リスクが合わないことです。契約の切れ目の作り方が、無期転換を避けるためだけに見えると、労働者とのトラブルになったときに、式場に不利な材料になります。

2つ目は、人が残らないことです。配膳は経験で動きが変わる仕事です。5年続けてくれた人を、制度を避けるために手放すのは、採用と教育の費用を捨てる判断です。

無期転換して困ることは何か

では、無期転換で式場は何に困るのか。これを先に整理すると、決めることが見えてきます。

  • 時給や勤務日は、転換前と同じです。人件費が自動で上がるわけではありません
  • 契約期間の満了による雇止めができなくなります。人手が余った時期に、契約満了で終わらせる手が使えません
  • 閑散期にシフトを出さない運用が、続けにくくなる可能性があります

問題になるのは、3つ目です。有期契約なら、閑散期は契約を結ばない、あるいは更新しない形で調整できました。無期になると、契約は続いています。その状態で、使用者の都合でシフトを入れない日が続くと、休業手当の問題が出てくることがあります。

労働基準法26条は、使用者の責任で労働者を休ませた場合に、平均賃金の6割以上を支払うことを求めています。仮に、時給1,300円で1日6時間働く人なら、1日の賃金は7,800円で、その6割は4,680円です。実際の平均賃金は計算の決まりがあるので、これは桁を見るための目安です。シフト制で、シフトを入れなかった日が休業にあたるかは、契約の書き方や実際の運用で変わります。ここは僕が断定できる範囲を超えるので、社会保険労務士への確認が必要です。ただ、仕組みとして、無期になると「入れない日」の扱いが論点になる、とは言えます。

何人が対象になるのか

式場の規模によって、対象の人数は変わります。仮に、配膳スタッフの登録が30人で、毎年20%が辞め、同じ人数を採用して30人を保っているとします。毎年6人を採用する計算です。

1年契約で更新していくと、各年の在籍者は、入社から5年を超えた人と、そうでない人に分かれます。この前提で数えると、5年を超えている人は約9.8人、全体の3割ほどです。

離職率が変わると、人数は大きく動きます。

年間の離職率(仮) 5年を超える人(30人中)
10% 約17.7人
20% 約9.8人
30% 約5.0人

離職が少なく、長く続いてくれる式場ほど、無期転換の対象者が多くなります。人が定着している式場ほど、この問題に早く当たります。裏返すと、これは定着がうまくいっている証拠でもあります。

5年目の前に決める3つのこと

ここまでの話を、式場が実務に落とすなら、次の3つになると思います。

1. 契約書に、更新の回数と通算期間の考え方を書く。

2024年4月から、労働条件の明示ルールが変わっています。厚生労働省の説明でも、無期転換の申込機会と、転換後の労働条件を書面で明示することが、確認しておくべき事項に入っています。契約を更新するたびに、申込みができることと、転換後の条件をどうするかを、書面で渡す形に整えておく必要があります。

整えるのは、契約書の様式だけではありません。更新の通知を出す担当者が誰なのか、いつ出すのかを決めておきます。紙で渡す式場なら、更新の1か月前を目安にチェックリストを作ります。

2. 無期転換後の労働条件を、先に書いておく。

転換後の条件は、法律上は転換前と同じです。ただ、別に定めがあれば、その内容になります。配膳スタッフなら、次のようなことを事前に決めておくと、申込みが来たときに慌てません。

  • 勤務日と時間は、シフト制のままにするか
  • 繁忙期と閑散期で、入る日数の目安を契約書に書くか
  • シフトを出せない日が続いたときの扱いを、どう書くか

法律上は、他の正社員とのバランスを考慮して、条件を決める理由を説明するよう努めることも求められています。説明できる形で、基準を作っておく意味があります。

3. 無期になった人の役割を、決めておく。

5年以上続けている人は、現場の動きを知っている人です。無期転換を、費用が増える話として見るのか、現場の中核を固定する話として見るのかで、式場の打ち手は変わります。

たとえば、新人の指導や、当日の席の確認役を、長く続けている人に任せる。その分の時給を、役割手当として上乗せする。こうすると、5年を超えた人が、人件費の負担ではなく、現場の安定の役を担う人になります。配膳の時給を上げて残すか、毎年入れ替えるかという判断も、無期転換を含めて考えると、結論が変わる式場があると思います。

日雇いで毎回契約すれば避けられるか

もう一つ、よく出る疑問に触れます。1日ごとの契約にして、毎回終わらせれば、5年の通算にならないのではないか、というものです。

契約が1日ごとに独立していても、その間の空白が短ければ、通算は途切れません。先ほどの基準で、直前の契約が2か月以下なら、1か月以上の空白が必要です。毎週末に入っている人は、空白が1週間にも満たないので、前の契約期間はそのまま通算に入ります。

契約を細かく切ること自体が、無期転換の回避になるわけではありません。それなのに、契約書の作成と管理の手間だけが増えます。僕は、日雇いのスポットに寄せるなら、本当に年に数回しか入らない人に限り、毎週のように入る人は、期間を決めた通常の契約にする形が、事務も楽で、トラブルも少ないと考えています。

名簿で今日できる確認

最後に、いまの名簿で確認できることをまとめます。

  • 配膳スタッフごとに、最初の契約の開始日を並べる
  • 切れ目なく更新している人について、通算期間を数える。5年を超えていれば、申込権がすでにある
  • 契約書の様式に、無期転換の申込機会と転換後の条件を書く欄があるか確かめる
  • 閑散期のシフトを、誰がどう決めているかを書き出す

この4つを並べるだけで、いつ、何人が対象になるかが見えてきます。分かれば、5年目の前に契約書を直す時間があります。分からないまま5年を超えると、申込みが来てから決めることになります。

まとめ

  • 無期転換の5年は、出勤日数ではなく、契約期間の合計で数えます。年に数十日しか入らない配膳スタッフでも、1年契約を更新し続ければ、6年目に申込権が生まれます
  • 申込権をあらかじめ放棄させる約束は無効です。使用者は、申込みを断れません
  • 無期になっても、時給や勤務日などの条件は、転換前と変わりません。困るのは、閑散期にシフトを出さない運用が続けにくくなる点です
  • 空白期間で数え直す運用は、リスクと人材の流出を考えるとおすすめしません。定着している式場ほど、対象者が多くなります
  • 5年目の前に、更新時に渡す書面、転換後の条件、無期になった人の役割の3つを決めておきます