式場の見積もりは見学当日に出すか|成約を分ける3つの条件
結婚式場の見学で、見積もりを当日に出すか、後日送るか。どちらが正しいかは、式場によって変わります。ただ、変わる理由は3つに絞れます。
結論から書きます。見積もりを当日に出して得をするのは、次の3つが揃っている式場です。当日に出す数字が最終金額に近いこと。決裁する人がその場にいること。見積もりを作る時間をその日に取れること。どれか一つでも欠けるなら、当日は幅だけを口頭で伝えて、見積書は翌日に送るほうが、成約を落としにくいと僕は考えています。
この記事に出てくる数字は、出典のある調査の数字ではありません。見学が月40組の仮の式場を置いて、僕が前提を決めて計算したものです。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。
当日に出すと、何が起きるか
見積もりを当日に出すと、起きることは大きく3つあります。
- 見学の熱が高いうちに、金額まで見てもらえる
- 二人が金額を見て、その場で「高い」と感じる
- 見積書が、二人の手元で一人歩きを始める
1つ目は、出す側の利点です。見学で気に入ってもらえた直後に金額が見えれば、「この式場は予算の範囲か、外か」を二人はその日のうちに判断できます。範囲内なら話が進み、当日に仮予約や契約まで行く組も出ます。外なら、見学の時間を使い切ったあとで気づくより、早く分かります。
2つ目は、出さない側の利点を裏返したものです。見学で気持ちが上がっているときに、数字だけを突きつけられると、会場の印象と金額の印象が切り離されて、「高い」の部分だけが残ることがあります。後日送れば、二人は帰り道に会場の良かった点を思い出しながら、金額を見られます。
3つ目が、実は一番やっかいです。見積書を紙で渡すと、二人はそれを持って次の式場に行きます。そこで他の式場の見積書と並べられ、項目の違いを説明する人がいない状態で比べられます。この「並べられる」問題は、別の記事で書いたとおり、条件を揃える一枚を用意しないと、安い方が勝つ比べ方になります。当日に出すということは、自分の見積書が、説明のない状態で一人歩きする時間を作ることでもあります。
仮の式場で、当日提示と後日送付を比べる
数字で考えます。前提は次のとおりです。
- 見学は月40組
- 平均の契約額は350万円
- 見積もりを後日送る今のやり方で、成約は月10組(成約率25%)
当日に見積もりを出す形に変えると、成約の数は2つの方向に動きます。
- a:当日またはその週のうちに決まって、増える組
- b:金額を見て帰り、そのまま離脱して、減る組
どちらも僕の置いた仮の数字です。実際の値は、式場ごとに違います。大事なのは、a と b のどちらが大きいかで、月の成約の増減が決まることです。
月の増減は a−b 組です。契約額350万円で1組の差が年12組なら、年間で4,200万円の売上差になります。
| a(増える組) | b(減る組) | 月の成約の増減 | 年間の売上差 |
|---|---|---|---|
| 2組 | 0組 | +2組 | +8,400万円 |
| 2組 | 1組 | +1組 | +4,200万円 |
| 2組 | 2組 | 0組 | 0円 |
| 2組 | 3組 | −1組 | −4,200万円 |
| 2組 | 4組 | −2組 | −8,400万円 |
見学が月40組の会場では、a=2組は見学の5%にあたります。b=3組は、見学の7.5%です。つまり、当日に決まる組が見学の5%増えても、金額を見て離脱する組が7.5%出れば、当日提示のほうが負けます。
ここで見落としやすいのが、a の中身です。当日に決まる2組は、後日送っていても、半分は成約していたかもしれません。もしそうなら、a の純増は2組ではなく1組で、b がたった2組出ただけで、当日提示は負けに変わります。
つまり、当日提示の損得は「当日に決まった組の数」を見ても分かりません。見るのは、当日に決まった組のうち、後日でも決まったはずの組を引いた純増と、金額を見て帰ったあとに戻らなかった組の数です。この2つを引き算しないと、当日に契約が取れた記憶だけが残って、「当日に出すのが正解」という印象になります。
分かれ目の3つの条件
では、何が a と b の大きさを分けるのか。僕は3つの条件で考えています。
条件1:当日に出す数字が、最終金額にどれだけ近いか
当日に出す概算が、契約時の金額に近いなら、二人の「高い」は、のちに変わりません。離脱するならその日に離脱して、残った組は金額を納得した人たちです。
逆に、当日の概算が低く出ていて、あとから衣装・装花・写真・人数の変更で上がる式場だと、問題は別の形で出ます。見積もりの上がり幅については、初回の見積もりに入れる項目の線引きを書いた記事で整理しました。当日の数字を低く出して成約を取る方法は、契約後の変更や解約のときに、二人の不信感として返ってきます。
つまり、当日に出す数字を最終金額に近づけられない式場は、当日提示に向いていません。向いていないというより、当日に出すなら「この金額は最低ライン」と明示する必要があります。
条件2:決裁する人が、その場にいるか
見学に来た二人のうち、金額を決める人がその場にいるでしょうか。両親が費用を出すと決めている場合、当日に金額を見せても、二人はその場で「持ち帰って親に聞く」としか言えません。
この場合、当日に見積書を出すことのメリットが消えます。a が増えない一方で、見積書は二人の手元に残るので、b と一人歩きの問題だけが残ります。
