来館・成約

ブライダルフェアは、枠が半分しか埋まらないと1成約あたりの費用が約1.5倍になる。仮の式場で計算する

ブライダルフェアの費用は、来館した組数ではなく、枠が埋まったかどうかで決まります。12組の枠を用意した仮の式場で計算すると、枠が埋まった日の1成約あたりの費用は約7.2万円、半分しか埋まらない日は約11.1万円です。成約率が同じ30%でも、約1.5倍になります。

この記事の数字は、すべて僕が置いた仮の前提から計算したものです。実在の式場の実績ではありません。自分の会場の数字に置き換えて使えるように、前提と計算の手順を全部書きます。

前提を置く

仮の式場の、休日1日のフェアを考えます。

  • 予約枠は12組
  • 来館したうちの成約率は30%(参加者のうち3割が、フェアのあとの検討で契約する)
  • プランナーは4人体制で、1日8時間、1人あたりの時間単価を2,500円とみなす
  • 模擬挙式や装花、会場のセッティングなど、来館数に関係なく発生する準備費が6万円
  • 試食の原価は1組2名で5,000円(2,500円×2名)
  • 来館特典として、1組に5,000円分を渡す
  • 1成約あたりの粗利は100万円(フェア費用を引く前)

成約率30%は、どこかの調査の数字ではなく計算を回すために置いた値です。会場によって2割の場合も4割の場合もあるので、後半で20%に変えた場合も並べます。広告媒体に払う送客費や、来館後の追客の人件費は、ここでは入れていません。入れるほど、結論は強まる方向に動きます。

費用を、固定と変動に分ける

まず費用を2つに分けます。

1日のフェアの固定費は、準備費6万円と人件費8万円(4人×8時間×2,500円)を足した14万円です。来館が12組でも3組でも、この14万円は同じだけ出ていきます。

変動費は、1組あたり試食の5,000円と特典の5,000円を足した1万円です。来館が1組増えるごとに、1万円だけ増えます。

枠が12組すべて埋まった日の総費用は、14万円+1万円×12組で26万円です。固定費は、そのうち54%を占めます。ここが、このあとの話の出発点です。

枠の埋まり方で、1成約あたりの費用はこう変わる

来館数を12組、9組、6組、4組に変えて、成約率30%のまま計算します。

来館 枠の埋まり率 総費用 1来館あたり 成約 1成約あたり 固定費の割合
12組 100% 26.0万円 21,667円 3.6組 72,222円 54%
9組 75% 23.0万円 25,556円 2.7組 85,185円 61%
6組 50% 20.0万円 33,333円 1.8組 111,111円 70%
4組 33% 18.0万円 45,000円 1.2組 150,000円 78%

来館数が3分の1になっても、総費用は26万円から18万円にしか減りません。減るのは変動費の分だけだからです。結果として、1来館あたりの費用は2万円台から4万円台に倍増し、1成約あたりは7.2万円から15万円まで、約2倍に開きます。

成約率を20%に落とすと、同じ4つの行は、108,333円、127,778円、166,667円、225,000円になります。成約率が3割から2割に下がる影響と、枠が埋まらない影響は、掛け算で効きます。枠が3分の1しか埋まらず成約率も2割の日は、1成約あたり22.5万円で、満席で成約率3割の日の約3倍です。

1成約の粗利が100万円なら、7.2万円は粗利の7%、22.5万円は22.5%に当たります。同じフェアを開いていても、日によって粗利の1割を使う日と、2割を超える日があるわけです。

特典を足す前に、元が取れる条件を計算する

来館が埋まらないとき、最初に出てくる手は、特典を厚くすることだと思います。たとえば、特典を5,000円分から1.5万円分に変える場合を考えます。

来館が9組の日で、特典を1組あたり1万円足すと、費用は9万円増えます。粗利が100万円なので、9万円を取り返すには、成約が0.09組増えればいいことになります。来館9組に対する0.09組は、成約率にして1ポイントです。成約率が30%から31%に上がれば、特典の追加分は元が取れます。

特典を2万円足すなら、追加費用は18万円で、必要な成約の増加は0.18組、成約率で2ポイントです。

数字だけ見ると、特典はかなり割がいい投資に見えます。ただ、ここで見ているのは損益分岐であって、効果の見込みではありません。特典を足して成約率が1ポイント上がる保証はありません。もうひとつ注意があって、特典目当ての来館は、成約率が低い層を連れてくる可能性があります。その場合は来館数が増えても、成約率が30%を下回ります。

見るべきは、特典を足す前後で、成約率が分岐点(上の例なら1ポイント)を超えて動いたかどうかです。ただし月次の成約率は、件数が少ないとそれだけで大きく揺れます。1か月の差で効果を判断せず、数か月ぶんをまとめて見るほうが確実です。

空き枠に1組足すと、いくらかかるか

次に、費用の見方をもう一段変えます。ここまでの「1成約あたり」は平均です。9組来ている日に、あと1組呼べたとき、その1組のために増える費用は、変動費の1万円だけです。固定費の14万円は、呼ばなくても出ているので増えません。

増えるのが1万円で、その1組が30%の確率で成約するなら、追加の1成約あたりの費用は1万円÷0.3で、約3.3万円です。平均の85,185円と比べると、半分以下です。

