業界動向

国際結婚の二人は双方外国籍が増えた|式場はまず資料を二言語に

結婚式場で「国際カップル」と聞くと、日本人と外国籍の二人を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。日本側の親族が日本語で参列して、外国側の友人が数人来る。通訳は友人に頼むか、司会が少し英語を足す。こういう組み立てで回してきた会場は、けっこうあると思います。

結論を先に書きます。この前提は、統計の上ではもう古くなりつつあります。国の人口動態統計をまとめた表を見ると、外国籍を含む婚姻の件数はほぼ横ばいですが、中身が入れ替わっています。日本人と外国籍の組は24年で半分に減り、二人とも外国籍の組は5割増えました。後者は、日本語を使わない親族やゲストが大半になる可能性が高い組です。年120組の仮の式場で言えば、該当するのは年1組前後で、通訳の常設は割に合いません。先に手を付けるのは、見積書や当日進行表の二言語化です。順に数字を見ます。

出典と、この記事で言えること

使った数字は、国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集2026」の表6-16(夫妻の国籍別婚姻数、1965〜2024年)です。もとは厚生労働省の人口動態統計で、役所に出された婚姻届の件数です。

ここで押さえておきたいのは、これは婚姻届の数であって、挙式や披露宴をした組の数ではないことです。外国籍の二人がどれくらいの割合で式を挙げるのかは、僕は確かめられていません。なので、この記事では「婚姻届の構成比と同じ割合で式場に来る」と仮に置いて計算します。実際の来館の割合は、会場のある地域や立地で大きく変わるはずです。ご自身の会場の問い合わせ履歴で置き換えて読んでください。

2024年の内訳

2024年の婚姻は490,171件でした。内訳は次のとおりです。

区分 件数 構成比
夫妻とも日本人 466,672 95.21%
夫が日本人・妻が外国籍 11,517 2.35%
夫が外国籍・妻が日本人 6,903 1.41%
夫妻とも外国籍 5,079 1.04%

外国籍が1人でも含まれる組は、11,517+6,903+5,079で23,499件、全体の4.79%です。20組に1組弱という頻度になります。

24年で入れ替わったもの

同じ表で、2000年と2024年を並べてみます。

2000年 2024年 増減
婚姻全体 801,466 490,171 −38.8%
日本人と外国籍の組(夫婦どちらか) 36,263 18,420 −49.2%
夫妻とも外国籍 3,328 5,079 +52.6%
外国籍を含む組の合計 39,591 23,499 −40.6%

外国籍を含む組の合計は、婚姻全体とほぼ同じ速さで減っています。構成比にすると、2000年の4.94%と2024年の4.79%で、ほとんど動いていません。

動いたのは中身のほうです。日本人と外国籍の組は約半分になりました。その一方で、二人とも外国籍の組は1.5倍です。2000年に外国籍を含む組の8%ほどだった二人とも外国籍の組は、2024年には22%を占めています(3,328÷39,591と5,079÷23,499)。

途中の年も見ておきます。二人とも外国籍の組は、2010年が3,729件、2015年が3,590件、2020年が3,700件、2021年が4,829件、2022年が5,055件、2023年が5,270件、2024年が5,079件でした。2020年ごろまでは3,600〜3,700件で動かず、2021年に4,800件台へ段を上げています。ゆるやかな増加というより、段差のある増え方です。

ただ、なぜ増えたのかは、この表からは分かりません。在留している外国籍の人の数が増えたことが関係していると考えるのが自然ですが、僕はその裏取りをしていません。要因の話は書かず、「構成が変わった」という事実だけを使います。

「日本語で参列する親族がいる」前提が外れる

会場の運営にとって、この入れ替わりが意味するところを考えます。

日本人と外国籍の組なら、日本側の親族や友人が日本語で参列します。式の進行、料理の説明、案内の文書は日本語で足ります。通訳が必要なのは、外国側のゲストが来るときだけです。必要な人数は全体の一部で、友人の通訳でも回ることが多いです。

二人とも外国籍の組は、事情が違う可能性が高いです。親族もゲストも日本語を使わない比率が上がります。あくまで可能性で、日本語が堪能な二人もいますし、日本で長く暮らしている二人もいます。ただ、「日本語の案内で通じる」という前提を置けなくなるのは確かです。

困るのは当日の進行だけではありません。見積書の項目、キャンセル料の規定、アレルギー表の記入、当日の進行表の確認といった、契約と運営の書面が理解されているかどうかが、そもそも怪しくなります。ここが理解されないまま進むと、後から「聞いていない」が出たときに、会場は何をもって説明したと言えるのかが問われます。法的な評価はケースによって違うので踏み込みません。書面が読まれていない状態を会場の側で作ってしまうと、説明の根拠が弱くなる。そこだけ押さえておけば足ります。

仮の式場に当てはめる

計算の前提を置きます。

  • 年間の挙式は120組
  • 1組あたりの粗利は148.5万円(ほかの記事で使っている仮の式場の値に合わせました)
  • 商圏の婚姻の構成は全国と同じ。挙式率も同じとします(実際は違いますが、基準になります)

