式場の広告は、予約が戻るまでの日数を知ってから止めるか決める
広告費を増やした週の見学予約が、思ったほど伸びない。逆に、広告を止めた週の予約が、あまり落ちない。式場で広告を運用していると、こういう場面にぶつかります。そこで「この広告は効いていない」「止めても影響はない」と判断してしまうと、あとで予約が細ってから原因が分からなくなります。
結論から書きます。式場の広告は、広告を見てから見学を予約するまでの日数が長いので、増減の効果は数週間かけて出ます。直近1週間の予約数で止める・増やすを決めると、前の週までの広告の成果を、今週の広告の成果と取り違えます。先に自社の「予約までの日数」を測り、その日数が過ぎるまで判断を待つ。この順番で決めます。
この記事の数字は、出典のあるものではありません。僕が置いた仮の分布と、そこから出した計算です。どこかの式場の実績でも、業界の平均でもないので、読むときは「こういう仕組みで、こう効いてくる」という形だけを受け取ってください。自社の数字は、後半に書く手順で出せます。
広告の効果はなぜ遅れて出るのか
食品や日用品の広告なら、見てすぐ買うことがあります。結婚式場は違います。式場を探している二人は、資料や口コミを見比べて、候補を絞って、二人の予定を合わせて、見学を予約します。広告で式場名を知った日と、予約フォームに入力する日の間には、数日から数週間の開きが出やすくなります。
ただ、「出やすい」と書いたのは、その開きの長さを裏づける調査を僕が確認できていないからです。式場の種類、地域、挙式までの期間、広告の種類で変わるはずなので、一般論を置くより、自社の台帳で測るほうが確実です。
遅れが生まれる場面を分けると、次の3つになります。
- 広告を見た日は流し見で、後日あらためて検索する。広告の接触と予約の間に、別の経路が挟まります
- 広告から資料やアカウントを見て、二人で相談する時間が入る。片方が見つけて、もう片方に共有して、日程を決めるまでに数日かかります
- 複数の式場を並べて、見学の順番を決めてから予約する。他の式場の見学が済むまで、予約が後ろに回ります
どれも、広告の質とは別の理由で遅れが出ています。広告が悪いから予約が来ないのではなく、予約が来るタイミングが後ろにずれているだけ、ということが起きます。
遅れがあると、報告の数字はどう狂うか
遅れの効き方を、仮の分布で計算してみます。次の前提を置きます。
- 広告を見て予約する二人の総数を100とすると、そのうち15が当日、15が翌日、25が2〜7日後、30が8〜30日後、15が31〜90日後に予約する
- 広告を見る人の数は、毎日同じ(定常)で、ある日を境に半分に減らす、または倍に増やす
- 広告の質(予約に変わる率)は変わらない
この分布だと、広告を見た人の約半数(50.8%)は7日以内に、約84%は30日以内に予約します。残りの16%ほどは、31日以上たってから予約します。
この前提で、広告費を変えた日から数えて、1週間ごとの予約数を計算しました。変更前の1週間の予約数を100として並べます(Pythonで日ごとに畳み込んで出した値です)。
| 変更後 | 広告を半分に減らした場合 | 広告を倍に増やした場合 |
|---|---|---|
| 1週目 | 約82 | 約137 |
| 2週目 | 約71 | 約159 |
| 4週目 | 約61 | 約177 |
| 8週目 | 約55 | 約190 |
| 落ち着いた後 | 50 | 200 |
ここで見てほしいのは、1週目の数字です。広告を半分に減らしたのに、予約は18%しか落ちていません。この数字だけを見ると「広告を半分にしても大して困らない」と読めます。ところが落ち着くと予約は半分になります。1週目の予約の大半は、減らす前に流れた広告で生まれていたからです。
倍に増やした場合は逆です。1週目は37%しか伸びません。「倍にしても効かない」と見えますが、落ち着くと予約は倍になります。1週目で判断すると、効く広告を「効かない」と切ってしまいます。
つまり、直近1週間の予約数は、今週の広告の成果ではありません。過去数週間に流れた広告の成果の合計です。広告費を変えた直後の数字は、変える前の広告費のほうを多く映します。
判断の待ち時間を決める
遅れがあるとしても、何か月も待って決めることはできません。待つ長さを、次の考え方で決めます。
予約の大半が出そろう日数まで待つ。上の仮の分布なら、30日たつと全体の84%が出ます。変更から30日分の予約を見れば、効果の8割以上が数字に出ていることになります。残りの1〜2割は、後から足される数字として、見込みで補正します。
具体的には、次のように使います。
- 広告費を変えたら、変更日をカレンダーに記録する
- 変更から30日(自社の分布で決めた日数)が過ぎるまで、その広告の「効いた・効かなかった」を結論にしない
- 待っている間は、変更前と同じ水準の予約が来ていても、広告が効いていないとも、止めても大丈夫とも判断しない
- 30日たったら、変更後の30日分の予約を、変更前の30日分と比べる
