公式サイトのチャット窓口は、夜の問い合わせを予約まで進められるかで決める
公式サイトの右下に、チャットの窓口を置くかどうか。最近は、AIが答えるタイプも含めて、提案を受ける式場が増えていると思います。導入費は月に数万円という話が多く、悩ましいところです。
僕は、この判断を「機能が優れているか」で決めないほうがいいと考えています。決めるのは、夜に来る問い合わせの件数と、その二人を予約まで進められるかどうかです。
結論から書きます。夜の問い合わせが月に何件あるかを数えて、その二人に即時で返せる中身が、予約リンクと営業時間と見学の流れまでなら、置く価値があります。料金や空き日程まで答えさせるなら、置かないほうが安全です。
この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。調査の数字は使っていません。月の問い合わせ数も、夜の割合も、予約になる率も、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
見るのは機能ではなく、夜の問い合わせの数
チャットの提案資料には、たいてい「24時間対応」「応答率」「会話の自然さ」が並びます。どれも間違いではありませんが、式場の判断材料としては遠いところにあります。
式場が知りたいのは、置いたことで、予約が何件増えるかです。そこで効いてくるのは、チャットの賢さより、チャットがなかったとき、その二人がどうなっていたかです。
結婚式場を探している二人は、仕事が終わったあと、夜に調べる人が多いはずです。ここは僕の推測で、調査の裏づけはありません。ただ、自分の会場の問い合わせフォームやLINEの受信時刻なら、いますぐ集計できます。直近3か月分を、時間帯ごとに数えてみてください。営業時間外に届いた件数が、夜の問い合わせです。
この数が少なければ、チャットを置く理由はほぼありません。夜の問い合わせが月に数件なら、翌朝の返信を早くするほうが安く済みます。逆に、全体の2〜3割が営業時間外に届いているなら、検討する価値が出てきます。
翌朝に返す場合と、その場で案内する場合の差
夜に問い合わせた二人が、予約まで進む確率を、2つの場合で比べます。
1つ目は、翌朝に担当者が返信する場合です。二人は、夜のうちに他の式場にも問い合わせています。朝に返事が来た時点では、先に返事をくれた式場のほうが、気持ちの上で一歩先にいます。
2つ目は、夜の問い合わせの時点で、チャットがその場で案内を返す場合です。見学の予約リンクと、空いている枠の見方と、当日の流れを、その場で出せます。二人は、気持ちが動いているうちに予約まで進めます。
次に、仮の数字を置いて計算します。
- 月の問い合わせは200件
- そのうち営業時間外は3割で、60件
- 翌朝の返信から見学予約になるのは15%で、9件
- チャットが即時に案内したときに予約になるのは25%で、15件
- 見学した二人のうち成約するのは35%
- 成約1組あたりの粗利は80万円
この仮定だと、予約の差は月に6件です。6件に成約率の35%をかけると、成約が月に2.1組増えます。粗利に直すと、月に168万円です。
チャットの月額を3万円と置くと、1組の粗利で元が取れる計算になります。3万円を粗利80万円と成約率35%で割ると、見学予約が月に0.3件増えれば足ります。仮定を相当厳しく見ても、元は取れそうに見えます。
ただし、この計算を信じすぎないでください。効いているのは、夜の割合と、予約になる率の差、この2つの仮定だけです。
夜の割合が1割なら、差は月に2件で、成約は0.7組、粗利は56万円に下がります。夜の割合が2割なら112万円です。そして、予約になる率の差が、僕が置いた10ポイントではなく、ほぼゼロだったら、粗利はゼロになります。チャットで即時に返しても、二人が翌朝の担当者の返事を待っているだけなら、差は出ません。
この差を確かめる方法は、置く前にはありません。置いてから、夜の問い合わせの予約率が、置く前の3か月と比べてどう動いたかを見るしかありません。月額を払って始める以上、3か月後に見直す日を先に決めておくのが現実的です。
即時で答えさせる範囲を先に決める
置くと決めたら、次に決めるのは、チャットに何を答えさせるかです。ここを決めずに始めると、いちばん困ったことになります。
答えさせてよいのは、会場が自分で責任を持てる範囲です。
- 見学予約のリンクと、予約の手順
- 営業時間、定休日、アクセス、駐車場
- 見学の所要時間と、当日の流れ
- 試食のあるフェアかどうか
- 持ち物と、服装の目安
逆に、答えさせないほうがいいのは、金額と空き日程です。
料金は、人数と日取りと内容で変わります。チャットが「100万円台からです」と答えたとして、二人が見積もりでそれより高い数字を見たら、最初の印象が損なわれます。「安い」と受け取って来館した二人が、見積もりの前で気持ちを下げることになります。
空き日程も同じです。チャットが「その日は空いています」と答えて、実際には仮押さえが入っていたら、二人は期待を持ったまま来館して、がっかりします。