この前提で、年120組の式場に来る組は次のとおりです。

  • 外国籍を含む組:120×4.79%で年5.75組
  • 日本人と外国籍の組:120×3.76%で年4.5組
  • 二人とも外国籍の組:120×1.04%で年1.25組

年に1組強です。「二人とも外国籍」が毎月来る会場は、おそらく少数です。この数字を見て、通訳を常設するかを決める話になります。

通訳を常設するか、外注するか、資料を作るか

対応の選択肢を3つ並べます。金額は、僕が置いた仮の値です。

A. 資料の二言語化。 見積書の雛形、キャンセル規定、当日進行表、アレルギー票を英語版にします。初期費用を30万円(翻訳と版下の作成)、更新を年10万円として、3年で償却すると、年あたり約20万円です。

B. 通訳のスポット手配。 来館や打ち合わせ、当日の通訳を外部から手配します。1組あたり8万円と置きます。外国籍を含む5.75組のすべてで使えば年46万円です。二人とも外国籍の1.25組だけなら年10万円です。

C. 通訳できるスタッフの常設。 年400万円(人件費)と置きます。

それぞれの費用を、成約の組数に直します。

  • A:年20万円は、粗利148.5万円の0.13組分
  • B:年46万円なら0.31組分。二人とも外国籍の組だけなら10万円で0.07組分
  • C:年400万円は2.7組分

分岐点も出しておきます。CとBが同じ費用になるのは、400万円÷8万円で年50組です。つまり、通訳が必要な組が年50組を超えるまでは、外注のほうが安いです。年120組の式場で、必要な組が5.75組なら、50組との差は一桁近くあります。

このとき「通訳を常設して外国籍の二人を増やす」という選択肢は、常設で2.7組を余計に獲得できるかという賭けになります。その2.7組は、全体の外国籍を含む組5.75組の半分近くにあたります。今、外国籍の問い合わせが年にどれくらいあって、そのうち言語が理由で見送られた組がどれだけあるのかを数えていない会場が、いきなり常設に進むのは賭けが大きいです。

先に手を付けるもの

優先順位は、Aの二言語化、Bの外注先を決めておくこと、Cは数えてから、の順です。

Aを先にする理由は、費用が最も小さいことだけではありません。二人とも外国籍の組にとって、書面が読める状態になることが、問い合わせから契約までのあいだで最初の壁になるからです。通訳を手配しても、契約書面が日本語のままなら、その場で説明を聞いて納得しても、帰ってから見直せません。

Bは、費用が事前に決まっていると、見積もりに組み込めます。「通訳つきの来館は、1回あたり〇万円」を、あらかじめ料金表に書いておくやり方です。手配先を毎回探すと、返答が遅れて、問い合わせの熱が冷めます。

Cは、数えてからです。問い合わせ履歴から、外国籍の二人が年に何組あったか、言語を理由に見送られたのは何組かを数えます。その数が年10組を超えて、かつ通訳で成約が2〜3組増えそうだと見えたら、常設の検討に入れます。数えていない状態で人を雇うのは、順番が逆です。

数え方の目安

自分の会場で数えるときは、次の3つを問い合わせの記録から拾うと足ります。

  1. 氏名や住所、メールの文面から外国籍と思われる問い合わせの件数(年間)
  2. そのうち来館に至った件数と、成約に至った件数
  3. 見送りの理由欄に、言語や書面の分かりにくさが書かれていた件数

3が空欄なら、まず記録の取り方を変える必要があります。理由を書かない運用のままだと、言語で落ちている組は数字に出てきません。

注意点

最後に、この記事の限界を書いておきます。

  • 数字は婚姻届の件数で、挙式の件数ではありません。外国籍の二人が式を挙げる割合は、僕は確かめられていません
  • 地域差が大きいです。外国籍の住民が多い地域では、構成比が全国より高いはずです。5.75組は目安であって、ご自身の会場の値ではありません
  • 金額(30万円、年10万円、1組8万円、年400万円)はすべて仮の値です。実際の見積もりに置き換えて、結論が変わらないかを確かめてください
  • 「二人とも外国籍なら日本語が通じない」とは限りません。日本語が堪能な二人もいるので、言語の確認は問い合わせの時点で本人に聞くのが確実です

まとめ

  • 2024年の婚姻のうち、夫妻のどちらかまたは両方が外国籍の組は23,499件で、全体の4.79%(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2026」表6-16)
  • 外国籍を含む組の構成比は、2000年の4.94%からほとんど動いていない
  • 中身は入れ替わった。日本人と外国籍の組は2000年の36,263件から18,420件へ約半分に、二人とも外国籍の組は3,328件から5,079件へ約1.5倍になった
  • 二人とも外国籍の組では、「日本語で参列する親族がいる」前提が置けなくなる可能性が高い
  • 年120組の仮の式場に当てはめると、外国籍を含む組は年5.75組、二人とも外国籍は年1.25組
  • 通訳の常設(年400万円と仮定)が外注(1組8万円と仮定)より安くなるのは、通訳の要る組が年50組を超えてから
  • 先に手を付けるのは、見積書・規定・進行表・アレルギー票の二言語化(年約20万円、粗利の0.13組分)
  • 常設を検討する前に、外国籍の問い合わせと、言語を理由にした見送りの件数を数える