式場のインスタは、フォロワー数より保存数で投稿を選ぶ
式場のインスタを運用していると、毎月の報告に「フォロワーが何人増えました」「この投稿はいいねが多かったです」が並びます。数字が伸びていれば、続けてよい気がします。
ただ、見学予約を増やしたいのであれば、見る数字を一つ変えたほうがいいと僕は考えています。フォロワー数やいいね数ではなく、保存数です。この記事では、なぜ保存数なのか、どう使えば投稿を選べるのかを、前提を置いた計算で整理します。
先に断っておくと、この記事に出てくる数字は、すべて僕が置いた仮のものです。業界の平均値でも、どこかの会場の実績でもありません。自分のアカウントのインサイトに置き換えて読んでください。
フォロワー数が見学予約に結びつきにくい理由
フォロワー数は、アカウントを押した人の累計です。その中には、いま式場を探している二人以外の人が、たくさん混ざります。
たとえば、フォロワーが6,000人いるアカウントを考えます。内訳を、次のように仮置きします。
- 商圏内で、いま式場を検討している二人:5%(300人)
- すでに挙式を終えた卒花嫁や、その友人:30%(1,800人)
- 同業の式場、ドレスや写真などの取引先:10%(600人)
- 検討時期が先の人、商圏外の人、そのほか:55%(3,300人)
この仮の内訳では、見学予約の候補になるのは300人だけです。フォロワーが6,000人に増えても、候補が300人のままなら、見学予約は増えません。逆に、フォロワーが5,000人でも、候補が400人いるアカウントのほうが、予約は取れます。
しかも、フォロワーの内訳は、自分のアカウントでも正確には分かりません。インサイトで見えるのは、性別や年齢層、地域の割合までで、「いま検討中かどうか」は見えません。だから、フォロワー数は「検討中の人がどれだけいるか」の代わりにならないのです。
いいね数にも、同じことが言えます。いいねは押すのが軽く、卒花嫁や取引先の人も、挨拶のように押します。写真が綺麗だと、検討中でない人にも押されます。いいねが多い投稿が、そのまま見学予約につながるとは限りません。
保存は「後で見返す」という意思表示
保存は、いいねよりも手間がかかります。押した人は、あとで自分のコレクションから、その投稿を開き直すつもりです。式場探しの途中の二人であれば、「見学の前に見返したい」「家族に見せたい」「他の式場と並べたい」という動きに近くなります。
もちろん、保存した人がすべて検討中とは限りません。写真の構図や装花が好きで、保存するだけの人もいます。保存は完全な指標ではありません。それでも、いいね数より、検討中の二人の割合が高くなりやすい、というのが僕の見立てです。この点は、自分のアカウントで確かめる必要があります。確かめ方は、後の節に書きます。
もう一つ、保存数が使いやすい理由があります。インスタのインサイトで、投稿ごとの保存数が見えることです。追加のツールも、広告も要りません。いま運用しているアカウントで、今日から見られます。
仮の数字で、二つの投稿を比べる
投稿の種類を二つ、仮置きします。
投稿A:会場の雰囲気がよく分かる、広角の写真。 投稿B:見積もりの内訳を、チャペル・料理・衣装・装花に分けて解説した、文字入りの画像。
1本あたりの数字を、次のように置きます。
- 投稿A:リーチ8,000、いいね400、保存40
- 投稿B:リーチ3,000、いいね60、保存150
リーチあたりで見ると、いいね率はAが5%、Bが2%。保存率はAが0.5%、Bが5%です。いいね数で選べば、Aを続けることになります。保存数で選べば、Bです。
ここで、保存した人のうち、のちに見学予約まで進む人が2%いると仮定します。この2%も、僕が置いた数字です。この前提で計算すると、1本あたりの見学予約は、Aが0.8件、Bが3.0件になります。
半年に、AとBを6本ずつ投稿したとします。見学予約は、Aが4.8件、Bが18.0件です。差は、13件ほどです。
見学予約までの率が、実際は2%より低ければ、数字は小さくなります。大切なのは、絶対値ではなく、順位が入れ替わる仕組みです。リーチが大きい投稿は、いいねが集まります。しかし、見返される投稿は、リーチが小さくても保存を集めます。見学の前に使われるのは、後者です。
保存が集まりやすい投稿の傾向
僕が置いたのは仮の数字ですが、どんな投稿が保存されやすいかは、仕組みから言えます。
後で見返す理由がある投稿です。
- 見積もりの内訳、料金に含まれるもの・含まれないものの一覧
- 見学の流れ、所要時間、持ち物
- 季節ごとの会場の見え方(朝、夕方、雨の日)
- 親族の人数ごとの席の配置
- 試食で出る料理の内容
これらは、検討中の二人が、家族や友人に見せたり、別の式場と並べたりするときに使います。見た瞬間に「綺麗」と思う写真より、後で何度も開く情報のほうが、保存されます。
