契約後の打ち合わせ回数を、式場見学で先に伝えるべきか
見学の最後に、二人から「契約したら、打ち合わせは何回くらいあるんですか」と聞かれたことはあると思います。聞かれたときに答える式場は多い。では、聞かれなくても見学のうちに伝えるべきか。僕の答えは「伝える。ただし、伝え方は二人の働き方で変える」です。
この記事は数字の調査ではありません。見学から契約までの流れという構造から、先に伝えたほうがいい条件と、契約後に回してもいい条件を組み立てた話です。なので「業界全体でこうなっている」とは言いません。「仕組みとして、こうなりやすい」という範囲で書きます。
打ち合わせの回数は、二人にとって「時間の請求」になる
式場側から見ると、打ち合わせは進行のための作業です。料理、衣裳、演出、招待状、席次と、決めることを順番に片づけていく。回数が多いのは、それだけ丁寧に作り込めるということでもあります。
二人から見ると、同じ回数が別の意味になります。打ち合わせは、平日の夜か土日の昼間を使うものです。仕事をしている二人にとっては、回数がそのまま「空けなければいけない日の数」になります。
仮に、挙式まで半年で打ち合わせが8回、1回あたり2時間だとします。単純に掛けると16時間です。移動と準備を入れて1回3時間と見れば24時間になります。半年を月に直すと、月に1回ずつ、半日近くが埋まる計算です。この数字は僕が置いた前提で、実在の式場の平均ではありません。ただ、この程度の拘束が「見学のときには見えていない」ことは、仕組みとして起こりえます。
見学のときに二人が見ているのは、会場の写真映えと、料理と、総額です。時間の請求書は、まだ見えていません。見えていない請求書が契約後に届くと、二人の側に「聞いていなかった」という感覚が残ります。これが、契約後に温度が下がる一つの入り口になります。
先に伝えたほうがいい三つの条件
すべての二人に同じ伝え方をする必要はありません。次の三つのどれかに当てはまるなら、見学のうちに回数を口に出したほうがいいと考えています。
条件1:二人のどちらかが、平日に時間を取りにくい
シフト勤務、土日に仕事がある、出張が多い。こういう二人は、打ち合わせの日程を合わせること自体が負担です。見学中のヒアリングで勤務形態が分かったら、その場で回数を出します。
伝えるときは、回数だけで終わらせないことです。「全部で8回くらいです。ただ、2回はオンラインでもできます」のように、減らせる余地をセットで話します。回数の重さを伝えて、同時に軽くする方法も渡す。順番は、重さが先、軽くする方法が後です。
条件2:遠方から来ている
遠方の二人にとって、1回の打ち合わせは移動を含めた1日です。回数は、そのまま交通費と休みの数になります。ここは契約後に気づかれると、一番ひびきやすいところです。
見学の時点で、来館が必要な回と、メールや電話で済む回を分けて見せます。分けて見せられない式場は、先に社内で分ける作業が要ります。この作業自体が、契約後の進行を整理する機会にもなります。
条件3:見学中に「忙しい」「あまり時間がない」と言っている
二人が口に出した「忙しい」は、拾える材料です。笑い話のように流さずに、この言葉の直後に回数の話を差し込みます。忙しいと言った二人に、契約後の拘束時間を黙っておくのは、あとで一番ずれる組み合わせです。
逆に、三つとも当てはまらない二人はどうか。時間に余裕があって、近くに住んでいて、打ち合わせを楽しみにしているような二人です。こういう二人には、回数を強調する必要はありません。聞かれたら答える、くらいで足ります。先に言っても害はありませんが、話の優先順位としては低い。見学の限られた時間は、料理や会場の見せ方に使うほうがいいこともあります。
先に伝えると成約は減るのか
ここがいちばん気になるところだと思います。回数を見せたことで、二人が「大変そうだ」と引いてしまうのではないか。
僕はこれを、引く二人と引かない二人に分けて考えます。
- 回数を聞いて引く二人:もともと時間に余裕がなく、契約後に不満が出る可能性が高い二人
- 回数を聞いても引かない二人:時間を取る覚悟があり、準備を楽しめる二人
先に伝えて引いた二人は、契約後に伝わっても同じように引いていた可能性があります。契約後に引かれた場合、困るのは次の点です。契約金を受け取ったあとの話になるので、日程の調整、進行の遅れ、場合によっては解約の相談になり、式場側の工数が大きくなります。見学の段階で引かれるほうが、お互いに傷が浅い。
ただし、これは「成約率が下がらない」と言っているわけではありません。短期の成約数は、先に伝えれば少し減るかもしれません。それでも見るべきなのは、成約数だけでなく、契約後の進行の重さです。両方を並べて判断します。
測り方は、自分の式場の記録でできます。見学で回数を伝えた組と、伝えなかった組を分けて、契約後に「日程調整で3回以上やり直した」「打ち合わせの延期が出た」組の割合を比べます。組数が少ないうちは差が出ても偶然の範囲なので、順位をつけたり、結論を急いだりしません。半年から1年分を貯めてから見ます。
伝え方の型:回数、時期、減らせる回
