式場見学に二人のうち片方だけが来たら、来られなかった側の疑問を聞いて帰す
見学の予約票には、二人の名前が書いてある。ところが当日、会場に来たのは片方だけだった。仕事が急に入った、遠方で都合がつかなかった、そもそも結婚式にあまり関心がない。理由はいろいろです。式場の側からすると、この日の見学は「半分の見学」になります。
結論から書きます。片方だけが来た見学では、その場で決めてもらおうとするより、来られなかった側が何を気にしそうかを聞いて、次は二人で来る日を決めて帰すほうが、成約に近づきます。契約は二人が決めることなので、来た側がどれだけ気に入っても、来なかった側の「うーん」で止まります。この記事では、片方だけが来たときに式場が聞く3つの質問、渡すもの、次回の予約の取り方、そして効果の数え方を整理します。
先にお断りしておくと、片方だけが見学に来る割合や、そのときの成約率を示した公開調査は、僕は見つけられていません。以下の数字はすべて、考え方を説明するための仮置きです。実在の式場の実績ではありません。自分の会場の予約記録に入れ替えて読んでください。
片方だけの見学は、二人の見学と別の仕事になる
まず、二人で来た見学と何が違うのかを整理します。
二人で来た見学は、その場で意見のすり合わせが起きます。「このチャペル、いいね」「でも料理はどうだろう」と、二人が会話しながら見て回る。式場の担当者は、その会話から、何を重視しているかを読み取れます。
片方だけの見学では、これが起きません。来た人は、帰ってから相手に内容を伝える役目を負います。ここで二つのことが起きやすい。
一つ目は、伝わる内容が偏ることです。来た人が気に入った点だけが伝わり、相手が気にしそうな点(費用、日程、親族の来やすさ)が抜け落ちる。二つ目は、来なかった側が「決める人」として振る舞うことです。実際に見ていないぶん、写真や金額の数字だけで判断するので、見学で伝わるはずだった空気感が届きません。
つまり、片方だけの見学で式場がやることは、来た人を説得することではありません。来なかった側に、見学の中身をどれだけ正しく届けるか、です。
予約の時点で、片方だけになりそうかを知っておく
当日になって初めて「今日は一人です」と分かると、式場側も準備ができません。予約を受ける段階で、先に分かる範囲を聞いておきます。
やり方は簡単です。予約フォームや電話で、「当日はお二人でお越しですか」と一言添える。回答が「一人で行く」なら、それを予約メモに残します。ここで責めるような聞き方にならないよう、「お一人でも大丈夫です。その場合は、お二人で次回来られるよう、お持ち帰りの資料をご用意します」と、受け入れる姿勢を先に出します。
予約時に聞いておく利点は二つあります。担当者が、当日の案内を「一人用」に組み替えられること。もう一つは、来られない側の都合を聞けることです。「平日は難しいが、土曜なら二人で来られる」と分かれば、次の予約候補日を先に出せます。
見学の中で聞く3つの質問
当日、案内の最後の席で聞くことを3つに絞ります。多く聞いても、答えは返ってきません。
1. 「ご一緒に来られなかった方は、どんな点を気にされそうですか」
来た人に、来なかった人の関心を言語化してもらう質問です。この質問への答えは、「費用です」「親の意見を気にします」「そもそも式を挙げるか迷っています」など、見学の本当の論点を教えてくれます。担当者がその後に出す資料や提案が、この答えに合わせて変わります。
2. 「今日の見学で、お相手に一番伝えたいことは何ですか」
来た人が、相手にどう話すつもりかを聞きます。ここで返ってくる答えが、そのまま式場の印象です。たとえば「料理がおいしかった」と答えたなら、その二人にとっての決め手候補は料理だと分かります。また、答えに詰まる人には、担当者の側から「会場の雰囲気は写真より広く見えたと思いますが、どうでしたか」と選択肢を出して、言葉にする手伝いができます。
3. 「お相手が見学に来るなら、どの日が空いていそうですか」
次の予約の日付を、その場で候補として出してもらう質問です。「また連絡します」で別れると、日程調整が二人の間のやりとりに任されて、見学の熱が冷めます。その場で候補を2つか3つ聞いて、仮の予約を入れてしまうほうが、二人揃っての再来館につながります。
渡すものは「相手に見せる前提」で作る
片方だけの見学の帰りには、パンフレットや見積書を渡すと思います。ここで、渡すものを「来た人が読むもの」ではなく、「来なかった人に見せるもの」として考えます。
具体的には、次のようにします。
- 見積書は、総額と、含まれているもの・含まれていないものの一覧を、1枚にまとめて渡す。来なかった側が最初に気にするのは、たいてい総額です
- 会場の写真は、来た人のスマホで撮ってもらった分に加えて、式場側から送れる写真の一覧を用意する。見学していない人は、写真で空気を想像するしかありません
- 来た人が話しやすいよう、見学で良かったと言っていた点を、担当者がメモにして渡す。「この点をお相手に伝えてあげてください」と言い添える
