来館・成約

式場の初回見積もりは、申告人数に増減の幅を添えて出す

見学の終わりに、初めての見積もりを出す。そのとき、人数欄にいくつを入れるか。二人が「60人くらいです」と言えば60人で、「まだ決まっていません」と言えば、とりあえず50人。現場では、こんなふうに流れで決まっていることが多いと思います。

結論から書きます。最初の見積もりは、二人が口にした人数で作ります。そのうえで、見積書の人数欄の隣に「前後10人で総額がいくら動くか」を1行添えます。人数を平均や営業側の都合で置き換えないこと。そして、人数が動く前提を、契約の前に二人と共有しておくこと。この2つで、見積もりの信頼は大きく変わります。

この記事に出てくる金額と確率は、一つを除いて僕が置いた仮の数字です。業界の平均ではありません。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。唯一の出典つきの数字は、ゼクシィ結婚トレンド調査2024の「招待客の平均は52.0人、総額の平均は343.9万円」です。

人数は、見積もりでいちばん動く入力値

見積書の中で、契約後にいちばん大きく動くのは人数です。料理・飲み物・引出物・席次表・ゲスト向けの衣裳や送迎など、金額の多くが「1人あたり」で積み上がっているからです。

ゼクシィ結婚トレンド調査2024では、招待客の平均が52.0人、総額の平均が343.9万円でした。この平均は、全国から集めた回答者の数字です。ただ、ここで見たいのは平均の高さではありません。見積もりを出した時点の人数と、最終的な人数が、同じとは限らないということです。

見学の時点で、二人はまだ招待リストを作っていないことが多いはずです。「親族だけ」「会社の上司も呼ぶかも」「友人は何人までだろう」と、頭の中の人数が揺れています。口にした人数は、そのときの気分で決まった数字です。リストを書き出していくうちに、10人くらいはあっさり増減します。

つまり、初回の見積もりは「精密な価格」ではなく、「この人数なら、こうなります」という一つの仮置きです。仮置きなのに、書面になると確定した価格に見えます。ここに事故の種があります。

仮の数字で、人数の動きを金額にする

人数が動くと総額がどれだけ変わるかを、簡単なモデルで見てみます。置く前提は次のとおりです。

  • 人数に連動しない費用(会場使用・挙式・衣裳・装花・撮影など)を、190万円とする
  • 人数に連動する費用(料理・飲み物・引出物・席次表など)を、1人あたり2万8,000円とする
  • 二人が見学で口にした人数を、50人とする

この前提だと、50人の見積もりは 190万円 + 2万8,000円 × 50人 = 330万円です。ゼクシィ調査の平均(52.0人で343.9万円)に近い水準に揃えましたが、実際の会場の数字とは違います。

人数が動いたときの総額は、次のとおりです。

  • 40人:190万円 + 112万円 = 302万円(50人より28万円安い)
  • 50人:330万円
  • 60人:190万円 + 168万円 = 358万円(50人より28万円高い)
  • 70人:190万円 + 196万円 = 386万円(50人より56万円高い)

前後10人で、総額は28万円動きます。330万円に対して約8.5%です。10人の増減は、招待リストを作る段階では珍しくない動きです。

ここで大事なのは、動く方向が二人にとって一様ではないことです。減る分には、二人は喜びます。増える分は、二人にとって「想定外の追加」に見えます。最初の見積もりに「330万円」とだけ書いてあると、60人になったときの358万円は、式場が上乗せしたように感じられます。実際は、人数が10人増えただけです。

申告人数・平均人数・幅つき、3つの出し方を比べる

初回見積もりの人数の置き方は、大きく3つあります。

① 二人の申告人数で、1本だけ出す

最も素直な形です。二人が言った人数で作り、一つの金額を書きます。

利点は、二人の言葉が反映されていて、説明が要らないことです。弱点は、人数が動いたときに、金額が「違う」と感じられやすいことです。契約後の打ち合わせで人数が増えると、「最初の見積もりと違う」という不満が、式場への不信にそのままつながります。

② 会場の標準的な人数に置き換えて出す

二人が「まだ分からない」と答えたとき、会場の過去の実績から「この会場だと平均で◯人」と置いて出す形です。

人数を決められない二人には、説明が楽です。ただ、二人が頭に描いている規模とずれていると、見積もりが現実の自分たちの話に見えません。たとえば、二人が30人と思っているのに、平均の50人で出すと、総額は仮の前提で56万円ほど高く見えます。その高さを見て、検討から外れる二人がいるかもしれません。

また、置き換えた人数の根拠が「営業側の都合」に見えてしまう危険があります。人数を多めに置けば、見積もりが高くなり、契約直後の値引きの余地も大きくなります。二人がそう受け取ってしまうと、信頼は下がります。

③ 申告人数で出し、前後の幅を1行添える

二人の申告人数で見積もりを作り、その隣に「前後10人で±28万円」のような1行を足す形です。

二人の頭の中の規模に合わせた見積もりでありながら、人数が動いたときの金額が最初から見えています。人数が増えても、「最初に聞いていた範囲」の話になります。

僕が勧めるのは③です。理由は、人数の増減が起きたあとの関係を考えたときに、③だけが見積もりの正しさを保てるからです。

幅の作り方:人数の増減を1行に落とす

幅を添えるときの作り方を、順に整理します。

1. 人数の単位あたりの金額を出す

まず、人数が1人増えると金額がいくら増えるかを、会場の標準プランで出しておきます。先ほどの仮の前提なら2万8,000円です。料理のグレードや、ゲストの年齢構成(子ども・高齢者の料理の違い)で変わるので、一つの数字に決め打ちしなくても構いません。「1人あたりおよそ2万5,000〜3万円」のように、幅で持ちます。

