式場の留守番電話は、折り返しの時刻と別の入口を30秒で言う
式場に電話をかけた二人が、留守番電話の音声を聞いたとき、最初の数秒で何を考えているか。僕は「ここは、いま繋がらない式場なんだな」と判断して、次の式場の番号を探し始めていると見ています。留守電の案内文は、その数秒のあいだに、二人の手を止められるかどうかの勝負です。
結論を先に書きます。式場の留守番電話の案内文は、次の3つを30秒以内に言い切る形にしてください。
- いつ折り返すか(時刻を言う。「折り返します」だけにしない)
- 電話以外の入口(見学予約のページ、LINE、問い合わせフォームのどれを使えばいいか)
- 用件を残すときに何を言えばいいか(名前・電話番号・知りたいことを1つ)
この記事は、調査の数字ではなく、電話という窓口の構造から組み立てています。「どこの式場でもこうなっている」とは言いません。「仕組みとして、こうなりうる」という範囲で書き、損失の大きさは前提を置いたモデル計算で示します。
留守電に切り替わった時点で、二人は選択を迫られている
見学や空き日程を電話で確かめようとする二人は、すでに式場を何軒か見比べている段階にいることが多いはずです。電話を選んだ理由はいくつか考えられます。フォームに書くには細かすぎる質問がある、返事をその場で聞きたい、日程が迫っている、などです。
つまり電話をかけてきた二人は、「いま答えがほしい」人です。そこで留守電に切り替わると、二人の前に選択肢が3つ出ます。
- 用件を吹き込んで、折り返しを待つ
- 後でもう一度かけ直す
- 切って、別の式場に連絡する
この3つのうち、式場にとって望ましいのは1と2です。ところが、案内文が「ただいま電話に出ることができません。ピーッという発信音のあとに」だけだと、1を選ぶ理由がありません。いつ返事が来るのか分からない。名前を残して放っておかれたら困る。その不安が、3を選ばせます。
これは二人が冷たいからではありません。比べる式場がほかにもある以上、「いつ返事が来るか分からない窓口」より「いま繋がる窓口」を選ぶのは、自然な行動です。
案内文に入れる3つ
1つ目:折り返しの時刻を言う
「折り返します」と「本日17時までに折り返します」では、二人の待ち方がまったく変わります。時刻が分かれば、二人は予定を組めます。分からないと、スマホを気にし続けるか、待つのをやめるかのどちらかです。
時刻の決め方で注意したいのは、守れる時刻だけを言うことです。見学の対応で電話に出られない時間帯は、だいたい決まっています。接客が続く土日の午後、フェアの開催中、打ち合わせの合間などです。その時間帯に電話が鳴ったとき、誰がいつ折り返せるかを、先に決めておきます。
たとえば、こういう形です。
- 平日の日中にかかった電話:「本日中に折り返します」
- 土日の接客中にかかった電話:「本日の営業終了後か、翌営業日の午前中に折り返します」
- 定休日や夜間:「次の営業日の午前中に折り返します」
曜日や時間帯で案内文を切り替えられない設備の場合は、いちばん遅い側の時刻に合わせて言います。早く折り返せたら、言った時刻より前に連絡できて得をする。その形のほうが、言った時刻に間に合わないより、はるかに安全です。
折り返しの時間帯を二人に選んでもらう方法は、別の記事(折り返し電話の時間帯の選び方)で書いています。ここで言いたいのは、選んでもらう前の段階、つまり留守電の時点で「いつ連絡が来るか」の見通しだけは渡しておく、ということです。
2つ目:電話以外の入口を1つか2つ言う
留守電に切り替わった二人は、「待つ」以外に「自分で動く」という選択肢を持てると、式場から離れにくくなります。
入口は、聞いた用件によって使い分けます。
- 見学を申し込みたい二人 → 見学予約のページ
- 空き日程や費用の概要を知りたい二人 → 公式サイトの該当ページか、LINE
