集客

問い合わせ単価が半分でも、安いとは限らない。広告費は「1成約あたり」で比べると順位が入れ替わる

媒体費の会議で、問い合わせ1件あたりの単価を並べて比べている式場は多いと思います。1件1.2万円の媒体と、1件2.2万円の媒体なら、前者を残して後者を削る。自然な判断です。

ただ、この比べ方は途中で止まっています。問い合わせは成約ではありません。問い合わせから来館までの率も、来館から成約までの率も、媒体ごとに違います。そこを掛け合わせて「1成約あたり」に直すと、安く見えた媒体のほうが高くなることがあります。

この記事は、調査の数字ではなく計算の話です。出てくる数字はすべて、僕が置いた仮の数字です。実在の式場や媒体の実績ではありません。自社の数字に置き換えて使うための道具として読んでください。

先に結論

  • 媒体は「問い合わせ1件」ではなく「1成約あたりの費用」で比べる
  • 1成約あたりの費用は、問い合わせ単価を「来館率×成約率」で割ると出る
  • 媒体費の上限は、粗利から逆算して決める。上限は問い合わせ単価でも言える
  • 媒体別の成約率は、1か月の数字では判定できない。半年ためて見る

仮の式場を置く

計算のために、仮の式場を1つ置きます。

  • 1組成約したときの粗利は100万円(売上から原価と変動費を引いた後の金額。ここは式場ごとに違うので、自社の数字に置き換えてください)
  • 媒体Aは、問い合わせ1件あたり1.2万円。問い合わせの40%が来館し、来館の25%が成約する
  • 媒体Bは、問い合わせ1件あたり2.2万円。問い合わせの60%が来館し、来館の35%が成約する

この前提で、問い合わせ単価だけを見ると、Aは安くBは高く見えます。Bの単価はAの約1.8倍です。

1成約あたりに直す

問い合わせから成約までの率は、来館率と成約率の掛け算です。

  • 媒体A:0.40 × 0.25 = 0.10。問い合わせ10件から1組成約する
  • 媒体B:0.60 × 0.35 = 0.21。問い合わせ約4.8件から1組成約する

1成約あたりの費用は、問い合わせ単価をこの率で割ります。

  • 媒体A:12,000円 ÷ 0.10 = 12万円
  • 媒体B:22,000円 ÷ 0.21 = 約10.5万円

問い合わせ単価ではAが安かったのに、1成約あたりではBのほうが約1.5万円安くなりました。順位が入れ替わっています。

理由は単純です。Aは安く問い合わせが取れる代わりに、来館までたどり着く人も、契約まで進む人も少ない。単価の安さを、あとの段階の取りこぼしで食いつぶしています。

ここで大事なのは、AとBのどちらが良い媒体かを決めたいわけではないことです。比べる物差しを変えると、見える順位が変わる。それを自社の数字で確かめましょうという話です。

費用の上限は、粗利から逆算する

1成約あたりの費用が12万円や10.5万円だとして、それは高いのでしょうか、安いのでしょうか。これは比べる相手がないと決まりません。決める材料は粗利です。

仮の式場の粗利は1組100万円でした。1成約に12万円かかるなら、粗利の12%を媒体費に使っている計算です。Bなら10.5%です。

次に、粗利のうち媒体費に回してよい割合を決めます。ここは経営の判断です。ここでは仮に30%としてみます。すると、1成約に使える媒体費の上限は30万円です。この上限から、問い合わせ1件に払える額を逆算できます。

  • 媒体A:30万円 × 0.10 = 3万円
  • 媒体B:30万円 × 0.21 = 6.3万円

つまり、Aは問い合わせ1件に3万円まで払える。Bは6.3万円まで払える。同じ30%の上限でも、媒体の質が違えば、1件に払える額は倍以上違います。

この上限が分かると、媒体の営業から「問い合わせ1件が○万円になります」と提案されたときに、その場で高いか安いかを判断できます。提案された単価が、自社の上限の内側か外側かを見るだけです。

キャンセルを織り込む

契約後のキャンセルが出ると、成約したのに粗利が残りません。ここまで織り込むと、数字はもう少し厳しくなります。

仮に、契約後のキャンセルが5%あるとします。成約100組のうち5組が消える計算なので、残るのは95組です。1成約あたりの費用は、残った組で割り直します。

  • 媒体A:12万円 ÷ 0.95 = 約12.6万円
  • 媒体B:10.5万円 ÷ 0.95 = 約11.0万円

キャンセル率が10%まで上がれば、Aは約13.3万円になります。媒体ごとにキャンセル率が違う場合は、ここも差になります。たとえば、値引きで押し切った契約が多い媒体は、キャンセルも多くなりがちです。この関係はデータで確かめないと言い切れませんが、確かめる価値のある仮説です。

キャンセル率は、媒体別にためていない式場が多いはずです。最初は式場全体の率を使い、媒体別に出せるようになったら差し替えます。

判断の分かれ目

ここまでの計算を、実際の判断にどう使うかを整理します。

1成約あたりの費用が、上限を超えているとき。 媒体を削る前に、どの段階が低いかを見ます。問い合わせ単価が高いのか、来館率が低いのか、成約率が低いのかで、打つ手が違うからです。来館率が低いなら、返信と予約導線の問題かもしれません。成約率が低いなら、接客の前に、媒体がどんな期待を持たせて来館させているかを見るべきかもしれません。

