式場のパンフレットは、料金と見学予約を最初の見開きに置く
資料請求で二人の家に届く式場のパンフレットは、表紙をめくると会場の外観、チャペル、バンケットの写真が続き、料理、ドレス、プランの順に進んで、料金と見学予約の案内は最後のほうに載っている。そういう作りの冊子は多いと思います。
結論から書きます。パンフレットは、最初の見開きに「総額の目安」と「見学の予約方法」を置いたほうが、見学予約につながりやすいと僕は考えています。写真を後ろに回すのではありません。二人が最初の30秒で知りたい2つの答えを、写真の前に出す、という話です。
この記事では、なぜ料金が最後だと取りこぼしやすいのか、最初の見開きに何を置くのか、置いてはいけないもの、効果をどう測るのかを順に整理します。出典のある統計は使わず、数字はすべて仮に置いた計算です。実際の式場の値ではありません。
パンフレットは「候補に入る」段階で、家の中を回る
資料請求で届いた冊子は、二人が1回読んで終わるものではありません。テーブルの上に置かれ、パートナーが開き、親が開き、ときには職場や実家に持って行かれます。式場を決めるのは二人でも、費用を一部出す親や、日程に影響する家族が、冊子を手に取る場面は十分にあります。
ここで冊子を開いた人は、二人の「こんな式場がいい」という気持ちを知りません。知っているのは表紙の式場名だけです。この人が最初に知りたいことは、たいてい次の2つに寄ると僕は見ています。
- いくらぐらいかかる式場なのか
- 気に入ったら、次に何をすればいいのか
写真の美しさは、この2つが分かったあとで効いてきます。「いくらかかるか分からない冊子」は、気に入ったとしても、次の一歩を決めるための材料が足りません。
もう一点あります。冊子は、請求した本人がいない場所で読まれることがあります。本人が横で「ここがよくて」と補足してくれる前提で作ると、読んだ人は写真だけを見て、「きれいだけれど高そう」という印象だけを持ちかねません。
料金と予約が最後にある冊子で起きること
最後のページに料金を置く作りは、悪意があるわけではなく、冊子の順番の慣習から来ています。会場、料理、衣裳、プラン、料金、アクセスという流れは、式場を紹介する順番としては自然です。
ただ、この順番だと、読み手は次のように動きます。
- 最初の数ページで写真を眺める
- 料金が出てこないので、読み進める前に「高いのかな」と気持ちの中で値札を貼る
- 最後の料金ページを見たときに、貼った値札と実際の額がずれて驚く
- 予約方法まで読まずに閉じる
2で気持ちの中に貼る値札は、読み手によってばらばらです。実際より高く見積もった人は、料金ページにたどり着く前に閉じます。実際より安く見積もった人は、料金を見て驚きます。どちらにしても、冊子は二人に「次の一歩」を渡せていません。
これは、冊子の中身を変えずに、順番だけで改善できる余地があります。写真も料理の説明も、そのまま使えます。
最初の見開きに置く3つ
最初の見開きは、左右2ページです。ここに、次の3つを置きます。
1. 総額の目安を「条件つきの幅」で書く
置くのは、最低額ではなく、条件つきの幅です。たとえば、次のような書き方になります。
招待客60名・土日の挙式で、総額の目安は〇〇万円〜〇〇万円です(お料理、会場費、衣裳、写真、引出物を含む)。内訳は、次のページの見積もり例をご覧ください。
ポイントは、人数と日取りの条件を書くことと、何が含まれているかを括弧で書くことです。含まれる項目が分からない総額は、見積もりが出たときに「話が違う」という落差になりやすく、請求直後の二人の信頼を下げます。
幅は、実際に直近で成約した二人の総額を並べて決めます。上と下の外れ値を除いた範囲に収まる幅を書くのが安全です。式場が持っている数字なので、他社の調査を引くより正確です。書く数字を確認できないなら、冊子には書かず、後で触れる別の形(見積もり例)で出します。
2. 見学の予約方法を、電話番号だけにしない
見学予約の案内は、電話番号が小さく載っているだけの冊子もあります。最初の見開きに置くのは、次の3点です。
- 予約できる方法(電話、Webフォーム、LINEなど。使えるものを全部)
- 予約できる時間帯(電話の受付時間、Webは24時間)
- 予約すると何が起こるか(所要時間、当日に見られるもの、試食の有無)
特に3つ目が効きます。「見学に行く」という行為に、二人は少し構えています。行ったら営業されるのでは、という警戒です。所要時間と、当日に何をするかが書いてあると、構えを少し下げられます。
QRコードを置く場合は、予約ページに直接飛ぶものにします。トップページに飛ぶQRは、そこから予約ページを探す手間が一つ増えます。
3. この冊子の読み方を一行で書く
最初の見開きの隅に、次のような一行を置きます。
この冊子の読み方:①総額の目安(このページ)→ ②見積もり例(〇ページ)→ ③会場と料理 → ④見学のご予約
親や家族が読む前提だと、この一行が案内役になります。何から読めばいいかが分かるだけで、写真のページに入る前に、料金の位置を把握できます。
置いてはいけないもの
最初の見開きには、置かないほうがよいものもあります。
- 「最安〇〇円から」だけの表記。含まれる項目が少ない最低額は、見積もり段階で必ず上がるので、見学後の落差が大きくなります
- 期限や先着を強調した特典。二人の判断を急かす形になり、比べて決めたい二人には逆効果になりやすいです
