新郎新婦のリアル

招待状の前に「日程だけのお知らせ」を出すと、仮の式場では年187万円残る。ただし式場が動くのは契約の日だけで、先約が月0.15%も入らなければ手間が回収できない

結婚式の日取りが決まっても、ゲストにそれが届くのは、正式な招待状が発送されるときです。僕の理解では、招待状は挙式の2か月ほど前に送られることが多く、日取りが決まった契約の日から、そこまでには数か月の空白があります。

この空白の間、ゲストは二人の結婚式の日を知りません。知らないので、同じ日に旅行を入れたり、別の予定を受けたり、仕事の出張を引き受けたりします。招待状が届いてから「その日は先約があって」と断る人が出るのは、この空白が原因です。

結論を先に書きます。契約の日に二人へ日程だけのお知らせの雛形を渡し、挙式の6か月前までに送ってもらう運用は、年120組・60名の仮の式場で年187万円残る計算になります。ただし、これは「空白の1か月ごとに、ゲストの2%に先約が入る」と置いた場合です。月1%なら年約86万円、月0.5%でも年約35万円で、プラスは残ります。逆に、先約がほとんど入らない二人にとっては、ほぼ意味がありません。

なお、この記事の数字はすべて、僕が置いた仮の前提です。ゲストに先約が入る割合や、日程の案内で欠席がどれだけ減るかについて、僕が確かめられた公開データはありません。業界の相場として読まず、自分の会場の数字に置き換えるための型として読んでください。

空白の長さと欠席の関係

まず、何が起きているかを整理します。

二人が日取りを決めるのは、会場の契約の日です。ここから正式な招待状が届くまでが、ゲストにとっての「知らない期間」です。仮に、契約から挙式まで6か月あるとして、招待状が2か月前に届くなら、知らない期間は4か月です。

この4か月の間に、ゲストの予定は埋まっていきます。友人の別の結婚式、家族旅行、会社の出張、子どもの行事などです。一つひとつは小さな確率ですが、60人いれば、誰かには必ず入ります。

先約が入ったゲストは、二つに分かれます。

  • 予定をずらして出席できる人
  • ずらせずに欠席する人

ずらせる人は、二人から日程を聞けばずらします。聞かなければ、ずらす機会がありません。つまり、日程のお知らせで救えるのは、先約が入ってしまった人のうち、ずらせる人だけです。ここは数字を置いて確かめます。

仮の前提を置きます

  • 年間の挙式は120組、1組あたりの招待は60名です
  • ゲスト1人が出席することで式場に残る粗利は、1人あたり1万円とします
  • 知らない期間の1か月ごとに、ゲストの2%に先約が入るとします。4か月なら、60名のうち4.8名です
  • 先約が入った人のうち、日程を聞けば予定をずらせる人は、5割とします
  • 欠席が出ても、二人が別のゲストを呼び直して埋める分が3割あるとします
  • 雛形を渡して、送る時期を二人と決める式場側の手間は、1組につき30分、人件費は1時間2,500円とします。1組あたり1,250円です

この中で、結果を一番動かすのは、月あたりの先約の率です。2%という数字は、僕が置いたもので、根拠はありません。後で動かして確かめます。

年187万円の中身

計算は次のとおりです。

  • 先約が入るゲストは、60名 × 2% × 4か月 = 4.8名
  • そのうち予定をずらせる人は5割で、日程を早く知らせれば出席に変わるのは2.4名
  • そのうち3割は、二人が別のゲストで埋めていたはずなので、実際に増える出席は2.4 × 0.7 = 1.68名
  • 粗利は、1.68名 × 1万円 = 1万6,800円
  • 式場側の手間は、1,250円を引いて1万5,550円
  • 120組で、1万5,550円 × 120 = 約187万円です

数字を並べると、立派に見えますが、中身は1組あたり1.7名の出席増です。60名の招待に対して、3%に満たない変化です。

この規模の変化は、ゲストの人数が変わる年間の平均を見ても、なかなか見えません。招待客数は二人の交友関係やその年の流行でも動くからです。そのため、日程のお知らせの効果は、式場の売上の推移ではなく、別の指標で見る必要があります。たとえば、招待状を送ったあとの欠席の返信のうち、先約を理由にしたものの割合です。

先約の率を動かして確かめます

年187万円は、月2%という数字に支えられています。ここを動かして、どこまで残るかを見ます。ほかの前提は同じです。

  • 月0.5%なら、出席の増えは0.42名で、年約35万円
  • 月1%なら、増えは0.84名で、年約86万円
  • 月2%なら、増えは1.68名で、年約187万円
  • 月3%なら、増えは2.52名で、年約287万円

月0.5%でもプラスは残ります。式場側の手間が1組1,250円と小さいからです。手間を取り戻せる境目は、月0.15%です。60名に4か月で、先約が入るゲストが0.36名、つまり3組に1組で1人、先約が入る程度です。

ここは、僕の判断を書いておきます。この境目はあまりに低いので、日程のお知らせは、やって損をする場面がほとんどありません。損をするとすれば、手間が1組30分で済まない場合です。式場スタッフが文面を一組ごとに作り直したり、二人の代わりにゲスト全員へ送ったりする運用にすると、手間は2時間になり、年の残りは約187万円から約142万円ほどへ下がります。月0.5%の前提なら、この手間では赤字です。

