集客

式場の検索広告は、1クリックに払える上限を成約から逆算して決める

検索広告の管理画面を開くと、入札の欄に「上限クリック単価」という項目があります。ここに何円を入れるか。式場でこれを決めている人の話を聞くと、「競合が1,500円くらいらしいから合わせた」「前の担当者が入れていた数字のまま」というのが多いです。

結論から書きます。上限クリック単価は、相場や前任者の数字ではなく、成約1組に使ってよい広告費から逆算して決めます。逆算すると、キーワードによって上限が数倍違うことがはっきり出ます。全部のキーワードに同じ上限を置くのは、安く取れる予約を逃すか、高くつく予約を買いすぎるかのどちらかです。

先に断っておくと、この記事の数字はすべて僕が置いた仮の前提と、そこから出した計算です。どこかの式場の実績でも、業界の平均でもありません。自分の式場の数字に置き換えて読んでください。

逆算の組み立て

出発点は、成約1組に使ってよい広告費です。粗利からいくらまでを集客に回せるかは式場ごとに違うので、ここは経営者が決める数字になります。この記事では仮に30万円とします。

ここから、お客様が通る道を逆にたどります。

  • 広告をクリックした人のうち、見学を予約する人の割合(予約率)
  • 予約した人のうち、実際に来館する人の割合(来館率)
  • 来館した人のうち、契約する人の割合(成約率)

仮に、予約率3%、来館率70%、成約率30%とします。この3つを掛けると、クリック1回あたりの成約確率が出ます。

0.03 × 0.7 × 0.3 = 0.0063

つまり、約159クリックで1組が成約する計算です。成約1組に30万円まで使えるなら、1クリックに払える上限は次のとおりです。

300,000円 × 0.0063 = 1,890円

これが上限クリック単価の天井です。入札にこの数字を入れて、実際の平均クリック単価がそれより下に収まれば、1組あたりの広告費は30万円以内に収まる、という読み方になります。

ここで大事なのは、天井と目標は別物だということです。天井ぴったりで入札すると、成約1組の広告費は、うまくいっても30万円ちょうどです。余裕を見たいなら、天井の7〜8割に上限を置きます。この記事ではそこまで細かくせず、天井を基準にして話を進めます。

掛け算のどこが動くか

掛け算の3つの数字は、どれも動きます。どれが動いたら上限がいくら変わるかを、先に見ておきます。

動かす数字 値 上限クリック単価
予約率 2% 1,260円
予約率 3%(基準) 1,890円
予約率 4% 2,520円
成約率 20% 1,260円
成約率 30%(基準) 1,890円
成約率 40% 2,520円

予約率が1ポイント違うだけで、上限は630円動きます。成約率が10ポイント違っても同じです。入札の数字を競合に合わせていた人は、自分の予約率や成約率が1ポイント違うだけで、正しい上限が3割以上ずれることになります。

もう一つ見ておきたいのは、予約率と来館率の関係です。管理画面に出る「コンバージョン」が予約完了なら、予約率は管理画面で分かります。ところが来館率と成約率は、式場の予約台帳や顧客管理の側にしかありません。広告の管理画面だけで上限を決めると、予約までしか見えないので、来館しない予約が多い広告ほど有利に見えてしまいます。

仮に、予約を1件取るのに1,890円 ÷ 3% で6万3,000円かけているとします。これが来館に至らない予約ばかりなら、予約単価が安くても成約には届きません。予約率ではなく、来館や成約まで含めて計算するのは、この食い違いを避けるためです。

キーワードごとの上限

ここまでの計算は、広告全体の平均で置きました。実際には、検索されたキーワードによって、予約率も成約率も別物です。仮に、3種類のキーワードで次のような違いがあるとします。

キーワードの種類 予約率(仮) 上限クリック単価
自分の式場名 8% 5,040円
地名 + 結婚式場 3% 1,890円
結婚式 費用 0.8% 504円

予約率の数字は、あくまで形を見せるための仮置きです。ただ、形そのものは現場でもよく見る構造です。式場名で検索した人は、もう候補に入れていて、公式サイトを探しに来ています。予約率が高いのは自然です。地名と結婚式場の組み合わせは、比較している最中の人です。費用だけを調べている人は、まだ式場を探す前の段階にいることが多く、見学までの距離が遠くなります。

この表のとおりに入れると、上限は10倍違います。全部のキーワードに1,890円を一律で置くと、式場名では本来払える5,040円まで払わないので、順位が下がって取りこぼす可能性があります。逆に費用のキーワードでは、504円しか払えないのに1,890円まで入札してしまうので、成約1組あたりの広告費は計算上およそ3.75倍の112万円に膨らみます。

