来館・成約

式場見学後の手書きカードは効果を測れない前提で続け方を決める

式場見学のあと、プランナーが手書きのカードを書いて郵送する。やっている式場は多いですし、やめた式場の話はあまり聞きません。では、あのカードは成約を上げているのでしょうか。

先に結論を書きます。手書きカードの効果は、ほとんどの式場の見学組数では測れません。測れないのに、やめる理由も見つかりにくい。この記事は、その状態でカードをどう続けるか、という話です。

手書きカードの成約効果を示した調査は、今回探した範囲では見つかりませんでした。なので数字は、すべて「仮に〜とすると」と前提を置いた計算です。実在の式場の実績ではありません。業界全体がこうだ、とも言いません。仕組みとして、こうなる、という範囲で書きます。

カード1枚にかかる費用を数える

まず費用です。仮に次の前提を置きます。

  • 書くプランナーの時間は1枚10分
  • プランナーの時間を時給2,000円で見る
  • カード、封筒、切手で1枚100円

この前提だと、1枚の費用は約430円です。時間が約333円、モノが100円。月に28枚書いても約12,000円。プランナー1人が月に使う時間は、4時間40分です。

粗利で見ると、もっと小さく見えます。仮に1組の成約で粗利が80万円残るとします。月12,000円の費用は、その1.5%です。成約が0.015組、つまり年に直して0.18組増えれば元が取れる計算になります。

この数字を見ると、「やって損はない」という結論になりそうです。実際、現場でカードがやめられない理由もここにあると思います。費用が小さすぎて、やめる決め手がありません。

一方で、費用が小さいことと、効果があることは別の話です。次に、効果のほうを見ます。

効果を測るには、何組の見学が要るか

効果を測る方法は単純です。カードを書いた二人と、書かなかった二人で、成約率を比べます。

ここで標本の大きさが問題になります。仮に、カードを書かなかった二人の成約率が10%、書いた二人が13%だとします。3ポイントの差です。この差が偶然ではないと言うには、統計の標準的な計算(有意水準5%、検出力80%)で、各群に約1,770組が要ります。

差が大きければ少なくて済みます。10%と15%なら約690組。20%と30%という大きな差でも約290組です。

月に28組へカードを書く式場で考えると、書かない群を同じ数だけ作っても、1年で書く群336組、書かない群336組です。10%と15%の差ですら、必要な690組に届きません。3ポイントの差なら、何年やっても届かない計算になります。

つまり、カードの効果は小さいから見えないのではありません。見学組数に対して、効果を検出するための標本が足りないから見えないのです。「カードを始めてから成約が増えた気がする」という感覚は、季節、媒体、担当者の入れ替わりの影響と区別できません。

ここは、自分の会場の数字で確かめてください。必要な組数は、成約率の差が小さいほど急に増えます。

測れない施策は、測る代わりに条件で管理する

測れないなら、やめるべきでしょうか。僕はそうは考えません。費用が月12,000円ほどで、お礼を伝えること自体に、二人に不快を与える要素がほぼないからです。

ただし、測れない施策は放っておくと広がります。全員に書く、毎回同じ文面、書くのが月末にまとまる。こうなると、効果の薄いまま、プランナーの時間だけが減っていきます。

測れないときは、結果で管理する代わりに、条件で管理します。決める条件は4つです。

誰に書くか

見学したその日に契約した二人には、カードは要りません。契約書の手続きが残っているので、そこで会話は続きます。

書く対象は、持ち帰った二人です。ここでいう持ち帰りとは、見学の日に契約せず、検討に入った二人のことです。見学した全員に書くと、月40組で40枚、約17,000円と6時間40分。持ち帰りに絞ると、先ほどの28枚になります。

さらに絞るなら、見学中に「ここは気に入った」と言葉に出した二人です。気に入った点が書けない二人には、書く内容が作れないからです。

何を書くか

文面は、見学中の会話の1点だけを入れます。たとえば、母親が窓の外の庭を見て足を止めた。新婦が、階段の幅を気にして靴の話をした。そういう一場面です。

「本日はご来館ありがとうございました。ご縁がありましたら」という定型だけなら、書かないほうがましだと僕は思います。同じ文面が他の式場からも届くからです。見学のメモに、二人が口にした言葉を1行残しておけば、カードの文面はそこから拾えます。

この会話の1点は、実在の会話だけを使います。聞いていない話を、聞いたように書いてはいけません。

いつ書くか

見学の翌日までに投函します。見学の記憶が二人に残っているうちに届くほうが、カードの意味が通じるからです。ここで速度が落ちると、手書きの手間をかけた意味が薄れます。

届くまでの日数も、見ておく価値があります。ポスト投函から届くまで1〜3日かかるとして、翌日の投函なら、見学から2〜4日後に届きます。メールでのお礼連絡とは役割を分けて、メールは当日、カードは届いた頃に二人が見返せるものとして使う、という整理です。