2. 幅の大きさを決める

「前後10人」にするか、「前後5人」にするか。これは、二人が口にした人数の確度によって変えます。

  • 招待リストをすでに作っている二人:前後5人
  • 大まかな規模だけ決めている二人:前後10人
  • 規模自体がまだ決まっていない二人:30人・50人・70人の3本を並べる

幅を広げすぎると、見積もりが曖昧に見えます。狭すぎると、あとで外れます。二人の確度に合わせるのが、いちばん自然です。

3. 見積書の人数欄の隣に書く

人数の幅は、見積書の別紙ではなく、人数欄の隣、または総額の真下に書きます。別紙に回すと、二人は読みません。書き方の例は次のとおりです。

  • 「ご招待50人の場合 330万円」
  • 「前後10人で、約28万円増減します(1人あたり約2万8,000円)」

2行で足ります。金額の根拠である1人あたりの単価まで書いておくと、二人は自分で計算できるようになります。

4. 人数に連動しない費用は、動かないことを明記する

190万円の部分は、人数が変わっても動きません。ここを書いておかないと、二人は「人数が減ったら全体が下がる」と受け取ります。「人数に連動しない費用:190万円」と書いておけば、人数を減らしても、下がり方に限度があることが伝わります。後から「減らしたのに思ったほど安くならない」と言われる行き違いを、先に防げます。

幅を添えると、どの場面が変わるか

幅を添えることで、次の場面が変わると考えています。

見学の場で

二人が「人数はまだはっきりしない」と言ったとき、営業は平均人数で埋めなくてよくなります。「いまの感覚だと50人で、330万円です。60人なら358万円、40人なら302万円です」と、3本の目安を口頭で伝えられます。二人は、自分の頭の中にある幅に合う金額を、その場で選べます。

持ち帰ったあとに

二人は、見積書を家に持ち帰って親や友人と相談します。そこで人数が変わる話が出ても、見積書の中に答えが書いてあります。式場に電話をしなくても、「60人なら358万円」と分かる。問い合わせの手間が減るだけでなく、二人が「この会場は隠さない」と感じることにつながります。

他の式場の見積もりと並べられたとき

相見積もりを取っている二人は、他の式場の見積書と並べます。他の式場が50人で出していて、こちらが平均の60人で出していたら、こちらが一見高く見えます。申告人数で出しておけば、同じ人数で比べてもらえます。幅が添えてあれば、人数の違いによる差も二人が補正できます。

契約後に

人数が動いたとき、「最初の見積もりに書いてあった範囲」という共通の物差しがあります。式場側も、「上乗せ」ではなく「人数に応じた金額」と説明できます。

やらないほうがいいこと

幅を添える運用でも、避けたほうがいい形があります。

人数を多めに置いて「減ったら安くなります」と言う

最初に高めに出して、あとで下げる形です。見積もりの最初の印象は高くなり、他の式場に流れる二人が出ます。下げたときに喜ばれるとしても、その前に検討から外れるほうが損です。また、二人が後で「最初の数字は盛られていた」と気づくと、信頼が崩れます。

幅の中の最低人数を「最低保証人数」にする

幅を示すことと、最低人数を契約条件にすることは別の話です。幅は目安で、契約条件ではありません。ここを混ぜると、二人は「幅を見せられたあと、下の人数を縛られた」と感じます。最低保証人数を設ける場合は、別のルールとして、契約の前に別途説明します。

幅を口頭だけで伝える

口頭では、持ち帰ったあとに残りません。見積書に書いて初めて、二人の相談の材料になります。

自分の会場で試すなら

実際にやるなら、次の順で進められます。

  1. 標準プランで、人数1人あたりの金額と、人数に連動しない金額を分ける
  2. 見積書の様式に、人数の幅の1行を足す。システムの改修が要らなければ、手書きや別枠で構わない
  3. 1か月、新規の見学者の見積もりに添えて出す
  4. 見学後の持ち帰りの質問(人数が変わったらいくらか)の件数を、前の月と比べる
  5. 契約後の「最初の見積もりと違う」という声の件数を、数か月単位で追う

3か月ほど続けると、答えが出始めると思います。件数が少なければ、傾向としてはっきりしないことも多いので、数字が小さいうちは判断を急がないでください。

まとめ

  • 初回の見積もりの人数は、二人が口にした人数で置く。平均や営業側の都合で置き換えない
  • 人数は契約までに動きやすい入力値。1人あたりの金額を出すと、増減が総額に及ぼす差が分かる(仮の前提では前後10人で28万円、約8.5%)
  • 申告人数の見積もりに「前後10人でいくら動くか」の1行を添える。幅は二人の確度に合わせ、5人・10人・3本並べのどれかにする
  • 人数に連動しない費用は、動かないことを明記する。減らしても下がり方に限度があると先に伝わる
  • 幅は目安であって、最低保証人数ではない。混ぜない
  • 見積もりの信頼は、最初の金額の低さより、動くことを先に見せていたかで決まる