- 他の式場との比較表。冊子の中で他社を持ち出すと、比較の土俵に乗ることになります
- 確認していない実績の数字。「年間〇〇組が選んだ」のような数字は、数えた根拠が説明できるときだけ書きます
実績の数字は、根拠があって書けるなら強い材料です。ただ、最初の見開きの役目は、安心の演出ではなく、次の一歩のための情報を渡すことです。数字の演出は、写真のページに回して構いません。
見積もり例を2枚目に置く
総額の目安の次に、見積もり例を1つ置きます。例は2本あると比較できて親切ですが、1本でも十分です。
見積もり例には、人数、日取り、費用の内訳(会場費、料理、飲み物、衣裳、写真、引出物、装花、司会など)を書きます。内訳が見えると、二人は「この項目は自分たちには要らない」「ここを足すといくらになるか」を想像できます。見積もりの内訳を知るのは、見学のときが初めて、という冊子よりも、見学に来る前の二人が自分で計算を始められます。
見積もり例を載せるときは、実在の特定の二人の費用をそのまま書かないでください。同意を取っていない個人の費用は載せられません。「こういう条件の二人の場合」という標準的な組み合わせとして、式場側で作った例にします。その旨も一行添えておきます。
効果をどう測るか
冊子の順番を変えて、見学予約が増えたかどうかは、予約の総数を眺めるだけでは分かりません。広告やフェアの動きも同時に変わるからです。見るのは、冊子を送った二人のうち、何割が見学を予約したかです。
測るために、冊子ごとに予約の経路を区別できる仕掛けを入れます。
- 冊子の予約QRに、冊子の版を表すパラメータをつける(例:版A、版B)
- 電話予約の人には、受付で「冊子を見て」の有無と、版を示す番号(冊子の隅の請求番号など)を聞く
- 台帳に「請求日」「冊子の版」「見学予約日」の3列を置く
版を切り替える時期は、全員同時にせず、請求日で区切ります。たとえば、毎月1日から15日の請求者には旧版、16日から末日までの請求者には新版を送る、といった形です。季節の変動は完全には外せませんが、請求から1〜2週間で予約が決まる二人が多いなら、同じ月の中で比べるだけで、広告やフェアの月ごとの差をある程度そろえられます。
モデル計算:見学予約が3ポイント動くと
ここから、前提を置いた計算をします。数字はすべて仮置きで、自分の式場の値に置き換えて使ってください。
- 資料請求が月200件ある
- 請求した二人のうち、見学を予約するのが12%(旧版)
- 予約した二人のうち、来館するのが70%
- 来館した二人のうち、成約するのが30%
- 冊子1部の印刷と郵送で、400円かかる
旧版では、月24件の予約、来館が約17組、成約が約5組です。冊子の費用は月に8万円(200部×400円)で、来館1組あたり約4,800円になります。
新版で予約率が15%になったとします。月30件の予約、来館が21組、成約が約6.3組です。冊子の費用は同じ月8万円で、来館1組あたり約3,800円に下がります。差は、予約で月6件、成約で月に約1.3組です。
ここから読み取れるのは、次の3点です。
- 冊子の費用(月8万円)を増やさず、順番を変えるだけで、成約が月1組以上増える計算になる
- ただし、この3ポイントの差は仮の数字です。実際の差は、自分の式場で測るまで分かりません
- 請求が月100件なら、同じ3ポイントの差でも、成約は月に約0.6組です。請求が少ない式場では、差が出るまで時間がかかります
つまり、請求が月に数十件ある式場なら、冊子の組み替えは、広告費を足すより小さい手間で試せる施策です。逆に請求が月に10件程度なら、冊子の前に、請求が増える導線を直すほうが先になります。
判断の分かれ目
この組み替えが向く式場と、向かない式場があります。
向くのは、次のような式場です。
- 資料請求のあとの見学予約率が、感覚として低い(請求は来るのに予約が来ない)
- 冊子を郵送している。PDFだけで送る式場でも、同じ並べ方はできる
- 総額の幅を、直近の成約実績から出せる
向きにくいのは、次のような式場です。
- 日取りや人数によって総額が大きく変わり、幅を書くと広すぎて意味が薄くなる。この場合は、人数の帯ごとに2〜3本の幅を並べます
- 見積もり例を載せると、他の式場より高いと見られる、と現場が強く心配している。この心配は、料金を最後のページに置いても消えません。見学で初めて金額を知った二人が、落差で離れる形のほうが、取りこぼしとしては大きいと僕は考えています
- 料金が頻繁に改定され、冊子の印刷が追いつかない。この場合は、冊子には幅だけを書き、見積もり例は「最新版はQRから」としてWebに置きます
冊子を全部作り直す必要はありません。最初の見開きだけを差し替え、次の増刷のタイミングで切り替えれば、費用はほとんど増えません。
まとめ
- 資料請求で届く冊子は、本人がいない場所で、親や家族に読まれることがある。説明役がいない前提で作る
- 料金が最後にあると、読み手は気持ちの中で値札を貼ってから読み進める。最初の見開きに、総額の目安を条件つきの幅で置く
- 同じ見開きに、見学の予約方法と、予約すると何が起こるかを書く。QRは予約ページに直接飛ばす
- 最低額だけの表記、期限で追う特典、他社との比較、確認していない実績の数字は置かない
- 請求日で冊子の版を分け、請求した二人のうち見学を予約した割合で測る
- 請求が月に数十件以上ある式場から始める。請求が少ない式場は、請求が増える導線を先に直す