いつ止めるか

止める条件も先に決めます。次のどれかに当てはまったら、書く対象を減らすか、一度止めます。

  • 月の見学組数が増えて、書く時間が月に8時間を超えた
  • カードを書く時間のせいで、見学後のメールや電話のフォローが遅れた
  • 返信や来館再予約など、カードを受け取った反応がまったく見えなくなった

最後の項目は、効果の測定とは違います。成約率ではなく、二人が何か反応を返したかを見ます。数は少なくても、「カードをいただきました」と一言言われる回数があるうちは、続ける理由になります。反応が1年間ゼロなら、止めてよい理由になります。

会話の1点を、どうやって拾うか

条件のうち、いちばん崩れやすいのが「会話の1点」です。見学が終わって数時間たつと、二人が何と言ったかは、かなり曖昧になります。夕方に3組分をまとめて書こうとすると、同じような文面になりがちです。

対策は、見学の最中ではなく、見学の直後に1行だけメモを残すことです。二人を見送って事務所に戻るまでの数分で、次の2つを書きます。

  • 二人が足を止めた、または自分から口にした場所や物
  • その理由として聞いた言葉。聞けていなければ空欄のまま

これだけなら1分で済みます。カードを書くときは、このメモの1行目をそのまま文面の中心に置きます。空欄の二人には、無理に書かず、書かない判断をします。見学中に引っかかりが何も出なかった二人に、カードで取り繕っても、読む側には伝わるからです。

文面の長さは、3〜4行で足ります。1行目に見学のお礼、2行目に会話の1点、3行目に次に二人が動くときの一言。たとえば「お母様が庭で足を止められたのが印象に残っています。次にお越しの際は、夕方の庭も見ていただけます」のような形です。夕方の庭が見られるかどうかは、会場ごとに事実を確かめてから書きます。

担当者ごとの差は、そのまま残す

もう1つ、運用で出る話があります。カードを書く速さや文面は、プランナーごとに差が出ます。10分で書ける人もいれば、20分かかる人もいます。

ここを揃えようとして、文例集を配ると、文面が似てきます。僕は差を残すほうがよいと考えています。二人が複数の式場から届くカードを見比べたときに、定型文のカードは見分けがつかなくなるからです。

揃えるのは、書く対象と投函のタイミングだけにします。文章の中身は担当者に任せる。ただし、聞いていない話を書かない、期限や特典の話は書かない、という2つの線は全員で共有します。カードに特典の期限を書くと、お礼ではなく営業になります。

測れる範囲だけ測る

成約率は測れませんが、測れるものもあります。

1つは、書いた枚数と、書くのにかかった時間です。月28枚で4時間40分という前提が、実際にどれくらいずれるか。10分のつもりが、実際は15分かかっているなら、費用は約1.5倍になります。

もう1つは、反応の数です。カードを受け取った二人のうち、再来館の予約、メールの返信、見学時の話題として触れた回数を、記録しておきます。月に28枚で3件の反応があれば、約11%。1件なら約4%。この割合は成約率ではありませんが、続けるかどうかの目安にはなります。

ここでも、反応が出た二人が成約したかどうかは、あまり気にしません。反応が出る二人は、もともと前向きな二人かもしれないからです。カードが原因かどうかは、この数字では分かりません。分からないままでも、続ける条件と止める条件があれば、運用はできます。

手書きでなくてよい場合

最後に、手書きにこだわらなくてもよい場合を整理します。

見学の組数が多い式場では、全員に手書きするのは現実的ではありません。その場合は、対象を気に入った点を口にした二人だけに絞るか、印刷した定型のカードに手書きの1行だけを足す形にします。

反対に、見学の組数が少ない式場は、1枚にかける時間を増やせます。10分を20分にして、二人が見学で撮った写真の構図まで書き添える、といった使い方です。

どちらの式場にも共通するのは、効果を数字で証明しようとしないことです。証明できない施策を、証明できるかのように報告すると、現場が数字を飾り始めます。測れないものは測れないと認めたうえで、条件で運用する。そのほうが長続きします。

まとめ

  • 手書きカードの成約効果を示す調査は、今回探した範囲では見つからなかった。この記事の数字はすべて前提つきの計算
  • 仮に1枚430円、月28枚なら約12,000円と4時間40分。粗利80万円の成約が年に0.18組増えれば元が取れる
  • 成約率10%と13%の差を検出するには、各群に約1,770組が必要。月28組のカードでは何年やっても届かない
  • 測れない施策は、結果ではなく条件で管理する。誰に書くか、何を書くか、いつ書くか、いつ止めるか
  • 書く対象は持ち帰った二人、さらに見学中に気に入った点を口にした二人。文面は見学中の会話の1点、翌日までに投函する
  • 見るのは書いた枚数、かかった時間、二人からの反応の数。成約との因果は、分からないままで運用する