つまり、枠に空きがある日の追加の1組は、平均よりずっと安く手に入ります。反対に、すでに枠が全部埋まっている日に13組目を受けるには、プランナーを1人足すか、接客の時間を削るしかありません。プランナーを1人足せば、8時間×2,500円で2万円が増えます。その場合の追加費用は、2万円+1万円で3万円、成約率30%だと1成約あたり10万円で、平均より高くなります。

要するに、枠が空いている日は「呼ぶほど1成約あたりが下がる」状態で、満席の日は「呼ぶほど上がる」状態です。同じ「集客を強化する」でも、どちらの状態にいるかで、費用対効果の方向が逆になります。

枠を絞るという手もある

ここまでの流れだと、「とにかく枠を埋めろ」という話に聞こえるかもしれません。ただ、埋まらないなら枠を減らす、という選び方もあります。

来館が平均で6組しか来ない曜日に、12組の枠をプランナー4人で構えているとします。この日の1成約あたりは、前の表のとおり111,111円です。

これを、枠を8組にして、プランナーを3人に減らした場合で計算します。固定費は準備費6万円と、人件費6万円(3人×8時間×2,500円)で12万円です。来館が同じ6組なら、総費用は12万円+1万円×6組で18万円、成約は1.8組なので、1成約あたりは10万円になります。111,111円から10万円へ、約1割下がります。

1割という数字は、大きくも小さくもありません。人を減らしたぶん、1組に割ける時間が減り、成約率が下がる可能性もあります。成約率が30%から27%に下がれば、10万円は11万円強に戻って、差は消えます。人件費を削る手は、成約率が下がらないかぎりでしか効かない、ということです。

もうひとつ、現場の人数を減らす代わりに、そのプランナーを別の仕事に回すという考え方もあります。フェアの時間帯にフェアの接客をしているプランナーは、その時間に来館後の追客や打合せはできません。8時間を2,500円で見積もったのは単純化で、本来は、その時間で別にできたはずの仕事の価値がかかっています。この記事の計算では入れていませんが、入れると、空き時間が多い日の固定費は、もっと重くなります。

自分の会場の数字で確かめる手順

仮の式場の数字を、自分の会場のものに置き換えるには、次の順番でやります。

  1. 直近3か月の休日フェアについて、日ごとの来館組数と、そこから出た成約数を並べる
  2. 来館数に関係なく出ている費用(準備費、当日の人件費)を日ごとに合計する。人件費は、給与ではなく当日に入っていた人数×時間で見る
  3. 来館1組ごとに増える費用(試食原価、特典、飲料など)を、1組あたりに直す
  4. 日ごとに「総費用÷成約数」を出して、枠の埋まり率と並べる
  5. 来館数が少ない日と多い日で、1成約あたりの費用が何倍違うかを見る

この表ができると、「埋まらない日のフェアを、いくらで開いているか」が、はっきり出ます。そのうえで、特典を足すか、枠を絞るか、集客に費用を足すか、何もしないかを選ぶことになります。

成約数は、フェア当日の成約だけでなく、その後の検討で契約に至ったぶんも含めて数える必要があります。フェアから契約まで数週間かかる会場では、直近の1か月ぶんの成約数は、まだ途中の数字です。直近のフェアの成約率は低く見えるはずなので、古い月のフェアで見るほうが正確です。

この計算の限界

仮の数字の置き方で、結論の大きさは変わります。たとえば、固定費の割合が大きいのは、プランナーの人件費を、時間単価で全額フェアに割り当てたからです。プランナーが他の仕事もしながらフェアに入る会場では、フェア固有の固定費は、もっと小さくなります。その場合、枠が埋まらないことの痛みも、この記事の数字より小さくなります。

反対に、広告媒体に払う送客費が1来館あたり数千円から数万円かかる会場もあると思います。それは変動費が大きくなるということで、空き枠に1組足す限界費用も大きくなります。この記事で「半分以下」と書いた限界費用と平均の差は、変動費が重い会場では縮みます。

成約率が来館数と無関係だと置いたことも、単純化です。来館が少ない日は、1組にかけられる時間が長くなって、成約率が上がる場合があります。反対に、満席の日は雑になって下がる場合もあります。この差は、前提で置く値ではなく、自社の日ごとの記録で見るしかありません。

それでも、変わらないことがひとつあります。フェアの費用の中に、来館数にかかわらず出ていく固定の部分が半分以上ある限り、枠が空くほど、1成約あたりの費用は上がります。固定の割合が半分より小さい会場は少ないと思いますが、自分の会場でどうなっているかは、上の手順で確かめられます。

まとめ

  • 12組の枠を持つ仮の式場では、満席の日の1成約あたりの費用は約7.2万円、半分しか埋まらない日は約11.1万円で、約1.5倍になる
  • 費用の半分以上(この前提では54%から78%)が来館数と無関係の固定費なので、来館が3分の1に減っても総費用は26万円から18万円にしか減らない
  • 特典を1万円足す場合は、成約率が1ポイント上がれば元が取れる。ただしそれは損益分岐であり、効果の保証ではない
  • 枠に空きがある日に1組足す限界費用は、平均の半分以下。満席の日に足す場合は人員を足すことになり、平均より高くなる
  • 埋まらない曜日は、枠と人員を絞る手もある。効くのは成約率が下がらない場合だけ
  • まず自分の会場の日ごとの来館数、費用、成約数を並べると、埋まらない日にいくら使っているかが分かる