式場の看板広告は成約何組で元が取れるかを先に決める
駅の構内、幹線道路沿い、バス停。式場の看板広告は、一度出すと年間契約でそのまま更新されることが多い媒体です。担当者が代わっても、前年と同じ場所に同じ写真が残っている。そういう式場は珍しくないと思います。
看板広告が悪いと言いたいわけではありません。僕が気になっているのは、看板には「効いたかどうかを測る道具」が最初から付いていないことです。ネット広告ならクリックと予約が残ります。看板は、通りかかった二人が覚えていたとしても、その場では何の記録も残りません。測れないから、効いているのかどうかを誰も判断できず、契約だけが続きます。
この記事の結論は、看板広告は出す前に「何組成約したら元が取れるか」を決めておく、です。売上の結果から逆算するのではなく、先に基準の数字を置く。置いておけば、更新の時期に見る数字が決まっています。
なお、この記事の費用、粗利、成約率はすべて僕が置いた仮の数字で、業界の平均や実績ではありません。出典のある統計は使っていません。看板広告の効果を式場業界で比べた公開データを、僕は見つけられていないからです。自分の式場の数字に置き換えて読んでください。
看板広告は、なぜ効果が見えないのか
看板を見た二人が式場に来るまでの流れを考えてみます。
通勤の途中で看板の式場名を目にする。そのときは何もしない。何か月かあとに婚約して、スマホで式場を探す。そのとき、見覚えのある式場名がふと浮かんで、検索窓に打つ。公式サイトを見て、見学を予約する。
この流れで、看板が果たした役割は「式場名を知っていた」ことだけです。予約フォームの流入元を見ると「式場名の検索」あるいは「直接入力」と記録されます。看板の名前はどこにも出てきません。
ここが、看板と他の媒体の最大の違いです。口コミサイトなら、掲載ページから来た予約として数えられます。看板は、効いたときほど、ほかの経路の数字に混ざってしまいます。
だから、予約数や来館数の増減だけで看板の良し悪しを言うのは難しい、というのが僕の見方です。季節や他の広告の出し方でも数字は揺れます。看板を出した月に予約が増えたとしても、看板のおかげとは言い切れません。逆に、増えなかったからといって、効いていないとも言い切れません。
測れないものを、測れないまま続けるか止めるか決める。そのために必要なのが、先に置く基準の数字です。
先に決めるのは「元が取れる成約数」
基準は難しくありません。年間の費用を、成約1組あたりの粗利で割ります。
仮の数字で計算します。看板の年間費用を240万円(月20万円)、成約1組の粗利を100万円とします。
240万円 ÷ 100万円 = 2.4組
つまり、看板を出した1年間で、看板がきっかけで成約した二人が2.4組いれば、費用は回収できます。3組いれば黒字、2組なら赤字です。
費用と粗利の組み合わせで、必要な組数は次のように変わります。
| 年間費用 | 粗利80万円 | 粗利100万円 | 粗利120万円 |
|---|---|---|---|
| 120万円 | 1.5組 | 1.2組 | 1.0組 |
| 240万円 | 3.0組 | 2.4組 | 2.0組 |
| 480万円 | 6.0組 | 4.8組 | 4.0組 |
この表の読み方は2つです。
ひとつは、必要な成約数が思ったより少ないことです。年間240万円の看板なら、2〜3組の成約で元が取れます。看板が「割に合わない媒体」と決めつけるのは早計です。
もうひとつは、その2〜3組が「看板が決め手になった二人」である必要があることです。看板を見たけれど、実際に選んだ理由は口コミや見学の印象だった、という二人は、看板の成果として数えにくい。ここが次の問題になります。
来館数に直すと、見るべき数がもっと増える
成約ではなく来館で見るなら、来館から成約までの率で割り戻します。見学した二人の4割が成約すると仮定すると、成約2.4組は来館6組に当たります。
2.4組 ÷ 0.4 = 6組
年間6組。月に直すと、0.5組です。看板がきっかけで来館した二人が、2か月に1組いれば足りる計算になります。
この「月0.5組」という数字は、実際に看板由来を数えるときの目安になります。逆に言えば、月に0.5組を数え分けられないなら、看板の成果は見学の現場でほとんど拾えていない、ということでもあります。
看板由来の二人を、どう数えるか
測れない媒体を数えるには、道具を足すしかありません。3つ方法があります。
1. 見学の聞き取りに「看板を見たか」を入れる
見学の受付で、認知経路を聞きます。ここで大事なのは、聞き方です。
「何を見て知りましたか」だけだと、二人は最後に見たものを答えます。ほとんどが「ネットで調べて」になります。
そこで2問に分けます。「最初に式場名を知ったのは、いつ、どこでしたか」と「見学を決めたきっかけは何でしたか」。前者に「駅の看板」が出てくれば、看板が最初の接点だったことが分かります。後者の答えと合わせて見ます。