待っている間に別の変更を重ねないことも大切です。広告費の変更を2週間おきに繰り返すと、どの変更の影響が今の数字に出ているのか、分からなくなります。上の計算で、落ち着くまでに数週間かかったことを思い出してください。変更と変更の間は、最低でも待ち時間と同じだけ空けます。
自社の「予約までの日数」を出す
仮の分布を、自社の数字に置き換えます。必要なのは、予約台帳の次の2つの日付です。
- 二人が初めて式場を知った日、または初めてサイトに来た日(初回接触日)
- 見学を予約した日(予約日)
予約フォームの「初めて知ったのはいつですか」のような聞き方は、記憶に頼るので、精度は荒くなります。計測できているなら、サイトの解析ツールで同じ人の初回訪問日と予約日を結びます。どちらも取れないなら、予約フォームに「初めて式場名を見たのは何日前ですか」の選択肢(今日、昨日、1週間以内、1か月以内、それ以上)を1問足すところから始められます。
集めたら、予約を日数で区切って件数を数えます。
- 当日〜1日
- 2〜7日
- 8〜30日
- 31日以上
この4つの割合が、自社の分布です。全体の8割が出そろうのが何日目かを見れば、それが自社の待ち時間になります。
注意が1つあります。台帳に残るのは、予約まで来た二人だけです。広告を見たまま予約しなかった二人は、台帳には現れません。だから、この分布は「予約した二人の中での遅れ」であって、広告を見た全員の遅れではありません。この限界は、割り引いて読みます。
季節で遅れの長さが変わる点
遅れの長さは、1年を通して同じとは限りません。たとえば、挙式の希望日が近い二人は、短い期間で予約を決めます。挙式まで時間がある二人は、じっくり比べます。年末や連休明けのように、二人の予定が合わせやすい時期は、予約が特定の日に集まります。
そこで、分布は季節ごとに出し直します。最低でも、繁忙期と閑散期の2つに分けて持っておきます。閑散期の分布を使って、繁忙期の広告の効きを判断すると、待ち時間が短すぎる、または長すぎる、というずれが出ます。
また、広告の種類でも遅れは違うはずです。検索広告は、探している二人が押すので、遅れは短いと考えられます。SNS広告のように、探していない二人の目に入る広告は、遅れが長いと考えられます。ただしこれも僕の推測なので、台帳で確かめます。広告の種類ごとに分けて測れると、種類別の待ち時間が決まります。
この考え方が合わない場面
この見方は、いつでも使えるわけではありません。
予約数が少ない月。1か月の予約が数組しかない式場では、30日分の比較をしても、1組の増減で結論が逆になります。この場合は、待ち時間を長めに取って、2か月分をまとめて比べるほうが安全です。
同じ時期に他の施策が動いているとき。フェアの内容を変えた、料金ページを直した、口コミが一気に増えた、といったことが重なると、広告の効果だけを取り出せません。広告費の変更は、他の大きな変更とずらして行います。
広告を止める判断が、急ぎのとき。予算の都合で、待てずに止めなければならないこともあります。その場合は、止めた後の予約が、遅れて減っていく前提で見込みを立てます。上の計算なら、止めた直後の1週間は、減る前の水準から2割ほどしか落ちません。そのあと数週間かけて、じわじわ落ちていきます。落ちる最初の週に「影響なし」と報告しないように、あらかじめ上司や経営者に伝えておきます。
運用の段取りに落とす
最後に、月の運用に組み込む形を書きます。
- 月初に、広告費の変更予定を1枚にまとめる(何を、いつ、どれだけ変えるか)
- 変更日と、判断する日(変更日+自社の待ち時間)を、同じ表に書く
- 判断日までは、その広告について「効いた・効かない」を会議で結論にしない。数字は報告しても、結論は出さない
- 判断日に、変更後の期間と変更前の同じ長さの期間を比べて、続ける・戻す・さらに変えるを決める
- 四半期に1回、予約台帳から日数の分布を取り直す
この段取りで一番変わるのは、会議での言葉です。「先週の予約が少なかったので、広告を止めましょう」ではなく、「3週間前に広告を半分にしたので、そろそろ予約に出てくる時期です。判断日は来月の10日にします」と言えるようになります。数字を見る日が決まっていると、1週間の増減に振り回されません。
まとめ
- 式場の広告は、見てから予約するまでに日数がかかるので、効果は数週間かけて出る
- 直近1週間の予約数は、今週の広告ではなく、過去数週間に流れた広告の成果の合計
- 仮の分布で計算すると、広告を半分に減らした1週目の予約は約18%しか落ちず、倍に増やした1週目は約37%しか伸びない(落ち着くとそれぞれ50%、200%)
- 判断は、予約の大半(目安は8割)が出そろう日数が過ぎてから行う。仮の分布なら30日
- 自社の分布は、予約台帳の初回接触日と予約日から出す。取れていなければ、予約フォームに「初めて式場名を見たのはいつか」を1問足す
- 変更と変更の間は、待ち時間と同じだけ空ける。他の大きな施策と同じ時期に重ねない
- 予約が少ない月は2か月分まとめて比べる。分布は季節と広告の種類ごとに取り直す