この2つは、「担当者が確認して、翌営業日までにご連絡します」と返して、連絡先を残してもらう形にします。つまり、チャットの仕事は、答えることではなく、予約リンクに運ぶことと、聞けなかったことを持ち帰ることです。
AIが答えるタイプを選ぶ場合は、とくに注意が必要です。自由に文章を作るタイプは、聞かれたことに何かしら答えようとします。式場が許可していない範囲を答えてしまう危険があります。答える範囲を、式場が用意した文章に限る設定ができるか、導入前に確かめてください。
即時の返しは、短く、行き先を1つにする
夜の二人に返す文面の作り方も、先に決めておきます。長い案内を返しても、スマホで夜に読む二人は、最後まで読みません。
返すのは、受け取ったという一言と、行き先1つです。たとえば、次の形です。
「お問い合わせありがとうございます。見学の空き状況は、こちらから確認できます。ご質問は、そのままこの画面に書いてください。担当者が、明日の10時までにお返事します」
ポイントは3つあります。行き先が予約リンクの1本だけであること。質問は続けて書いてよいと伝えていること。担当者が返す時刻を、具体的に約束していること。
「近日中にご連絡します」だと、二人は、いつ返事が来るのか分かりません。時刻を書いておけば、待つ側の不安が小さくなります。この約束は、必ず守れる時刻で書いてください。守れない時刻を書くと、チャットを置かないときより印象が悪くなります。
持ち帰った質問は、公式サイトを直す材料になる
チャットには、もう一つ使い道があります。二人が書いてくれた質問が、そのまま、公式サイトに足りない情報の一覧になることです。
チャットで担当者に回った質問を、月に1回、種類ごとに数えます。「駐車場は何台か」「子連れでも見学できるか」「予約なしで行ってもいいか」のような質問が、何度も出てくるなら、公式サイトのどこかに書かれていないか、見つけにくいということです。
その質問をサイトの目立つところに書けば、二人は質問せずに、予約に進めるようになります。そうなると、チャットに来る質問は減りますが、それは失敗ではありません。サイトだけで予約まで進める二人が増えたということです。
この見直しを回す人がいれば、チャットは窓口であると同時に、サイトの改善点を教えてくれる道具になります。
チャットを置いてはいけない会場の条件
ここまでの話を逆にすると、置かないほうがいい会場の条件が見えてきます。
夜の問い合わせが少ない会場。 先ほどの集計で、営業時間外が1割を切るなら、翌朝の返信を早めるほうが先です。
予約ページがスマホで使いにくい会場。 チャットが予約リンクに運んでも、先のページで二人が迷えば、予約にならないからです。この場合、チャットより先に、予約ページを直します。
夜の問い合わせの返信が、いまも3日後になっている会場。 チャットで夜の問い合わせは受けられても、翌日以降の対応が遅ければ、結局そこで二人が離れます。入口だけ速くして、出口が遅いままだと、費用だけがかかります。
運用する人がいない会場。 チャットは、置いて終わりではありません。答えられなかった質問を週に1回見て、答えを足していく作業があります。この作業を担当する人が決まらないまま始めると、数か月で答えの古い窓口になります。
始めるときの順番
条件が合って、置くと決めた場合の順番です。
1. 時間帯別の集計を出す。 直近3か月の問い合わせを、受信時刻で数えます。営業時間外の件数と割合を、導入前の基準として残します。
2. 答えてよい範囲を文章にして決める。 上で書いた、答えてよいものと、持ち帰るものを、一覧にします。担当者と、経営者の両方で確認します。
3. 予約ページを先に直す。 スマホで、チャットのリンクから予約が完了するまで、実際に操作してみます。迷った箇所があれば、そこが先です。
4. 3か月は変えずに動かす。 途中で設定をいじると、効果が読めなくなります。始めてから3か月間は、答える範囲を広げすぎず、数字を見るだけにします。
5. 3か月後に、基準と比べる。 夜の問い合わせの予約率が、導入前の3か月と比べて動いたかを見ます。仮の計算で置いた「10ポイントの差」が出ていなければ、続けるか、やめるかを、そこで決めます。
まとめ
- チャット窓口は、機能の良さではなく、夜の問い合わせの件数と、そこから予約まで進められるかで判断する
- 営業時間外の問い合わせが全体の2〜3割あるなら検討する価値があり、1割を切るなら翌朝の返信を早めるほうが先
- 仮の計算では、夜の割合と予約率の差の2つが効く。差がほぼゼロなら、置いても粗利は増えない
- 答えさせるのは予約リンク、営業時間、アクセス、見学の流れまで。料金と空き日程は担当者が確認して返す
- 予約ページがスマホで使いにくい、返信が遅い、運用する人がいない会場は、先にそこを直す
- 始めたら3か月は設定を変えず、導入前の3か月と夜の予約率を比べて続けるかを決める
入口を速くするだけでは、予約は増えません。出口まで速い会場で、はじめてチャットは効きます。