実際に何を話すかを、型にしておきます。
- 回数の目安:「全体で8回前後です」。ぴったりの数字は要りません。幅で言います
- 時期の山:「いちばん詰まるのは、挙式の4か月前から2か月前です」。いつ忙しくなるかを伝えると、二人は自分の予定と重ねて考えられます
- 減らせる回:「オンラインや書面で済ませられる回が、2〜3回あります」
- 1回の長さ:「1回あたり2時間程度です。衣裳の回だけ長くなります」
この4つを、30秒から1分で話します。長く話すと「大変そう」の印象だけが残るので、短く、数字を中心にします。
紙に出すなら、契約後の流れを一枚にして見学の最後に渡します。その一枚には、日付ではなく「挙式の何か月前」で書きます。二人は自分の挙式日に置き換えて読めます。
式場側が先に整えておくこと
回数を伝えるには、式場の側に準備が必要です。
まず、自分の式場の標準的な打ち合わせ回数を、数えること。プランナーごとに回数が違うなら、それも見ます。担当ごとにばらつきがある式場は、見学で言う回数が担当によって変わってしまいます。これは伝える以前の問題として、整理が要ります。
次に、減らせる回を決めておくこと。オンラインに切り替えられる回、書面で済む回、一度の来館でまとめられる回。これが決まっていないと、「減らせます」と言った約束が、契約後に守れません。約束を守れないなら、減らせるとは言わないほうがいい。
最後に、見学を担当する人と、契約後を担当する人の話をそろえること。見学では「8回」と言ったのに、契約後に「12回です」となれば、先に伝えた意味がなくなります。幅をもたせて言うのは、このためでもあります。実際より少なめに言う誘惑は、やめたほうがいいです。後から効いてくるのは、少なく言ったことのほうだからです。
伝えないほうがいい場面もある
先に伝えることを勧めてきましたが、例外もあります。
見学が、まだ二人にとって情報収集の段階で、日取りも予算も固まっていないとき。この段階で契約後の細かい回数を並べると、話が先走ります。このときは、回数を「聞かれたら答える」の位置に置いて、まず会場と料理の判断材料を渡すほうが自然です。
もう一つは、二人がすでに他の式場でも見学していて、比べるために来ている場面です。比較のための見学では、他の式場と比べやすい形で情報を出すことが先になります。回数の話は、見積もりと一緒に紙で渡す形に回します。
どちらの場合も、「隠す」のではなく「出す順番を変える」という考え方です。聞かれて答えを濁すことだけは、しないほうがいい。濁した答えは、契約後に思い出されます。
二人の働き方別に、話す順番を変える
同じ4点でも、二人の事情で最初に置く点が変わります。例として三つの組み合わせを挙げます。これは僕が組み立てた想定で、実在の二人の話ではありません。
- 平日休みのシフト勤務で、土日が動かせない二人:最初に「減らせる回」を話します。平日に動ける回を先に確保できるからです。回数はそのあとです
- 遠方で、来館のたびに一泊が必要な二人:最初に「来館が必要な回の数」を話します。8回のうち来館が4回なら、その4回を先に出します。残りの4回がメールと電話で済むと分かるだけで、重さの印象が変わります
- 共働きで平日の夜しか動けない二人:最初に「1回の長さ」を話します。2時間が夜に収まるのか、衣裳の回は3時間かかるのか。夜の枠に入るかどうかが、この二人の関心です
最初に置く点を間違えると、同じ回数でも「大変そう」にしか聞こえません。ヒアリングで聞いた働き方を、話す順番に反映させます。見学の冒頭で勤務形態を聞いておく理由は、ここにもあります。
契約当日の確認につなぐ
見学で一度伝えた回数は、契約当日にもう一度確認します。見学から契約までに日が空く二人も多いので、最初に聞いた数字を覚えているとは限りません。
契約のときは、「見学のときにお伝えした8回前後で進めます」と、同じ数字をもう一度言います。そのうえで、最初の打ち合わせの日程をその場で決めます。この手順は、既に当メディアの別の記事で扱っている「契約当日に初回の打ち合わせ日を決める」流れとつながります。
見学で伝え、契約で確認し、初回の打ち合わせで実際の予定を組む。三回同じ数字を使うと、二人のなかで「聞いていた話」として定着します。数字が一度も変わらないことが、信頼の材料になります。
まとめ
- 契約後の打ち合わせは、式場にとっては進行の作業、二人にとっては「空けなければいけない日の数」になる
- 仮に8回・1回2時間なら16時間、移動込みで1回3時間なら24時間。これは前提を置いた計算で、実在の式場の平均ではない
- 先に伝える条件は三つ。平日に時間を取りにくい、遠方から来ている、見学中に「忙しい」と言った
- 伝えるときは、回数・時期の山・減らせる回・1回の長さの4点を、短く、数字で話す
- 先に伝えて引く二人は、契約後に伝わっても引いていた可能性が高い。見るのは成約数と、契約後の進行の重さの両方
- 準備として、標準の回数を数え、減らせる回を決め、見学担当と契約後担当で数字をそろえる
- 聞かれて濁すのだけはやめる。出す順番を変えることと、隠すことは別のこと
