経営・組織

披露宴の食べ残しを宴会並みに減らすと、仮の式場では年194万円。料理を絞る前に見るのは、残る皿と残らない皿の分かれ目

披露宴の料理は、運ばれた量のうち1割以上が食べられずに下げられている。こういう数字があります。imidasの食品ロスの解説に載っている、外食産業の食品ロス率(2009年)です。食堂・レストランが3.2%、宴会が10.7%、結婚披露宴が13.7%、ホテル・旅館が14.8%。食べ残しの量を提供した量で割った値だと説明されています。

15年以上前の数字なので、今の式場がそのまま13.7%だとは僕も思っていません。ただ、レストランの4倍以上という開きは、構造から説明がつきます。コースの量は人数が確定した時点で決まり、料理は一斉に出て、ゲストは歓談や写真で席を立つ。どれも式場側の都合で決まる条件です。

では、この3ポイントを削れば得なのか。この記事では、仮の式場を置いて損益を計算します。結論を先に書くと、削ること自体は黒字になりやすいです。ただ、料理を一律に絞るやり方は、1.4組の成約を失えば消える程度の儲けしかありません。残る皿と残らない皿を分けて、残る側だけ直すほうが筋がいいと僕は考えています。

仮の式場の前提

数字はすべて僕が置いた仮定です。実在の式場の実績ではありません。自社の数字に置き換えて読んでください。

  • 年間の披露宴は120組
  • 1組あたりの出席者は60人(新郎新婦を含む)
  • 料理の食材原価は1人9,000円(飲料は含みません)
  • 1組あたりの粗利は140万円
  • 食品ロス率は、上の2009年の数字を借りて13.7%と置く

この前提だと、1組あたりの料理原価は54万円、年間では6,480万円です。ロス率13.7%を掛けると、食べられずに下げられる分は年887万円、1組あたり約7万4,000円になります。出席者に直すと、1組につき8人分強です。60人の披露宴で、8人分の料理がそのままゴミ袋に入っている計算になります。

ここで注意が一つあります。ロス率は「量」の比率で、原価の比率ではありません。高い皿が残るのか、パンやデザートが残るのかで、金額は変わります。この記事では量の比率をそのまま原価に掛けています。メイン肉料理が残りやすい式場では887万円より多く、パンとサラダが中心なら少なくなります。粗い見積もりだと思って読んでください。

3ポイント下げると年194万円

宴会のロス率は10.7%でした。披露宴も同じ水準まで下げられたとします。差は3ポイントです。

  • 6,480万円 × 3% = 194万4,000円(年)
  • 1組あたり1万6,200円
  • 出席者に直すと、1組につき1.8人分

1組あたり1万6,200円は、小さく見えます。ただ、年間では194万円で、粗利140万円の1.4組分に相当します。これを多いと見るか少ないと見るかは、式場の利益率しだいです。婚礼の粗利が薄い式場では、1.4組分は決して軽くありません。

5ポイント下げると324万円(2.3組分)、7ポイント下げると454万円(3.2組分)です。7ポイントというのは、13.7%から6.7%まで落とす話なので、レストランの2倍程度に近づく計算になります。そこまで行くには、料理の組み立てそのものを変えないと届かないはずです。

一律に絞るやり方の損益分岐

一番手っ取り早いのは、全皿の量を3%ほど減らすことです。食材原価は3%下がり、年194万円が浮きます。

ただし、この削減には副作用があります。ゲストが「足りなかった」と感じたときの損です。披露宴の料理は、新郎新婦が親族や上司に「ごちそうする」場面なので、足りないという評価は新郎新婦に刺さります。口コミに書かれ、紹介の可能性も減ります。

損益分岐は単純です。年194万円の削減に対して、粗利140万円の組を1.4組失えば消えます。つまり、絞ったことで次の3つのうち、どれかが年1.4組分動いたらアウトです。

  1. 口コミの評価が落ちて、見学から成約に進む人が減る
  2. 紹介で来るはずだった人が来なくなる
  3. 料理の追加オプション(増量や特別メニュー)の注文が減る

年120組の式場で、1.4組は1.2%です。この程度のズレが「料理の量を3%絞った」せいで起きるかどうか、僕は判断できません。起きたかどうかを測る方法もほとんどありません。測れない損は、絞って得られる確かな194万円と比べて、判断を先送りさせます。だから、一律に絞るやり方は、確かな儲けが小さく、損の大きさが測れないという点で、手を出しにくい選択になります。

残る皿は決まっている

ここから先は、一般論ではなく仕組みの話です。披露宴の料理は、残りやすい皿と、ほぼ残らない皿に分かれます。

残りやすい条件を挙げます。

  • 後半に出る、量の多い皿(メインの肉・魚、デザート)。前菜からスープまでで満腹になっていて、メインに手がつかない
  • 高い席次のゲストが並ぶ卓。挨拶や酌に回って、席にいる時間が短い
  • 小さな子どもの席。大人と同じ量のコースは食べきれない
  • 高齢のゲスト。量が多いと残す人が多い、という声は現場でよく出ます(これは僕が聞く範囲の話で、数字の出典はありません)
  • 新郎新婦の席。写真や歓談で、ほとんど食べられない