この2問は、看板だけのためのものではありません。見学の認知経路は最初と最後に分けて聞く、という考え方は、別の記事でも書きました。看板はそれを使う場面のひとつです。
2. 看板に専用の入口を付ける
看板にQRコードを付ける、専用の短いURLを載せる、という方法です。折込チラシでも同じことができます。
ただ、看板は通りかかる人が歩きながら、あるいは車の中で見るものです。QRを読み取る人は、ごくわずかになります。読み取られた数が少ないからといって、看板が効いていないとは言えません。QRが拾えるのは、立ち止まれる場所の看板(駅のホームや待ち合わせ場所)に限られると考えたほうが、判断を間違えにくいと思います。
3. 看板を出す前と出した後で、式場名の検索を比べる
看板を見た二人は、検索窓に式場名を打つことが多いはずです。Googleの検索データで、式場名の検索回数が看板の設置前後でどう動いたかを見ます。
ただし、これは補助の数字です。婚活や結婚の時期、他の広告、季節で揺れます。検索回数が増えても看板のおかげと言い切れないのは、先ほどの予約数と同じです。数字が動いたら「看板が効いたかもしれない」と考える材料にして、聞き取りの結果と合わせて判断します。
続けるか止めるかを決める3つの条件
数え方を決めたら、更新の時期に見る基準を決めます。僕なら、次の3つを先に紙に書いておきます。
- 年間の費用と、成約1組の粗利。そこから出る「元が取れる成約数」
- 看板由来と数えるルール。たとえば「最初に知った場所が看板」と答えた二人を看板由来にする、など
- 更新の見送りラインと、続ける場合の見直し点。「年間で1組も出なければ見送る」「元が取れる数に届いたら続ける」「届かないが検索数が伸びているなら、場所か写真を替えて1年試す」
2つ目のルールは、基準を厳しくも緩くもできます。「最初に知った場所」だけで数えると、実際より少なく出ます。看板を見て覚えていた二人が、見学の受付では「ネットで」と答えるからです。逆に「看板を見たことがある」と答えた全員を数えると、通勤で毎日見ている人は全員入ってしまい、多く出ます。
どちらで数えても完全ではありません。ただ、数え方を先に決めておけば、前の年と同じ基準で比べられます。基準が毎年変わると、続けるかどうかの判断は結局、担当者の感覚に戻ってしまいます。
場所を選ぶときに見る、二人の動き方
契約前に、場所そのものも点検します。看板の効き方は、立地で大きく変わると考えられます。
見るのは、その場所を通る人のうち、結婚を考える世代がどのくらいいるか、です。ただし、これも数字で確かめるのは難しいので、式場の実際の来館者の住所や勤務地を手がかりにします。見学の予約フォームで郵便番号や最寄り駅を聞いている式場なら、来館者がどの駅を使っているかが分かります。看板を出す駅は、その中から選べます。
もうひとつは、看板を見たあとに式場名を思い出す条件です。写真が一枚で、式場名が大きく、連絡先は検索で出てくる前提でよい。看板の写真に料金や特典を細かく書いても、通りがかりでは読まれません。覚えてもらうのは式場名と、どんな式場かの一言です。この一言が、あとで検索窓に名前を打つときの手がかりになります。
看板を止める前に、確かめておくこと
数字が基準に届かなかったときも、すぐ止めるとは限りません。止める前に確かめる点が2つあります。
ひとつは、計測が足りていたかどうかです。見学の聞き取りが最初の数か月だけで途絶えていたり、スタッフによって聞き方が違ったりすると、看板由来が少なく出ます。基準に届かなかったのが、効かなかったからなのか、数えられなかったからなのかを分けて考えます。
もうひとつは、看板が他の媒体の成果を押し上げていたかどうかです。式場名の検索数が看板を出した期間に安定して高かったなら、止めたあとに下がるかもしれません。この確認は、止めたあとの検索数の動きを見ないと分からないので、止めるなら、止めた月と前後数か月の式場名の検索回数を記録しておきます。あとで「止めたら下がった」と分かれば、再開を考える材料になります。
まとめ
- 看板広告は、効果を測る道具が最初から付いていない媒体。効いたときほど、ほかの経路の数字に混ざる
- 出す前に、年間費用を成約1組の粗利で割って「元が取れる成約数」を決める。仮の数字では、年240万円・粗利100万円で2.4組、来館に直すと年6組
- 数える手段は、見学の聞き取り2問(最初に知った場所と決め手)が基本。QRは立ち止まれる場所だけ、検索数の前後比較は補助
- 看板由来の数え方(最初に知った場所が看板、など)を先に紙に書き、毎年同じ基準で比べる
- 場所は、自分の式場の来館者がよく使う駅から選ぶ。写真は式場名と一言に絞る
- 基準に届かなくても、計測が足りていたか、検索数への効果がなかったかを確かめてから止める