上限の内側に収まっているとき。 削る理由はありません。むしろ、予算を増やしたら件数が伸びるのかを確かめる段階です。ただし、媒体は枠に限りがあるものが多く、予算を増やしても同じ単価で件数が増えるとは限りません。増やすときは、増えた分の1成約あたりの費用を別に見ます。

数字が揃わないとき。 媒体別に来館と成約を追えていない場合は、1成約あたりの費用は出せません。その場合は、問い合わせ単価で比べるのをやめて、まず「どの媒体から来た人が、いつ来館し、いつ契約したか」を台帳に残すところから始めます。出どころの取り方は、以前の記事で書いた指名検索の数え方が使えます。

媒体別の成約率は、数字が揃うまでに時間がかかる

ここまでの計算は、媒体別の来館率と成約率が分かっている前提でした。実際に出してみると、数が足りないことに気づきます。

仮に、媒体Bから月30件の問い合わせが来るとします。成約率が0.21なら、月に成約するのは約6組です。この6組という数字は、偶然でも簡単にずれます。成約率を実際の件数から推計したときの誤差を計算すると、問い合わせ30件では、±15ポイント近い幅が出ます。10月は21%、11月は10%、12月は30%、というように、月ごとに揺れても不思議ではありません。

問い合わせが100件までたまると、この幅は±8ポイントほどになります。成約率が10%の媒体Aなら、100件で±6ポイントほどです。差を見分けたい媒体どうしの成約率が数ポイントしか違わないなら、それでもまだ足りません。

実務でやることは3つです。

  • 月ごとの数字で媒体を入れ替えない。最低でも半年はためて、累積で見る
  • 問い合わせ数が少ない媒体は、成約率ではなく、来館率までで判断する。来館までなら件数が多く、早く数字がたまる
  • 成約率は、媒体ではなく、問い合わせの種類で分けたほうが差が出ることもある。たとえば、フェア予約からの来館と、見積もり相談からの来館は、成約の確率が別物のはずです

成約が遅れる分の資金も見ておく

もう1つ、この計算に入っていないものがあります。時間です。

媒体費は、掲載した月に払います。粗利が確定するのは、挙式が終わってからです。契約から挙式まで1年近くかかる式場なら、今月使った媒体費が粗利として戻ってくるのは1年後です。

1成約あたり12万円の媒体費は、成約するまでの数か月と、挙式までの1年の間、資金を置いておくことになります。媒体費を増やすと、売上が伸びる前に現金が減る。成長している式場ほど、この時間差で資金繰りが苦しくなることがあります。

だから、上限を決めるときは、粗利の割合だけでなく、先に出ていく現金の額も見ます。月の媒体費を60万円にするなら、仮に問い合わせ1件が1.2万円で50件、来館20組、成約5組。この5組の粗利500万円が戻るのは、早くて1年後です。ここは粗利の計算とは別の表で管理するほうが安全です。

台帳は6列あれば足りる

1成約あたりの費用を出すために必要な記録は、そう多くありません。問い合わせ1件につき、次の6つを残します。

  • 問い合わせの日付
  • 申し込んだ媒体(自己申告と、予約フォームの流入元の両方があれば、ずれた分も記録)
  • 来館した日(未来館なら空欄)
  • 契約した日(未契約なら空欄)
  • 契約後にキャンセルになったか
  • その問い合わせにかかった媒体費(月額固定の媒体は、月の問い合わせ数で割った額)

月額固定の媒体は、問い合わせが多い月ほど1件あたりの費用が下がります。ですので、1か月の単価で判断せず、半年分の費用を半年分の問い合わせで割ります。成果報酬型の媒体は、来館や成約のタイミングで費用が発生するので、その分も同じ台帳に入れておきます。

台帳ができたら、半年後に媒体ごとに4つの数字を出します。問い合わせ数、来館率、成約率、1成約あたりの費用です。この表を横に並べると、どの段階で媒体の差が出ているかが一目で分かります。差が出ている段階が、手を入れる場所です。

見落としやすいのは、媒体の名前が一致しない問題です。新郎新婦は「どこで知りましたか」と聞かれると、最後に見た媒体を答えがちです。複数の媒体を経由していると、台帳の上では最後の媒体にだけ成約がつきます。1つの媒体の成約率が高く見えても、他の媒体が前段で温めていた可能性は残ります。ですので、媒体を1つ切る前に、切った後の1~2か月は全体の問い合わせ数も見て、減り方が想定より大きくないかを確かめてください。

まとめ

  • 問い合わせ単価だけで媒体を比べると、来館率と成約率の差を見落とす
  • 1成約あたりの費用は「問い合わせ単価 ÷ (来館率×成約率)」。仮の例では、単価が約1.8倍の媒体のほうが、1成約あたりでは安くなった
  • 媒体費の上限は、粗利×回してよい割合から逆算する。1件に払える額は、媒体の質で倍以上違う
  • キャンセルを織り込むと、1成約あたりの費用は上がる。媒体別のキャンセル率が出せるなら差し替える
  • 媒体別の成約率は月ごとにはずれる。半年ためてから判定する
  • 媒体費は先に出て、粗利は挙式後に戻る。資金の置き場所も見ておく

媒体を選ぶ物差しは、問い合わせ1件の安さではなく、1成約に残る粗利の厚さです。