集客

公式サイトに料金を載せると、フェア予約が25%減っても成約数は変わらない場合がある。載せる前に確かめる4つの条件

公式サイトに料金を載せると、ブライダルフェアの予約は減ります。多くの式場が料金を載せないのは、この「減る」が目に見えるからです。予約フォームの件数は毎月数えられますが、載せなかったせいで起きている無駄は、数字のどこにも出てきません。

ただ、判断の物差しは予約の件数ではないはずです。見るべきは、予約が減った分を、来館者の成約率の上昇がどれだけ取り戻すか。仮の式場で計算してみると、予約が25%減っても、来館した人の成約率が25%から33%に上がれば、成約数は変わりません。この記事では、その損益分岐の出し方と、載せる前に確かめておきたい条件を整理します。

なお、この記事の数字は、特に断りのないかぎりすべて僕が置いた仮の前提です。実在の式場のデータではありません。自分の会場の数字に入れ替えて使ってください。

料金を載せると、何が動くのか

公式サイトの料金表示が動かすものは、大きく2つあります。

1つ目は、フェアに予約する人の数です。料金を見て「うちの予算では無理だ」と感じた人は、予約をやめます。逆に、料金が分からないまま予約していた人の一部は、見学に行ってから金額を知って離れていました。載せた場合、この離脱がサイトの上で起きるか、会場の中で起きるかが変わるだけです。

2つ目は、来館した人の質です。予算が合う人だけが残るので、来館者あたりの成約率は上がる方向に動きます。同時に、来館1組あたりにかかる接客の時間も、成約しない組が減る分だけ軽くなります。

つまり料金の公開は、入口の人数を減らして、中の確率を上げる施策です。入口が減る幅と、確率が上がる幅の掛け算で決まります。どちらか片方だけを見て「予約が減るから載せない」「成約率が上がるから載せる」と言うのは、半分しか見ていません。

仮の式場で、損益分岐を計算する

前提を置きます。

  • 公式サイト経由のフェア予約が月40組
  • 予約した人のうち、実際に来館するのが85%
  • 来館者の成約率が25%
  • 料金を載せると予約が25%減って、月30組になる

載せない場合の成約数は、40組×85%×25%で月8.5組です。載せて予約が30組になったとき、成約数を8.5組のまま保つには、30組×85%×成約率=8.5組から、成約率が33.3%になる必要があります。25%から33.3%への上昇は、1.33倍です。

一般化すると、予約が減る割合をxとしたとき、成約率が1÷(1−x)倍になれば成約数は同じです。

  • 予約が10%減る:成約率が1.11倍(25%なら27.8%)
  • 予約が20%減る:1.25倍(25%なら31.3%)
  • 予約が25%減る:1.33倍(25%なら33.3%)
  • 予約が30%減る:1.43倍(25%なら35.7%)
  • 予約が40%減る:1.67倍(25%なら41.7%)
  • 予約が50%減る:2.0倍(25%なら50%)

予約が半分になったら、成約率は倍にならないと追いつけません。ここまで減る式場は、載せるべきではないか、載せ方を変えるべきです。逆に10%程度の減少なら、成約率が1.1倍になれば足ります。25%の会場なら、27.8%です。

接客の負担も数字に入れる

成約数が同じでも、来館が減れば、接客にかかる時間が空きます。

仮に、来館1組の接客に、見学と打合せ込みで延べ2.5時間かかり、その人件費と準備のコストが1組あたり1.5万円だとします。載せない場合の来館は月34組(40組×85%)、載せた場合は25.5組(30組×85%)。差は8.5組で、コストの差は月12.75万円です。

この12.75万円は、成約数が同じなら、そのまま利益として残ります。もう1つ、空いた枠に別の見込み客を入れられるなら、さらに上乗せがあります。ただしこの計算は、枠が埋まっている会場にしか当てはまりません。枠が余っている会場では、減った予約は空席になるだけで、節約できる接客コストも見かけほど大きくありません。このあたりは、フェアの枠が埋まらないと1成約あたりの費用が上がる、という固定費の構造とつながっています。

載せる前に確かめる4つの条件

計算の式は単純ですが、成約率が本当に上がるかどうかは、会場ごとに違います。載せる前に、次の4つを見てください。

条件1:価格帯が、競合と比べてどの位置にあるか

周辺の競合より安い、または同程度なら、料金を載せても予約の減りは小さく、「安心して予約できる」という方向に働くことがあります。反対に、周辺の相場を明らかに上回る価格帯の会場は、料金を見た時点で予約が大きく減ります。

その場合でも、載せないほうが得とは限りません。高い価格帯で成約している会場は、見学で価値を伝えて金額の見え方を変える接客を持っているはずです。それを手放すことになるかどうかが、判断の分かれ目です。

条件2:載せる金額が、最終的な支払いと近いか

載せる料金と、最終的に払う総額がずれていると、載せたことが逆効果になります。All Aboutの記事では、ブライダルフェアなどで出されるモデル見積もりは、最低〜中ランクの品目が中心で金額が低めに出やすく、実際の予算はモデル見積もりより50万〜100万円多めに見ておくのがよい、と説明されています。

