式場サイトの会場タイプは二人の検索語に合わせて名乗る
式場の公式サイトを開くと、トップの一番上に「大人の隠れ家」「特別な1日を、心を込めて」といった言葉が並んでいます。きれいな言葉です。ただ、その会場が「ホテルなのか、ゲストハウスなのか、専門式場なのか、レストランなのか」は、ページを読み進めないと分からないことがあります。
式場を探している二人は、会場のタイプをかなりはっきり意識して探しています。「ゲストハウスで貸切がいい」「ホテルなら泊まれるから遠方の親族が楽」「レストランウェディングで少人数」。検索の言葉も、ポータルサイトの絞り込み条件も、このタイプの言葉で組まれています。
この記事で扱うのは、公式サイトで会場タイプをどう名乗るか、という小さな問題です。数字の調査から組み立てた話ではありません。二人の探し方と、サイトの作りの構造から整理しました。なので「業界全体でこうなっている」とは言いません。「仕組みとして、こうなりやすい」という範囲で書きます。
二人は「会場タイプ」で探し、式場は「うちらしさ」で名乗る
まず、ずれがどこで生まれるかを見ます。
二人が式場を探すとき、最初の入口は大きく分けて3つあります。ポータルサイトの絞り込み、検索窓への入力、そしてSNSで流れてきた写真です。このうち前の2つは、会場タイプの言葉をそのまま使います。ポータルサイトには「会場タイプ」という絞り込み項目があって、そこに並んでいる名前を選ぶだけです。検索窓には「地名 + ゲストハウス ウェディング」「地名 + ホテル 結婚式」のように打ち込みます。
一方、式場の側は、自分たちを説明するときに別の言葉を選びます。理由は自然なものです。
- 運営会社の沿革で「ホテルとして開業し、宴会場を婚礼用に改装した」と書いてある
- ブランドの考え方として「ゲストハウスとは名乗らず、邸宅型と呼んでいる」
- 館内にレストランが入っているので「レストランウェディング」と書きたいが、実態は貸切のチャペルつき
- 昔の呼び名「結婚式場」「会館」が、そのまま残っている
どれも間違いではありません。ただ、二人の言葉と式場の言葉が違うと、二つのことが起きます。
一つは、検索で見つかりにくくなることです。検索エンジンは、ページに書いてある言葉と、検索された言葉の重なりを見ます。サイトのどこにも「ゲストハウス」と書いていない会場は、「ゲストハウス ウェディング」と検索した二人には、候補に出にくくなります。もう一つは、見つかったとしても「この会場は、自分が探しているタイプなのか」が分からず、そのまま閉じられることです。
会場タイプの言葉は、二人の中で意味が少しずつ違う
名乗りを揃える前に、知っておくべきことがあります。会場タイプの言葉は、二人の頭の中で同じ意味とは限りません。
たとえば「ゲストハウス」。式場側は「一棟貸切の邸宅型」を思い浮かべるかもしれません。でも、二人にとっては「ホテルより自由で、専門式場より新しい、おしゃれな会場」くらいの広い意味で使っている可能性があります。反対に、「ホテル」と書かれていると、「格式が高い」「値段も高そう」と受け取る人もいれば、「宿泊できて楽」と受け取る人もいます。
「専門式場」は、さらに難しい言葉です。式場の側は自分を「専門式場」と呼ばないことが多く、二人の検索の言葉としても、タイプ名というより「結婚式場」という大きな言葉の中に溶けています。
つまり、会場タイプの名前を看板に掲げるだけでは、足りません。名前を出した上で、その名前が何を意味するのかを、1〜2行で言い直す必要があります。
- 「ゲストハウス」と名乗るなら、「1日1組の貸切」なのか「同じ建物内で複数組が同時進行」なのか
- 「ホテル」と名乗るなら、「宿泊できる客室数」と「婚礼専用の宴会場の有無」
- 「レストラン」と名乗るなら、「挙式は誰が執り行い、最大で何名まで入れるか」
こうした言い直しが近くに書いてあれば、二人は自分の頭の中の意味と照らし合わせて、「自分たちが探しているものと合う」「合わない」を、その場で判断できます。合わないと分かって離れる二人は、見学に来ても成約しない二人です。早い段階で離れてもらうことは、来館後の取りこぼしを減らすことにもつながります。
名乗りを決める3つの問い
公式サイトでの名乗りを、次の3つの問いで決めます。
問い1:二人は、この会場をどのタイプの言葉で探しているか
これは、想像ではなく確かめます。確かめ方は3つあります。
- 自社の予約フォームの自由記入欄や、問い合わせの文面で、二人が使っている言葉を拾う。「ゲストハウスで探していて」「ホテルより小さいところがいい」といった言い回しです
- 見学の最初に「どんなタイプの会場をお探しでしたか」と聞いて、返ってきた言葉を数週間分メモする
- 主要なポータルサイトで、自社が登録されている会場タイプの分類を確認する。ポータルが自社を「ゲストハウス」に分類しているなら、二人がポータル経由で来たときの期待は、その言葉になっている
3つ目は見落とされやすい点です。自社の公式サイトでは「邸宅ウェディング」と名乗っているのに、ポータルサイトでは「ゲストハウス」の枠に入っている、ということがあります。二人はポータルで見たイメージのまま公式サイトに来ます。そこで言葉が変わっていると、同じ会場だと気づきにくくなります。
問い2:その言葉を名乗って、実態との食い違いは起きないか