親が見学に来ていない組には、当日は幅だけを口頭で伝えて、親に見せる用の一枚を後日整えて送るほうが、成約を落としにくいと考えています。親の同席については別の記事で、持ち帰り資料の作り方を書いています。
条件3:見積もりを作る時間を、その日に取れるか
土日の見学が満枠になっている日に、見積もりをその場で作ろうとすると、何が起きるか。プランナーは次の組の準備時間を削って、見積もりを作ります。作る時間が足りないと、項目が抜けたり、概算の根拠が薄くなったりします。
土日の昼に見学が集中している会場では、当日提示は、接客時間を見積もり作成に食われます。満枠の日の接客については、別の記事で、見学を長くしても成約が増えるとは限らないことを書きました。時間を取れない日は、無理に当日に出さないほうが安全です。
3つの条件を表にすると、次のようになります。
| 条件 | 当日提示に向く | 後日送付に向く |
|---|---|---|
| 概算と最終金額の差 | 小さい | 大きい |
| 決裁する人 | その場にいる | 見学に来ていない |
| 作成の時間 | 平日・空き枠の日 | 土日の満枠の日 |
全部が左の列なら、当日提示で a が伸びる見込みがあります。全部が右の列なら、後日送付です。混ざる場合は、条件1が右に寄っていないかを先に見てください。当日の数字が低く出る式場は、当日提示で成約が増えても、あとで崩れます。
当日に出すなら、幅で見せる
当日に出すと決めたなら、1つの金額を出すのは避けたほうがいいと思います。理由は、1つの金額は、二人の頭の中でそのまま「予算」として固定されるからです。のちに上がると、増額の印象が強く残ります。
幅で出す場合の書き方は、次の3つを守ります。
- 固定の部分と、変わる部分を分ける。会場費・料理の基本・サービス料のような変わらない部分を上に置き、人数・衣装・装花・写真のように変わる部分を下に置く
- 変わる部分には、幅を書く。「衣装は30万円から80万円の間で決まる組が多いです」のように、会場の過去の実績の範囲で
- 含まれないものを先に書く。引き出物・二次会・新婚旅行など、見積書の外にあるものを書いておくと、後からの追加の印象が弱まる
この幅は、会場の過去の契約実績から作ります。実績が無ければ、書けません。確認していない数字を書くより、「この項目は、打ち合わせで決まります」と書くほうが、のちの信頼を守れます。
幅の作り方で一つ注意があります。上限を書くと、二人は上限に近い金額を想像します。下限だけが目に入るのを避けたい気持ちは分かりますが、上限を隠した幅は、実質的に低く出した数字と同じ働きをします。幅は、下限と上限の両方を書いてください。
後日送るなら、24時間の使い方で決まる
後日送ると決めた式場が気をつけるのは、「送る」までの間です。見学が終わってから見積書が届くまでが長いと、二人の熱は下がります。その間に、他の式場の見学が入ります。
後日送る場合は、次の3つを決めておくと、b を抑えられます。
- 見学の最後に、金額の幅だけを口頭で伝える。「人数が60人なら、総額はこのあたりに収まる組が多いです」と、一言だけ
- 見積書は、翌日の午前中までに送る。夜に出すと、二人は見学の翌日を、他の式場の見学で埋めてしまいます
- 送るときに、見積書の読み方を一文で添える。「この見積書には、衣装と写真は含まれていません」
口頭で幅だけ伝えるのは、a を取りこぼさないためでもあります。金額の見当がまったくつかない状態で帰ると、二人は「聞くのが怖い」まま、他の式場の資料を見始めます。逆に、幅を知っている二人は、見積書が届いたときに、驚かずに読めます。
「翌日の午前」という線は、僕が置いた目安です。式場によって、二人の動き方は違います。自分の会場のデータで、見積書を送った時刻と返信の有無を見て、線を引き直してください。
判断を数字で確かめる方法
当日提示と後日送付のどちらが良いかは、考えるだけでは決まりません。見学の組を、一定期間だけ2つに分けて、成約率を比べます。
- 見学の日に、見積もりの出し方を割り当てておく(例:土曜は当日、日曜は後日)
- 割り当てを、プランナーの好みでなく、日付で決める。好みで決めると、決まりそうな組にだけ当日提示が行き、当日提示の成績が実力より良く見えます
- 最低でも、それぞれ20組ほどの見学が溜まるまで続ける。月の成約が10組前後の会場では、数組の差は偶然で動きます
見学が少ない会場は、判定に何か月もかかります。その場合は、成約率の比較を諦めて、条件1から3のうち、右の列が多いほうに寄せておくのが無難です。数字が出るまでは、「当日提示に向いていない理由が一つでもあれば後日」と決めておけば、大きく外すことはありません。
まとめ
- 見積もりを当日に出すか後日送るかは、当日に決まる組の純増と、金額を見て離脱する組の数の引き算で決まる
- 当日に決まった組には、後日でも決まった組が含まれる。純増は、思っているより小さい
- 当日提示に向くのは、概算が最終金額に近く、決裁する人がその場にいて、作成の時間を取れる式場
- 当日に出すなら、1つの金額でなく、固定の部分と変わる部分を分けて、下限と上限を書く
- 後日送るなら、見学の最後に幅を口頭で伝えて、見積書は翌日の午前中までに送る
- 判断は、日付で割り当てた2つのやり方を、それぞれ20組ほど溜めて、成約率で比べる
見積もりを出すタイミングは、金額の話ではなく、二人が金額をどんな状態で受け取るかの設計です。
