式場の見学予約フォームの電話番号は、折り返しの電話をするかで決める
見学予約フォームの電話番号は、必須にしている式場が多いと思います。僕もそれが標準だと思っていました。連絡がつかない予約ほど、もったいないものはないからです。
ただ、電話番号の欄で手が止まる二人もいるはずです。仕事中に知らない番号から電話が来るのは困る。メールだけで十分なのに、なぜ番号まで要るのか。そう感じた二人は、フォームを閉じて、次の式場のフォームに行きます。
この記事の結論を先に書きます。電話番号を必須にするかどうかは、フォームの設計の話ではなく、予約のあとに式場が電話をかけるかどうかの話です。かける運用があるなら必須にする理由があり、かけないなら必須にする理由がありません。ここを決めないまま、他社のフォームに合わせて必須にしている式場は、見学予約を静かに取りこぼしている可能性があります。
出典のある調査の数字は、この記事では使っていません。年1,200人がフォームを開く仮の式場を置いて、損得の分かれ目を計算します。数字はすべて説明のための仮置きで、実際の式場の実績ではありません。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
電話番号の欄は、何のためにあるのか
まず、この欄の役目を分けて考えます。役目は、大きく3つあります。
1つ目は、予約の確認です。予約が入ったことを、電話で伝えて確かめる。2つ目は、メールが届かなかったときの代わりの連絡手段です。迷惑メールのフォルダに入ってしまったり、アドレスの入力を間違えたりすると、メールは届きません。3つ目は、見学の当日の連絡です。道に迷った、遅れる、といったときに、当日すぐつながる手段になります。
この3つのうち、電話をかけないと成り立たないのは1つ目だけです。2つ目は、LINEやSMSのような別の手段で代わりになります。3つ目は、当日だけ番号が分かればよく、予約の段階で必須にする理由にはなりません。
つまり、予約の確認を電話でやる運用かどうか、が分かれ目になります。やっていないのに必須にしているなら、それは習慣で残っているだけの項目です。
運用が3つに分かれる
式場の運用は、おおまかに3つに分けられます。
- 運用A:予約が入ったら、必ず電話で確認する。メールは補助にする
- 運用B:予約が入ったら、メールかLINEで確認する。電話は、返信がないときだけかける
- 運用C:確認はすべてメールかLINEで行い、電話はほとんどかけない
運用Aなら、電話番号は必須です。確認の電話が主な連絡手段なので、番号がなければ運用が回りません。
運用Cなら、電話番号は任意にするか、外してよいはずです。使わない項目を必須にしておく理由がありません。
迷うのは運用Bです。電話は返信がないときの保険にすぎませんが、保険として番号がほしい。この場合は、「どちらか一方が必須」という形が使えます。メールアドレスか電話番号か、二人が選べる連絡手段を1つ以上入れてもらう形です。
仮の式場で損得を計算する
数字を置きます。年に1,200人が、見学予約フォームを開く式場です。
フォームを開いた二人のうち、最後まで入力して送信する割合を、完了率と呼びます。電話番号とメールアドレスの両方を必須にしたフォームの完了率を、仮に55%とします。どちらか一方でよいフォームでは、仮に60%とします。5ポイントの差は、僕の想定です。実際には、もっと小さいかもしれませんし、大きいかもしれません。
もう1つ、連絡がつかない割合も置きます。予約を送ってくれたのに、式場からの連絡が届かない、あるいは返事がもらえない二人です。両方を必須にしたフォームでは、電話という保険があるので、仮に2%とします。どちらか一方でよいフォームでは、連絡手段が1つしかない二人が増えるので、仮に6%とします。
そのうえで、連絡がついた二人の来館率を70%、連絡がつかなかった二人の来館率を10%とします。来館した二人の成約率は30%、1組の粗利は140万円です。この粗利も、説明のための仮置きです。
計算の結果は次のとおりです。
- 両方必須:1,200人 × 55% = 660件の予約。連絡がつく658件弱のうち70%、つかない2%のうち10%が来館して、来館は約454組。成約は約136組、粗利は約1億9,070万円
- どちらか一方でよい:1,200人 × 60% = 720件の予約。来館は約478組。成約は約143組、粗利は約2億80万円
差は、来館で約24組、成約で約7組、粗利で約1,000万円です。この仮の式場では、電話番号を必須から外したほうが、年に1,000万円ほど多く残る計算になります。
ただし、この結果は置いた数字に強く左右されます。そこで、どこまでなら外したほうが得なのかを、逆算します。
外してよい条件を、逆算で出す
「どちらか一方でよい」形にしたときの連絡がつかない割合を、いくつかに変えて、両方必須と同じ来館数になるために必要な完了率を出しました。両方必須の完了率は55%のままです。
- 連絡がつかない割合が4%なら、完了率は約56.0%(+約1.0ポイント)で並ぶ
- 6%なら、約57.0%(+約2.0ポイント)
- 8%なら、約58.0%(+約3.0ポイント)
- 10%なら、約59.1%(+約4.1ポイント)
- 15%なら、約62.0%(+約7.0ポイント)
読み方は単純です。電話番号を任意にしたとき、連絡がつかない二人が増えるぶん、完了率が上がらないと元が取れません。連絡がつかない割合が6%まで増えても、完了率が2ポイント上がれば並びます。10%まで増えるなら、4ポイント必要です。