名乗りを二人の検索語に合わせることと、実態以上に見せることは別です。たとえば、館内にチャペルとレストランがあるだけの会場が「ゲストハウス」と名乗ると、貸切を期待した二人が来館してがっかりします。
食い違いが起きる典型は、次のような場面です。
- 「貸切」と書いてあるが、実際は昼と夜で入れ替え制で、前後の組と動線が交わる
- 「宿泊できる」と書いてあるが、新郎新婦の1室だけで、ゲストの宿泊は提携先の別のホテル
- 「少人数向け」と書いてあるが、最小人数の設定が、二人の想定より多い
この種の食い違いは、見学で発覚し、そこで二人の信頼を失います。名乗る言葉を選ぶ基準は、「二人の期待に実態が応えられるか」です。応えられない言葉は、検索語として強くても、名乗らないほうがよいと僕は考えています。
問い3:名乗りたい言葉は、サイトのどこに置くか
置き場所は、次の4か所が基本です。
- ページのタイトル(検索結果に表示される見出し)
- トップページの最初の1画面の説明文
- 会場紹介のページの見出し
- 検索結果の下に出る説明文(ディスクリプション)
ここに、会場タイプの言葉を1つずつ入れます。同じ言葉を詰め込む必要はありません。タイトルに「ゲストハウス」、最初の1画面に「1日1組の貸切」のように、役割を分けて置きます。
迷ったときの決め方:タイプを2つ名乗るか、1つに絞るか
実態として、複数のタイプにまたがる会場があります。ホテルの敷地内にあるが貸切の邸宅、レストランだがチャペルもある、など。このとき、2つのタイプを並べて書くか、1つに絞るかで迷います。
僕の考えは、次の順で決めるのがよい、というものです。
- 二人が最初に探す言葉のうち、実態がいちばん近いものを1つ、タイトルと最初の1画面に置く
- 2つ目のタイプは、会場紹介のページや見出しの下で「〜でもあります」と補足する
2つを並べて看板に出すと、どちらを探している二人にも「微妙に違う」と見えやすくなります。1つに絞って、もう1つは補足で触れる。このほうが、検索で見つけた二人に「探していたタイプだ」と思ってもらいやすいです。
仮に、一つの会場で次のような状況があるとします。以下は説明のための想定で、実在の会場や統計ではありません。
- 敷地内に宿泊棟があり、ゲストが泊まれる
- 婚礼専用の宴会場は、同じ建物内で2組まで同時に使える
- 挙式のチャペルは専用で、挙式の時間帯は他の組と重ならない
この会場を「ホテルウェディング」と名乗るか、「ゲストハウス」と名乗るか。貸切を期待する二人に「ゲストハウス」と名乗ると、「2組同時」という実態とぶつかります。「ホテルウェディング」と名乗り、「ゲストの宿泊が同じ敷地で完結する」ことを強みに書くほうが、期待と実態が合います。そのうえで、「挙式のチャペルは専用で、挙式中に他の組と会うことはありません」と補足すれば、ゲストハウスを探していた二人にも、気になる点を先に答えられます。
点検の手順:月1回、二人の目で自社サイトを見る
名乗りは、一度決めて終わりではありません。ポータルサイトの分類が変わったり、館内の改装で実態が変わったりします。月に1回、次の手順で点検します。所要時間は30分ほどです。
- 検索窓に「地名 + 会場タイプの言葉」を3パターン打ち込み、自社のサイトが表示されるかを見る。表示されない言葉は、サイトのどこにも書いていない言葉かもしれません
- 自社の公式サイトのトップを、スマートフォンで開く。最初の1画面だけで、会場タイプが分かるかを見る。分からなければ、タイトルか説明文に言葉を足す
- ポータルサイトの自社ページを開き、会場タイプの分類と、公式サイトの名乗りが合っているかを見る
- 直近の見学で、二人が使った会場タイプの言葉をメモしたものと照らす。メモの中に、サイトに書いていない言葉が繰り返し出ていたら、足す候補にする
点検の結果は、記録に残します。何を足したか、足したあと問い合わせの文面や見学の最初の会話で二人の言葉が変わったか。数字で測る場合は、公式サイトからの見学予約の組数を、変更の前後で数週間ずつ比べます。ただし、月ごとの揺れや季節の影響があるので、1回の前後比較で効果を断定はしません。
やってはいけない足し方
会場タイプの言葉を足すとき、避けたい足し方があります。
- キーワードを羅列する。「ゲストハウス ホテル 専門式場 レストラン ウェディング」と、タイトルに全部並べる。読み手に意味が伝わらず、検索エンジンにも不自然に見えます
- 実態にないタイプを名乗る。検索されやすいから、という理由で名乗ると、見学で食い違いが露見します
- 他の式場を名指しして違いを語る。「ホテルとは違う」「ゲストハウスよりも」といった比較は、他社との比較にあたるので書きません。自社が何であるかを、自社の言葉で書きます
まとめ
- 二人は、ポータルの絞り込みや検索で、会場タイプの言葉を使って探している。式場が自分を呼ぶ言葉と、ずれていることがある
- 会場タイプの言葉は、二人の頭の中で意味が少しずつ違う。名乗るだけでなく、「貸切か」「宿泊できるか」といった中身を1〜2行で言い直す
- 名乗りは、3つの問いで決める。二人がどの言葉で探しているか、実態との食い違いはないか、サイトのどこに置くか
- 複数のタイプにまたがる会場は、実態がいちばん近い言葉を1つ看板に置き、もう1つは補足にする
- 月に1回、検索・スマートフォン・ポータルの分類・見学での二人の言葉の4つで点検する
- 検索されやすい言葉でも、実態に合わなければ名乗らない。期待とのずれは、見学で信頼を失う形で返ってくる
