親族紹介を控室で口頭にするのは、両家で17人まで。仮の式場では、18人以上の70組だけ紹介シートに替えると年3.4万円浮く
親族紹介は、結婚式の中でいちばん台本に載りにくい時間です。進行表には「親族紹介 10分」とだけ書かれ、中身は控室の空気に任されます。
結論から書きます。僕は、親族紹介を控室で口頭のまま回せるのは、両家の親族を合わせて17人までだと考えています。18人を超えたら、事前に紹介シートを作って口頭の部分を短くしたほうが、式場にとっても新郎新婦にとっても損が少ない。仮の式場(年200組)で試算すると、この線を超える組は年70組。70組だけシートに替えれば、挙式が押す人件費5.5万円に対して、作る手間は2.1万円で済み、差し引き年3.4万円浮きます。
金額は小さいです。ただ、親族紹介が押すと、その後ろの挙式開始、集合写真、披露宴の入場まで、全部が数分ずつ後ろにずれます。お金より、ずれの連鎖を止める話として読んでください。
先に断っておくと、この記事に出典はありません。「1人45秒」も「親族が18人以上の組が35%」も、僕が置いた仮の数字です。実在の式場の実績でも、どこかの調査の結果でもありません。自分の会場の数字で確かめる方法は、記事の最後に書きます。
親族紹介は、何をする時間なのか
親族紹介は、両家の親族が初めて顔を合わせて、名前と続柄を伝え合う時間です。挙式の前に控室で行う形が基本形の1つで、披露宴の冒頭や、挙式後の食事会で行う式場もあります。ここでは、挙式前の控室で行う形を前提にします。
やり方は、新郎の父か新郎本人が自分の側の親族を順に紹介し、続けて新婦側が同じことをします。「こちらが叔父の〇〇です」「母方の祖母の〇〇です」といった具合で、1人ずつ軽く会釈を交わします。
この時間には、はっきりした役割が2つあります。1つは、披露宴で隣り合う親族同士が、名前と続柄を知った状態で座れること。もう1つは、新郎新婦の両親が、相手の親族の顔と名前を挙式の前に一度見ておけることです。披露宴の最中に「あの方はどなたでしたっけ」と聞き返す場面が減ります。
一方で、この時間は式場の進行から見ると、控室という限られた部屋を占有し、進行担当を1人張りつけ、挙式の開始時刻に向かって進む流れの途中に差し込まれる作業です。長引くと、後ろが詰まります。
控室の余裕は、15分くらいしかない
挙式前の親族の動きを、仮の前提で並べます。
- 親族は挙式の40分前に控室に集合する
- 受付での芳名帳記入、控室への案内、お茶の提供、ブーケやブートニアの受け渡しで、合わせて20分使う
- 挙式の5分前には、チャペルの前に整列を始める必要がある
- そうすると、親族紹介に使える時間は 40分 − 20分 − 5分 = 15分
この15分は、親族の到着が揃っていることが条件です。遅れて来る人がいれば、その人が来るまで待つか、遅れた人だけ後で個別に紹介するかを、現場で決めることになります。
15分という数字そのものは、式場や挙式の形で大きく変わります。受付を別の場所で済ませる式場なら、もっと長くなります。逆に、集合を30分前にしている式場なら、5分しか残りません。ここは各式場が自分の数字に置き換えてください。
紹介の長さは、人数に比例する
次に、口頭の紹介にかかる時間を置きます。
- 前置き(進行からの説明、並び方の確認):2分
- 1人あたり:45秒(名前と続柄を言って、会釈を交わし、次の人に移るまで)
この前提で、親族が何人なら15分に収まるかを計算します。
(15分 − 2分) × 60秒 ÷ 45秒 = 17.3人
つまり17人までです。両家を合わせて17人以下なら、口頭の紹介で控室の余裕に収まります。18人を超えると、紹介だけで15分を使い切り、挙式前の整列に食い込みます。
ここで1人あたりの時間を動かしてみます。
| 1人あたりの秒数 | 15分に収まる上限 |
|---|---|
| 30秒 | 26人 |
| 45秒 | 17人 |
| 60秒 | 13人 |
線は、1人あたりの秒数にとても敏感です。30秒で進められる組と60秒かかる組で、上限が13人も違います。年配の親族が多く、一人ひとりが自分で挨拶を添えるような場では、60秒を超えることも珍しくないと思います。逆に、続柄だけを手短に言う進め方なら、30秒で足ります。45秒という置き方は、その中間です。
