式場の問い合わせが減った月は、広告費を足す前に減った段を探す
式場の問い合わせが減った月に、いちばん多い反応は広告費を足すことだと思います。数字が足りないのだから、入口を太くする。理屈は通っていますが、減ったのが入口の数ではなかった場合、足した広告費はほぼそのまま無駄になります。
この記事の結論は、減った月はまず「どの段で減ったか」を1つに絞ってから打ち手を選ぶ、です。段は4つに分けます。見られた数、見られたあとの予約、予約したあとの来館、来館したあとの成約です。広告費が効くのは最初の1段だけ。残りの3段で減っているなら、広告費を足しても穴の空いたバケツに水を足すことになります。
先に断っておくと、ここで使う数字はすべて仮の数字です。調査から引いた平均値ではありません。式場ごとに桁は違うので、自分の会場の数字を入れて読んでください。
同じ「来館が減った」でも原因は別物になる
仮に、先月と今月で次のような数字だったとします。
- 先月:公式サイトや媒体ページの閲覧が1,000回、そのうち5%が見学を予約(50組)、予約した50組の半分が来館(25組)
- 今月A:閲覧は1,000回のまま、見学予約が5%、来館が予約の35%(17.5組、小数のまま計算します)
- 今月B:閲覧が700回に減り、見学予約は5%、来館は予約の50%(17.5組)
Aの今月もBの今月も、来館は17.5組で、先月の25組から3割減りました。月次の報告書に並ぶのは来館数だけなので、どちらも「来館が3割減った月」に見えます。けれども中身は別の問題です。
Aは、予約した二人が来なくなった月です。入口の数は先月と同じだったので、ここに広告費を足しても、来ない二人が増えるだけです。見るべきは、予約から来館までの連絡と日程の組み方です。
Bは、見られた数そのものが減った月です。こちらは広告や媒体や検索の話に戻ってきます。ただ、足す前に確かめることがあります。減ったのが全体なのか、特定の入口だけなのかです。
同じ17.5組でも、Aに広告費を足すと無駄になり、Bに予約導線の改善を足しても効かない。当たり前に聞こえますが、報告書が来館数の1行だけだと、この区別がそもそもできません。
切り分けの順番は後ろから前へ
減った月に、僕なら次の順に見ます。入口から見ないで、成約に近い側から遡ります。
理由は、後ろの段のほうが原因が見つかりやすく、直すのも安いからです。予約リマインドの文面を直すのに広告費はいりません。広告を増やすのは最後の手段にしたほうが、財布の傷は浅く済みます。
1段目:来館した組の成約率
まず来館した組のうち、契約まで進んだ組と、保留や他会場に決まった組の比率を見ます。ここが落ちていると、問い合わせや来館を増やしても成約は増えません。見学の組み方、見積もりの出し方、追客の中身の話になります。
ただし成約は、来館してから契約までに数週間から数か月かかります。今月の来館のうち契約まで終わった組はまだ少ないので、今月の成約率は低く出ます。見るのは、数か月前に来館した組が、その後どうなったかです。今月の欄だけ見て慌てると、何も悪くないのに見学の組み方を変えてしまいます。
2段目:予約した組のうち来館した組
次が、予約から来館までの歩留まりです。Aのように、予約はあるのに来ない二人が増えていれば、この段です。
見るのは、無断で来なかった組と、事前に連絡があって延期や取りやめになった組を分けることです。無断なのか連絡ありなのかで、直す場所が違うからです。無断が増えたなら、予約完了後のメールやLINE、前日の連絡の出し方が候補に上がります。連絡ありの延期が増えたなら、日程の選択肢が合っていないか、二人の側に迷いが出ているかです。
加えて、予約した曜日と来館日の間が空いた予約ほど、来ない確率が上がるのは仕組みとして自然です。予約から来館までの日数も、月初に一度並べておくといいと思います。
3段目:見られた数のうち予約した組
3段目は、見学や相談を予約した比率です。閲覧は先月と同じなのに予約が減っているなら、この段です。
ここで疑うのは、二人が見ている画面のほうです。予約ボタンの文言や位置、予約フォームの項目数、スマホでの表示、予約枠の空きの見え方が、先月から変わっていないか。サイトを触った覚えがなくても、予約の仕組みを提供している会社が仕様を変えていたり、枠の入力が止まって「満席」に見えていたりすることがあります。
スマホで自分の会場名を検索し、見学予約まで実際に押してみる。月初に10分でできる確認です。数字を見るより、画面を見るほうが早く原因に当たることが多い段です。
4段目:見られた数そのもの
最後が、入口の数です。1〜3段目に異常がなく、見られた数だけが減っているなら、ここで初めて広告や媒体や検索の話になります。
見られた数が減っていたときは、全体で減ったのか、入口別に減ったのかを分けます。全体の3割減が、1つの入口の大幅減から来ていることはよくあります。
- 検索から来た数が減ったなら、自分の会場名や地名で検索したときの表示順や、地図の表示内容を確かめる