つまり、外す判断が危ないのは、連絡がつかない割合が一気に跳ねる式場です。メールが迷惑メールに入りやすい、LINEでの連絡の入口がない、といった式場では、電話という保険を外すと、不達が思ったより増えます。
反対に、LINEやSMSの別の入口をもともと持っている式場や、予約のあとにすぐ返信が来る運用がある式場では、不達の増え方は小さくなります。この場合は、完了率が1〜2ポイント上がるだけで、外したほうが得になります。
電話番号を必須のままにしたほうがいい式場
ここまで読むと、外すほうが良さそうに見えます。けれど、必須のままにしたほうがいい式場もあります。条件は3つです。
1つ目は、予約の確認を電話でやっていて、それが成約率に効いている式場です。声を聞いて安心して来る二人が多い、あるいは電話で聞き取れる情報が見学の準備に役立っている。この運用があるなら、電話番号は予約の中身の一部です。外す前に、電話で確認した二人とメールだけの二人で、来館率に差があるかを、自分の予約記録で見てください。
2つ目は、満枠になりやすい式場です。土日の見学枠が早く埋まる式場では、予約を取った二人が来なければ、その枠は損失になります。10月13日の記事でも書いたとおり、増えた予約が満枠の日に入ってしまうと、利益は消えます。枠が貴重な式場では、予約の数を増やすより、予約の質を上げる側の設計が合います。
3つ目は、連絡の入口がメールしかない式場です。LINEもSMSも使っておらず、メールの返信が来なければ打つ手がない。こういう式場は、電話が最後の保険です。外すなら、先に別の入口を作ってからにします。
任意にするなら、一緒にやること
電話番号を任意にする場合は、欄を空にするだけでは足りません。やることが4つあります。
1つ目は、欄の横に、電話番号を入れるとどうなるのかを一言書くことです。「日程の確認で、お電話する場合があります」のように、使い道を伝えます。使い道が分からないから、入れたくない二人もいます。
2つ目は、電話をかける時間帯を選べるようにすることです。昼間は出られない二人には、夜なら出られるかもしれません。10月31日に書いた、折り返し電話は二人に時間帯を選んでもらう、という話は、この場面でも使えます。
3つ目は、メールアドレスの入力を確かめる仕組みを入れることです。アドレスを2回入力してもらう、あるいは、確認のメールが届いたことをその場で確かめる。電話という保険を外すなら、メールの打ち間違いは、そのまま不達につながります。
4つ目は、予約の完了画面に、届かなかったときの案内を書くことです。「30分たっても確認メールが届かないときは、迷惑メールのフォルダをご覧ください」と一文を足します。それでも届かなければ式場の電話に、と書いておけば、二人のほうから連絡してくれる入口が残ります。
外したあとに、数える数字
外したら、数字を見ます。見るのは3つだけです。
- フォームの完了率:開いた二人のうち、送信した割合
- 連絡がつかなかった割合:確認の連絡を出して、返事がない予約の割合
- 来館率:予約した二人のうち、実際に来た割合
3つとも、月に1回、同じ式場の予約記録から数えられます。変える前の3か月と、変えたあとの3か月を比べます。1か月だけで判断すると、季節や広告の出し方の違いで、数字が動いてしまうからです。
比べるときの注意が1つあります。完了率が上がっても、来館率が下がっていたら、予約の質が落ちている可能性があります。電話番号を入れた二人は、入力の手間を乗り越えただけ、来る気が強かったのかもしれません。この場合は、予約の数が増えても、来館数は増えません。来館数と成約数で見て、予約の数だけで成功と呼ばないことが大事です。
3か月たっても差が読み取れないときは、元に戻すのではなく、どちらでも大差がないものとして、運用が楽なほうを選べばよいと思います。差が出ない判断に、時間をかけ続ける理由はありません。
電話をかけない運用に決めるときの、見落とし
最後に、見落としやすい点を1つ挙げます。電話番号を外すと、当日の連絡手段が減ります。見学の当日に二人が遅れる、道に迷う、というときに、式場から電話で確認できません。
これは、予約の完了画面と確認メールに、式場の電話番号を大きく書くことで、かなり補えます。二人から式場にかけてもらえるからです。式場の側から二人にかける必要があるのは、無断で来ない二人を確認するときくらいです。ここは、メールとLINEの連絡で足ります。
もう1つは、見学の前日に送る連絡の手段です。電話番号がなければ、前日の連絡はメールかLINEになります。前日の連絡が届かなかったときのために、予約の段階で、連絡を受けられる手段を2つ確かめておく運用が合います。電話番号を外したぶん、メールとLINEの両方を使うという形です。
まとめ
- 見学予約フォームの電話番号を必須にするかは、予約のあとに式場が電話をかけるかどうかで決まる
- 電話をかける運用があるなら必須、ほとんどかけないなら任意か外す、返信がないときだけかけるなら「どちらか一方が必須」が合う
- 仮の式場(年1,200人がフォームを開く)では、完了率が5ポイント上がり、連絡がつかない割合が2%から6%に増えると、来館は約24組増える計算になる。数字は仮置き
- 連絡がつかない割合が増えても、完了率が1〜4ポイント上がれば元が取れる。増え方が大きい式場では、外すと損になる
- 満枠になりやすい式場、確認の電話が来館率に効いている式場、連絡の入口がメールしかない式場は、必須のままのほうが合う
- 任意にするなら、使い道の一言、時間帯の選択、メールの入力確認、届かなかったときの案内をセットにする
- 外したあとは、完了率・連絡がつかなかった割合・来館率を3か月ずつ比べる。予約の数だけで成功と呼ばない
