式場のプレスリリースは、地元メディアが拾える形に直してから出す
式場のプレスリリースと聞いて、思い浮かべるのはどんな文面でしょうか。「新チャペル誕生」「春の限定プラン開始」「ブライダルフェア開催のお知らせ」。多くの式場が、こういう新郎新婦に向けた宣伝文をそのままリリースの形にして、地元のメディアに送っています。そして、載らないまま終わる話をよく聞きます。
僕の考えは、プレスリリースは「二人に向けた宣伝」ではなく「記者が記事にできる材料」として書き直したほうがいい、というものです。載らないのは式場が無名だからではなく、読む側の記者が、そのままでは記事にできないからです。この記事では、何をどう直すか、直しても載らないときに何を見るか、載ったあとに成約へどう戻すかを、判断の条件として整理します。
なお、この記事に数字は出てきません。メディアごとの掲載率のような調査データを、僕は持っていないからです。仕組みとして言える範囲だけで書きます。
記者は「宣伝」を載せられない
地元の新聞、情報誌、ウェブの地域ニュース、フリーペーパー、ケーブルテレビ。こうした媒体の記者や編集者が、日々受け取るリリースの山から拾うのは、読者にとって「ニュース」になるものです。
ニュースとは、ざっくり言えば「読者の暮らしに関係があり、新しく、事実として確かめられること」です。ここで、よくある式場のリリースを当てはめてみます。
- 「新チャペル誕生」:新しいのは確かです。ただ、読者の暮らしとの関係は、結婚式を考えている人にしか通じません
- 「春の限定プラン開始」:式場にとっての販促であって、読者にとっての出来事ではありません
- 「ブライダルフェア開催」:日付と場所の案内であって、記事の中身がありません
記者にとって、これらは「広告枠で出してもらう話」に見えます。広告と記事の境目は、媒体にとっていちばん守りたい線です。宣伝文に見えるリリースは、内容がよくても載せられないのです。
つまり、載らない原因は文章のうまさではなく、リリースの立ち位置にあります。式場が自分の売りたいものを書くと広告になり、地域の読者が知りたいことを書くとニュースになる。この違いが、最初の分かれ目です。
直す点1:主語を「式場」から「地域の誰か」に替える
同じ出来事でも、主語を替えると記事になるかどうかが変わります。
たとえば、式場が老朽化した建物の一部を改装したとします。「当会場は改装を行い、新しいチャペルが完成しました」と書けば宣伝です。一方、「築〇〇年の地元の歴史的建物が、結婚式の会場として生まれ変わる」と書けば、地域の建物の話になります。後者は、結婚式に関心がない読者にも関係があります。
ここで、事実でないことを足してはいけません。建物にどんな由来があるのか、地域で何と呼ばれてきたのか、改装に地元の職人が関わったのか。式場の中の人が当たり前に知っていることが、外の人にはニュースの種になります。ただし、確かめられる事実だけを書きます。
主語を替える作業は、次の問いで進めると楽です。
- この出来事で、結婚式に関心のない近所の人は何を知るか
- 地域の誰(職人、生産者、学校、団体)が関わっているか
- 以前と何が変わったかを、一文で言えるか
三つのどれにも答えられない出来事は、リリースにせず、公式サイトのお知らせとSNSで出すのが適切です。無理にニュースの形にすると、かえって宣伝臭が強くなります。
直す点2:日付と数字を、記者が確かめられる形で置く
記者は、書く前に事実を確かめます。確かめる手間が大きいリリースは、後回しにされます。
確かめやすさは、次のような置き方で変わります。
- いつ、どこで、誰が、何をするのかを、冒頭の数行で言い切る
- 問い合わせ先に、広報の担当者の名前と、電話がつながる時間帯を書く
- 写真は、掲載を前提にした解像度のものを添え、撮影者と使用の可否を書く
- 数字を書くなら、その根拠を同じ段落に置く
特に、数字の扱いは慎重にします。「地域最大級」「口コミ高評価」といった、根拠を示せない言い回しは、記者が必ず外す部分です。外されるだけならまだよいのですが、その一語のせいで全体の信頼が落ちます。確かめられない形容は、最初から書かないほうが安全です。
写真は意外に差が出ます。記者は取材に行く時間がないことが多く、送られた写真だけで記事を組むことがあります。式場の営業用の写真は、新郎新婦の笑顔や装飾が中心で、記事の挿絵としては使いにくい場合があります。建物の外観、改装の前後、作り手の手元といった、事実を見せる写真を一緒に付けると、記事の形が想像しやすくなります。
直す点3:出す時期を、結婚式の都合でなく媒体の都合に合わせる
式場がリリースを出したくなるのは、フェアの前、新プランの開始前、繁忙期の前です。ところが、媒体の側には別の締め切りがあります。
月刊の情報誌なら、掲載号のかなり前に原稿が固まります。週刊のフリーペーパーなら、掲載週の前の週には紙面の枠が決まっています。ウェブの地域ニュースは速いですが、そのぶん、前日や当日のリリースは受け取った側が動けません。