ゼクシィ結婚トレンド調査2024では、挙式・披露宴・ウエディングパーティーの総額の平均は343.9万円でした。仮に、サイトに載せるモデル見積もりが280万円で、見学後の見積もりが多くの組で350万円を超えるとします。この場合、載せた金額は、安く見せるための広告として読まれてしまいます。予約してくれた人は、見学の日に70万円の差を知って離れる。入口で絞ったはずの人数が、結局は中で落ちます。

載せるなら、最も売れている構成の実際の支払い額か、幅を持たせた表示にします。低く見せるために載せるなら、載せない場合より成約率は下がる可能性さえあります。

条件3:金額が日取りや人数で大きく変わるか

結婚式の費用は、人数と日取りで変わります。人数が10人違えば、料理と引出物の分だけで数十万円動きます。週末と平日、人気の季節と閑散期でも、会場使用料や割引が違います。

変動が大きい会場ほど、1つの金額を載せるのは難しくなります。この場合は「1つの金額」ではなく、「人数別の例」や「日取り別の例」を2〜3パターン並べるほうが、見学前の期待を正しく合わせられます。

条件4:予約の減少を、成約の増加で見分けられる件数があるか

これがいちばん見落とされます。月に40組の予約と8.5組の成約では、料金を載せた前後の差を、数字から読めません。成約率は、月によって大きくぶれます。仮に載せたあとの成約が月7組だったとしても、それが載せた影響なのか、偶然の揺れなのか区別がつきません。

載せたあとに、成約率の上昇が確認できるまで何か月かかるか。この見積もりを先に出さないと、載せた判断が正しかったのか、半年たっても分からないままになります。

自社の数字で確かめる手順

載せるかどうかを議論する前に、手元の記録から次の3つを出しておくと、話が早くなります。

  1. 直近1年の来館者のうち、見学後に「予算が合わない」を理由に離れた組の数。接客記録やアンケートに理由の欄がなければ、プランナーに聞き取るだけでも粗い数は出ます
  2. その組の予算と、実際に出した見積もりの差。差が50万円を超えていれば、サイトに載せていれば来なかった組、と考えられます
  3. フェア予約を取りたかったのに取れなかった日の数。枠が埋まっている日が多いほど、予約を絞る痛みは小さくなります

1と2から、減らせる来館の数が見えます。仮に年間の来館が400組で、予算が合わずに離れた組が100組なら、そのうち半分の50組が、載せていれば予約しなかった人だとします。この場合、予約の減少は50組÷400組で、12.5%です。先ほどの表で見ると、成約率が1.14倍になれば元が取れる水準です。

逆に、離れた組が40組しかいなければ、減る予約は5%程度のはずですが、成約率の上がり方も小さく、載せる意味は薄くなります。載せる効果は、予算が合わずに離れていた組の多さに比例します。この数字を持たないまま、他社が載せているから、または載せていないからという理由で決めるのは、避けたほうがいいと思います。

小さく試す方法

全面的に載せて戻せなくなる前に、小さく試す方法があります。

1つは、載せる場所を限定することです。トップページには出さず、フェアの予約ページや、プラン詳細のページにだけ載せます。料金を探しに来た人には見えますが、一般の流入には目立ちません。予約の減りは小さくなりますが、効果も小さくなります。

もう1つは、期間を区切ることです。たとえば、平日の予約枠を埋めたいときは載せず、土日の枠が埋まっているときは載せる、のように、枠の埋まり具合で出し分けます。枠が余っているときに予約を絞るのは、損のほうが大きい。逆に枠が埋まっているなら、予約が減っても失う成約は少ないはずです。

試すときは、見る数字を先に決めておきます。予約数、来館率、来館者あたりの成約率、来館1組あたりの接客時間の4つです。予約数だけを見ていると「減った」としか読めません。

載せないほうがいい会場

ここまでの話をまとめると、載せないほうがいい会場も、はっきりあります。

  • 予約の枠に余りがあり、予約を絞るより増やしたい会場
  • 載せる金額と、見学後の見積もりの差が大きい会場。載せても信頼を失うだけです
  • 価値を伝える接客に強みがあり、見学の場で金額の見え方を変えられる会場

反対に、載せたほうがいい会場は次のような特徴を持ちます。

  • 枠が埋まっていて、予約を絞っても失う成約が少ない会場
  • 見学後に「予算が合わない」という理由で離れる組が多い会場
  • 最終的な支払い額と、載せる金額が近い会場

どちらに近いかは、自社の見学後の離脱理由を数えれば分かります。料金で離れた組が来館者の2割を超えているなら、載せる検討に値します。この2割は目安の仮置きで、確かめた基準ではありません。自社で来館者の離脱理由を数えるところから始めてください。

まとめ

載せるかどうかの結論は、予約の減る幅と、成約率の上がる幅の掛け算で決まります。要点は次のとおりです。

  • 予約がx%減るとき、成約率が1÷(1−x)倍になれば成約数は同じ。25%減なら1.33倍、50%減なら2倍
  • 仮の式場(月40組予約、成約率25%)では、予約25%減でも成約率が33.3%に上がれば成約数は月8.5組のまま。接客コストは月12.75万円下がる
  • 載せる金額が見学後の見積もりと離れていると、入口で絞れず、中で落ちるだけになる
  • 月数組の成約では、載せた効果は数か月たっても読めない。見る数字と期間を先に決める
  • 枠に余りがある会場は載せず、枠が埋まっていて、離脱理由に料金が多い会場は載せる検討に値する