来館・成約

式場のイベントブースは連絡先より先に見学日の候補を2つ見せる

商業施設の催事スペースや地域の合同ブライダルイベントにブースを出すと、帰りの車で必ず出る話があります。「今日は連絡先が12組も取れた」という成果の話です。

ところが、その12組に後日メールや電話を入れても、見学の予約まで進むのは数組です。ブースでは盛り上がっていたのに、と首をかしげる担当者は多いと思います。

僕は、この差の原因はブースの出来より「順番」にあると考えています。ブースでは連絡先を先に書いてもらい、見学の日程は後日決める。この順番だと、いちばん気持ちが上がっている瞬間に日程の話をしないまま、二人を帰してしまうことになります。

この記事のタイトルにした「連絡先より先に見学日の候補を2つ見せる」は、順番を入れ替える話です。ブースで見学日の候補を2つ見せ、気に入った方を仮押さえしてもらい、そのあとで連絡先をもらう。運び方と、やってはいけない場面、そして得になる条件を整理します。

なお、この記事は調査データの紹介ではありません。数字はすべて「仮に〜とすると」と置いた想定で、実在の式場の実績ではないです。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

連絡先が先だと、日程の話が後日の別の仕事になる

ブースでよくある流れは次のとおりです。

  1. 立ち止まった二人に声をかけて、会場の特徴を話す
  2. 気に入ってもらえたら、アンケート用紙に名前と連絡先を書いてもらう
  3. 後日、担当者がメールか電話で連絡して、見学の日程を相談する
  4. 日程が合えば予約になる

3番の「後日」が、仕組みとして止まりやすいところです。理由は3つあります。

ひとつめは、二人の気持ちの温度です。ブースで話しているときは、会場の写真を見て、試食券を手にして、少し乗り気になっています。この温度は帰宅して数日たつと下がります。連絡が来た時点では、別の式場のパンフレットも手元に増えています。

ふたつめは、日程調整が往復になることです。「いつがよろしいですか」と聞かれても、二人はその場でスケジュールを確認していないので、返事が遅れます。返事の遅れは、そのまま忘れられる確率になります。

三つめは、連絡の手段です。見知らぬ番号からの電話には出ないのが普通で、メールは他の通知に埋もれます。連絡先を書いてもらえても、届くとは限りません。

つまり、連絡先は「あとで話をする権利」であって、「見学の約束」ではないんですよね。約束の一歩手前で終わっているので、後日の連絡がうまくいくかどうかに全部がかかってしまいます。

見学日の候補を2つ見せると、何が変わるのか

順番を変えると、ブースの会話の最後がこうなります。

「よければ、見学の日をいま仮に押さえておきませんか。今月だと、この土曜の午前と、来週の日曜の午後が空いています」

ここで二人に見せるのは、空き枠を2つだけです。カレンダー全体は見せません。理由は、選択肢が多いと「また帰ってから相談します」が出やすいからです。2つなら「どっちがいいかな」という二択の会話になり、行くか行かないかの会話から、いつ行くかの会話に切り替わります。

この運び方には、いくつかの効果が見込めます。

  • 日程の往復がなくなり、後日の連絡が「確認」だけで済む
  • 予約という形で、二人の側に「行く予定」が残る
  • 連絡先をもらう理由が「予約の確認を送るため」に変わり、書いてもらいやすくなる

最後の点は意外に大きいです。「資料をお送りするので連絡先を」と言われるのと、「予約の確認メールをお送りするので連絡先を」と言われるのとでは、後者のほうが、書く側にとって納得しやすい理由になります。

ただし、これは「仮押さえすれば必ず来館が増える」という話ではありません。仮押さえの予約は、その場の勢いで取った分、キャンセルや無断欠席も増えやすいはずです。ここをどう数えるかが、この記事の中心になります。

仮押さえは予約数でなく来館数で数える

出展の成果を「来館予約の組数」で見るのは、別の記事でも書いたとおり、連絡先の数で見るよりずっと良い判断です。ただ、見学日を仮押さえする運び方に変えると、予約数だけを見るのは危うくなります。予約が増えても、来館が増えていないことがあるからです。

仮に、次の前提を置きます。

  • 半日の出展で、ブースで話した人は30組
  • 従来の流れ(連絡先を書いてもらい、後日連絡)では、そのうち4組が来館を予約する
  • 従来の流れで予約した4組は、来館率が75%(3組が来る)
  • 仮押さえの流れでは、予約になった組の来館率が60%に下がる

このとき、仮押さえの流れで来館数が従来と並ぶには、何組の予約が必要でしょうか。計算は単純です。

従来の来館数:4組 × 75% = 3.0組 仮押さえで3.0組を得るのに必要な予約数:3.0 ÷ 60% = 5.0組

つまり、予約が4組から5組に増えて、ようやく来館数が並びます。5組より少なければ、予約は増えたように見えても、来館は減っています。

この計算で分かるのは、見るべき数字が「予約数」ではなく「来館数」だということです。さらに、仮押さえの流れの来館率を、自分の会場で一度は測っておく必要があります。60%という数字は、僕が置いた仮の値です。実際は会場や地域、イベントの種類で変わります。

実際に測るときは、ブースで仮押さえした組に、その場で印をつけておきます。予約表に「ブース仮押さえ」の欄を1つ足すだけです。見学の当日に、その欄の組が来たか来なかったかを数えれば、3回ほどの出展で自分の来館率が見えてきます。

