新郎新婦のリアル

再婚の二人を受ける式場は、プランより先に聞く順番を決める

再婚の二人が見学に来たとき、式場の側が「初めての結婚式ですよね」と口にしてしまう場面は、想像よりずっと起きやすいと僕は見ています。悪気はありません。パンフレットも、見学の台本も、案内のトークも、最初の結婚を前提に作られているからです。

結論を先に書きます。再婚の二人を受けるために、再婚専用のプランを新設する必要はありません。先に決めるべきなのは、見学で何をどの順番で聞くかと、初婚前提の言葉をどこで言い換えるかの2点です。商品を増やすと在庫と説明が増えますが、聞く順番を決めるだけなら、明日から台本を直すことで済みます。

この記事では、まず再婚がどれくらいの割合で来るのかを統計で確認します。そのうえで、初婚前提の商品や言葉が再婚の二人に合わなくなる場所を整理し、聞く順番の案を示します。最後に、再婚の二人を取りこぼしたときの金額を、仮の数字を置いて計算します。

再婚は、婚姻の6組に1組以上を占める

国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集2025」の表6-1に、初婚・再婚別の婚姻数があります。2023年の婚姻総数は474,741組です。そのうち、夫が再婚の組は87,878組、妻が再婚の組は76,102組でした。割合にすると、夫の再婚が18.5%、妻の再婚が16.0%です。

この2つは重なっています。夫婦ともに再婚の組が両方に入っているからです。単純に足すと34.5%になりますが、それは重複を二重に数えた値なので、「再婚を含む組」の実数ではありません。ここで言えるのは、再婚を含む組は少なくとも夫の再婚の18.5%以上、多くても34.5%以下の間にある、ということまでです。重複の大きさは、この表からは分かりません。

厚生労働省の人口動態統計の概況では、2024年は夫の再婚が17.9%、妻の再婚が15.6%と報告されています。年によって少し動きますが、6組に1組前後という規模は変わっていません。

過去と比べると、ここ30年の変化も見えます。同じ表で、1990年の夫の再婚は722,138組中96,685組、割合は13.4%でした。2023年の18.5%と比べると、5ポイントほど高くなっています。婚姻の総数が減るなかで、再婚の組の割合は増えているわけです。

もうひとつ、押さえておきたいことがあります。この統計は婚姻届の数です。再婚の組のうち結婚式を挙げる割合は、この表からは分かりません。この記事でも、再婚の二人が式を挙げる率は書きません。確かめられていない数字を置かないためです。ここで使うのは、「見学に来る二人の中に、再婚を含む組が一定数いるはずだ」という一点だけです。

初婚前提の商品が外れる4つの場所

では、再婚の二人は何に困るのか。調査があるわけではないので、「実際にこう言われた」とは書きません。ここからは、初婚を前提にした商品の作りから、仕組みとして外れやすい場所を挙げます。

1. 「一生に一度」の言葉

ブライダルの案内には、「一生に一度の」「人生で一度きりの」という言い回しが多くあります。初婚の二人には響く言葉でも、再婚の二人にとっては事実と合いません。これを聞いた二人が気にするのは、言葉そのものより、「この式場は、自分たちのような組を想定していない」と感じることです。

見学で一度でもこの言い回しが出ると、それ以降の説明も初婚向けに聞こえやすくなります。商品が合うかどうかを見てもらう前に、距離ができてしまいます。

2. 招待客の構成と、親の関わり方

初婚の披露宴は、会社関係、友人、親族の3つのまとまりで招待客を考える作りが多いです。再婚の二人は、このまとまりの重さが違うことがあります。親や親族は出席するが、友人は少数にしたい。逆に、親族は呼ばず、親しい友人と子どもだけにしたい。招待客の構成が、初婚の型に収まらないことが起きます。

ここで式場が「招待客は何名くらいですか」だけを聞くと、人数は出ても、構成の事情は出てきません。人数の次に、誰を呼びたいのかを聞く必要があります。

3. 子どもの扱い

再婚の二人には、どちらかまたは両方に子どもがいる場合があります。子どもが式で果たす役割は、ゲストではなく家族の一員としての参加です。席次表のどこに載せるか、入場に加わるか、親族紹介の中で続柄をどう言うか。初婚の台本には、この場面がありません。

同じことが、親族紹介にも言えます。続柄の言い方に配慮が要る組は、控室で口頭で済ませるより、事前にシートで確認したほうが安全です。この点は、別の記事で親族紹介の人数の上限と合わせて書いています。

4. 過去の結婚式の記憶

二人のどちらかが、以前に結婚式を挙げているかもしれません。その場合、前回の式との違いを意識して、式場を選びます。前回と同じことをしたくない人もいれば、前回できなかったことをやり直したい人もいます。

式場の側から見ると、これは演出の希望を聞くときに、「前回と同じにしたくないことがあるか」を聞けるという話です。ただし、聞き方を間違えると、触れてほしくない話題に踏み込みます。聞き方は、次の章で整理します。

聞く順番を3段に分ける

再婚の二人を想定した聞き方は、順番を決めておくと崩れにくくなります。僕の案は、3段です。

第1段:事実ではなく、希望から聞く

見学の最初に「ご結婚は初めてですか」とは聞きません。婚姻歴を聞く質問は、見学の入り口では重すぎます。代わりに聞くのは、こういう希望です。

  • 今日は、どんな結婚式を思い浮かべて来られましたか
  • 呼びたい方は、どのくらいの人数感でしょうか
  • 準備で、特に大事にしたいことはありますか

この3つは、初婚でも再婚でも使えます。再婚の二人は、答えの中で自分から事情を話すことがあります。話してくれたら、その事情に沿って進めます。話されなければ、聞かなくても進められます。