1,890円 ÷ 0.8% は、そのキーワードの予約1件あたり23万6,250円です。ここに来館率と成約率をかけて成約1組あたりに直すと、計算上こうなります。

1,890円 ÷ (0.008 × 0.7 × 0.3) ≈ 112万5,000円

この式で、30万円の天井を3.75倍超えているのが分かります。

自分の式場名のキーワードについては、別の判断が要ります。式場名で検索する人は、広告を出さなくても自然検索で公式サイトに来る可能性があります。広告を止めても予約が減らないのなら、5,040円まで払える計算でも、実際には払う必要がありません。ここは、広告を止めて1か月比べるといった別の確かめ方が要る話なので、この記事では上限の計算だけにとどめます。

入札単価が天井を超えるとき

上限を天井に置いても、安心はできません。実際に払うクリック単価は、他社の入札や広告の品質で決まるので、天井に近づくほど競り負けないぶん、平均単価が上がっていきます。

月の広告予算を10万円と置いて、平均クリック単価ごとの結果を並べます。成約確率は基準の0.0063のままとします。

平均クリック単価 月のクリック数 月の成約(期待値) 成約1組の広告費
1,200円 約83 約0.53組 約19万円
1,890円 約53 約0.33組 30万円
2,500円 約40 約0.25組 約39.7万円

単価が上がると、月に取れるクリックが減り、成約の期待値も減ります。同じ10万円で、月に0.25組から0.53組まで開きます。月10万円の予算では、どの行も成約が1組に届いていません。つまり、この規模の広告では、成約数で良し悪しを判断できる月はほとんど来ません。

月のクリックが少ないときの数字の読み方

ここが、小さな式場の現場でいちばん困るところです。月に50〜80クリックしかないと、予約率3%でも、月の予約は1〜2件です。その1〜2件が増えたか減ったかで入札を動かすと、偶然の上下に合わせて入札を触ることになります。

たとえば、あるキーワードに50クリックが来て、予約が0件だったとします。期待値は50 × 3% = 1.5件なので、0件は十分に起こる範囲です。そこで「このキーワードは予約が取れない」と止めてしまうと、本当は良いキーワードを捨てる可能性があります。

小さな規模で現実的なのは、次の2段構えです。

  • 上限クリック単価は、成約率までかけた計算で天井を決め、それを動かさない。予約や成約の数が少ない月に、入札を触らない
  • 見直すのは、数か月分をまとめて予約率と来館率が出せるようになってから。四半期に1回など、頻度を決めておく

入札を毎週触る運用は、データが多い大きな広告アカウントのやり方です。月の予約が数件の式場がまねをすると、触るたびに偶然の揺れを学習データに混ぜてしまいます。

上限を決める順番

実際にやる順番を、手順にして置いておきます。

  1. 成約1組に使ってよい広告費を決める。これは経営者の判断で、粗利と他の媒体費とのバランスから置く
  2. 予約率、来館率、成約率を、自分の式場の台帳から出す。広告経由の数字が取れなければ、仮の値で置き、仮だと分かるように記録しておく
  3. 掛け算で、クリック1回の成約確率を出し、天井を計算する
  4. キーワードの種類ごとに、予約率の違いを見て、天井を分ける。種類が多すぎると管理できなくなるので、式場名、地名、費用や悩みの3群くらいから始める
  5. 実際の平均クリック単価が天井を超えていないか、四半期ごとに確かめる

手順1が決まっていないのに、手順3以降をやる式場は多いです。成約1組の許容額が決まっていないと、どの数字も良いとも悪いとも言えません。入札の議論が長引くときは、たいてい手順1が決まっていません。

逆算が当てはまらない広告

この逆算が効くのは、クリックがそのまま予約や問い合わせに向かう検索広告です。次のような広告は、同じ式で上限を決めても、数字の意味が変わります。

  • 地図や動画の広告のように、見ただけで予約まで行かず、後日に式場名を検索して来る人が多い広告。クリックから成約までの確率が、検索広告より低く見えます。その分の効果は、式場名の検索や直接のアクセスに回って見えるので、この式だけでは測れません
  • 結婚情報サイトの掲載のように、クリック課金ではなく月額や成果報酬の媒体。上限クリック単価がありません。別の式で、成約1組あたりの費用に直して比べます

検索広告の上限は、あくまで「クリックに課金される広告」のための数字です。他の媒体と並べるときは、成約1組あたりの広告費に直してから比べます。

まとめ

  • 上限クリック単価は、成約1組に使ってよい広告費 × 予約率 × 来館率 × 成約率で決める
  • 仮の前提(30万円、予約率3%、来館率70%、成約率30%)では、天井は1,890円になる
  • 予約率と成約率が少し違うだけで、正しい上限は3割以上動く。競合の相場に合わせた入札は、根拠が自分の式場にない
  • キーワードの種類によって予約率が違うので、上限も分ける。仮の前提では、式場名と費用のキーワードで10倍違う
  • 管理画面は予約までしか見えないことが多い。来館と成約は台帳から持ってくる
  • 月のクリックが少ない式場は、入札を頻繁に触らない。数か月分をまとめて見直す
  • 手順の最初は、成約1組に使ってよい額を経営者が決めること