仮の式場で、何組が線を超えるか
年200組の仮の式場で、両家の親族の人数分布を置きます。
| 親族の人数 | 組の割合 | 組数 | 代表人数 |
|---|---|---|---|
| 10人以下 | 30% | 60組 | 8人 |
| 11〜17人 | 35% | 70組 | 14人 |
| 18〜25人 | 25% | 50組 | 22人 |
| 26人以上 | 10% | 20組 | 30人 |
この割合は、僕の仮置きです。実際には、少人数婚が増えた式場ほど10人以下の層が厚くなります。親族を広く呼ぶ地域では、26人以上が3割を超えるところもあるでしょう。ここも自分の会場の実績に置き換えてください。
45秒で計算すると、各層の所要時間は次の通りです。
- 8人:2分 + 8人 × 45秒 = 8分。余裕15分に収まる
- 14人:2分 + 14人 × 45秒 = 12.5分。収まる
- 22人:2分 + 22人 × 45秒 = 18.5分。3.5分オーバー
- 30人:2分 + 30人 × 45秒 = 24.5分。9.5分オーバー
線を超えるのは、18人以上の70組です。年間の約35%にあたります。
超えた日の損失は、1組あたり約500〜1,400円
線を超えた組で、挙式前の整列が押すと、何が起きるか。チャペルで待つ司式者と介添え、控室の進行担当、ヘアメイクの待機、カメラマン、キャプテンの5人が、押した分だけ待ちます。
5人 × 超過分 × 時給1,800円で計算します(時給は仮置きで、全員同額とします)。
- 22人の組(50組):5人 × 3.5分 ÷ 60 × 1,800円 = 525円
- 30人の組(20組):5人 × 9.5分 ÷ 60 × 1,800円 = 1,425円
年間では、50組 × 525円 + 20組 × 1,425円 = 54,750円。約5.5万円です。
1組あたりの金額は、缶コーヒー数本分です。ただ、押した分は、挙式の開始時刻が遅れるわけではありません。多くの式場は、挙式の開始時刻を守るために、親族紹介を途中で切り上げます。切り上げられた側は、紹介されなかった親族が出ます。披露宴で隣に座った人が誰か分からないまま、という状態が残ります。
つまり、損失は2種類あります。人件費の押しと、紹介が途中で切られる質の低下です。後者は金額にしにくいので、ここでは人件費の5.5万円を、手を打ってよい金額の上限として使います。
紹介シートに替えると、いくら手間が増えるか
紹介シートは、両家の親族の名前と続柄を一覧にした1枚の表です。挙式前に配り、当日の口頭は代表者の紹介だけに絞ります。口頭を全部やめるのではなく、1人ずつの名乗りをシートに任せる形です。
シートを作るのは、プランナーです。打合せで親族の人数と名前、続柄、呼び方を聞き取り、整えて印刷します。
- 1組あたり:10分
- プランナーの時給:1,800円(仮置き)
1組300円です。
- 18人以上の70組だけに作る場合:70組 × 300円 = 2.1万円
- 全200組に作る場合:200組 × 300円 = 6万円
比べます。
- 70組に絞る:費用2.1万円、押しの人件費5.5万円が消える。差し引き3.4万円の黒字
- 全組に作る:費用6万円、浮くのは同じ5.5万円。差し引き0.5万円の赤字
全組に作ると赤字に傾くのは、17人以下の130組は、口頭のままで15分に収まっているからです。収まっている組にシートを作っても、押しは減らず、作る手間だけが増えます。
17人以下の組にとっても、シートが要る場面がある
人数だけで切るのは乱暴で、17人以下でもシートが効く組があります。
1つ目は、親族の名前の読みが難しい組です。珍しい名字や、本人だけが知っている呼び名がある場合、口頭では紹介する新郎の父が読み間違えます。間違いは、その場で親族が訂正できますが、気まずい空気が残ります。
2つ目は、両家の関係が初対面に近い組です。両家の顔合わせを済ませていなければ、親族紹介が実質的に両親の初対面を兼ねることになります。口頭の進行が、会話の糸口になる時間でもあります。この場合は、シートを渡しても、口頭の紹介を削らないほうがいいと僕は思います。時間が足りなければ、集合を早めます。