第2段:事情が出たら、確認する項目を絞る

事情が出たら、聞く項目を絞って確認します。聞くのは、式の運営に関わることだけです。

  • 当日、ご家族として入場や席に加わる方はいますか
  • 親族紹介で、お名前や続柄の言い方に希望はありますか
  • 席次表や招待状に載せるお名前の表記で、気をつけたい点はありますか

過去の結婚の経緯や、離婚の理由は聞きません。式の運営に必要な情報だけを聞き、それ以外は聞かないという線を、スタッフ全員で共有しておきます。

第3段:契約までに、書面で確認する

口頭で聞いたことは、契約の前に書面にまとめます。第2段で出た希望を、打合せシートの記入欄に残しておくと、担当者が替わっても引き継げます。これは、担当プランナーが退職したときの引き継ぎでも同じです。口頭の約束は、人についていきます。書面なら、式場についていきます。

言い換える言葉を5つ決める

聞く順番とは別に、台本とパンフレットの言葉を直します。再婚専用の文面を作るのではなく、初婚前提の言葉を、どちらにも通じる言葉に置き換えます。

  • 「一生に一度の」→「二人にとって大切な」
  • 「新郎新婦の初めての共同作業」→「二人で行うセレモニー」
  • 「ご両親への感謝の手紙」→「大切な方への手紙」
  • 「お二人の門出」→「お二人の新しい日」
  • 「新生活」→「これからの暮らし」

最初の2つは、初婚を前提にした言い回しの代表です。残り3つは、親や子どもがどう関わるかを決めつけない言い方にしてあります。全部を変える必要はありません。見学のトークの冒頭と、パンフレットの表紙まわりだけを直せば、最初の印象は変わります。

この置き換えは、再婚の二人だけのためではありません。親との関係が複雑な初婚の二人や、親に感謝の手紙を読みたくない二人にも通じます。言葉の守備範囲を広げる作業と考えたほうが、続きます。

取りこぼしを、仮の数字で計算する

最後に、再婚の二人を取りこぼしたときの金額を計算します。式場ごとの実際の数字は分からないので、ここからは仮置きです。

仮に、ある式場で年間100組の見学があり、そのうち再婚を含む組が20組いたとします。この20組は、統計の18.5%から34.5%の間に収まる値として置きました。仮に、成約率が全体で30%、客単価が300万円だったとします。

再婚の20組が全体と同じ成約率で成約すれば、20組 × 30% = 6組、売上は6組 × 300万円 = 1,800万円です。

ここで、初婚前提の言葉が原因で、再婚の組の成約率が全体より5ポイント低いとします。成約率が25%なら、20組 × 25% = 5組で、売上は1,500万円です。差は1組、300万円になります。

この計算の前提は2つです。再婚の組の成約率が低くなるかどうかは、確かめていません。5ポイントという値も、計算のために置いたものです。言いたいのは、300万円という金額ではなく、仕組みです。再婚の組が一定数いる以上、見学の言葉が1組分の成約率を動かせば、それは年間で客単価ひとつ分の売上になるということです。

対策にかかる費用も見ておきます。台本の見直しと言葉の置き換えは、社内で半日あればできる作業です。新しいプランを作るときのように、料理の原価計算や商品説明のパンフレットの印刷費もかかりません。費用が軽く、効果が不確かでも試せるのが、この対策の利点です。

効果は、測れます。見学の最初の質問を新しい台本に替える前と後で、再婚の事情が出た組の数と、その成約率を記録します。記録の取り方は、見学後のアンケートに「ご自身の事情で、話しにくかったことはあったか」を入れる方法もあります。ただし、アンケートに答えてもらうこと自体が負担になる組もあるので、項目は1つに絞ります。

再婚専用プランを作らない理由

「それでも、専用プランを作ったほうが分かりやすいのでは」という意見はあると思います。僕が作らないほうに寄せるのは、3つの理由からです。

ひとつ目は、再婚の二人の事情が一様ではないことです。子どもがいる組、いない組、親が出席する組、しない組。式の規模も、希望も、バラバラです。専用プランを1つ作っても、どれかの組には合わず、「再婚向け」と名前をつけたことで、かえって選びにくくなります。

ふたつ目は、プランの名前が、事情を明かす入口になってしまうことです。再婚向けのプランを選ぶということは、見学の場で自分の事情を伝えることになります。伝えたくない人にとって、これはハードルです。事情を話さなくても選べるプランのほうが、入りやすいはずです。

みっつ目は、運営の負担です。プランが増えれば、料理、衣裳、演出の組み合わせが増えます。説明するスタッフの負担も増えます。聞く順番と言葉の直しなら、既存のプランをそのまま使えます。

まとめ

  • 夫か妻のどちらかが再婚の組は、2023年で夫18.5%、妻16.0%。婚姻の6組に1組以上が再婚を含む(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2025」)
  • 初婚前提の商品が外れやすい場所は、「一生に一度」の言葉、招待客の構成、子どもの扱い、過去の式の記憶の4つ
  • 聞く順番は3段。最初は希望から聞き、事情が出たら式の運営に必要な項目だけ確認し、契約までに書面で残す
  • 過去の結婚の経緯は聞かない。聞くのは運営に必要なことだけで、この線はスタッフ全員で共有する
  • 言葉は専用の文面を作らず、初婚前提の言い回しを、どちらにも通じる言葉に置き換える
  • 再婚専用プランは、二人の事情が一様でなく、プラン名が事情を明かす入口になるため、作らない
  • 見学の言葉が再婚の組の成約率を5ポイント動かすと、仮置きの計算では年間300万円。効果は、直す前と後の成約率で測る