- 媒体経由が減ったなら、掲載の順位や掲載内容の更新が止まっていないかを確かめる
- SNS経由が減ったなら、投稿の頻度と、プロフィールのリンク先が生きているかを確かめる
- 広告経由が減ったなら、出稿の上限額に月の途中で達して止まっていないかを確かめる
最後の「広告が上限で止まっていた」は、地味ですが現場で起きます。予算を足す前に、そもそも止まっていないかを確認するだけで済む月があります。
季節で減るものは、減ったうちに入れない
もう1つ、切り分けの前に確かめておくことがあります。その減少が、毎年同じ時期に起きるものかどうかです。
式場の問い合わせは、月によって上下します。繁忙期の前後や連休の前後、年末年始の前後で、同じ式場でも毎年似た形の波が出る会場は多いはずです。去年の同じ月と今月を並べて、波の形が同じなら、それは悪化ではなく季節です。この場合の正しい動きは、何もしないか、次の山に向けて仕込むことです。
ただし、去年のその月の記録が無い会場もあります。その場合は、無理に結論を出さず、次の月から同じ表を残し始めてください。1年たつと、減ったのか、季節なのかを区別できるようになります。
逆に、前年同月より減っていて、しかも段のどこかで比率が下がっているなら、それは本物の悪化です。ここで初めて、打ち手を選ぶ段階に入ります。
数が少ない会場は、1組の揺れを減少と呼ばない
もう1つ、小さな会場ほど気をつけたいのが、分母の小ささです。月の見学予約が10組前後の会場だと、来館が1組減っただけで1割減に見えます。
仮に予約が10組、来館が6組だった月の翌月に、予約10組で来館が5組だったとします。比率は60%から50%に落ちて、グラフにすると急降下です。けれども、1組の違いは、二人の仕事の都合や天気で普通に起きます。この1組で予約後の連絡を作り直すのは、やりすぎです。
少ない会場では、1か月でなく3か月まとめて比率を出します。3か月分の予約が30組、来館が17組なら、57%です。この57%が、前の3か月の60%前後から動いていなければ、何も起きていません。逆に、3か月続けて50%を切るなら、揺れではなく落ち方です。
月の数が大きい会場でも、この見方は使えます。1か月の動きは「疑う合図」、3か月の動きは「直す根拠」と分けておくと、慌てて動いて空振りする回数が減ります。
月初の10分でやる切り分け表
実際にやる手順を、月初の10分に収まる形にします。紙でもスプレッドシートでも構いません。
- 先月と、前年の同じ月について、閲覧・予約・来館・成約の4つの数を横に並べる(成約は数か月前の来館分で数える)
- 段と段の間の比率を3つ出す(閲覧→予約、予約→来館、来館→成約)
- 先月と比べて、いちばん落ちた比率を1つ選ぶ
- その段の担当を決める。予約→来館なら予約後の連絡、閲覧→予約なら画面、閲覧そのものなら入口別の内訳
- 来月、同じ表でその比率が戻ったかを見る
ポイントは3番です。直す段を1つに絞ることです。3段同時に手を入れると、翌月に比率が戻っても、どの手が効いたのか分かりません。効いた手が分からないと、同じ減り方が来たときに同じ手を打てません。
広告費を足してよいのは、この条件が揃ったとき
では、広告費を足すのはいつかというと、次の3つが揃ったときだと考えています。
- 閲覧→予約、予約→来館、来館→成約の3つの比率が、先月までと変わっていない
- 見られた数の減りが、季節では説明できず、特定の入口に偏っているか、全体にまたがっている
- 減った入口が止まっていたのではなく、動いているのに見られなくなっている
この3つが揃うなら、入口を太くする判断は筋が通ります。そのときも、全体に足さず、減った入口にだけ足すほうが、あとで効果を数えやすくなります。
逆に、3つのうちどれかが崩れているなら、足すのは後です。後ろの段の比率が落ちたまま入口を増やすと、同じ比率で取りこぼす数が増えるだけで、成約はほとんど増えません。仮にAの月で閲覧を1.5倍にしても、予約5%、来館35%のままなら、来館は17.5組から約26組に増えるだけです。広告費は1.5倍かかっているのに、来館は先月の25組にようやく並ぶ程度です。後ろの段を先月の水準に戻せば、広告費なしで25組に戻ります。
まとめ
- 来館が減った月は、同じ数字でも原因が別になる。見られた数の減少と、予約した組が来なくなった減少では、打ち手が逆になる
- 切り分けは成約に近い側から遡る。来館→成約、予約→来館、閲覧→予約、閲覧の順に比率を見る
- 成約率は数か月前の来館分で数える。今月の欄だけで判断しない
- 毎年同じ月に起きる波は、減ったうちに入れない。前年同月と並べて確かめる
- 直す段は1つに絞る。同時に3段を触ると、何が効いたか分からなくなる
- 広告費を足すのは、後ろの比率が崩れておらず、減った入口が止まっていないと確かめたあとにする
- 小さな会場は3か月まとめて比率を出す。1組の揺れで手を入れない
- 月初の10分で、4つの数と3つの比率を表にして残す。1年で季節と悪化が見分けられるようになる