- 細かい相談がある二人 → 問い合わせフォームか、LINE
ここで気をつけたいのは、入口を増やしすぎないことです。音声は、文字と違って読み返せません。「公式サイト、LINE、Instagram、フォーム、メール」と5つ並べても、覚えている人はほとんどいません。音声で伝えられるのは、せいぜい2つです。
おすすめは、「見学のご予約は、公式サイトの見学予約ページから24時間受け付けています。ご質問はLINEでも受け付けています」のような言い方です。URLや長いアドレスを読み上げる必要はありません。「式場名 見学予約」で検索すれば出てくる状態にしておけば、足ります。
そのためには、検索したときに予約ページが上位に出る必要があります。自社名で検索したときの表示は、広告やGoogleマップの項目も含めて、別の記事で書いています。
3つ目:用件の残し方を決める
留守電に吹き込むのは、慣れていない人にとって負担です。何を言えばいいのか分からないまま、「あ、えっと」と言って切る人も多いと思います。
そこで、案内文の最後に、残してほしい内容を最小限にして伝えます。
お名前、お電話番号、それと、知りたいことを一つだけ、お話しください。
この「一つだけ」が効きます。たくさん話さなくていいと分かれば、残す心理的な壁が下がります。式場の側も、折り返しの前に「知りたいことが何か」を把握できるので、折り返しの電話の中身が決まります。折り返しで「ご用件は何でしたか」から始めずに済むので、二人の時間も節約できます。
30秒に収めるための台本
3つを入れて、30秒に収める台本の例を書きます。音声を話す速度は、聞き取りやすいゆっくりめで1秒に5〜6字ほどです。30秒なら150〜180字が目安になります。
お電話ありがとうございます。〇〇ホールです。ただいま接客中のため、電話に出られません。本日の営業終了後、もしくは明日の午前中に、こちらから折り返します。見学のご予約は、公式サイトの見学予約ページから、24時間お受けしています。ご質問はLINEでも承ります。お急ぎでなければ、お名前、お電話番号、知りたいことを一つだけ、発信音のあとにお話しください。
これで約170字です。長い挨拶や理念の紹介は入れません。式場の自己紹介を二人が一番知りたいことの前に置くと、そのぶん二人の離脱が増えます。
もう一つ、「お急ぎでなければ」の一言に意味があります。急ぎの二人は、そのあとに吹き込まず、公式サイトの予約ページに進めます。急がない二人は、吹き込んで折り返しを待てます。二人の状況に合わせた道を、この一言で分けられます。
前提つきの計算:留守電の案内文で何組変わるか
ここからは、出典のある統計ではなく、僕が置いた前提による計算です。実際の式場の数字に置き換えて使ってください。
前提は次のとおりです。
- 電話での問い合わせが月に40本ある(仮の数字です)
- そのうち30%が、接客中などで留守電に回る(12本)
- 案内文が簡素なとき、留守電に回った二人のうち、何も残さず切る人が60%いる
- 案内文を直すと、何も残さず切る人が下がる。下がり幅は、10・20・30ポイントの3通りで見る
- 何も残さず切った二人は、そのまま別の式場に流れたとする
- 案内文を直して残ってくれた二人は、来館に進む割合が40%、来館後の成約率が30%とする(これも仮の数字です)
この前提で、月あたり「残ってくれる二人」と、年間の成約の差を計算します。
| 切る人の減り方 | 月に残ってくれる二人 | 月の来館 | 年間の成約 |
|---|---|---|---|
| 10ポイント下がる | 1.2組 | 0.48組 | 約1.7組 |
| 20ポイント下がる | 2.4組 | 0.96組 | 約3.5組 |
| 30ポイント下がる | 3.6組 | 1.44組 | 約5.2組 |