会場の雰囲気写真が不要という意味ではありません。写真は、最初に見つけてもらう入口になります。ただし、写真の投稿だけを続けても、見学の前に見返される理由が作れません。入口の投稿と、見返される投稿の両方が要るのです。
保存数の使い方:投稿を選ぶ3つの手順
手順は三つです。
1. 保存率を、リーチで割って出す
投稿ごとに、保存数÷リーチを出します。インサイトに保存数とリーチが出ているので、表計算ソフトで足ります。月に1回、直近の投稿をまとめて計算します。
保存数の絶対値だけで見ると、リーチの大きい投稿が有利になります。率で割ることで、小さな投稿の中にある、見返される投稿が見えます。
2. 上位3本と下位3本を見比べる
保存率の高い順に並べ、上位3本と下位3本を見比べます。何が違うかを、文章で書きます。
「見積もりの内訳」「所要時間」のように、後で使う情報が入っているか。それとも、写真だけか。書き出すと、自分のアカウントで保存される型が見えます。
3. 上位の型を、次の月の投稿の半分にする
次の月は、投稿の半分を、上位の型に寄せます。残りの半分は、入口になる写真や動画に使います。半分に留めるのは、写真が不要になるわけではないからです。
3か月続けたら、見学予約の数と並べます。ここで、保存率の高い月に見学予約が増えているかを見ます。増えていなければ、このアカウントでは保存数が指標にならないと分かります。その場合は、別の指標を試せばいい。指標を決めてから検証するのが、順番です。
見学予約との関係を確かめる方法
保存が、見学予約の代わりになるかは、自分のアカウントで確かめる必要があります。確かめ方は二つあります。
一つ目は、見学予約フォームの流入経路の質問に、「インスタ」と答えた二人に、どの投稿で知ったかを聞くことです。フォームの自由記述に一行足すだけで済みます。聞くのは「最初に見た投稿」でなく、「見学の前に見返した投稿」です。
二つ目は、見学の席で、担当者が一言聞くことです。「インスタはご覧になりましたか。どの投稿が印象に残っていますか」。答えを、見学記録の備考に書いておきます。三か月分たまれば、保存率の高い投稿と、答えに出た投稿が重なるかが分かります。
重なっていれば、保存率で投稿を選ぶ判断は、このアカウントで通用します。重なっていなければ、保存数はこのアカウントでは外れていると分かるので、別の指標に替えます。
小さなアカウントでも、同じ見方でよいのか
フォロワーが1,000人に届かないアカウントでは、1本の投稿の保存数が数件にしかなりません。数件の差で型を決めるのは危ういので、月1回ではなく、3か月分をまとめて見ます。
見方は変わりません。保存率の高い順に並べ、上位と下位の違いを文章にします。件数が少ないうちは、「この型が正しい」と決めず、「次の月に試す型」を一つ決める程度にとどめます。試した結果を翌月の数字で見て、外れていたら戻せばよいのです。
運用の担当者が一人で、投稿に使える時間が週に数時間しかない会場ほど、全部の投稿に力を入れることはできません。保存率で、手をかける投稿とかけない投稿を分けておくと、限られた時間を、見返される投稿に回せます。
保存数を見るときの注意
保存数を指標にすると、起きやすい失敗があります。
保存を増やすために、「保存してね」と書き添える投稿が増えることです。呼びかけで保存が増えても、見返される内容があるわけではありません。保存率は上がっても、見学予約は増えません。保存を呼びかけるのではなく、見返す理由を、投稿の中身に入れることが先です。
もう一つは、保存率の高い投稿だけを続けて、アカウントの入口がなくなることです。保存されやすい情報の投稿は、すでに式場に関心がある人に向いています。まだ式場を探していない人に、アカウントを見つけてもらう入口には、写真や動画が要ります。半分は入口に使う、という配分を崩さないでください。
最後に、保存数は、見るべき数字の一つに過ぎません。見学予約、来館数、成約数と並べて見るから、意味が出ます。保存率だけを追うと、フォロワー数を追っていたときと同じ失敗を、別の数字でくり返します。
まとめ
- フォロワー数には、卒花嫁、同業、取引先、検討時期が先の人が混ざる。検討中の二人が何人いるかは、フォロワー数から分からない
- いいね数は軽く押せるので、検討中でない人の分も入る。いいねの多い投稿が、見学予約を生むとは限らない
- 保存は「後で見返す」という意思表示で、いいね数より、検討中の二人の割合が高くなりやすい。ただし完全な指標ではない
- 仮の数字では、リーチの大きい写真より、見積もり内訳のような文字入りの投稿のほうが、見学予約の順位は上になる。順位が入れ替わる仕組みを見ることが大切
- 保存率は、保存数÷リーチで出す。上位3本と下位3本を見比べて、保存される型を文章にする
- 投稿の半分を保存される型に寄せ、残りの半分は入口になる写真や動画に使う
- 「保存してね」と呼びかけて数字を作らない。見返す理由を投稿の中身に入れる
- 見学予約フォームか見学の席で「見学前に見返した投稿」を聞き、保存率の高い投稿と重なるかを3か月で確かめる
