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式場サイトのバリアフリー情報は、問い合わせの前に載せておく

高齢の祖父母や、足の悪い親族を披露宴に呼びたい二人は、式場に「車椅子で入れますか」と聞く前に、公式サイトを見て会場を外していることがあります。式場から見ると、問い合わせが来ないので、外されたことに気づけません。

僕は、バリアフリーの情報は「聞かれたら答えるもの」ではなく、「問い合わせの前に載せておくもの」だと考えています。聞かれない質問は、答えがあっても見つけてもらえないからです。

この記事では、何を載せるのか、どう書くのか、載せて効いたかをどう数えるのかを整理します。出典のある調査の数字は使いません。数字はすべて、仕組みを見るための想定です。

聞いてこない二人は、黙って候補から外している

バリアフリーの質問は、言い出しにくい質問です。理由は三つあります。

  1. 「うちの祖父は車椅子で」と書くと、相手に面倒をかけると感じる
  2. 問い合わせたあとに「対応できません」と言われると、気まずい
  3. 他に候補はいくらでもあるので、わざわざ聞かなくても、写真や案内で分からなければ次を見ればいい

つまり、サイトに情報がない式場は、「分からない」という理由で外されます。「対応できない」と判断されるのではなく、「確かめるのが面倒」と判断されるのです。

ここで大事なのは、外した二人は、式場に何の痕跡も残さないということです。アクセス解析で会場ページを見て離れた数は分かりますが、離れた理由は分かりません。バリアフリーが理由だったのか、写真が気に入らなかったのか、判別できません。

だから、問い合わせ件数を見て「バリアフリーの質問は年に数件しか来ない。載せなくていい」と判断すると、判断を誤ります。来た数件は、聞くことをためらわなかった二人だけです。

載せる項目は、親族の動線の順に並べる

載せる項目は、思いつく順ではなく、車椅子や杖を使う親族が当日たどる順に並べると、抜けが出ません。

順番 場所 載せる内容
1 最寄り駅・駐車場 駅からの道のりの段差、送迎の有無、駐車場から入口までの距離と屋根の有無、障害者用の駐車枠
2 入口・ロビー 入口の段差やスロープ、自動ドアか、ロビーの椅子
3 控室・化粧室 控室の床が畳か椅子席か、階段の有無
4 挙式会場 段差、バージンロードの幅、車椅子のまま参列できる場所
5 披露宴会場 入口の段差、テーブル間の通路幅、車椅子のまま着席できるか
6 トイレ 多機能トイレの有無と場所、会場からの距離
7 階をまたぐ移動 エレベーターの有無、人数、車椅子が入る大きさ

ポイントは、「バリアフリー対応です」と一言で書かないことです。「対応」の中身は、読む人によって違います。車椅子で入れるのと、車椅子のまま同じ高さの席に座れるのとは別の話です。段差が何センチ、通路が何センチ、とは書かなくても、「スロープあり」「エレベーターあり(車椅子可)」のように、事実を一語ずつ書くだけで、確かめる手間が減ります。

寸法を載せる場合は、実際に測った値だけにします。測っていない数字は載せません。サイトに載せた寸法が現場と違うと、当日のトラブルになります。

できないことも書く

載せにくいのは、できないことです。段差がある、エレベーターがない、多機能トイレが別棟にある、といった事実は、書くと損をするように見えます。

ただ、書かない場合の損のほうが大きくなりやすいと、僕は考えています。理由は、来館してから分かるほうが、二人にとって損が大きいからです。

仮に、見学の予約を取り、遠方から来てもらったあとで、「祖母は車椅子なのですが」と聞かれ、階段の途中までしか案内できないと分かったとします。二人は、時間と交通費を使っています。そのうえ、ブライダルフェアの試食や特典を見ても、気持ちは別の会場に向いています。式場も、担当者が1組分の時間を使って、成約につながりません。

できないことを先に書けば、できない会場を見学に来る二人は減ります。減るのは、もともと成約しにくかった二人です。そのぶん、できる二人の予約枠が空きます。

書き方は、できないことと、代わりにできることを並べます。

  • 「披露宴会場は2階です。エレベーターは1基で、車椅子1台と付き添い1名が乗れます」
  • 「挙式会場の入口に3段の階段があります。車椅子の方は、裏手のスロープから入れます(係が案内します)」
  • 「多機能トイレは1階ロビー横にあります。披露宴会場からは階をまたぎます」

代わりの手段がない場合は、ないと書きます。曖昧な案内だけを書くと、結局、二人が聞かないといけません。それでは、聞けない二人を拾えません。

置き場所:会場ページと予約ページの二か所

載せる場所は、二か所に絞ります。

会場ページ。 写真と並ぶ位置です。二人は、写真を見ながら、「おじいちゃんは入れるかな」と考えます。写真の近くに、動線の順で短く書きます。

見学・フェアの予約ページ。 予約ボタンの手前です。予約を押す直前の二人は、最後に引っかかっているものを探しています。「車椅子・杖をお使いの方は、予約時にお知らせください。事前に動線をご案内します」という一文と、会場ページの案内へのリンクを置きます。