3つ目は、再婚や養子縁組などで、続柄の言い方に配慮が要る組です。口頭で説明するより、事前に二人と相談して、シートに載せる表現を決めておくほうが、現場で戸惑いません。
このように、人数は一番分かりやすい物差しですが、唯一の物差しではありません。打合せのときに、プランナーが「親族の人数」「初対面かどうか」「名前の読みに難があるか」の3点を聞けば、シートに替える組を、人数以外の理由でも拾えます。
線が動くのは、どんなときか
17人という線が動く条件を整理します。
- 集合時刻を10分早めると、紹介に使える枠が25分になる。45秒なら上限は30人まで上がる。集合を早めると親族の負担は増えるが、式場の人件費は変わらない
- 受付を控室と別の場所で済ませる式場は、控室の20分が10分に縮み、枠が25分になる
- 紹介を披露宴の冒頭に移せば、控室の枠の問題は消える。代わりに、披露宴の進行が5〜10分延びる。繁忙日の転換の余裕とぶつかるので、繁忙日だけは控室、平日は披露宴冒頭、という使い分けもある
- 1人あたりの秒数は、進行担当の腕で動く。続柄だけを手短に言う進め方を、進行担当が事前に二人へ説明しておくだけで、45秒が30秒に近づく
3番目の、紹介の場所を移す案は、効果が大きい代わりに、新郎新婦と親族の感じ方が変わります。親族紹介を挙式前に済ませたい、という気持ちは、僕が聞く範囲でも根強くあります。披露宴の席で初めて顔を合わせるのは、やはり落ち着かないからです。式場が一方的に決めず、打合せで選んでもらう形が妥当だと思います。
自社の数字で確かめる方法
仮の数字のまま決めるのは危ないので、確かめ方を書きます。
- 直近3か月の挙式について、親族の人数(両家合計)をヒアリングシートから拾う。ない場合は、控室の席次表の人数でよい
- 親族紹介の開始時刻と終了時刻を、進行担当にメモしてもらう。3か月続ければ、人数と所要時間の関係が見える
- 「1人あたり何秒か」は、所要時間から前置きの2分を引いて、人数で割る
- 挙式前の整列が予定より遅れた回数を数え、遅れた回の人数を見る
10回に1回しか押していないなら、仮の前提より余裕があるということです。シートを作る理由は薄い。逆に、人数が少ないのに押している組が多いなら、原因は人数ではなく、受付や到着の遅れにあります。その場合は、シートより先に、集合時刻と受付の段取りを見直すべきです。
もう1つ、記録に加えたいのは、紹介が途中で切られた回数です。時間内に終わらず、紹介されなかった親族がいた回を数えておくと、人件費では見えない損失の大きさが分かります。この回数が年に5回を超えるなら、金額の損得とは別に、手を打つ意味があると僕は見ています。
判断をまとめる
仮の前提で整理します。
- 挙式前の控室で使える親族紹介の枠は15分。1人45秒なら、口頭で収まるのは17人まで
- 1人あたりの秒数が30秒なら26人、60秒なら13人。線は秒数に敏感に動く
- 18人以上の70組が線を超え、押しの人件費は年約5.5万円
- 紹介シートを18人以上の70組だけに作ると、費用2.1万円で差し引き3.4万円の黒字。全200組に作ると6万円かかり、赤字に傾く
- 人数以外に、名前の読み、初対面かどうか、続柄の配慮も、シートに替える理由になる
- 自社の人数と所要時間を3か月記録して、線の位置を置き直す
どれも、規模の小さな話です。ただ、親族紹介は、新郎新婦が「あの時間は良かった」と覚えている数少ない場面でもあります。時間を切り詰める話ではなく、時間の足りる組と足りない組を分ける話として、数えてみる価値はあると思います。
まとめ
- 挙式前の控室の親族紹介に使える枠は、仮の前提で15分。数字はすべて仮置き
- 前置き2分、1人45秒なら、口頭で収まるのは両家合わせて17人まで。30秒なら26人、60秒なら13人
- 年200組の仮の式場では、18人以上が70組。押しの人件費は年約5.5万円
- 紹介シートを70組だけに作ると、費用2.1万円で差し引き年3.4万円の黒字。全組に作ると赤字に傾く
- 人数以外に、名前の読み、両家が初対面か、続柄への配慮でも、シートに替える判断ができる
- 自社の数字は、親族の人数と紹介の所要時間を3か月記録し、紹介が途中で切られた回数まで数えて確かめる