残らない皿もあります。最初のパンや、前菜のように、席に着いてすぐ出てくる皿です。

この分かれ目を見ずに全皿を3%絞ると、残らない皿まで小さくなります。ゲストが最初に目にする前菜の見栄えだけが削られる、という逆の結果になりかねません。

皿ごとに見ると、直す場所が3つに絞れる

仮の式場で、残る量を皿ごとに分けてみます。これも仮定の配分です。実際の式場では、料理長に1日分の下げ膳を数えてもらえば出ます。

  • メインの皿が、ロス全体の4割
  • デザートとパンが3割
  • 前菜からスープまでが2割
  • ほか(付け合わせ、ドリンク類)が1割

この配分なら、メインとデザートを直すだけで、ロスの7割に手が届きます。

メインの量を2段階にする

メインをロス全体の4割と置くと、年887万円のうち355万円です。ここを2割減らせる(高齢ゲストと子ども席だけ小盛りにする)ことができれば、年71万円浮きます。小盛りの対象は、出席者の2〜3割に絞れます。

小盛りの対象を決めるのは、新郎新婦への事前ヒアリングです。アレルギーの確認と一緒に「小盛りが良さそうな方はいますか」と一言添えるだけで済みます。追加の手間は、1組あたり数分と見ています。

デザートを持ち帰り可能な形にする

デザートとパンが3割なら、266万円です。デザートは、焼き菓子のように持ち帰れる形にすれば、「残す」から「持ち帰る」に変わります。

持ち帰りには注意点があります。環境省など関係省庁は、飲食店の食べ残しの持ち帰りについて、食中毒のリスクを理解した上で自己責任の範囲で行う、という趣旨の呼びかけをしています(2017年の環境省の報道発表を検索で確認しました。細かい表現は原文で確かめてください)。生ものや傷みやすいものは勧められていません。なので、持ち帰り対象は、焼き菓子やパンなど、常温で保てる品に限るのが無難です。

容器代は、仮に1個50円として、年120組 × 出席者60人のうち半数が持ち帰るとして、年約18万円です(120 × 60 × 0.5 × 50円 = 18万円)。さらに、持ち帰り容器を用意しても、実際に持ち帰る人が3割にとどまるなら、年10万円ほどで済みます。デザートを持ち帰り化して、ロスの3割のうち半分でも減らせれば、年133万円の削減に対して容器代は18万円以下です。

最終人数の確定日と欠席の扱い

もう一つ、見落とされやすい場所があります。人数確定のあとに起きる欠席です。

最終人数の確定日が14日前だとして、確定のあとに病気や仕事で来られなくなるゲストが出たとき、その人の料理は仕込み済みで、ほぼそのまま廃棄になります。出席者60人のうち、確定後に欠席が1人出るだけで、1人分9,000円が丸ごとロスです。

年120組で、確定後の欠席が平均0.5人とすると、0.5人 × 9,000円 × 120組 = 54万円です。これも仮の数字ですが、この種のロスは「食べ残し」ではなく「手つかずの廃棄」なので、ロス率13.7%の中に含まれているのか、別に出ているのかを、自社の廃棄記録で分けて見ておくと良いです。

3つの策を足すと、いくらになるか

上の3つを足し合わせます。

  • メインの2段階(小盛り):年71万円
  • デザートの持ち帰り化:年133万円から容器代18万円を引いて115万円
  • 確定後の欠席ぶんの扱い:ここは仕込みの段取りしだいなので、ゼロとして置く

合計は年186万円です。一律3%カットの194万円とほぼ同じ水準で、しかも料理の量を絞っていません。ゲストが席で受け取る量は変わらないので、「足りなかった」の損は、一律カットより小さいはずです。ここは僕の推定で、確かめた数字ではありません。

ただし、この計算にも弱いところがあります。メインの小盛りは、現場の手間が増えます。サービススタッフが「この席は小盛り」を覚えて配膳しなければならず、間違えれば席ごとの満足度が下がります。人手が足りない式場では、小盛りの運用自体が負担になることもあります。

判断の分かれ目

自社でやるかどうかの判断は、次の4つで決まります。

  1. 自社のロス率を測っているか。 測っていなければ、13.7%という2009年の数字は、まったく当てになりません。まずは1か月、全披露宴の下げ膳の重さか皿数を数えます。測ってから、直す場所を選びます
  2. 残るのは、どの皿か。 メインに偏るなら小盛り、デザートに偏るなら持ち帰り。偏りがなければ、全体の量を調整する話に戻ります
  3. 現場がオペレーションを回せるか。 小盛りの席を覚えるのが難しい人数の式場なら、事前に座席表に印をつける段取りが必要です
  4. 粗利に対する削減額の大きさ。 年194万円は、粗利140万円の1.4組分です。この金額で動く価値があるかは、婚礼の粗利が薄いか厚いかで変わります

逆に、次のような式場では、手を出す優先度は下がります。

  • 料理を売りにしていて、料理の量が成約の決め手になっている式場。量を動かすことが、損益より大きなリスクになります
  • すでにロス率を測っていて、宴会並みの10%程度に収まっている式場。残りの伸びしろが小さいからです

まとめ

  • 外食産業の食品ロス率(2009年)は、結婚披露宴が13.7%、宴会が10.7%、食堂・レストランが3.2%。15年以上前の数字なので、自社の実測が先です
  • 仮の式場(年120組、1組60人、料理原価1人9,000円)では、ロス率13.7%は年887万円。宴会並みの10.7%まで下げると、年194万円です
  • 全皿を3%絞ると194万円浮きますが、成約が年1.4組動けば消えます。この損は測れないので、確かな儲けとして数えにくいです
  • ロスは皿ごとに偏ります。メインの小盛り化とデザートの持ち帰り化で、仮の式場では年186万円。量を絞らずに近い額が出ます
  • 持ち帰りは、傷みにくい品に限ります。食中毒の注意は、環境省などの呼びかけにもあります
  • 先にやるのは、1か月分の下げ膳を数えて、自社のロス率と残る皿を知ることです