FAQのページ(よくある質問)だけに載せるのは、おすすめしません。FAQは、迷った二人が自分から開くページです。言い出しにくい質問ほど、開かれにくいからです。

効いたかを数える:モデル計算と、自社での確かめ方

載せて効いたかどうかは、前提を置けば、仕組みを計算で見られます。以下は想定です。

  • 会場ページを見て、見学予約をしなかった二人が月に300組いる
  • そのうち、高齢者や車椅子の親族を招く予定の二人が、仮に5%いる(15組)
  • 情報がないために離れた二人が、そのうち3分の1(5組)
  • 情報を載せたことで、そのうち半分が見学予約に進む(2.5組)
  • 見学から契約までの率が、仮に40%とする

この前提で、月に1組(2.5組×40%)の契約が増える計算です。年にすると12組です。客単価は式場ごとに違うので、ここでは掛けません。

見てほしいのは、数字ではなく、5%と3分の1という前提が、式場の客層で大きく変わることです。親族の年齢が高い地方の式場と、友人中心の少人数の式場では、まったく違います。計算が成り立つかは、自分の式場の数字で確かめる必要があります。

確かめる方法は、三つあります。

  1. 見学の予約フォームか来館時のヒアリングで、「車椅子・杖の方がいますか」を聞く。 件数と割合が分かる。割合が1%を切るなら、載せる優先度は低い
  2. 載せる前と後で、会場ページから予約ページへ進む率を比べる。 季節要因を避けるため、同じ月の前年と比べるか、前後2か月ずつで見る
  3. 載せたあと、「サイトで見て決めた」という声が出たかを、見学後の会話で一言メモしておく。 件数は少なくても、1件あれば仕組みが動いている証拠になる

ただし、2の前後比較には限界があります。会場ページの写真を同時に変えていたり、広告を出していたりすると、効果を切り分けられません。バリアフリー情報を載せる月は、他のページを触らないようにしておくと、読み取りやすくなります。

載せる前に、現場で確かめること

サイトに載せる前に、現場で確認しておくことがあります。書いた内容と実際が違うことが、いちばんの損になるからです。

  • 担当者が、実際に車椅子や杖の動線を歩く。できれば、実際に車椅子を借りて動いてみる
  • 写真を撮るときは、動線の入口から順に撮る。「ここまで来れば入れる」が見える
  • 季節や天候で変わることを確認する(雨の日の屋根、雪の日のスロープ)
  • 当日、誰が案内するかを決める。係が案内する、と書くなら、その担当を決めておく

最後の点は、見落とされがちです。サイトに「係がご案内します」と書いた以上、その日の担当がいないと、約束が破れます。繁忙日は、担当を決めておくか、書き方を「事前にお知らせいただければ、案内の担当を手配します」にします。

載せたあとの更新と、聞かれたときの返し方

載せた情報は、改装や運用の変更で古くなります。スロープを付けた、エレベーターを入れ替えた、駐車場の配置を変えた。こうした変更のたびに、サイトを直す担当を決めておきます。誰も直さないまま半年たつと、載せていない状態より悪くなります。書いてあることを信じて来た二人が、現場で違いに気づくからです。

おすすめは、年に一度、改装の予定がなくても、動線を歩いて確認する日を決めることです。繁忙期の前、たとえば春と秋の前に1回ずつ入れると、忘れにくくなります。

もう一つ、実際に問い合わせが来たときの返し方も揃えておきます。サイトに書いてある内容を、そのまま繰り返すだけの返信では、二人が一番知りたいことが抜けることがあります。「当日、誰が、どこで、どう案内するか」です。返信には、サイトの案内に加えて、当日の案内役の有無と、入口からの動線の流れを一文で添えます。二人は、答えそのものより、「この式場は、うちの事情を前提に考えてくれる」という印象で、次の見学に進むかを決めます。

まとめ

  • 高齢・車椅子の親族を呼びたい二人は、式場に聞く前に、サイトで会場を外していることがある
  • 外された式場には痕跡が残らない。問い合わせの少なさを根拠に、載せなくていいと判断しない
  • 載せる項目は、駅・駐車場から入口、控室、挙式会場、披露宴会場、トイレ、階の移動まで、当日の動線の順に並べる
  • 「対応しています」の一言は避け、スロープあり、エレベーターあり、といった事実を一語ずつ書く
  • できないことも、代わりにできることと並べて書く。来館してから分かるほうが、二人にも式場にも損が大きい
  • 置き場所は会場ページの写真の近くと、予約ボタンの手前。FAQだけに置かない
  • 効いたかどうかは、ヒアリングで該当する二人の割合を数え、載せる前後で予約ページへ進む率を比べる。割合が低い式場は、優先度を下げる
  • 寸法や設備は、実際に測り、歩いて確認した事実だけを載せる