契約後の打ち合わせを平日に寄せると、仮の式場では二人が半休を16回取ることになる。夜のオンラインに4回移すなら、年0.86組のキャンセルを防げば元が取れる
契約が済んだあと、二人にとっていちばん重い負担は、お金ではなく休みの取り方かもしれません。打ち合わせは何回も続き、その多くが平日の昼に入っているからです。
結論から書きます。仮に、打ち合わせが8回あって、1回の拘束が移動を含めて4時間、全部を平日の対面で行う式場だとします。二人が揃って出るなら、半休は2人×8回で16回、1組あたりの拘束は32時間です。このうち4回を平日夜のオンラインに移すと、二人の移動は6時間減り、半休は8回減ります。式場の側の費用は、仮置きで年120万円です。元を取るには、契約後のキャンセルを年0.86組防げばよく、年120組に直すと0.71ポイントです。
数字のうち出典があるのは1つだけで、会場を決めてから最初の打ち合わせまでが平均4.7カ月、というゼクシィの記事のデータです。回数も時間も費用も、僕が置いた仮の数字です。実在の式場の実績ではありません。置いた前提を先に並べて、読んだ方が自分の会場の数字に替えられる形にします。
契約のあとに、負担は逆に重くなります
ゼクシィの記事に、会場決定後、初回打ち合わせまでの期間は平均4.7カ月、という数字が出ています。2023年11月に、ゼクシィ花嫁会のメンバー98人が答えたアンケートです。記事には、長い人は1年以上先、という書き方もあります。98人の自己申告なので、全国の平均として扱うのは危ないと思います。ただ、契約と最初の打ち合わせのあいだに、数カ月の空白があるという形は、現場の感覚とも合う人が多いのではないでしょうか。
ここで見たいのは空白のほうです。契約してから4.7カ月は、二人の負担がほとんど無い期間です。そのあと打ち合わせが始まると、衣装、料理、装花、招待状、席次、当日の進行と、決めることが短い期間に集まります。挙式の日から逆算すれば、残りの数カ月に打ち合わせが詰まる形になります。
式場の側から見ると、打ち合わせの回数は、サービスの厚みに見えます。二人の側から見ると、同じ回数が、仕事を休む回数に見えます。ここがずれたまま進むと、不満は打ち合わせの内容ではなく、段取りの面倒さとして出てきます。そして、契約後のキャンセルの理由として式場に届く頃には、休みを取れないという事情は、金額の話や気持ちの話に言い換えられていることが多いはずです。これは仕組みの説明で、実際の割合を言っているわけではありません。
仮の式場の前提
次の前提で計算します。すべて仮置きです。
- 年間の挙式は120組
- 1組あたりの粗利は140万円。このメディアの他の計算と揃えた置き方です
- 契約後の打ち合わせは8回。衣装、料理、装花、招待状、席次、当日の進行などを分けた数です
- 1回の打ち合わせは2.5時間。二人の自宅か職場から式場までの往復で1.5時間かかる
- 二人とも打ち合わせに出る。出られない回は、日程を動かすか、片方だけで進める
- 打ち合わせの枠は、平日の昼が中心。土日は挙式があるので、枠がほとんど取れない
8回という数は、会場によって6回のところも12回のところもあると思います。ここを自分の会場の実数に替えるのが、いちばん効きます。
二人が出す時間を数えます
1回の拘束は、打ち合わせ2.5時間に、往復の移動1.5時間を足して4時間です。8回なら32時間になります。内訳は、打ち合わせそのものが20時間、移動が12時間です。
32時間は、仕事の日に直すと分かりやすくなります。平日の昼に4時間を取られると、その日は午後の半休か、午前の半休になります。二人が揃って出るなら、1回で2人分の半休です。8回なら、16回の半休、つまり8日分の休みになります。
これが、二人とも平日勤務の会社員の場合です。次のようになる人もいます。
- 土日が休みの人は、平日の半休が要る。有給が取りやすい職場なら、数回は問題になりません
- 平日が休みのシフト勤務の人は、そもそも休みを取らなくて済む。ただし二人の休みが合わないことが多く、日程が決まらない