ここで、僕は具体的な日数を書きません。媒体ごとに違うからです。代わりに、判断の方法を書きます。
- 狙う媒体を3つまでに絞る
- それぞれの媒体に、掲載したい号や回の締め切りを電話かメールで聞く
- 聞いた締め切りから逆算して、リリースを出す日を決める
媒体の担当者に締め切りを聞くことは、失礼でも珍しくもありません。むしろ、聞いてくる相手は「記事にする気がある」と受け取られます。この確認の電話が、そのまま最初の接点になります。
直す点4:送る相手を、メディアでなく「人」にする
「報道各社様」宛ての一斉送信は、手間は小さいのですが、読まれにくい形です。受け取る記者は、自分の担当分野と関係があるかを、件名と宛名で判断します。
地域の婚礼や暮らしを担当している記者がいる媒体なら、その人宛てに送ります。分からなければ、媒体のウェブサイトの掲載記事から、署名のある記者を探します。過去に似た話題を書いた人に、似た話題を送る。これだけで、読まれる確率が変わります。
一方で、送る相手を絞ると、一度の送信で反応が返ってくる数は減ります。ここは性格の違いで、一斉送信は広さを、個別送信は深さを取る方法です。式場の規模が小さく、地域に根ざした媒体が狙いなら、個別送信のほうが合います。
載ったあとに、成約へどう戻すか
載ること自体は、ゴールではありません。式場にとっての目的は、記事を見た人が、将来の問い合わせにつながることです。ただ、地元の記事を読む人の多くは、いま結婚式を考えている人ではありません。
そのため、成約への戻し方は、早く問い合わせを取る方向ではなく、後で思い出してもらう方向で設計します。
- 記事の掲載後、公式サイトに「〇〇で紹介されました」の項目を作り、記事へのリンクと掲載日を載せる
- 記事に書かれた事実(建物の由来、地元の関わり)を、見学の説明の冒頭で一言触れられるようにしておく
- 掲載された媒体名を、見学予約の「何で知りましたか」の選択肢に足す
3つ目は、効果を測るための準備でもあります。選択肢に無い媒体は、集計の「その他」に埋もれます。載る前に足しておかないと、後から効果が見えません。ただし、地元の記事を見たことが直接の予約理由になる件数は、大きくない可能性があります。数が少ないことを前提に、続けるかどうかを決めます。
続けるか、やめるかの決め方
リリースづくりには手間がかかります。続けるかどうかは、次の3つで判断できます。
仮に、リリース1本の準備に担当者の半日(4時間)がかかるとします。これは僕が置いた想定で、実績の数字ではありません。この半日で、公式サイトのお知らせ記事なら2本、SNS投稿なら10本前後を作れるかもしれません。それでもリリースに回す理由があるかどうかを、次の問いで見ます。
- 直す点1の問いに、少なくとも1つ答えられる出来事か。答えられないなら、リリースにしない
- 狙う媒体の担当者に、一度は電話で締め切りを聞いたか。聞いていないなら、まず電話から始める
- 半年に1〜2回の出来事に絞っているか。毎月のように出すと、リリースの重みが落ちる
3回出して、1度も掲載されなかった場合は、出来事の選び方に問題があると考えます。文章を磨く前に、ニュースになる出来事かを疑います。
書き上げたリリースを出す前の確認
送る前に、書いた本人以外の1人に読んでもらいます。結婚式に関わっていない人、たとえば経理や施設管理の担当者が向いています。その人が「で、何が新しいの」と聞き返してきたら、冒頭の数行がまだ宣伝のままです。聞き返しが出なくなるまで、冒頭だけを直します。
注意点:リリースの形にしてはいけない話
最後に、載せたくなる話題のうち、リリースにすべきでないものを挙げます。
- 値引きやキャンペーン:広告扱いになります。出すなら有料の広告枠です
- 他の式場や媒体との比較:「地域唯一」「最安」は確かめられず、他社の悪口にも見えます
- 個別の新郎新婦の話:本人の許可があっても、取り扱いが難しくなります。出すなら本人の確認を文書で取り、写真の範囲も合意してからです
特に3つ目は、式場の側が「感動的な話だから」と出したくなる分、事故が起きやすい部分です。新郎新婦の話は、リリースではなく、本人が自分の言葉で話すSNSや口コミに任せるほうが、結果として信頼されます。
まとめ
- 載らないのは文章のうまさではなく、リリースが広告に見える立ち位置にあるから
- 主語を式場から地域の誰かに替え、結婚式に関心のない近所の人にも関係がある形にする
- 日付・担当者・写真は、記者が確かめやすい形で冒頭に置く。根拠のない形容は書かない
- 出す日は、媒体の締め切りを電話で聞いて逆算する。送る相手は「報道各社」でなく人にする
- 載ったあとは、公式サイトへの掲載、見学での一言、予約時の「何で知りましたか」の選択肢の3つで戻す
- ニュースになる出来事が無いときは、リリースにせず、サイトのお知らせとSNSで出す