渡すものの目的は、来た人の記憶を補うことと、来なかった人が一人で読んでも分かることです。
ここで、見積もりを出す・出さないは、迷うところです。この点は、別の記事で整理したとおり、二人の優先順位が揃っていない段階で見積もりを出すと、金額だけが一人歩きしやすい。片方だけの見学なら、確定の見積もりではなく、「人数と日取りを置いた目安」であることを紙に明記して渡す。その上で、二人揃った来館で正式に出す、と伝えておくと誤解が減ります。
次回の予約は「二人で」を条件にしない
次回の見学を取るとき、「お二人でお越しください」とだけ言うと、相手の都合が合わなければ予約は流れます。条件を厳しくしないほうが、次の来館は増えます。
そこで、次回の候補は二段構えにします。
- 第1候補:二人で来られる日(土日や祝日など)
- 第2候補:もう片方だけでも来られる日(平日の夜など)
第2候補は、来なかった側が一人で見学に来る日です。片方ずつ別の日に見ても、それぞれが式場を知っていれば、二人の会話は成り立ちます。「二人で」にこだわって次の見学が取れないより、片方ずつでも見てもらうほうが、成約に近い。ただし、見積もりは二人揃ったときに正式に出す、というルールだけ、担当者の間で決めておきます。
来た人に「決めて帰らなければ」と思わせない
片方だけの見学で気をつけたいのは、来た人に重い役目を背負わせないことです。担当者が「今日決めていただければ特典があります」と言うと、来た人は一人で決める責任を感じます。決めなければ式場に悪い、決めたら相手に怒られるかもしれない。この板挟みは、見学の印象そのものを悪くします。
そこで、冒頭か最後に一言添えます。「今日はお相手に伝えるための見学で大丈夫です。決めるのはお二人で揃ってからで構いません」。この言葉があるだけで、来た人は肩の力を抜いて質問できます。契約を急がないと伝えたほうが、結果として次の来館につながる。これは、期限で追う案内を避けるという、僕のポジションとも一致します。
また、来た人が「相手は式に乗り気でない」と話したときは、そこを深追いしません。理由を尋ねすぎると、二人の関係に踏み込みすぎます。式場の側にできるのは、「小さく始められる形もあります」「食事会や写真のみの選択肢もあります」と、選べる幅を静かに示すことまでです。
効果は、再来館率と成約の差で数える
最後に、この対応が元を取るのかを数えます。ここは仮置きの数字で、計算の仕方を示します。
仮に、月に40組が見学に来る式場だとします。そのうち、片方だけが来る見学が25%だと仮定します。40組の25%は、10組です。
何もしないと、この10組のうち、後日二人で再来館してくれるのが30%だとします。10組の30%は、3組です。
聞き取りと次回予約をその場で取る運用に変えて、再来館率が45%になったとします。10組の45%は、4.5組です。1か月で、1.5組ぶん再来館が増える計算です。
再来館した二人のうち、仮に半分が成約するなら、成約は3組の半分で1.5組から、4.5組の半分で2.25組になります。差は、月0.75組。年に直すと9組です。1組あたりの粗利を自社の数字で掛ければ、この運用に使った手間と比べられます。
もちろん、この数字は仮置きです。実際の割合は式場ごとに違い、再来館率が15ポイント上がる保証もありません。大事なのは、自社の予約記録から次の3つを数えることです。
- 見学に来た組のうち、片方だけだった組の割合
- そのうち、後日二人で再来館した組の割合
- 再来館した組の成約率
この3つが分かれば、聞き取りを始める前と後で比べられます。予約システムに「当日の来館者:二人/片方」の欄を足すだけでも、数えられるようになります。
担当者ごとの差をなくす
最後に、運用の話です。この対応は、担当者の個人技になりやすい。ある担当者は丁寧に聞くが、別の担当者は「お持ち帰りください」で終わる。それでは、数えても効果が見えません。
揃えるのは3つだけです。
- 見学の最後に、3つの質問のうち最低1つは聞く
- 次回の候補日を、その場で1つ以上決める
- 予約記録に、片方だけの見学だったことと、聞き取った内容を1行残す
これを週に一度、朝礼で5分見返す。誰が、何を聞いて、次の予約がどうなったか。それだけで、運用が回り始めます。
まとめ
- 片方だけが来た見学の目的は、来た人を説得することではなく、来なかった側に見学の中身を正しく届けることです
- 予約の段階で「当日はお二人ですか」を聞き、片方だけなら案内を組み替えます
- 見学の最後に、来なかった側が気にしそうな点、相手に一番伝えたいこと、次に来られる日の3つを聞きます
- 渡すものは「来なかった人が一人で読んでも分かる」形にし、見積もりは目安であることを明記します
- 次回の候補は、二人で来る日と、もう片方だけで来る日の二段構えにします
- 効果は、片方だけの組の割合、再来館率、再来館後の成約率の3つを自社の記録で数えて確かめます