- 一方が平日勤務で、もう一方がシフト勤務の人は、揃って出られる日が月に数日になる
最初の見学のときは、こうした事情が表に出にくいと思います。見学は土日にたくさん枠があり、二人の都合に合わせやすいからです。契約が済んだあとで、枠の取れない平日の昼という現実にぶつかります。
土日に枠を出せない事情が、式場にもあります
式場の側にも事情があります。土日は挙式と披露宴で会場が埋まり、担当者は当日の進行についています。打ち合わせに使える時間は、挙式のない日の昼か、挙式が午前で終わる日の午後に限られます。
このため、打ち合わせを土日にたくさん入れるのは、現実的に難しい会場が多いはずです。平日の昼に寄るのは、怠けているからではなく、担当者の稼働の形がそうなっているからです。ここを責める話にはしません。
選べる手は、枠を増やすのではなく、枠の使い方を変えることです。打ち合わせの8回のうち、対面でなくても済む回があるかを考えます。
どの回なら、オンラインで済むか
8回の中身を、仮に次のように分けます。対面が要る回と、そうでもない回です。
- 対面が要る回:衣装の試着、料理の試食、会場での当日の流れの確認、装花の実物の確認。実物を見たり触ったりする回です
- オンラインで済む回:招待状の文面、席次表の確認、進行表の打ち合わせ、最終の人数と金額の確認。画面を見て話せば足りる回です
仮に、4回を対面、4回をオンラインに分けます。オンラインの回は、二人が自宅か職場の昼休みの時間に画面で受けるので、往復の1.5時間が要りません。4回で6時間の移動が消えます。半休は、4回の対面で2人×4回の8回になり、16回から半減します。
オンラインの回を平日の夜に入れれば、半休そのものが要らない二人もいます。夜に入れる場合は、担当者の勤務時間が伸びます。ここが式場の費用になります。
式場の費用は、夜の割増だけで年120万円
夜のオンラインの費用を、仮置きで出します。
- 担当者の夜間対応は、通常の勤務時間より1時間あたり1,000円の割増になる(残業代と交代の手当を合わせた額)
- 1回あたり2.5時間、4回をオンラインにする
- 1組あたりの追加費用:1,000円 × 2.5時間 × 4回 = 1万円
- 年120組:1万円 × 120組 = 年120万円
オンライン会議用の機材やツールは、すでに持っていて追加費用は無い前提です。新しく入れるなら、その分を足してください。
この120万円が、元を取るべき額です。粗利140万円の挙式を何組守れば足りるかを見ます。
- 120万円 ÷ 140万円 = 年0.86組
- 年120組に対する割合では、0.86 ÷ 120 = 0.71%、つまり0.71ポイント
契約後のキャンセルが年に1組弱減れば、元が取れる計算です。1組が守れれば足りる、と言うこともできます。
全員にやらず、必要な二人だけに絞る手もあります
夜のオンラインを全員に出すのは、費用が大きすぎるかもしれません。平日の昼に出られる二人にまで夜の枠を用意するのは、効率が悪いからです。
契約のときに、二人の勤務形態を聞いて、平日昼に出にくい二人だけに夜のオンラインを出す形にします。仮に、そうした二人が3割だとします。この3割は、僕の置いた仮の数字で、出典はありません。
- 夜のオンラインを出す組:120組 × 3割 = 36組
- 費用:1万円 × 36組 = 年36万円
- 元を取る件数:36万円 ÷ 140万円 = 年0.26組
- 120組に対する割合:0.21ポイント
全員に出す場合の0.71ポイントが、0.21ポイントまで下がります。ただし、この形は、契約のときに勤務形態を聞くという手間が前提です。聞き方を間違えると、仕事の事情を尋ねられたと嫌がる二人もいると思います。そこは次の節で触れます。
効果は、年120組では測れません
ここまでの計算は、損益の分かれ目を出しただけです。夜のオンラインを入れて、キャンセルが本当に減ったかどうかを、年120組の式場が確かめることはできません。