費用を割り直すと、判断がどう動くか

前の節の前提に、出展の費用を足してみます。仮に、出展料と人件費と資材をあわせて25.4万円かかったとします。

従来の流れの場合、来館1組あたりの費用は次のとおりです。

25.4万円 ÷ 来館3.0組 = 約8.5万円

仮押さえの流れで、予約が6組になったとします。来館率60%なら来館は3.6組です。

25.4万円 ÷ 来館3.6組 = 約7.1万円

予約が5組なら、来館は3.0組で、1組あたりは従来と同じ約8.5万円です。予約が4組のままなら、来館は2.4組で、1組あたり約10.6万円まで悪化します。

整理すると、次のようになります。

仮押さえの予約数 来館数(来館率60%) 来館1組あたりの費用
4組 2.4組 約10.6万円
5組 3.0組 約8.5万円
6組 3.6組 約7.1万円

仮押さえの運び方に変えた効果は、「予約が5組を超えるかどうか」という1本の線で判断できます。この線は、来館率が下がるほど上にずれます。来館率が50%まで下がるなら、線は6組です。自分の会場で来館率を測ると、この線の位置が分かります。

実際には、費用の側にも少し変化があります。見学の枠を確保しておくための調整、ブースにタブレットや紙のカレンダーを置く準備、当日のスタッフへの説明です。ただ、どれも出展ごとの費用に比べれば小さいので、今回の計算では動かしていません。

仮押さえを進めてはいけない場面

この運び方は、すべての二人に向いているわけではありません。むしろ、押さないほうがいい場面を先に決めておくほうが、成果が安定します。

まだ式場探しを始めていない二人

「婚約したばかりで、何も決まっていない」という二人に、いきなり見学日を示すと、警戒されます。この二人には、連絡先を先にもらって、あとで情報を送るほうが合っています。見極めのコツは、ブースでの最初の質問です。「挙式の時期はお決まりですか」と聞いて、時期が決まっていない場合は、仮押さえを出さないと決めておきます。

日程の目安が合わない二人

二人の希望が1年以上先で、示せる空き枠が来月なら、見学日の話は早すぎます。希望時期が遠い二人には、「見学は挙式の時期が近づいてからでも間に合います」と伝えて、連絡先をもらう流れに戻します。

片方しかブースに来ていない二人

見学は二人で行くものです。片方だけが立ち寄ったブースで、もう片方の予定を確認しないまま仮押さえすると、後日「相手の都合が合わなくなった」で取り消しになりやすいです。この場合は、仮押さえでなく、「二人で見られる日が決まったらここから予約できます」という予約ページのQRを渡して終わりにします。

見学の枠に余裕がない時期

週末の枠が満席に近い時期に、ブースで枠を仮押さえしすぎると、ほかの経路から来た予約と取り合いになります。ブースの仮押さえに回す枠は、あらかじめ数を決めておきます。たとえば「今月は土日にそれぞれ1枠まで」と決めておけば、通常の予約を圧迫しません。

ブースでの運び方を、4つの手順に分ける

実際のブースで運用するなら、次の手順に分けると、新しいスタッフでも同じように進められます。

  1. 最初の質問:挙式の時期と、二人で来ているかを聞く
  2. 仮押さえを出すかの判断:時期が決まっていて、二人そろっていれば出す。そうでなければ、連絡先をもらう流れに戻す
  3. 候補は2つだけ見せる:空き枠は、あらかじめ印刷した小さなカードに書いておく。タブレットの画面は情報が多すぎるので、紙のほうが2つに絞りやすい
  4. 連絡先は予約の確認のためにもらう:「確認のメールを送るので、こちらにお名前とアドレスを」と伝える

あわせて、仮押さえのあとに必ず送るものも決めておきます。予約した日時と場所の確認、そして、見学の前日にもう一度送る連絡です。ブースで取った予約は、二人にとって「勢いで決めた約束」なので、前日の連絡が、来館率を左右します。

出展のあとの数え方

最後に、出展が終わったあとの数え方を整理します。連絡先の数は、参考として数えてもかまいませんが、判断には使いません。判断に使う数字は、次の3つです。

  • ブースで見学日を提示した組数と、そのうち仮押さえになった組数
  • 仮押さえの組の、実際の来館数(見学当日に確認)
  • 来館のあと、契約になった組数

最初の2つで、仮押さえの運び方が効いているかが分かります。3つめは、出展全体を続けるかどうかの判断に使います。契約までは数か月かかることがあるので、出展ごとに半年後に集計し直す欄を、表に作っておくといいです。

仮押さえの来館率が、従来の流れの来館率に近いなら、順番を入れ替えるだけで来館数が増えたことになります。大きく下がっているなら、仮押さえを出す場面を絞るか、前日の連絡を厚くします。出展の運び方も、1回やって終わりではなく、数えて直すものです。

まとめ

  • ブースで連絡先を先にもらう流れは、日程の話が後日の別の仕事になり、二人の気持ちが下がった状態で連絡することになる
  • 連絡先より先に、見学日の候補を2つだけ見せて仮押さえする。連絡先は予約の確認のためにもらう
  • 仮押さえは勢いで取る分、来館率が下がる。見るのは予約数でなく来館数
  • 仮に従来の来館率75%、仮押さえの来館率60%なら、予約が5組を超えて初めて来館数が並ぶ。この線は自分の会場の来館率で測り直す
  • 式場探しを始めていない二人、希望時期が遠い二人、片方しか来ていない二人には出さない
  • 候補は紙のカードに2つ書いておき、予約のあとは確認と前日の連絡を必ず送る
  • ブースの成果は、連絡先の数でなく、仮押さえの来館数と契約までで数える