年間で2〜5組という数字は、大きく聞こえないかもしれません。ただ、案内文を録り直すのにかかる費用は、スマホで自分で録るなら0円です。婚礼1組の売上は数百万円の規模なので、1組でも増えれば、録り直しの作業は十分に回収できます。
逆に言うと、この計算は「案内文を直せば必ず何組増える」という予測ではありません。切る人の割合が元から低い式場や、電話の本数が少ない式場では、効果は小さくなります。大事なのは、自分の式場の数字で当てはめられるように、自分で数えられる材料を先に用意することです。
自分の式場の数字を取る方法
モデルの前提は、どれも自分の式場で数えられます。
- 電話の本数と留守電に回った本数:電話機の着信履歴か、留守電の件数。1か月数えるだけです
- 留守電に残された件数:残された件数を数えて、回った本数との差が「何も残さず切った本数」の目安になります。着信履歴に番号が残る場合は、番号は残っているのに留守電がないものを数えます
- 折り返しの所要時間:留守電を受けてから折り返すまでの時間を、メモで残します。ここが長いと、案内文で時刻を約束しても守れません
案内文を直す前に1か月、直したあとに1か月、同じ数え方で比べると、「切る人の減り方」が自分の数字で見えます。変えたのが案内文だけなら、差の原因をほぼ案内文に絞れます。
注意点として、季節の影響があります。フェアの多い月と閑散期では、電話の本数も、留守電に回る割合も変わります。比べるのは、できるだけ同じ時期の月どうしにします。
案内文より先に直したい2つのこと
案内文を整えても、次の2つが崩れていると効果は出ません。
1つ目は、折り返しの担当を決めること。 留守電の確認と折り返しが、誰の仕事か決まっていないと、「誰かがやってくれる」と思い合って、時刻の約束が破られます。担当を1人決め、不在のときの代わりも決めておきます。折り返しの記録(いつ、誰に、何を伝えたか)を残す場所も、1か所に決めます。
2つ目は、留守電のメッセージを、開店時刻より前に確認すること。 夜間や定休日に残されたメッセージは、翌営業日の最初に聞きます。折り返しを「午前中」と約束したなら、午前中の最初に確認しないと間に合いません。
この2つは、案内文を録音する前に決めておきます。案内文は「約束」で、この2つは「約束を守る仕組み」です。仕組みがないまま約束だけを増やすと、約束を破った分だけ、信頼が下がります。
録音するときの小さな注意
最後に、録音で意外と効く細部を書きます。
- 担当者の声で録る:機械の合成音声より、実際にいる人の声のほうが、「人がいる式場だ」という印象になります。ただし、声が小さい、早口、といった状態だと逆効果なので、録音したあとに、別の人に聞いてもらいます
- 数字と時刻は、短く区切る:「午後5時まで」のように、聞き間違いにくい言い方にします
- 季節や繁忙期に合わせて録り直す:年末年始や、フェアが連日続く週には、折り返しの時刻が変わります。古い案内文のままだと、約束と実態がずれます
- 録ったあと、自分の携帯から実際にかけて聞く:録音ボタンを押した満足感で、聞き返さずに終わりがちです。かけ直すと、音量や無音の長さの問題に気づけます
まとめ
- 電話をかけた二人は、留守電に切り替わった数秒で「待つ」か「別の式場に連絡する」かを選んでいる
- 案内文には、折り返しの時刻、電話以外の入口(1〜2つ)、用件の残し方の3つを30秒以内で入れる
- 折り返しの時刻は、守れる時刻だけを言う。曜日や時間帯で切り替えられないなら、いちばん遅い側に合わせる
- 入口は音声だと2つまで。URLは読み上げず、検索で出てくる状態にしておく
- 計算は前提つきのモデル。電話40本・留守電30%・切る人が10〜30ポイント減る・来館40%・成約30%で、年間およそ1.7〜5.2組。自分の式場の数字に置き換えて使う
- 案内文より先に、折り返しの担当と、開店前の確認を決めておく
- 案内文を直す前後で、同じ時期の1か月ずつを同じ数え方で比べる