つまり、式場が受け持つのは雛形の用意と、送る時期の約束までです。送る作業は二人がやる仕事です。

雛形に入れる項目

式場側の手間を小さく保つには、何を渡すかを決めておくのが先です。

雛形に入れるのは、次の項目です。

  • 挙式の日付と曜日、開始の時間帯
  • 会場の名前と、最寄り駅からの行き方の概要
  • 「正式な招待状は、あらためて送ります」の一文
  • 出欠の返事は、正式な招待状のときにお願いします、の一文

最後の一文が、大事です。ここで出欠の返事を求めてしまうと、二人はゲストの返事を集める仕事を、招待状の前と後で2回やることになります。日程のお知らせは、予定を空けておいてもらうための連絡です。出欠の確認は、正式な招待状のあとの仕事として、分けておきます。

渡し方は、紙でも画像でも、LINEにそのまま貼れる文面でも構いません。二人が使う連絡手段に合わせます。

送る順番と時期

全員に同じ時期に送る必要はありません。先約が入りやすい人から先に送るほうが、効果は大きくなります。

  • 遠方から来るゲスト。移動と宿泊の手配が要るので、予定が早く固まります
  • 小さな子どもがいるゲスト。預け先の調整が要ります
  • 出張や転勤の多い仕事のゲスト。シフトが先に決まります
  • 高齢の親族。通院や介護の都合を先に確認しておく必要があります

送る時期の約束は、契約の日にしておきます。「挙式の6か月前、もしくは契約から1か月後の早いほう」という決め方です。契約から挙式まで6か月に満たない二人には、契約から1か月後が基準になります。決めておかないと、二人は招待状の準備と同じ頃まで、後回しにします。

契約の日は、二人が最も「決める」ことに前向きな日で、あとから「いつ送りますか」と聞いても、二人は、準備が進んでからと答えがちです。

日程が変わるときの注意

日程のお知らせには、一つ、気をつけておくことがあります。お知らせを出したあとで日程が変わると、二人はゲスト全員に訂正を送ることになります。

台風で延期になる場合の判断は別の記事で書きましたが、日程の変更は、お知らせを出した後ほど、二人にとって重い連絡になります。変更の可能性が高い二人には、お知らせを急がせないほうがよい場面があります。

  • 仮予約の段階で、本契約が済んでいない二人
  • 両家の都合や、親の意向がまだ固まっていない二人
  • 妊娠中や、転職の予定が近い二人など、本人の都合が動きやすい二人

こうした二人には、「契約から1か月後」ではなく、日程が固まったことを二人と確かめてからにします。

人数の見通しが早く立つ副作用

もう一つ、数字には入れていない効果があります。日程のお知らせをきっかけに、ゲストから早めの返事が返ってくることです。

二人は、お知らせへの返事として「行けるよ」「その日は難しい」を、招待状より前に受け取ります。これは正式な出欠ではありませんが、人数の見通しとしては使えます。式場にとっては、人数が確定するのは挙式の2週間ほど前ですが、見通しが数か月早く二人から聞けるなら、料理や席の準備の段取りを組みやすくなります。

ただし、これは二人が自分から式場に伝えてくれたときだけ起きる効果で、式場から聞きに行くと、二人の負担になります。だから計算には入れませんでした。

打合せで確かめること

この施策の弱点は、効果が見えにくいことです。年187万円と言っても、それは1組あたり1.7名の出席増で、毎月の数字には出てきません。

そこで、確かめる指標を決めておきます。

  • 日程のお知らせを出した二人と、出さなかった二人の、招待状後の欠席率を比べる
  • 欠席の理由で、「先約」を挙げた人の割合を比べる
  • 式場の側で数えるなら、契約から1か月後までに雛形を渡した組数と、実際に送った組数

見るのは、欠席率が何ポイント違うかです。60名の招待で、出席が1.7名増えるなら、欠席率は2.8ポイント下がります。この水準は、10組や20組では偶然の揺れと区別できません。半年から1年分の組数をためてから、比べます。

まとめ

  • 契約の日に日程のお知らせの雛形を渡すと、仮の式場(年120組、招待60名、粗利1人1万円)では年187万円残る計算になる。これは僕が置いた仮の前提での数字
  • 効いているのは、契約から招待状までの知らない期間に、月2%のゲストに先約が入るという前提。月1%なら年約86万円、月0.5%でも年約35万円、手間を取り戻せる境目は月0.15%
  • 増えるのは1組あたり1.7名の出席で、招待の3%に満たない。売上の推移では見えないので、招待状後の欠席率と、欠席理由の「先約」の割合で見る
  • 式場が受け持つのは雛形と送る時期の約束まで。文面の作り直しや代理送信で手間が2時間になると、残りは年約142万円に下がる
  • 雛形には日付・会場・「正式な招待状はあとで送る」を入れる。出欠の返事は求めない
  • 送る時期は契約の日に決める。日程が動きそうな二人には、固まるまで送らせない