契約後のキャンセルは、もともと年に数組という数字のはずです。仮に年に4組だとして、夜のオンラインを入れた翌年に3組に減ったとします。1組の差は、偶然の揺れの範囲です。0.71ポイントは、年120組では0.86組にしかなりません。
測れないものに投資するなら、測れる別の数字を見ます。たとえば次の3つです。
- 日程の再調整の回数:打ち合わせの日程を二人の都合で動かした回数。休みが取れない事情が、最初に表に出る数字です
- 打ち合わせの欠席や遅刻の割合:二人の側の負担が重いと、増える数字です
- 2回目以降の打ち合わせが入るまでの日数:二人の側の間が空きすぎていないかを見る数字です
どれも、キャンセルより早く動く数字です。夜のオンラインを入れた前と後で、この3つが変わったかを半年ほど見ます。変わらなければ、効いていないと判断してやめます。
契約のときに、聞くのは1つだけです
勤務形態を細かく聞く必要はありません。契約のときに、次の1つだけを聞きます。
- 打ち合わせは平日の昼と、平日の夜のオンラインと、どちらが出やすいですか
この質問なら、仕事の事情を探られた感じがしません。式場の都合ではなく、二人の都合に合わせるという姿勢で聞けます。答えを予約システムか契約書の備考欄に残しておけば、担当者が変わっても、枠の出し方が引き継がれます。
聞くときの注意が2つあります。
- 二人の片方にだけ聞いて決めない。仕事の都合は、二人で違うことが多いからです
- 答えを聞いたら、その形で枠を出す。聞いて終わりにすると、聞かれなかったときより不満が増えます
数字を自分の会場に替えるなら
この記事の数字のうち、結果を大きく動かすのは3つです。
- 打ち合わせの回数と、そのうちオンラインに移せる回数。移せる回が1回なら、効果は小さくなります。6回移せるなら、費用も効果も大きくなります
- 夜の割増。通常勤務の時間内に収まる形で、昼休みの時間帯にオンラインを入れられるなら、費用はほぼ無くなります
- 粗利。粗利が200万円の会場なら、元を取る件数は年0.6組に下がります。100万円なら年1.2組に上がります
粗利が高い会場ほど、1組を守る価値が大きいので、打ち合わせの形に使える費用も大きくなります。逆に、キャンセルの多い会場は、同じ施策でも守れる組が多く、効果が出やすくなります。
判断の分かれ目
導入するかどうかは、次の順で考えると決めやすいと思います。
- 自分の会場で、契約後の打ち合わせは何回あるか、そのうち平日の昼に入っているのは何回かを数える
- 実物が要らない回が何回あるかを、担当者に聞く。担当者が、オンラインでも問題ないと言う回だけを数える
- その回数に、夜の割増を掛けて、年間の費用を出す
- 費用を粗利で割って、年何組のキャンセルを防げば足りるかを出す。1組を超えるなら、全員ではなく、必要な二人に絞る
- 日程の再調整の回数を、前と後で見る
2番目が、いちばん大事です。オンラインにできるかどうかを決めるのは、経営者ではなく、実際に打ち合わせをしている担当者だからです。ここは担当者の感覚を信じたほうがいいと思います。
まとめ
- ゼクシィの記事では、会場決定から最初の打ち合わせまでが平均4.7カ月(2023年11月、ゼクシィ花嫁会98人のアンケート)。契約後の空白があり、そのあとに打ち合わせが集中する
- 仮の式場で、8回を平日の対面で行うと、1組の拘束は32時間。二人が揃って出れば半休16回
- 4回を平日夜のオンラインに移すと、二人の移動は6時間、半休は8回減る。式場の費用は年120万円(仮置き)
- 元を取るには、契約後のキャンセルを年0.86組(0.71ポイント)防げばよい。必要な二人に絞れば、年0.26組(0.21ポイント)
- 効果は年120組では測れない。日程の再調整、欠席・遅刻、次の打ち合わせまでの日数で見る
- 契約のときに聞くのは、平日の昼と夜のオンラインのどちらが出やすいか、の1つだけ
- 数字は、4.7カ月以外はすべて仮置きで、出典はありません
